小さな手
あたしの心はモヤモヤしている
これは何かに悩んでいるという事?
悩んでいる?
あたしが?
何に?
わからない
何が欲しいのか、何がしたいのか、
何が何をどーしたら
このモヤモヤが消えるのか
あたしはわからない
生活はいたって平凡
何事もない幸せな日々
そんな退屈な日々が嫌なんでしょ?
ううん。そんな事はない
平凡で退屈な日々こそ永遠の幸せなのだ
あたしはそう信じている
誰にだって悩みはある
平凡であればこそ、普通であればこそ
誰にでも悩みはある
でもその悩みにレベルをつけるとすれば
あたしの悩みなんて小さな事なんだ
命をかけて悩んでいる人達や
生活をかけて悩んでいる人達から比べたら
あたしの悩みなんて取るに足らない事なんだ
だけど解決方法がわからない
ただ、スッキリしない曇り空のような心のまま
ボヤーと毎日が過ぎていく
今日も今日とて、心の吐き所をつかめないまま1日が始まる
いつも通り起きて
いつも通り出勤して
いつも通り退社する
そして保育園へいつも通り子供を引き取りに行く
待ちわびたように私に飛びついてくる子供
あぁ、なんてかわいいんだろう
これを幸せと言わずしてなんと言うんだろう
そしていつも通り子供と我家へ帰る
帰り道小さな手をひいてあたしは帰る
小さな手はこの世にあたししか頼る人間がいないみたいにギュっと手を握っている
その暖かさはとてもかわいい
だけどなんだかモヤモヤした気分になる
何故そんなに無防備にあたしを信じるのか
なんの根拠があってこの手を離さないのか
もし、あたしがこの手を振り回して
あの制限速度を無視して家路を急ぐ車達の中にこの子を放り投げたら
あたしはこのモヤモヤから解放されるの?
わからない
そんな恐ろしい事、普通の母親なら想像もしないだろう
実際そんな事は出来ない
出来るわけがない
常識的に・・・・
あたしは小さな手を握り返して、スーパーに寄る
あたしは必死で今晩の夕食の事だけ考える
もう余計な思考は入ってこないように夕飯の事だけ考える
だけど、頭の片隅で
この子がいなかったら・・・・
そんな声がたえず聞こえてくる
ううん。違う
あたしの悩みはそんな事じゃない
自分でもわからない事にモヤモヤしてるだけで
決して、そんな事じゃないと思う
思う
そう思いたい
そう信じたい
だけど時々
そう時々
いつか
この手を離しそうになる自分がいるような気がする
何が不満なのか
何がモヤモヤの原因なのか
どうしたらこのモヤモヤから逃げれるのか
ほんとは自分でもわかっている
だけど気づかないフリをしている
あたしは普通の母親でいたいから気づかないフリをしている
小さな手はあたしの手を握る
無償の愛を求める小さな手はあたしを強く握る
あたしはその小さな握力に押しつぶされそうになる
そして
あたしはいつかこの握力に押しつぶされるだろう
その日が近づいている事をあたしは気づいている
だけど気づかないフリをしている
誰にも言えない
言わない
あたしだけのモヤモヤ
気づかないフリをしてあたしは逃げ出す準備をしている
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