元から病んでる帝人君と元から病んでる臨也さんきっと幸せ。
カニバリズム・猟奇表現苦手なひとはばっくぷりーず


深海魚


深い深い場所でただ漂う魚のように
帝人君はじっとベットの上で横になっている。
時折体が揺れるだけで、あとはまた静かだ。
「いい子にしてた?」
「・・・」
「そう、いい子だったみたいだね」
彼の体には無数の傷跡。
勿論俺がつけたわけじゃない。
まだ自由を与えていた頃、自分でつけちゃった痕。
俺以外が帝人君に傷を与えるなんて、本人以外でも許せなかったから手首を拘束した。
今度は舌を噛んだりしたから猿轡を噛ませてあげた。
それから一ヶ月ぐらい暴れてたけれど、静かになった。
可愛い可愛い可愛い。
なんて可愛いんだろう!
何をしてても帝人君は可愛い。
今こうやって濁った瞳でぼんやりとしている姿も可愛い。
(きっと俺のことを考えてくれてるんだろう、だってこの世界には二人だけ!)
想像するだけで幸せになってくる。
「今日は手錠外してあげるね」
たまにはこの部屋から出ようかといえば、ちらりと此方をみた。
「勿論家からは出さないけどね。隣の部屋に行くだけ」
もう何ヶ月もこの部屋と、この部屋についてるトイレとバスルームだけみてた帝人君には、それでもちょっとした刺激になるだろう。
ぼんやりしている帝人君も勿論可愛いのだけれど、もう少し違う表情だって見たい。
ほとんど立って歩くこともしなくなった帝人君を抱き上げて、隣の部屋に行く。
そのまま椅子に座らせて、台所に向かえば、カタンと音が聞こえた。
「?」
玄関の鍵はパスワード式だし、鋏やカッターなんかも全部しまった。
ボールペンも鉛筆も先が尖ってるものも全部全部全部。
力が弱くなった帝人君は自傷をしようとしても、何も持ち上げられないし、ぶつけてもたいした衝撃じゃないはずだ。
ふらふらと帝人君がこちらにきていて。
あぶなっかしいなぁ…でもそんな姿も可愛い。
子供みたい。
「どうしたの?」
「臨也さん…」
ぎゅって抱きつかれて、咄嗟に抱きしめれば、其の腕が何かを掴んだ。
しまったと思ったときにはもう遅い。
どんっと思った以上に力強く押しのけられて、背中をぶつける。
「今日のご飯、これでいいですよね」
ゴツン。
鈍い音と共に、ばっと飛び散る赤い血。
二度、三度と振り下ろされた包丁が、ぼとりと何かを落とした。
「これ、料理してくれますか?」
ぼたぼたぼた
真っ赤に染めあがる床。
そこには白い白い左手。
あぁもう勿体無いなぁ。
ちゃんと言ってくれれば血まで料理してあげたのに。
「いいけど、ちょっと待ってね」
新羅だとセルティが煩いから、馴染みの医者に電話をして、応急処置だけすます。
「勿体無いなぁ。血が…」
「血なら、あとで沢山あげますから」
濁った瞳で微笑んで。
「あ、首は切っちゃだめだよ心臓に突き刺すのもね、ちゃーんと俺に頼んでくれたら、やってあげるから」
「じゃぁ、お願いします」
「んーそれにしても勿体無い。帝人君を構成するのは全部俺が食べてあげたかったのに」
「ごめんなさい」
「いいよいいよ、しょうがない」
あ、冷蔵庫に左手しまってこなくちゃ。
どう料理してあげようかな。
ハンバーグが一番かもしれない。
とりあえずは、明日までのお預けだけれども。
そういえば、骨はどうしよう、そのまま食べようかな、飾ろうかな。
うん、骨って結構残るし、骨は飾っておこう。
二人で眺めるのもいいよね。
「あ、帝人君、おなかすいたよね。手当てが終わってからご飯にしようか」
「はい」
チャイムがなって。
これ以上帝人君が悪さをしないように包丁を届かない場所に置いて、ドアを開けに行く。

あぁ、なんて愛しい子なんだろう!




2010.4/9 如月修羅

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