責任問題

愛してるわ。
愛してるの、センセ。

そう言ったら、やっぱりレックスは驚いたように瞳を見開いて、そして満面の笑みを浮かべた。

「俺も好きだよ」

違うのよ。
違うの。


「スカーレルが好きだよ」


アタシが欲しいのはたった一人の、特別な人としての…好き、なのよ?


「優しいし、かっこいいし」

照れたように笑いながら言うレックスを見つめる。
太陽の光を反射して、赤茶の髪が輝く。
それが眩しくて瞳を細め、小さく溜め息つく。


「大好きだよ?」


じゃぁ、カイルは?ソノラは?ヤードは?ナップは?
大人げもなくそう問いつめたくなる。
アタシらしくもない。

いやね。
これが恋ってやつなのかしら?

「もちろん、みんな大好きだけどね」


ほらね、やっぱり。
アタシの好きと、レックスの好きは全然違くて。
分かっていたことなのに、この微かな苦しみと、絶望は。


………ホント、いやね。
昔はこんなこと望んだことなんてなかったのに。

こんなアタシに変えたのはアナタなのよ?レックス。
本当は、責任をとって欲しいのだけど。
でも。
それはのぞんちゃいけないことなのよね?


「スカーレル?」

なぁに?

と問い返せば、レックスが困惑したように首を傾げた。

「俺、変なこと言っちゃった?」

そんなことないわよ。

なんて心にもないこと言って微笑んで。
こんなことばっかり上手なアタシ。
それがいいのか悪いのか。
そんなこと考えたことなんてなかったけれど。


「なら、いいんだけど…さ…」

言葉を濁したレックスに、言葉の先を促す。

「え?うん…いや…」

先を言って頂戴。
そう言って詰め寄れば、なぜか真っ赤になるレックス。

「みんな好きだけど、ちゃんとスカーレルが一番好きだよって…」


ちょっと。
待ちなさいよ。
何よ、それ?


「うん。ほら…さっきの言い方じゃ、ちゃんと伝わってないかなって思って」


何よ…。
何なのよ……。


「特別な人として、スカーレルが好きだよ」

真っ赤な顔で。
でもはっきりそう言うから。


ちょっと。
…もう。
勘弁してよ…。


「愛してるわ、レックス」
「……っ」

こんな時に名前呼ぶなんて反則!!
と、ばしっと胸を叩くから。
笑ってその腕をそっと掴んで。
耳元で。


「こんなアタシにした責任、とって頂戴」
「責任って…!」
「側にいるだけでいいわ」
「………それなら、叶えられるけど…」

そう照れくさそうに呟いて、ゆっくりと抱き締める、暖かな腕の感触。

「今はね」


と、こっそり呟けば。


「え…?」


上手く聞き取れなかったらしく、レックスが首を傾げる。


「大好きって言っただけよv」
「………ん………?」


あまり納得してない顔で、とりあえず頷く。



もう、本当に可愛いんだから。


そうそう、アタシを変えたのはアナタなんだから、ちゃんと責任とってずっと側にいて頂戴よ?

ねぇ、レックス。



もちろん。

気持ちを確かめた今となっちゃ、嫌だといっても、もう逃がさないけどね。


2016..3/18 再録 如月修羅


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