一人称、静雄と臨也さんの前でだけ俺
静雄⇔帝人⇔臨也
正臣関係ネタばれ



不毛な感情



正臣が居なくなった。
いらいらする。
呼吸をするのと同じように、正臣が隣に居るのが普通だったのに。
なんででないの
なんでいないの
なんで
なんで
なんで
「みーかどくーん♪」
「邪魔ですよ、とっととどっかに行って下さい」
「あれあれ?余裕ないね」
「情報くれる気になったんですか?なってないのなら、そういう気分じゃないんですよ」
臨也さんが抱きついてくるのを押しのけて、いらいらする気分のまま街を歩く。
後ろから臨也さんがついてくるのは勿論無視。
だって正臣を探す方で忙しいから。
ひょっとしたら今、ここに居るかもしれない。
だってここはこんなにも人が居る。
…もう、違う土地に行ったのかもしれない。
……でも
でも
でも
もしもの可能性だけで、俺は動きつづける。
「不毛だよね」
突然声を掛けられて、立ち止まる。
何時の間にやら静雄さんの居るお店付近まできていた。
慣れは恐ろしい。
「実に不毛だ」
「何が言いたいんです?」
「俺たちが帝人君に恋するのと同じくらい、君の行動は不毛すぎる。そんなに愛しているの?」
「…帝人?どうしたんだ…って臨也てめぇ!」
「シズちゃんはちょっと黙ってて」
出てきた静雄さんを此方も視線で制す。
少し何か言いたそうにしていたが、やがて諦めて此方を見た。
「俺が“アイシテル”のは臨也さんと静雄さんですよ。“愛してる”のは正臣やセルティさんや園原さんたちだ」
「ね、不毛だよね」
そう思うでしょ、シズちゃん。
珍しく意見の一致を見たのか、静雄さんまで軽く頷く仕草をした。
そうですか。
今俺いらいらしてるって言いましたよね。
あ、静雄さんは知らないかもしれませんけど、同罪です。
罪を犯したものには処罰を。
「たった今から貴方方は俺にとって必要ないものです」
「いいの?使える下僕がいなくなって」
「下僕なら創れますから」
まぁ、二人程気に入る下僕は見つからないだろうが。
だがしかし人生は長い。
この二人以外にもいい下僕が見つからないとも限らない。
…そうだ、数名ダラーズから選び出そう。
正臣を探させてもいい。
情報戦は臨也さんが一番だと思われがちだが、ダラーズの規模も馬鹿にされちゃ困る。
「じゃぁ行きますね、さようなら、二人とも」
もう会うこともないですけど。
そう言って去ろうとしたら、静雄さんに腕を捕まれた。
「意味がわからねぇ!説明を…!」
「そのままの意味ですよ。アイシテましたよ、静雄さん」
「帝人!」
「ごっめーん!今思い出した」
「…?」
「?」
突然明るい声を出した臨也さんが紙切れを此方に寄越す。
それに目を通して、静雄さんに手を差し出した。
「静雄さん、ライター下さい」
条件反射で此方のいうことを聞く静雄さんに笑みを零し、受け取った後、顔を寄せて口付ける。
「ごめんなさい、さっきのは冗談です」
「帝人?」
「臨也さん、今日家に行ってあげますね。明日は静雄さんの所に行ってあげます、今日虐めちゃった変わりにいっぱいアイシテくれていいですよ」
ライターで火をつけて燃やせば、全ておしまい。
不毛な情報は全てなくなった。
必要なものだけ。
にっこりと微笑めば、二人がどこか諦めたように微笑んだ。

女王様はいつだって、自分勝手!
だってそれが権力者の証なのだから!



2010.04/16 如月修羅

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