"淡く儚げな美しさ
壊されぬよう静かに抱き寄せた"




弱い彼。触れたら、壊れてしまいそうなほど繊細な彼。
それが、アイツだった。
いつも、無我夢中で求めて欲望を吐き出していた。
エゴだそれは。ただの。
ほんの少しでも愛さえあればそれでよかった。
彼が、いや、周助が少しでも俺を思ってくれたら。





「手塚。今日は何処行く?映画でも見に行く?」



綺麗だった。どんな表情をさせても。
笑顔が特に好きだった。
その笑顔を傷つけたくなかった。壊したくなかった。
彼を壊したくなかった。




だけど、壊したのは俺だった。全てを潰してしまったのは俺だった。





"狂おしいまでに恋い慕う
いつまでもそばにいて離れられぬように"





「手塚。そこに座れ。」



俺よりも一回り小さいリョーマに命令される。
その命令に反抗することなく、俺はただ彼に従う。
周助のことよりも、リョーマへの御奉仕。
それが、俺の毎日だった。
だんだん狂わされていく心。
周助を愛した真実さえも奪っていきそうなほどの醜い愛情。



「リョーマっ…!」
「ホント、イイ声で鳴いてくれるよね?君は。」


先刻から、俺の分身はリョーマの手の中で射精をしているだけ。
白濁色の液体が彼の手の中に吐き出されることが、俺にとって屈辱の他でもなかった。
ただ、快感に溺れているだけの俺。ただイカされているだけの俺。
ほんの少しの愛だのとか言っていた自分が、馬鹿らしくなってくるほどのセックス。
きっとこれは罰なんだ。彼を裏切った罰。
そうなんだ。そうでなければ―――。





"降りそそぐ罪に彩られた
枯れた道を彷徨い続ける
この愛は誰も触れさせない
それが神に背く事であろうと"





いつものように彼に御奉仕したあと、俺は彼からあるものを貰った。


「これは…」


それは美しい銀のナイフだった。
刃だけじゃなく柄までも銀で彩られていて、とても美しかった。


「それで、不二周助を殺して来い。」


俺はその命令に従うしかなかった。







周助を自分の家へと呼び出す。
久しぶりに帰ってきたマンション。何ら変わりない部屋。
変わったのは俺らだけかな。


「どうしたの?手塚。いきなり、こんなところに連れてくるなんて。」


周助は俺を疑おうとしなかった。
何も知らない子供のよう。


「周助…」
「?」


俺の呼びかけに、いつもの笑顔を見せながら振り向いた。
刹那、俺は周助の左胸に、リョーマから貰った銀のナイフを突き立てた。
真っ白なシャツが真っ赤な鮮血によって染められていく。
俺は涙を流していた。




"鏡の君は逆さまの微笑みで
途切れそうな夢紡ぎの糸を切った"




血塗られた唇で周助は俺に口付けた。
そのまま周助は、俺の足下で崩れ落ちた。


「…すまない…周助。…すまない。」



銀のナイフは、周助の血で濡らしたまま、鮮やかに輝いていた。





"永遠に沈むその祈りに
答えも無く水面が揺れてる
崩れゆく君を救えなくて
あやすように眠らせたあの時"




周助の死体をベッドルームへと運ぶ。
ただの亡骸。
何も喋らない、笑わない、泣かない。
ただの人形のよう。
俺はそんな周助にキスを繰り返した。
俺の唇が周助の血によって、濡れていく。
キスの味は鉄の味だった。

胸に刺さったままのナイフで、俺は自分の心臓に向かって刺した。
痛いとか何も思わなかった。
ただ、周助の近くにいれるのならそれで良かった。





"終幕へ向かう日差しの中
眩し過ぎて明日が見えない
振り向いた君は時を越えて見つめている
あどけない少女のまま"





「…愚かな…」



リョーマは、二人の亡骸の傍に落ちているナイフを拾うとそっと呟いた。
その口許に怪しげな笑みを浮かべながら。

「お前はいい玩具だったよ。手塚。」



リョーマは部屋を出て行った。
彼らにプレゼントを残して…。




FIN




ラルクのfinaleをモチーフにして書いたもの。
ある意味人選ミスの作品。
何せ、黒不二があまり好きではないので、せめての黒リョ。
finaleを聞きながら見るといいかもしれません。
”で囲っているところは、その曲の歌詞の部分。
受験勉強をしているときに書いたものだしな。
裏にすべきだったか…。



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