扉を開けたあと。
>513氏

「まぁまぁ、兄さんも落ち着いて」
「うるさいっ!ほっといてくれ…!!」
「に、兄さん…」

こんな子供じみた失敗を犯してしまった自分が酷く恥ずかしい。
それも妹の前でなんて、兄としての威厳が台無しだ。
顔も合わせたくないのに、よりによってこの宿屋には一間しかない。

「…あの、僕気にしてないから、その…」
「……」
「元気だしてね。じゃあ、僕ちょっと散歩に行ってくるから…」

パタン、とドアの閉まる音がした後、エドワードはため息をついた。
とっさに怒鳴ってしまったが、元はと言えば自分が原因なのだ。
それを妹にむかって当り散らしてしまうなんて、それこそ恥ずべき事なのに…。
ベッドにうつ伏せてしまったので表情はわからなかったが、(鎧の身なので、はたから見れば表情などないのだろうが、しぐさや態度で大体はわかるものだ)話し掛けてきた妹の声はしょんぼりとしていた。
きっと、自分のことを情けない兄だと思っているに違いない。
エドワードは、はぁ…とまたため息をついた。
どうやって謝ろうかと思案しているうちに、妹が帰ってきた。
なにか大きな包みを抱えている。

「あ、ただいま。兄さん」
「あ、ああ…その、さっきは…」
「はは、気にしないでよ。僕にも非があるんだし…、そうそう、散歩してたらね、兄さんの好きな」
「アル、ちゃんと聞いて欲しいんだ」
「でも…」
「いいから。…さっきは本当にごめん。いきなりだったから、驚いて、その、もうしないから」

話をそらそうとする妹を止め、頭を下げた。
謝る方法をいろいろ考えていたが、一番いいのは素直に一言「ごめんなさい」と言えばいいだけなのだ。
しかし、頭を下げて数秒、妹の反応がないので不安になってきていた。
もしかしたら、謝っても許してもらえないほど怒っているのだろうか。

「謝らなくてもいいよ。こっちこそごめんね。その、僕も気をつけるから。ね?だから、えーと、し、しないなんて無理しなくてもいいよ…」
妹の言葉に顔をあげると、恥ずかしそうにうつむいていた。
そんなふうにされたら、こっちまで恥ずかしくなってくるではないか。
それを必死に隠すように、エドワードは言った。

「うん、本当に悪かったよ。お前にも気を使わせちまって…。その、気持ちだけ受け取っておくよ」
「ね、僕ドーナツ買ってきたんだ。兄さん、好きでしょ?いっぱいあるから食べて!」
「あ、うん。美味しそうだな、どれどれ…」
「ドーナツだから、ミルクティーにしようか」
「サンキュ、これ美味いな…もぐもぐ」

散歩やドーナツは妹なりの気遣いだろう。

(今度からオナニーをするときは風呂に入るときだけにしよう…)

不甲斐ない兄ですまない、そう心の中で詫び、感謝しつつ、エドワードはドーナツを食べ始めた。






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