料理が楽しくなる方法

臨也さんは料理が上手い
だからというわけじゃないけど、臨也さんと一緒に居ると料理することがない。
でも僕は学生で、臨也さんは…………働いて………るんだよね?
いや、うん、職業がまともかどうかはこの際置いといて、働いているわけで。
この状況なら、普通学生で時間がある僕が料理をするべきだと思うわけだ。
…勿論、好きな人に食べてもらい、休んでもらいたいって気持ちからなわけだけど。
………言わないけどね?
「あれ、珍しいね」
「なんですか?文句があるならご自分で作ってください」
「いやいや文句なんてないよ!帝人君が俺のために料理を作ってくれるんだよ?こんな幸せ潰すなんて勿体無いことしないよ」
後ろから覗き込まれると、手元がぶれる。
なんというか…恥ずかしい。
「座っててくださいよ、邪魔ですから。別にあんたのためだけに作ってるわけじゃないんで」
「はいはい、帝人君の仰る通りに。愛してるよ、帝人君」
こんなに邪険にしてても臨也さんは僕に愛を囁くのを忘れない。
くすくすと笑いながらさって行く。
また、カタカタと音が聞こえ始めたから、多分情報のやり取りをしているのだろう。
ちらりと覗いて見たら、真剣な表情で…その、かっこよかった。
真っ赤になった顔を見られなくて良かったと思いつつ、比較的失敗が少ないと言われる卵料理を作り始める。
…正直な話、料理は苦手だ。
一人暮らしをしていれば、料理もできると思われがちだがいまだとコンビニという便利なものがある。
出来合い物を買って、あとはご飯を炊けばおしまいなんて珍しいことじゃないだろう。
…例に洩れず、僕もその恩恵に預かるタイプなのだけれど。
あぁ…上手く卵が割れない。
家で練習してきたっていうのに!
「…………」
「帝人君、平気?」
声が掛けられたけど、無視して続行。
だって恥ずかしいし。
「………」
どうしてこう意地を張っちゃうんだろう。
どんどん悪化していく料理を見つめながら、涙が毀れそうになった。
ただ、僕は臨也さんにご飯を食べてもらいたいだけなのに。
ご飯を作ってる間、自分のことをしててもらいたいだけなのに!
「帝人君?」
「…………煩いです」
「ごめんね?」
「煩いです」
「泣かないで?」
何時の間にか近くに来ていた臨也さんに抱きしめられた。
ぐちゃぐちゃな台所。
見られたくなかったな。
「無理しなくてもいいんだよ?」
「無理なんてしてません!大体…っ」
涙が毀れた。
それを臨也さんの指先が拭い取っていく。
「ん、でもさ。帝人君、料理苦手でしょ?」
「…………」
「俺はこういうの嫌いじゃないし。それに…別にね、気負いなんかしなくていいんだよ?」
「…してません」
「…そっか、してないかならそれはそれでいいんだけど、知ってて欲しいからさ」
そっと口付けられて、瞳を閉じる。
分かってる。
本当は、ちゃんと分かってる。
いつだって臨也さんは大人で、僕は子供の尺度でしか考えられない。
ずるいなぁ…。
やっぱり臨也さんはかっこいい。
「ね、一緒に作ろうか」
「………臨也さんが、したいなら…別にいいです…よ」
「うん、俺がしたいから一緒に作ろう」


料理が楽しくなる方法、それはいたって簡単。
料理が大好きになること!

−−きっと臨也さんとなら、料理もすぐに大好きになるだろう。
だって、好きな人の味を覚えられるんだから。


「また、一緒に作ってあげてもいいです」
「うん、また作ろうね」
出来上がったオムライスを口に運びながらそういえば、臨也さんがにっこりと微笑んだ。



2010.05/11 如月修羅

愛方とのチャットより発生ネタ。
ツンデレ帝人ー!
元ネタはあんかけ失敗した私の馬鹿話からだったんですが、気がついたら違う料理になってた★

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