小説サンプルです。
冒頭抜粋しました。



「terzetto」黒酢習字

「うわっ!!」

 落下した衝撃は柔らかい物に吸収された。白い煙が消え去
り、視界が回復したツナの目の前に認識した物体。
 それは紛れも無く――二つの銃口だった。

(ちょ…これ何、ここドコ、どうなってんのーーー!?)
 悲しい事に銃をつきつけられのは初めての経験ではない。
それでも本能的にツナの動きは止まる。
一触即発の凍てついた空気を破ったのは、男の声だった、

「お〜!ちっちゃいツナじゃねーか!」
 室内を覆っていた殺気は一瞬で霧散した。先ほどの雰囲気
とは一転した友好的な態度。目を白黒させるツナに、もう一
つの銃口の持ち主が微笑みかけた。
「ひさしぶりって言えばいいかな?ようこそ、十年前の自分」

「ハダカノ王様」orochi

「ワァオほらごらんよ」
そういって目の前の男が、王様のように笑った。


「なにをですか?」
 いやな予感が背筋を走る中、ここで無視すればこのにたり
と笑う暴君に無体をされるのは必死。わずかな交友期間で私
は学習したのだ。引きつった顔を隠さずに男へ向き合う。
「リボーンにモニターを頼まれたんだよ。どう似合う?」
 くるりと一回りしながら、王様は再度笑う。裸で。
「……これは一体どのような余興でございましょうか?」
 通い慣れた彼の巣(応接室)で、甘〜い紅茶を啜っている
と、目の前でぶらりと、普段は目にすることなく隠されてい
る男のモノが揺れた。
 だめだ、だめだ、ツナ。過剰反応したら負けだ。この真性
エスは自分の取り乱す姿を楽しんでいるだけなのだ。ぐっと
奥歯を噛み締め必死に堪えた。
「ボンゴレ科学班が作った特別な服なんだよ。これ。ある特
低の人物には見られない仕組みになっているんだって」

「彼女の涙が、乾いたら」紅砂

 あー腹減った。ディーノがぐうと鳴る腹を擦りながら
ドアノブに手をかけると、中から跳ねるような声が、お
たまを右手に持ったまま飛び出してきた。
「おかえりなさい!」
 新妻のような笑顔で帰宅した彼を迎えたのは、彼の担
当の三年A組の生徒でもあり――先ほど付きっ切りで
英語の補習を教えたばかりの沢田ツナだった。薄茶色の
髪は短く一見すると中学生に見間違えられるものの、彼
女はすらりとした華奢な体と大きな瞳が美しい並盛高校
でも有名な美少女だった。その彼女が一年生の時に赴任
した、イタリア育ちの英語教師と内緒で付き合っている
ことは三年間、二人だけの秘密だった。
「けっこう遅かったですね・・先にご飯、出来ちゃいま
した」
「毎日悪いなーツナ・・」
 迎える人のある幸せに心を緩ませながら、ディーノは
ふとカレンダーの日付をみた。ちょうど今日職員会議で
卒業式の打ち合わせをしたばかりだった。
――あと、三ヶ月、か・・

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