02話 再会した美人監督
皆様、私は幼馴染との涙の再会を迎えて、その幼馴染に無理やりマネージャーと言うお仕事を強制的に命じられた可哀想な乙女。 です。
いつもならば、友達と喋りながら帰ってる時間なのに、今は見事にこの数週間でサッカー部を作りあげた私の幼馴染である椎名翼と仲良くなった四人組の問題児と私はなぜか校門の前で立っています。
「ねぇ、翼。いつまで私はここで待っていればいいの?」
「もうちょっとだから、大人しくしてろ」
と、言うが…すでに30分程こうして立ってるんですけど。なんて文句も言えるはずもないが、 校舎の時計をちらりと見た私は、意を決して恐る恐ると翼に言いよる。
「ね、ねぇ、翼…」
「なんだよ」
「あのね。私、そろそろ帰らないと…」
「は?なんか用でもあるわけ?」
「うん。“覆面怪盗!セロ”のアニメ再放送が…」
「却下」
「むごい!!」
「そんな馬鹿な番組見てる暇あるなら、勉強しろよ」
あまりにも現実的なお言葉で返す言葉すら見当たらない…。 でも、仕方ないじゃないか。 なんて言ったって…セロがめちゃくちゃ格好良いんだから!! 青いマントを翻し、虎柄の覆面を剥ぎ取ると、その覆面の下はブロンズ髪で美形の王子様! 悪を憎み、正義を愛す!覆面怪盗セロ!人気の番組なんだぞ!
セロを馬鹿にされて許せない私は、いつこいつを殴りつけてやろうかと拳を握るも、 そんな勇気などなく、深呼吸をして言いたい言葉を飲み込み、くるりと後ろを振り返り、四人に尋ねた。
「ねぇ。何があるの?」
「さぁ、俺らも聞いてねーけど」
柾輝とそんな話をしていると、バイクの音が近くなるのを感じて、思わず私達はそちらに耳を傾けた。
「遅いよ、玲!」
翼の声に反応した私達はその声が向けられた人の方を見る。あれは、まさか…。私は目を細めてバイクに乗った人影をとらえる。
「あ、玲さん?!」
私が幼い時に翼の家で出会った人だ。 ショートカットでスタイルも良くてだれもが憧れてしまう容姿をしたとっても綺麗な大人の女性だ。
「じゃない!翼から聞いてはいたけど、久しぶりね」
ヘルメットを外してにっこりと私に笑いかける。
「どうして玲さんここにいるんですか?」
「翼が面白い事言うもんだから頼まれてみようと思ったのよ」
「面白い事?」
「玲にサッカー部の監督をお願いしたんだよ」
「へー…って、まさか翼それで私にマネージャーやらせたの?」
「そう。お前、昔、玲の手伝いしてたことあるし、お前が相手なら玲もこき使いやすいだろうしな」
やっぱりそういうことかー…。玲さんは、こう見えて意外と意地悪で人使い荒いのだ。 いやだー!と頭を抱えているに対して、玲はくすりと笑った後、小さな声で翼に耳打ちをする。
「相変わらず繋ぎとめるのに苦労してるみたいね、翼」
「玲!」
「安心しなさい。には言わないわよ」
あからさまに玲さんは面白そうに翼と話していた。何故かそんな翼と私は、パチッと互いに目が合う。
「なに?」
「…別に」
翼は、ふいッと私から顔をそらす。おいおい、急に素っ気ないな。それはないだろ。と私が思っていると、ツンツンと背中を指で誰かにつつかれる。
「ん?」
「おい!!あれは一体、誰や?!」
その犯人は直樹だったらしく、こっそりと耳打ちで私に尋ねてきた。
「ぁあ、西園寺玲さん。翼と、はとこなんだって」
元プロの女子サッカーの選手だった人だ。サッカーの腕だって、かなりの凄いって翼が言ってた気がする。 私が知っている玲さんのことを軽く皆に話すと、うんうんと四人は頷いた。
「へー、元サッカー選手なぁ」
六助が感嘆の声が漏れるのに対し、「あの人が監督すんのか?」と疑問を持たざるを得ないの五助。
「そう言ってるぜ」
柾輝はあまり気にしていないみたいだが、まぁ、それぞれ当たり前の反応だろう。
「相変わらず、綺麗で羨ましいなぁ」
と私がのん気にそう答えると…皆が一斉にこちらを見た。
「「そういう問題じゃないだろ!」」
「え?なに?」
一斉に集まる視線と抗議の声に思わず私は体を後ろに逸らす。
「ええか。、今は綺麗とか言ってる場合やないねん!俺らはサッカーが上手い人に教わらなアカンねん!」
「でも、玲さん上手いから大丈夫だと…」
「女やのにか?それと。俺はどっちかっていうと綺麗より可愛いの方がタイプなんや」
「話ずれてるっつーの」
そう言いながら、柾輝は呆れたようにため息をついた。
「何いうてんねん!重要なポイントや!」
ここから、どうでもいい直樹の力説が長々と始まった。心底、どうでもいい!私達はそんな直樹を無視して、玲さんと翼が話しているのに目を止める。 しかし、まさか玲さんが来るとは思いもしなかった…。なぜか私は、はぁ~とため息が出ると、そんな私の様子をじっと見る柾輝と目が合った。
「…どうかしたか??」
「え?」
「いや、なんか、らしくねーなって…。なんかあんのか?」
「別になんでもな…あ。“覆面怪盗!セロ”の再放送が間に合わなかった…」
「お前に聞いた俺が馬鹿だった」
おい。なんか、最近私の扱い酷くないか?!
しかし、私がこんな事を言っている間にも話はどんどん進んでいく。
「ま、そう言うわけだから。明日から、本格的に始めるぞ」
どこか玲さんに疑問が残っている四人に対して、また明日、自分の実力を証明すると言ってのけた玲さん。 その姿に息を飲む四人だったが、正直、私はなんの心配もしていない。だってあの翼が何にも心配している素振りを見せていないから。
「(あの翼のことだ…。きっと今の状況も想定済みなんだろうな)」
翼が粗方明日の説明を四人にしている時に、玲さんが私に喋りかけた。
「、相変わらず元気そうね」
「元気ですよー」
「貴女が変わっていなくて安心したわ」
「同じようなことを翼にも言われましたけど、まぁ…私は私ですから」
「ふふ、そうね。良かったわ」
「はぁ…。良かった、ですか?」
「ええ。とってもね」
綺麗に微笑む玲さん。一体何がそんなに良かったというのだろうか…。 私が成長してないのがそんなにいいのか?と心の中で思考を巡らせながらも、 翼といい、玲さんといい…天才の考えることなんて分かるわけもなく、私は考えるのをやめた。
「それじゃあ、これから頑張ってもらうわよ。精一杯、働いてもらうつもりだから」
「ほ、ほどほどでお願いします…」
監督に言われてしまっては、もうこれで逃げることはできない。いよいよ私がサッカー部のマネージャーをやるということが正式なものとなってきていた。 だが、“やる”っていうより“やらされる”の方が正しい言い方の気もするが…。
「心配しなくてもあなたなら大丈夫よ。タフだから」
「それどういう意味ですか!」
「あら、そのままの意味よ。楽しみね。」
「あ、玲さーん!」
楽しげに笑う玲さんを前にしては、もはや勝てる気がしない…。
この際、白馬に乗った素敵な王子様じゃなくて、おじいちゃんでもいいです。
誰でも良いから平穏な毎日を返してー!
一体、これからどうなるんだろう?
「翼の奴、マジでに仕事されるつもりだったんだな」
の様子を見ていた五助がぼそりと呟いた。
「俺も冗談やと思ってたわ」
「まぁ別に良いけどな」
「ああ。俺たちに被害が来なけりゃな」
一人のマネージャーの姿を見て、深くため息を吐く四人。誰が見ても不安は、積もるばかり…。
あとがき
大幅に修正をきかせてリスタートです。 本筋は変わらない…はず(笑)