むくりと体を起こして、プラチナは一つ息をついた。
部屋は明かりもなく暗い。窓の外も。
まあ、それも当然ではある。だって、今は真夜中なのだから。
大きなため息をついて、恨めしげに真っ暗な空間を見つめる。
普段なら、ベッドに入ればとたん眠りにつくことができるのに、
今日に限ってプラチナはどうしても眠ることができなかった。
人によってはちょくちょく起こるらしいけれど、
プラチナにとっては非常に慣れないことなので、どうしたらいいのか全くわからない。
どうしたものかと思案して、プラチナはふと顔を上げた。
そうだ、兄上なら何か知っているかもしれない。
そろりとベッドを抜け出して、プラチナは静かに廊下に出た。
アレクなら知っているのではないかとそう思った理由は……特にはない。
ただアレクは眠りに関して自分より普通の感覚を持っているので、
眠れなくなったこともあるのではないかと思ったのだ。
本当はたぶんジェイドのところへでも行くのがいちばん手っ取り早いと思うのだが、
いらぬ心配を掛けたくないと思うのもあるし、
それ以上にこれをネタに後々からかわれる可能性を考えて早々にその案を却下した。
アレクの部屋はすぐ隣。
プラチナはコンコンとアレクの部屋のドアをノックした。
「兄上。」
「…。」
返事がない。
プラチナはもう一度、少し強めにドアを叩く。
と、中からバタバタと慌しい音がして、ようやくドアが開いた。
「だ、誰?あれ、プラチナ?」
慌てて顔を出したアレクは、そこにプラチナがいるのを見て目をぱちくりさせている。
「どうしたの、プラチナ。」
「夜中にすまない…。その…眠れないんだがどうしたらいいだろう。」
「……プラチナが?」
一瞬間があった後そう聞き返したアレクに、プラチナはこくりと頷いた。
「ふうん…。」
アレクはプラチナを見上げ、意味ありげに腕を組んで息をつく。
そして、
「だったらさ…いいところに連れてってあげる。」
にっこり微笑んだアレクに、プラチナは一瞬ためらったものの再びこくりと頷いた。
「サフィ?いる…?」
コンコンとドアを叩いて、アレクがドアの中に呼びかけた。
プラチナは何もいえなくて、ただ黙ってアレクの後ろに立っていた。
「いいところ」と言ってアレクがつれてきてくれた場所を、プラチナも知っていた。
アレクの参謀である、サフィルスの部屋だ。
そう、確かに知ってはいる。城の中だから一応場所くらいは。…但し入ったことはない。
「いないのかなあ…?サフィー?」
コンコン、とドアを叩く音が大きくなる。
『…アレク様?』
ドア越しに声が聞こえた。
「あ、よかった。俺だよ!」
『ち…ちょっと待ってくださいね。』
軽い足音に、かさかさという紙の音がまじる。
それが止むと、慌てたようにドアが開いた。
「すみません、お待たせしました。…あ、プラチナ様もご一緒で…どうなされたんですか?」
夜着の上に肩掛けをしただけの姿で顔を出したサフィルスは、
アレクだけでなくプラチナもいることに驚いているようだった。
「ごめんね、起こしちゃって。」
「いえ、まだ寝ていませんでしたし…構いませんよ。」
とにかく中へと二人を促して、サフィルスは通りやすいようドアの横に立った。
アレクはひょいと部屋に入ると、慣れた様子でソファに座る。
「プラチナ様も、どうぞ。」
笑顔で促され、ためらいながらプラチナも部屋に足を踏み入れた。
数歩歩いてすとんとアレクの隣りに腰を下ろす。
それを確認してから、サフィルスはドアを閉め彼らの傍へと戻ってくる。
「どうなされたんですか、アレク様。」
アレクの曲がったナイトキャップをさりげなく直しながら、サフィルスが再度尋ねた。
「うん…なんか、眠れなくてさ。」
誰がとは言わず、アレクはそれだけを言う。
それを聞いたサフィルスはぱちくりと瞬きした後、アレクとプラチナを交互に見てふふっと笑った。
普通顔を見て笑われるなんて気分の悪いものなのだが、
その青い瞳があまりに優しい色をしていたので、プラチナは少し照れたような気持ちになった。
たぶん、わかったのだろう。眠れないのがアレクではなく自分だということが。
いくらぽよよんとしていても参謀になるくらいなのだから、見ればそれくらいの察しはつくはずだ。
「そうですか。」
「サフィ?」
「いえ、そういうことでしたらお茶でもおいれしますよ。」
まだやわらかく微笑んだままで、サフィルスはつとそこを離れ部屋の隅へと向かった。
そういえば、サフィルスは茶を煎れるのが上手だと誰かが言っていたっけ。
そして、それは本人の趣味でもあるらしく、
彼が向かった先にある棚を開けるとたくさんの茶葉を入れたビンが整然と並んでいるのが見えた。
そこから一つを取り出して、慣れた手つきでお茶を煎れはじめる。
それを横目で見て、プラチナは改めて部屋の中を見回した。
部屋の中は特に飾り気もなく、殺風景とまでは行かないがずいぶんと簡素な印象だった。
全体的に落ち着いた色合いでまとめられた部屋。
それはほどよく掃除の行き届いた清潔感があってなかなか心地がいい。
初めて足を踏み入れた部屋の様子をしげしげと眺めていると、すぐ横から声が掛かる。
「そういえばプラチナ、サフィの部屋に来るの初めてだったよね。」
弾んだアレクの声。
そうだと答えると、
「居心地、悪いですか?」
すっとカップをテーブルに置きながらサフィルスが問う。
あまりきょろきょろしていたから、落ち着かないのだとでも思ったのだろう。
「いや…。居心地は…いい。ただ…。」
「ただ?」
アレクとサフィルスの声が重なる。プラチナはふと口元に笑みを浮かべた。
「縞が…ないな、と…。」
「あ、あははっ…。」
思わず困った笑みを浮かべたサフィルスに、アレクがお茶を啜ってにやりと笑った。
「ほら、だから言ったじゃないか。」
「そんなに嬉しそうに言わないで下さいよ…。」
「?」
サフィルスがトホホと肩を落とすのを見て、またアレクが笑う。
プラチナが首を傾げると、アレクが得意げに言った。
「そんな服着てるから、みんなサフィ=縞だって思ってるよって。」
「…そう、だな。そう思っていた。」
プラチナが素直に答えると、サフィルスはさらに肩を落とし、アレクがほら見ろと笑った。
「ううう…これはまた考えないといけませんね…。」
「これでもよくなったんだよ、プラチナ。前はさ、ほんとに何でも縞だったんだから!」
「でも、好きなんですよ。しましま。」
「それにしたって、限度ってもんがあるだろ!」
まったく、とアレクが大仰にため息をつく。
「俺とジェイドで散々言って、やっとここまでになったんだから。」
「そうなのか。」
「そうだよ!まったく世話がやけるんだから。」
「あ、アレク様〜…。」
サフィルスが情けない声をあげた。
「ひどいです…。」
よよよと崩れ落ちてしまったサフィルスに、アレクが呆れてよしよしと頭をなでた。
そんな二人を見ながら、プラチナは冷めはじめてしまったお茶に手を伸ばす。
口をつけると、ふわりと立ち上る紅茶の香りのなか、かすかに酒の匂いがした。
「酒が入っているのか?」
カップを手にしたまま、顔を上げて尋ねる。
「ええ。ほんの少しですけどね。あまり沢山飲むのはよくないですけど、少しなら酒だって薬になるのですよ。」
立ち直ったのか、そう言って微笑むサフィルスにそうかと答えて、プラチナは再びお茶を啜った。
確かに、なんだか体の芯がポカポカしてくる。
「だから、大人は酒を飲むのか?」
「…そうかもしれませんね。適度の酔いなら気持ちよく眠れますから。」
でも、貴方たちはまだだめですよ!と、サフィルスは意外にしっかり釘をさす。
そこはさすがに世話役なだけはあると、プラチナは妙なところで感心していた。
今度眠れなくなったら酒を飲んでみようかと、ちょっとだけ思ったところだったので。
「大人だって、飲みすぎれば害になります。我を忘れて周りに迷惑を掛けることにもなりますからね。」
「な〜んか、サフィに言われても説得力ないけど。」
「アレク様ぁ〜…。」
にやにや笑いながら話の腰を折るアレクに、サフィルスがまた情けない声を上げる。
でも、それはプラチナも知っていた。
ついこの間の宴の時に、酔って酒の飲み比べを持ちかけてきた兵士がいたのだが、
その相手をしたのがサフィルスだった。
彼では無理だと思い、止めさせるようアレクやジェイドに言ったのだが、
二人とも「いいからいいから」と言ってまったく止めようともしない。
それどころか、他の部下達も彼らを煽り、ベリルなど自ら進んで二人の杯に酌をしている。
後でどうなっても知らないぞと思い見ていたのだが、
どれだけ杯を重ねても、サフィルスは一向に酔いつぶれるような様子はなかった。
少し顔が火照っているように見えたが、それ以外は全く普通。
下品な冗談に「王の御前です。慎んでください」と注意する余裕まで見せていた。
やがて兵士が酔いつぶれ降参をすると、今度はベリルやルビイと祝杯を上げている。
呆れ顔のプラチナにアレクは「だから大丈夫だって言ったろ?」と笑い、
ジェイドは「あいつはうわばみですよ。もしくは縁しかないザルです。」とちょっとげんなりした様子で言った。
たぶん、見ていて胸焼けでもしたのだろう。
「…まあ、酒が強いということもとりえの一つだろう。」
当時そこに続いたジェイドの言葉を反芻して、プラチナは顔を上げた。
「はあ…。ありがとうございます。」
複雑な表情で、サフィルスが礼を言う。それを見て笑ったアレクがそのまま大きなあくびをした。
「おや、眠くなりましたか?」
「うん、ちょっとね。」
言って、アレクはチラリとプラチナを見る。
アレクはもともと眠れない状態ではなかったから、体が温まって相当眠気を催しているのだろう。
かくいう自分も、少しうとうとして今なら眠れるような気がした。
「そうだな、俺も眠いような気がする。」
ふうと息をついて言うと、アレクが笑った。
「そうですか。では部屋へお戻りになりますか?それとも、ここでお休みになりますか?」
心得た様子で、サフィルスは二人に尋ねる。
ここで、とためらいなく言われた言葉に、
プラチナはアレクが以前にもここで眠ったことがあるのだということに気が付いた。
いつまで子供だと思っているのだろうか。
王となったのに、少し甘いと思う。アレクもサフィルスも。
でも不思議と嫌悪感はなかった。
「ここで寝てもいいの?」
アレクはサフィルスの言葉に目を輝かせる。
「ええ、外は寒いですから戻るまでにまた眠気が覚めてしまうかもしれませんし…。
ここでよろしければですけど。」
苦笑するサフィルスに、アレクはわーいと手を上げて喜んで見せた。
「サフィの傍だったら、俺ぐっすり眠れそうだよ。」
「…ありがとうございます。」
ぴょんと立ち上がり、甘えるように抱き着くアレク。
それを優しく抱きとめるサフィルスの笑顔が、プラチナにはいまにも泣き出しそうに見えた。
と、アレクがくるりと振り返って。
「プラチナ。プラチナも一緒に寝るでしょ?」
さも当然といわんばかりに掛けられた言葉に、プラチナはぽかんと口を開けた。
「兄上…。俺は部屋に戻ろうと思うのだが。」
「ええーー!いいじゃん、一緒に寝ようよ!」
アレクは不満げにプラチナの腕を掴んで、ぶんぶん振った。
「しかし…。」
いくらアレクにとって気の置けない近従の部屋とはいえ、
やはり自分としてはまだだいぶ気を使う。
それに、一晩中いられたら誰だって迷惑に決まっている。
ベッドだって、見る限り一台しかないのだし。
だから、やっぱり自分は戻った方がいい。…ちょっと名残惜しい気もするけれど。
「いいんですよ、プラチナ様。」
と、部屋の主の声でプラチナは顔を上げた。
「私は…こうしてちょっとしたことでも頼りにしていただけるのが、とても嬉しいんです。
だから、貴方がもしここで休むと仰ってくださったら、もっと嬉しいんですけど。」
あの泣きそうな笑顔のままで言われて、プラチナはなんだか断わることができなくなってしまった。
「わかった。一晩世話になる。」
「はい。」
本当に嬉しそうなサフィルスを見て、まあこういうのもたまにはいいだろうと思うことにした。
「どうぞ。」
毛布をめくって、二人を促す。
真っ先に飛び込んだアレクに続いて、プラチナは静かにベッドに上がった。
二人が横になると、サフィルスはそっと毛布をかけ一度傍を離れた。
ベッドはアレクとプラチナと二人が寝るともういっぱいで、もう一人なんて入る余裕はない。
どうするのだろうと思い見ていると、彼は本棚から1冊の本を手にとって戻って来た。
「アレク様、覚えてますか?」
「あ!覚えてるよ〜!懐かしいね!」
サフィルスがチラリと本を見せる。アレクはそれが何かすぐわかったらしく嬉しそうに答えた。
しかし、プラチナはわからない。
不思議そうな顔で見ていると、サフィルスは表題が見えるようにその本を体の前に持ってきた。
一度見た後、もう一度確認するようにゆっくりと文字を目で追う。
そこには間違いなく「よい子の童話集」と書かれてあった。
「…。」
返す言葉もなくただそれを呆然と見ていると、サフィルスが「あれ?」と眉を寄せた。
「プラチナ様は…お嫌いでしたか、こういうの?」
「いや、そういうことではないのだが…。」
なんと言ったものかと思案していると、アレクがおかしそうに横から口を出した。
「プラチナ、童話なんて読んでもらったことないんでしょ。」
「そうだな。ない。」
だって、考えてもみて欲しい。
どう考えてもあのジェイドが、童話の読み聞かせなどするわけがない。
プラチナ自身も子供だましのつくり話に対した興味はもてなかったし、
大体いつもベッドに入ればすぐ眠りにつけるのだから、読んでもらうような暇もないのだ。
「まあ、話は確かに子供っぽいけどさ、読んでもらってるとなんか気持ちよくてさ、
いつのまにかすーっと寝ちゃうんだよね。」
アレクはこれから眠るのだとは思えないようなはしゃぎっぷりだ。
サフィルスはサフィルスで、枕もとにイスを寄せどの話を読もうかなどとページをめくっている。
人に読ませておいて途中で寝るなんてやっぱり失礼なのではないかという気もしたが、
あまり深く考えるとまた眠れなくなりそうだったので、
プラチナはまあそういうものなのだろうと納得することにした。
「じゃあ、今日は冬の妖精の話にしましょうか。」
「うん。」
「…。」
「では、読みますね。…むかし、あるところに一人の少年がおりました…。」
それは大概どこにでもありふれたような話で。
プラチナは早々に内容を聞き取るのを止め、目を閉じて途切れることなく流れるサフィルスの声と、
時々あいずちをうつアレクの声に耳をかたむけていた。
すると、なんだか体がふわりと浮かぶような感覚がして。
やわらかい眠りが、ゆっくりと自分を包んでいくのがわかった。
ああ、そうだ。
夢うつつのまどろみの中で、穏やかに続く人の声のなんと心地良いことか。
これは気持ちよく眠れることだと思っていると、
すでに隣りのアレクからはすやすやと穏やかな寝息が漏れている。
もしかして、アレクはちょくちょくこうして読んでもらっていたのだろうか。
だとしたら少し羨ましいかもしれないと、プラチナは思った。
しばらくそうしてその声を聞いていると、
やがて二人の様子を確認したサフィルスが、そっと本を読むのを止めた。
あたりがしんと静かになって、少し名残惜しい気持ちが浮かぶ。
「おやすみなさい。アレク様、プラチナ様。」
毛布を直しながらそっと囁かれた声に、プラチナは今にも眠りに落ちそうな意識を少しだけ押し留めた。
「おい…。」
「あ。眠れませんでしたか?もう少し読みますか?」
「いい…。おまえ…。」
「なんでしょう?」
そっと髪をなでるサフィルスに、どうにか言う。
「あまり、兄上を甘やかしすぎるな…。」
「はい、気をつけます。」
「あと…ジェイドにあまりきつくあたらないでやってくれ。あれでも根は割といい奴だ…。」
「ええ。わかっていますよ。」
「それから…。」
プラチナの言葉にサフィルスは一つ一つ頷いて返す。
そして一度ゆっくりと呼吸してから、プラチナは言った。
「仕事を…部屋に持ち込むな…。」
そのまま、すうっと眠りに入ってしまったプラチナを、サフィルスは軽い驚きとともに見ていた。
「…どうして、わかっちゃったんでしょうね。」
ふうと息をついて、机上の書類に目をやる。
実はアレク達が入ってくる前まで、サフィルスはそれらの書類に向き合っていた。
特に急ぎというわけでもない。
しかし、自分がそれを早めにまとめておけば後々アレクが楽だろうと思い、
部屋に持ち帰ってやっていたのだった。
こんな夜中に尋ねてくるなんて思っていなくて少々散らかしていたものだから、
書類をまとめ気を使わせないよう見えないところにしまうのにちょっと手間取ってしまったのだ。
「…お気遣いありがとうございます。プラチナ様。」
ベッドに流れる銀色の髪にそっとささやいて、サフィルスは椅子から立ち上がった。
「さて…。」
本を棚に戻し、ぐるっと部屋を見渡す。
「今日はどこで寝ましょうかねぇ。」
苦笑して、なんて幸せな悩みなんだろうとサフィルスは思った。
翌朝。
「まったく…どこに行ってしまったんでしょうかね…。」
ブツブツと文句を言いながら、ジェイドは廊下を早足に歩いていた。
朝、いつものようにプラチナを起こしに部屋に行ったら、そこにプラチナがいなかったのだ。
アレクの部屋にでも行っているのかと思いそこへも行ってみたのだが、プラチナどころかアレクまでいない。
朝食の時間があるから、そのうち戻るだろうなんて悠長に構えている暇もない。
そこで自分だけで探すのは癪に触ると、ジェイドは腐れ縁の同僚の部屋へ向かっていた。
大体彼はアレクの世話係なのだから、彼にも探す責任がある。
「サフィルス!」
目的の部屋につきドンドンと遠慮なしにドアを叩く。
しかし、しんとした部屋から返事はない。
「おい、サフィルス!」
再び叩くが全く反応は返ってこなかった。
「まったく…のんきに寝やがって。」
イライラと言葉を尖らせながら、ジェイドはドアのノブに手を掛けた。
「開けるぞ!おい、起きろ!サフィル……。」
「しー…。」
乱暴にドアを開けて中へ踏み込んで、ジェイドはその光景に思わずあっけに取られた。
奥のベッドには毛布もなければ寝ているものもいない。
その代わり、暖炉の前に敷かれた毛足の長いラグマットの上に横たわる人影があった。
それは長年一緒にいる同僚の男と、それに両側から抱きついて眠っている双子の王達。
毛布やいつも彼が着ているマントや部屋で使用している肩掛けなどが
ごちゃごちゃになって彼らにまとわりついている。
そんな中で同僚だけは起きていて、人差し指を口に当てジェイドに静かにしろと伝えてきた。
「…。」
彼らを見下ろし、一応足音に気をつけて傍による。
「おはようございます、ジェイド。」
「…どうなってるんだ、これは?」
挨拶に返事はせず、呆れたように息を吐いてジェイドが尋ねる。
「ええと…話すと長いというか…私にもよく分からないんですが…。」
サフィルスは両側から抱きつかれているせいでうまく身動きがとれず、
長い前髪が下に流れて両目が見えている。
二つの青い瞳を優しげに細めて、サフィルスは二人の王達を見た。
「なんだか…起こすのが忍びなくて。」
本当に気持ちよさそうにすやすやと息を立てる二人に、ジェイドも軽く息を吐いた。
「仕方ないな…。ま、あと5分…ってとこですかね。」
ありがとうございますと苦笑して、サフィルスは二人の髪を撫でた。
「兄上…兄上、起きてくれ。」
「う〜〜…何?」
「サフィルスが床で寝ているのだが…。」
「えっ?…あ、俺達がベッド占領しちゃったからか。」
「マント一枚では寒そうだな…。どうする?」
「うーん、そうだ!」
寒がり天使のベッドには毛布がたくさん。
双子の王は両手に毛布を全部抱えて天使のそばに行きました。
「俺達もそっちで一緒に寝よう。」
それはほんの少し空に白みがさした、明け方の話。
--------------------------------------------言ひ訳---
そんなこんなでApocripha/0。望月はサフィルスに愛です。
センス悪くても性格黒くても愛です。
声がイクミでも…ってそれは悪いとこじゃないか。
でも一応リヴァサイトなので、あんまりカップリング要素の強いものは
こちらには載せないで置こうと思います。
…まあ、要は八甲田とカプがあわないだけなんですけどね。
(はち→サフィルス×アレク・もち→ジェイド×サフィルス及びサヒ受)
奴はジェイドキライだしさあ〜(笑)
そう考えるとリヴァは偉大だ。ウチ等それしかカプ合わないよ!
まあ、いろいろとキャラ違うとかそんな設定ないとか
何で両参謀生きてんのとか、プラサヒ気味だったりとか
リヴァより話が長いとかすでにツッコミどころ満載ですが
その辺はどうか勘弁してください(滅)
ちなみに丁度某チャットに入る前に書いていて、
チャットで縞をツッコまれて、落ちてふと見たら
ちょうどプラチナの「縞がない」発言で止まっていたのが
大変印象的でした。タイムリーヒット。
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