竈猫
飼い主臨也さんと飼い猫帝人君 「ちょっとシズちゃん、今日は遊んでる暇ないんだよね」 「そんなの関係ないね。とりあえず殺させろ」 「だーかーら、そんな暇ないって言ってるでしょ?大人なんだから理解してよ」 「いーざーやー!」 投げつけられたゴミ箱をなんとか避けて、さっさと逃げるに限る。 今日は家で待ってる飼い猫のためにいい魚を手に入れるためだけにここに来たのだから。 (やっぱり他の所にしようかな) シズちゃんだけは頂けない。 まったくもっていらいらする。 これは家に帰って愛猫に癒してもらわなくてはいけないだろう。 部屋で待ってる愛猫を思い出すと、口元が綻んだ。 くるんと丸くなって部屋の中。 ふわふわのクッション。 適度な温度。 手は幸せを呼ぶという香箱を組んでいる。 折り曲がって体の下で丸くなっているその姿は、幸せを抱き込んでいるのだそうだ。 そして、暖かな日差しに気持ち良さそう。 あぁでもあんまりあたりすぎると日焼けしちゃうし…せっかくの綺麗な黒い髪が勿体無い。 もう少し場所を考えてあげないと。 「帝人君、ただいま」 「お帰りなさい!」 ぱっと立ち上がり、駆け寄ってくる。 ごろごろ喉を鳴らし、猫同士の挨拶の鼻ちゅうをしてくる。 俺は人間なんだけどね。 そう言って笑えば、帝人君がでも挨拶はこれじゃないとなんか嫌なんですと首を傾げた。 可愛いなぁ…なんて思いつつ、持ってきたお土産を手渡す。 「はい、今日はサイモンの所から貰ってきた魚だよ」 「ありがとうございます!」 「今日はこれで夜ご飯にしようか」 「はいっ!」 尻尾が嬉しげに左右に揺れる。 一度も外に出たことがないこの子は、きっと外に出たらすぐに死んでしまうだろう。 ずーっと自分だけが愛情を与えてここまで育てた。 (可哀想にね) でも、猫は部屋の中だけで暮らして行ける動物でもある。 ならきっと幸せだろう。 (選択肢なんて与えるはずもないけれど!) 「帝人君、今日は夜まで一緒に遊ぼうか」 「お仕事いいんですか?」 「うん、別に平気」 「なら、遊んでください!」 (外はとても怖い所だからね。 ずっとずっと俺が守ってあげる) あぁ、なんて愛しい猫なんだろう! かまどねこ かまどなどで暖をとって丸くなってるにゃんこのこと! 戻 2010.4/7 如月修羅 |