お迎えです 「今ならレンとリンだろ?」 「そうじゃなくてもせめてミクとかさー…」 「うるせぇな」 「それかMEIKO」 「それはてめぇの好みだろ」 「ま、間違っちゃいないねー」 「にしても今時旧タイプの上、男性型なんてさぁ…玲、実は…」 きゃぁきゃぁわぁわぁと騒ぐサークルメンバーをあしらいながら、かねてより念願だったボーカロイドを買う手続きをする。 ぬかった。 やっぱり一人でくりゃよかった…と思うものの、ぜんは急げというではないか。 かつてボーカロイドはPCの中だけの存在だった。 それが時代を重ね、PCと実世界を行き来できる半アンドロイド化までこぎつけた。 というか、普通のアンドロイドより高度な進化をとげた、といったほうがいいかもしれない。 ボーカロイドは歌を歌うためのアンドロイド。 メイド型とかその他いろいろな目的のアンドロイドより若干安めだ。 一応家事や一般人と同じようなことも出来るのだが、特化しているわけではないから、電脳世界と行き来できるという特権をもっていても若干安めになってしまうらしい。 といいながらも安い買い物では勿論ない。 親にいえばボーカロイドどころかそれ以外のアンドロイドも押し付けられるだろうから、バイトを掛け持ちして自力で貯めた。 一番欲しいのものは、自分の手で掴み取りたい、そんな心理。 「じゃぁ俺は帰る」 「早速お楽しみか」 「…………」 にやり、と笑えば肩を竦められた。 勝手に色々妄想しているのだろう。 訂正するのもめんどくさくてそのまま帰路についた。 PCを起動して、インストール。 ジジ…という音を立てて粒子が集まる。 それが…どんどん人の形になった。 青い髪、青いマフラー、白と青のコート。 瞳は閉じられているけれど、開けばやっぱり青い瞳。 KAITO 旧タイプと今では呼ばれる…男性型ボーカロイドだ。 「漸く、会えたな」 口元に笑みが浮かぶのを押さえられない。 初めて見たときから決めていた。 たった一人は、こいつがいいと。 「はじめまして、ますたー」 この声が聴きたかったのだと。 青い瞳を見つめながら、微笑んだ。 「はじめまして、カイト」 了 2009.8/30 再 如月修羅 |