美しい肢体を見下ろしながら心を決める。
アイオロスは躊躇していた今までの自分を一笑する。
馬鹿らしい。
目の前には白い血の気の失せた肢体。
人形のように糸が切れている。
糸が切れた人形ではない。
もう笑わない。もう喋らない。……もう悲しまない。
ならば良いのだろうか。

「いい訳があるか」

吐き捨てるような言葉に己の決意を改めて知る。
そうだ。今までどれ程、自分は馬鹿らしかったか。
賢者は認める。愚者は悟らぬ。
ならば、自分は認めて受け入れ、切り開こう。

美しい死体を見下ろし決意を固める。
あまりに幼い。故にどこまでも蠱惑的。
惑わされる。堕ちて行く。けれども、構わない。

胸に決意を秘めたまま、人形のように美しく変わり果てたカノンに触れる。
ゾッとするほどに冷たい。
その内、腐り行くのかと思うと世界に殺意を向けたくなる。
握られた黄金の短剣はそろそろカノンの手から外れない。
アイオロスは躊躇いもせずカノンの冷たい手を握りこみ、黄金の短剣を自分の喉に深く突き刺した。
抜くとゴポっと泡立つ音。
死のうとしているのにまだ酸素を求めてか肺は伸縮する。
ヒューヒューと喉が鳴る。
首を落とせばすぐに終わったかとアイオロスは思った。
白いカノンが赤く染まる。
顔に掛かった血飛沫に喉の奥で「ごめん」と謝る。
拭おうかと手を伸ばそうとして、そこまでの力はもうないことに気がつく。
腕は重く、短剣を――カノンの手を――支えていることすら出来ない。

カノンに多い被さるようにして、アイオロスの命は尽きた。
潮風が何処からともなく二人を包む。


そして、世界は繰り返される。
これで終わり、これからが始まり。
この世界はこれで終わり。
アイオロスは次を始めることになる。
何処まで続くか、それは神のみぞ知る。

あるいは、神すら知らないのかもしれない。
運命の女神達すら、知らないのかもしれない。





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