続いちゃった次回予告シリーズ1(予告)
>450氏
「うう、寒い…」
吐く息が白く淡く空気に溶けていく。
「兄さん、見て。霜がおりてる。道理で兄さんが寒いって連呼するはずだよ」
「あ〜、わかったから、アル、窓閉めろっ!せっかくストーブ焚いたのに暖まらないだろ」
窓を開け放ち冬の朝を堪能する妹を尻目に、エドワードは毛布を頭からかむりながらストーブのわきで手をこすり合わせていた。
いくらストーブを焚いたからといって、窓を開け放しているんじゃ意味がない。
妹であるアルフォンスはわけあって、人間が生まれながらにして持つ生身(しょうじん)ではなく、鋼鉄の鎧にその魂を宿しているので、熱さ・寒さ・食欲・睡眠など、本来人間に備わっている感覚や欲求が一部欠如してしまっている。
だから、今日のような霜が降りるほどの寒さでも平然としていられるのだ。
――普段は心の奥に留めているものが、ふとした事で引き出されるのは、正直に言って辛い。
エドワードは鬱々としてため息を漏らした。
そんなエドワードの様子に気がつかないのか、窓を閉めた後もアルフォンスは嬉々としてはしゃいでいる。
「兄さん、見て見て。鎧が結露しちゃってるよ!あははっ」
「ちゃんと綺麗に拭き取らないと、錆びるぞ」
「わかってるよ、も〜。僕だってウィンリィにレンチでへこまされたくないもん…って、兄さん、どうしたの?」
いきなりぴったりと身を寄せてきた兄に、アルフォンスは驚いて身を引いた。
「…別に。お前もこっちへこいよ。暖かいから、鎧についた水気も飛ぶし。一緒に鎧の手入れしよう」
にこりと笑顔を浮かべ、エドワードはアルフォンスから離れて言った。
ずっとお前の笑顔を見ていたい――。
しかし、そう思うエドワードの胸のうちには二つの想いが交錯する。
「兄としての自分」と「男としての自分」
「守りたいと想っている自分」と「壊したいと思っている自分」
共通するのはアルフォンスを愛しいと想うその心だけ。
「アルフォンス、俺は…」
次回 『 俺とお前と 』 ―― お前のために俺は在る。