髪を梳く
さらさらと髪を梳く。
珍しいことに、ギギナは目を覚まさない。
思った以上に柔らかなその髪の感触に笑みを零した。
「綺麗な髪だな…」
ほわんと知らず笑みが毀れる。もちろん、本人に言ってやる義理はない。
寧ろ言ったが最後、どんな仕打ちが待ってるか想像も付かない。
さらさら。
さらさら。
指先から毀れ落ちる髪を引き寄せ、そっと口付けた。
「俺以外に触らせたら、本当に殺してやるから」
耳元で囁いたその言葉に、ギギナの眉が寄せられる。
起こしたか…と思い、そっと離れようとすればギギナの指先が宙を泳ぎ、手首を掴まれた。
それに驚き瞳を見開けば、ギギナが不機嫌そうな顔で瞳を開けた。
「………なんだ、眼鏡の土台か」
「なんだとは素敵な目覚めの挨拶だな。ドラッケン族の流儀か?」
「貴様に馬鹿にされる云われはないな。今すぐに死ぬか?」
「ギギナ、冗談は存在だけにしておけ…ネレトーを持つな!」
「これでなくては貴様を上手く切り刻んでやれないだろう…」
「切り刻むな!!」
寝起きがそんなに悪い方ではない相方が、どうやら今日は目覚めが悪いようだ。
いつも以上に殺気立っている。
「ギギナ?」
「私が…」
「ん?」
歯切れが悪い。
そんなギギナに首を傾げる。
「……貴様は……」
「なんだよ」
「愚かだな」
「はっ?」
カチンときてギギナを睨み付ければ、渋面な顔をしたギギナが此方を見ていた。
「特別、は一人で良い」
「………はい?」
「分からぬか。やはり愚かだな、眼鏡の土台」
「………………」
「貴様は私が殺す」
「前後関係が可笑しいぞ?ギギナ。お前の思考が可笑しいのは今に始まったことじゃないが…」
俺の言葉に何の反応も示さず、ギギナが言葉を紡ぐ。
「だが、殺そうと決めた人間をここまで長い間傍に置くのは…」
最後まで言われる前に気付いた。
ギギナが何を言おうとしているのかを。
口元に笑みが浮かぶ。
「………俺がお前を殺すのが先だな、ギギナ」
ギギナが笑う。
俺以外の奴にその体を触らせたら殺してやるから。
「一生そんな日はこないだろうな。軟弱眼鏡」
涼しい顔でそんなことを言って。
殺してやるよ、ギギナ。
いつか…そのときがきたら。
でも今はまだ…このままで。
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2005.10/14 如月修羅
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