月夜の××
パタン。
と何かを閉じるような音がきこえて、目が覚めた。
「‥‥‥?」
「あら、起こしちゃった?」
「‥‥スカーレル」
気怠い身体を起こし、隣にと座っていたスカーレルを見る。
「何か読んでたのか?」
「えぇ‥‥ほら、この間クノンに貸してたやつよ。返ってきたから‥‥ちょっと、ね?」
「あぁ‥‥‥」
たしか、少女恋愛小説の‥‥‥‥(苦笑)
「おもしろいの?それ」
「センセも読んでみる?」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥いや、いいよ」
ちょっと内容が気にならないでもないけど、読むにはかなり勇気がいる。
苦笑を漏らし、首を振った。
「そう。‥‥もうちょっと寝てなさいな。無理させちゃったから」
微笑んで言われ、顔が赤くなる。
さっきまでの自分を思い出し、スカーレルを見てられなくて再びベットにと沈み込んだ。そんな自分の行動に、スカーレルが笑う。
「センセってば、本当に可愛いんだから‥‥」
「スカーレル!!」
「ふふ‥‥」
そんなスカーレルにと何も言わず、ゆっくりと腕を伸ばす。
触れたくて。
感じたくて。
「‥‥‥‥」
「センセ?」
突然の俺の行動に驚いたように、スカーレルが声を上げた。
肩よりも長い髪にと手を滑らせる。
さらさらと、指の隙間から髪がこぼれた。
「綺麗だよね、スカーレルの髪」
「‥‥センセの髪も綺麗よ」
「そう?‥‥俺はスカーレルの髪、好きだよ」
「‥‥‥ありがと。でも、アタシもセンセの髪、好きよ?」
「髪だけ?」
「あら。センセこそ髪だけが好きなの?」
そんな風に言われたから。
お互いに笑い合って。
「‥‥スカーレルには敵わないな」
「そう?」
「そう」
あら、やだ。
なんて笑いながら言うスカーレルの髪にと再び手を伸ばす。
ずっと触っていたい。
「気に入ったの?」
「‥‥‥もうちょっとだけ、触らせて?」
「いいわよ」
髪をいじる俺をそのままに、再びスカーレルが本にと手を伸ばした。
「ただ、上だけは着て頂戴ね?‥‥‥襲っちゃいそうだから」
「‥‥‥‥‥!!」
「‥‥着たくないの?」
スカーレルの言葉に固まった俺にと手を伸ばし、スカーレルがそう囁いた。
低い、甘い声。
「‥‥レックス?」
反則だ、と思う。こんな時に名を呼ぶなんて。
「‥‥‥‥‥‥‥」
「じゃぁ、暖かくなること‥‥しましょうか?」
「‥‥‥‥‥‥ばか」
とっさにこぼれた言葉は、思いの外甘くかすれていた。
「ふふ。やっぱり可愛いわね」
覆い被さってくるスカーレルの首にと腕を回す。
「‥‥‥夢を見せて頂戴?」
「‥‥スカー‥‥レル?」
「甘い夢を‥‥‥」
耳元で囁くその声に、小さく頷き瞳を閉じた−‥‥‥‥。
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2014.6/24 再録 如月修羅
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