以前とは打って変ったテキパキした動作でその日の仕事を締めくくると、
泉こずえはあおいを誘って人のいないフロアへ出た。
安らぎをもたらすようにと配置された緑の傍に腰掛ける。
「何・・?こずえ」
抱き合って抱擁したといっても以前と変わらず、とはいえない。
普段の歯切れの良い口調は僅かに形を変え、あおいの口から零れる。
「う〜ん・・そうだね。あおいちゃん、どうしたのかと思って」
微妙なニュアンスにあおいが窺うと、並んで座っているこずえは正面を見ている。
あおいは手元に視線を落とした。
「私?」
「うん」
やっと、こずえはあおいの方を向いた。
笑っている。
やさしい顔。
あおいの顔も自然に綻ぶ。
「昴治の事?」
「うん」
気遣ってくれてるこずえの様子に、あおいはこそばゆくてう〜んと伸びをした。
「昴治ね、私には生きてて欲しいんだって」
伝えたい事があると、無理をおしてリフト艦へ向かった。
昴治と一緒ならどこにだって行ったのに、昴治は傷つかないよう私を閉じ込めた。
「昴治はさ、尾瀬の為に死ねると思うんだ。」
昴治にとって尾瀬に伝えたい事は生き残る事より大切だった。
「よく知らないけどブルーの為にだってしてあげると思う。」
尾瀬に見限られても昴治はブルーを匿ったらしいと人伝に聞いた。
でも。
目を伏せたあおいの脳裏に地球での出来事が思い出される。
呆然と泣いてた祐希。
抱き付かれて驚いてた昴治。
【死んだらどーすんだよ!迷惑かけんなよ、クソ兄貴】
叫んだ祐希の言葉に昴治は・・・。
「でもね、祐希とは生きてくんだって。祐希とは一緒に生きてくんだってさ」
あおいは顔を上げた。
「私が欲しいのは"私の為の昴治"じゃないの。私が傍にいて欲しいのは私と一緒に生きてくれる人なの」
満足そうにあおいは笑った。
「そうだね」
こずえも優しい顔で笑う。と、急に口調を変えた。
「でもね、イクミなら何が何でも昴治君を生かすと思うよ。何を犠牲にしてもね」
かつての口調で力説するこずえを、強いと思う。
可愛いと思う。
あおいはその優しさに便乗する。
「それをいうなら祐希だってそうよ」
あのブラコン。
「え〜、イクミの方がぁ、昴治君幸せにするよ。弟君じゃ泣かしちゃうよ」
「泣かす倍以上幸せにするわよ」
それ以前に、きっと私や他の昴治フリークが黙ってないだろうが。
そのフリークの筆頭が尾瀬だけど。
胸の内に呟いて、あおいは楽しそうに眼を細めた。
「あら、ブルーだって相葉君を大切に思ってるわよ」
思わぬ声が背後からかかり、あおいとこずえは振り返った。
「ユィリィ!?」
ぎょっとして立ち上がった二人は顔を見合わせた。
「あら、私だってこの手の会話はするわよ」
もっとも最近の話だけど。
ユィリィは独りごちて左手のリングをそっと見た。
「あの、ユィリィ・・でも、ブルーって」
リヴァイアスから救助される時の二人の様子に、あおいはユィリィへ指輪を送ったのはブルーだと思っている。
今も。
あおいの様子にユィリィは微笑んだ。
「彼のこと、好きよ。たぶん、すごく近いところで私達は触れ合えたと思う。それを言葉の壁が邪魔して遠回りしちゃったけど。彼に逢えて良かった。ブルーは私の中に可能性を広げてくれた。ただ、彼の翼は大きくてもっともっと広く宇宙を飛べるのよ。無理して付いて行けばお互い気遣って、気詰まりを起こしてしまう」
ちょっと目を伏せて、でもすぐユィリィは顔をあげた。
もっと鮮やかに微笑んで。
「お互いがもっと大きくなって、縁があればまた逢えるわ。きっと」
それからユィリィはあおい達に近づくと顔を寄せた。
「で、私はブルーに一票入れます。ブルーの器は大きいから、相葉君を絶対幸せにしてくれるわよ」
「あのね、ユィリィ・・」
「え〜、それでいいのぉ?」
呆れたようなセリフが同時に飛び出し、顔を付き合わせると3人は噴出した。
「イクミよ、イクミぃ!イクミのフォローが絶対」
ますますハイテンションになっていく3人。人通りが少ないのではなく、もはや人が引き返してしまう状況。
「私が譲ったんだからずぇーたい祐希。ずっと一緒に生きてくの」
「相葉君にはブルーの支えが一番必要です」
「それより、お嬢様たち、自分達の幸せを追求したほうがいいのでは?」
「カレン!?」
軽いステップを踏みながら、気後れせずに近づいてきた人物はカレン・ルシオラ。
先程の発言を思い出したあおいのきまずそうな表情に、笑いかける。
「私なら大丈夫。祐希が全てだから、祐希がしたいようにしてくれるのが一番。痛いけどね」
そうだなぁ、悔しくなったら意地悪するかも
「祐希にね」
ウィンクするとカレンは大きく手を上げた。
「は〜い。私も祐希に一票」
新たな参入者に論戦は白熱する。
たとえ相手の同じ気持ちを返してもらえなくても、恋することは出来る。
幸せになる道はある。
命短し恋せよ乙女!


男の子も負けるな

さて、人通りの少ないところといえば、鬱陶しい事が嫌いなブルーや祐希の縄張りである。
「好き勝手言いやがって、誰が泣かす、だ」
「お前だろう」
偶然別のところから通りがかった祐希とブルー。
最初は其々聞くともなしに聞いていたが、やがて違うルートから現れた参加者達によって居場所を移動するうちにいつしか隣り合わせのこの状態。
未だ身長は及ばずの祐希がブルーを睨み上げればかち合った眼に、先程の其々に対する意見が思い出され、気まずく顔をそらす。
「だいたい、男に対して泣くっていうのはなんだよ」
祐希の言葉にブルーも同感らしく、複雑そうな顔で腕を組んでいる。
「言っておくが、兄貴は誰にも渡さないからな」
決意を秘めた低い声に今度はブルーが見下ろした。
一瞬、視線が絡まるとブルーは口端だけで嘲笑って、踵を返した。
祐希も拳を握りはしたが、見つかった時の面倒を思いブルーと反対に足を向ける。
『尾瀬は・・兄貴の本当を聞くのが怖いくせに!聞き分けのいい振りなんざクソ喰らえだ。ブルーは・・わかんねぇが』
どちらにせよ、問題は昴治の気持ちだ。
『きっとあおいをまだ好きだろうし・・まさか、ファイナとか・・』
祐希は足を止めると、頭をかきむしった。

前向きな女の子達の想いよりも、未だ男の子達は繊細で複雑で臆病らしかった。




††御礼††
あおいちゃん、こずえちゃんが
かわいーよぅvv
フフ…
このあおいちゃんとこずえちゃん
三人トリオ応援してますねぇv
ワシのと一緒ですv(…何がけ?)

FROM 八甲田吹雪
いいですねぇ〜〜vv
女の子がいると華やかになりますねv
総出であらぬ(なくもないか/笑)
妄想に耽る女の子達に
シンクロ率100%中の100%(古)!
絶対さくら、さくらフォントだ!と思い
今度は背景作ってしまいました。
七月さまに捧げますです!!
ありがとうございました!!
FROM 望月シオン
 



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