愛してるのに愛されないの
臨→→→(越えられない何か)←帝 最初は好奇心だった。 ダラーズなんていうくだらないものを創った人間 それだけのものだった。 いつからだろう。 彼から瞳を離せなくなったのは。 いつからだろう。 彼が他の人間と話すのが嫌になったのは。 いつからだろう。 閉じ込めて、繋いで、俺だけを見て欲しいと考えるようになったのは。 「暇人ですね」 「暇なのかな」 「暇だからそんな馬鹿なこと考えるんですよ」 飽きれたようにそう言って、帝人君がジュースを飲み終える。 それを受け取って継ぎ足してやりながら、首を傾げた。 「馬鹿なことかな」 「馬鹿なことですよ。っていうか臨也さん、もう五杯目です、流石にもういらないです」 「効かないな、って思って」 「…はい?」 「薬」 入れてないけど。 「あんた何考えてるんですか」 「ん?帝人君のこと」 「…で、参考までに聞きますけどなんの薬入れたんですか」 一緒に買い物に行って、一番最初に開けたのは帝人君で。 さらに目の前に置いていたジュースだったから、薬なんて入っていないことは帝人君も分かってる。 「惚れ薬?」 「一応聞きますけど、僕たち付き合ってますよね?」 「付き合ってるね」 「だったらなんで惚れ薬なんて必要なんですか」 馬鹿らしい、と再び飽きれたように言って、帝人君が肩をすくめる。 だって愛して欲しいんだ。 俺と同じだけ。 俺と同じだけ愛に狂って欲しいんだ。 「もっと惚れて欲しいなって」 「我侭ですね」 「我侭なんだ」 「…………子供ですか」 子供ならもっと帝人君は俺のことを愛してくれるのだろうかなんて馬鹿なことを考えながら、テーブルに置かれた帝人君の小さな掌を辿る。 この指先が昨日、俺の肩に縋り付いて爪をたててくれたのに。 「…この口が」 「はい?」 今度は唇にと指先を移動する。 「昨日あんなに鳴いてくれたのに、今は違うことがむかつく」 「ちょ…っ!恥ずかしいこと言わないで下さい!」 真っ赤になった帝人君はとても可愛い。 昨日俺の下で似たような表情を浮かべていたっけ。 ずっとずっと繋がって入れたらいいのに。 「溶け合えたらいいのにね」 「嫌ですよ、臨也さんの一部になるなんて」 「俺が帝人君の一部になってもいいよ」 「余計嫌です」 きっぱりと拒否されて、流石にいらついたから細い首筋に手をかけて、引き寄せた。 そのままかじりつくように口付ける。 「ん…っ?!」 嫌がるように身を離そうとしたから、さらにいらついて、身を乗り出すようにして口付けた。 狭い空間で口付けしあうものだから、テーブルからやかましい音を立てていろいろと転がり落ちる。 多分ジュースも床に広がっているだろうがそんなのどうでもいい。 奇跡的に濡れていない帝人君をそのまま引っ張りあげる。 「ん…っちょっ…まって…!」 「待たない」 「意味が分からないです…!」 惨状をどうにかしようとする帝人君。 俺以外に興味が向かなくなればいいのに。 イライライラが募りに募って、そのまま腕を掴みあげてベットにと直行する。 「臨也さん、ジュースとか倒したまんまですよ?!」 「別にいいよ。っていうか帝人君、俺と居るのに俺以外のこと考えないでよ」 「意味分かりません」 「俺だけのことを考えてよ俺だけを見てよ俺だけを愛して欲しいんだ、誰も帝人君に声なんてかけなくればいいのに誰も帝人君に触れなければいいのに誰も帝人君を見なければ良いのに、俺以外が帝人君を見て、話し掛けて、触っていいわけないのになんでそれが許されないんだろうね?」 「…………」 「なんで俺だけを愛してくれないの、帝人君」 「それは」 「ねぇ愛してよ。俺だけを愛して、俺だけを見て、俺の所為で」 「…………」 「狂ってよ」 其の言葉に帝人君が困ったように微笑んだ。 あぁ、分かっていたことだけど。 彼は一生此方側に憧れるだけで、絶対に此方側に来れない人間なのだ。 それがむしょうに悲しくて、初めて声を上げて泣きたいと思った。 戻 2011.08/15 如月修羅 |