森
>263氏
姉さんがみんなの前から姿を消してもう二年、そしてボクが生身の身体を取り戻してから二年が過ぎた。
ボクは扉の向こうからこの世界に戻って来た時に4年分の思い出を代価として差し出した。
その為、姉さんと共に旅をした時間全てがぽっかりとボクの中から抜け落ちたように消え去ってしまった。
10才までの記憶の中の姉さんは、口が悪くて、男の子みたいに乱暴で、痩せっぽちで胸も無くて、でも、ボクにとっては何者にも替え難い存在だった。
身体を取り戻してからしばらくはウィンリィやばっちゃんと一緒に暮らしていたけど、いつだって姉さんの事を忘れた事は無かった。夜、ベッドの中で思い出すのは柔らかな金色の髪の感触とボクの手を握る細い指先の感触。父さんは既にボク達の前から姿を消し、母さんは病でこの世を去って姉妹二人で生きて行く事を余儀無くされた時も姉さんは妹のボクが寂しがらないように励ましてくれた。本当は自分の方こそ辛かったに違い無いのに。
そんな姉さんを知る人たちを、ボクは尋ね歩く決意をした。師匠に投げ飛ばされながらも許しを得、まずはセントラルへと向かう。
そこには、姉さんがかつて愛した人がいるという事だった。中央指令部へと赴き、その人に面会を願い出る。しかし、そこにその人の姿は無く、代わりに彼の副官だと言う女性が現れた。
「あなたは…」
「初めまして…じゃないみたいですね。でも、ボクは残念ながら、あなたの事を覚えていないんです」
その女性はボクの姿を見て、誰なのか、すぐに分かったようだった。そして、あの方はまだ公務に復帰していないの、今はまだ自宅で療養中よ、と教えてくれた。
ボクがどうしても逢いたいと言うと、ちょっと待ってて、車で自宅まで送りましょうと言ってくれた。
そして、ボクはその人−ロイ・マスタングに対面した。彼もまた、ボクの金髪と金色の瞳を見てすぐにボクの事を理解したようだった。
応接間に通され、メイドの女性が出してくれた紅茶を前にボクは緊張していた。目の前にはかつての姉さんの恋人が座っている。心臓が破裂しそうな程に高鳴るのを感じながら、思いきって切り出した。
「マスタングさん。ボクは、僕の中から消えてしまった姉さんと旅した4年間を知りたいんです。あなたは、姉さんの恋人だったと聞きました」
マスタングさんはボクを見つめ、やがて語り始めた。
「ああ。初めてリゼンブールに君たちを訪ねて行った時、君はまだ鎧の姿で、エドは手足を失い、絶望の底にあった…」
彼の口からは、ボクが姉さんとどんな街へ旅したか、いかに妹のボクを愛していたかを話してくれた。
「私は、正直な所、彼女をずっと手元に置いておきたかったのだがね…」
あの子は君の身体を取り戻すんだと言い、賢者の石の手がかりがあるとどこへでも吹っ飛んで行ったものだ、と笑った。
「もちろん、君も一緒にね」
彼の、もう一つしか無い漆黒の瞳は優しく、そしてどこか遠くを見つめるように天を仰いだ。
「…姉さんの事を思い出すのは、辛いですか?」
ボクは思いきって聞いてみた。すると、彼は一瞬息をのみ、けれど次の瞬間、微笑んでこう答えた。
「まさか。…いや、この腕の中にいた彼女が今はもういないという事を理解するのにどれほどの時間を費やしただろう…。あんなにも、細く、小さく、だか強く、美しい彼女を。けれど、決して彼女と出会った事を後悔した事は無いし、もう会えないなどとは思わない。きっと戻ってくる。…私は、あきらめてなどいないのだよ」
そう言った。ああ、きっとこの人も、ボクと同じようにいつも姉さんを想っているのだと感じた。錬金術を学び続ける事で、きっとボクはまた姉さんに逢えると信じている。そして、この人も錬金術師であり続け、そして軍人であり続けることで姉さんに少しでも近づこうとしているのだ。
やがて、彼は立ち上がり、もう帰りなさいと、優しく言った。でもボクはもっと姉さんの話を聞いていたくて、その場で口籠って立ちすくんでしまった。
すると、マスタングさんは。ボクの傍に立ち、肩に触れ、やがてボクを抱き締めた。
「すまないっ…少しだけで…いい…こうしていてくれないか…」
ああ、と彼の口から熱く吐息を首筋に感じ、彼の指先がボクの髪をかき回した。この人がボクの中に姉さんを見つけようとしているのは明白だった。
姉さんは自らを代価に、ボクを練成してくれた。きっとボクの身体の中のどこかには姉さんの魂が、記憶がある。
ならば、と、ボクはマスタングさんに囁いた。
「ボクを…姉さんと同じように、抱いて下さい」
彼の息を飲む気配が感じられた。バカな事を言うんじゃ無い、まだ子供じゃないかと一度はたしなめられたが、
「あなたが初めて姉さんを抱いたのはいつ?きっと今のボクとそう変わらないんじゃないのかしら。それにもう…」
ボクは大人の身体になったんです。そう言うと、諦めたのか、困ったような顔をして、後悔しないね?と聞いて来たから、ボクははい、と返事をして、そして彼にくちづけた。
それから−ボクは寝室へと連れて行かれた。ベッドに腰掛けるように言われ、そうすると、隣に座った彼はボクの肩を抱き寄せ、唇を重ねて来た。
「はぁっ…んふっ」
情熱的に差し込まれた舌はボクの舌と絡まりあい、歯の裏側や上顎の内側をちろちろと刺激してきた。初めての官能的なキスを受けて、ボクは自然と沸き上がる吐息と声を押さえる事が出来なかった。
そのうち、彼の大きな手が胸元のシャツのボタンを外し、この間付け始めたばかりのブラジャーを上にずらしはじめた。やがて、ほんのわずかに膨らみ始めた胸が現れたので、ボクは恥ずかしくなって身をよじった。
「やだ…み…ないで…」
「恥ずかしがることはない。とても美しい…」
そう言われて余計に恥ずかしくなったので顔を手で被ったら、丸見えになった胸に吸い付かれてしまった。
「あっ、だ…めぇっ」
一番敏感な先端を唇で銜えられ、舌先で刺激されると、ボクは思わず叫んでしまった。背筋をぞくぞくという感覚が駆け抜ける。銜えられた乳首はどんどん堅さを増すのが分かり、余計に恥ずかしさで身体が熱く火照った。
マスタングさんは片方の乳房を吸いながら左手ではもう一方の乳首を指先でこね回してる。やがてぞくぞくという感覚ははだんだんと下腹部へと下がって行き、ボクは堪らず太ももをもじもじと擦りあわせるような仕種をしてしまった。
ああ、なんだか…あの部分が熱くなってる…。彼の右手がウエストから腰を伝い、やがてその部分に到達した。
「ああ…もう濡れている…。感じやすいんだね」
「やっあっ…あんん…」
そう言われて、またあの部分からなにかがじわり、と湧き出るのを感じた。