◆真夏の夜の秘密の遊び◆






「なんでわしばっかりこうも仕事が山積みなのじゃ」
目の前の書簡の山に、太公望は頭を振った。
「師叔は軍師ですからね。どうしても他の人より仕事も多めになってしまいす」
機嫌取りに餡蜜と葛茶を置いても、彼女の頬は膨れたまま。
「足りぬ」
「小腹を満たす程度ですからね。準備しますよ」
角盆を持って厨房へと向かう。
甘い物に弱い軍師を操作するのも、補佐官の務めだと男は笑った。
「ヨウゼンさん、また御主人のおやつっすね」
「こうでもしないとね。ただでさえ最近苛々してるみたいだし」
「ヨウゼンさんは御主人に甘いっす!!もっとびしっと言わないとあのぐーたらは
 治らないっす!!僕も何度も言ったっすよ!!」
忠実な霊獣は、苦言も憚らずに彼女に呈する。
彼女も、この霊獣にだけ見せる表情があるのだ。
(でもね、四不象……君だけに見せる師叔の顔もあるんだよ)
小さな嫉妬を飲み込んで、少女の好みそうな物を見繕う。
甘すぎるだけでは、眉を顰め辛いものには口をつけない。
我侭極まりないと野次る宦官も少なく無いが、彼女を慕うものも多いのもまた現実だ。
「まぁ、面倒な事は全部師叔がやってるからね。多少の我侭は聞いてあげないと」
色鮮やかな果実を数個選んで、喉を潤すための蜜茶を入れる。
彼女を取り巻く男のうちで、最も甲斐甲斐しいのがこの青年。
「ヨウゼンさんくらいの顔だったら、きっと竜吉公主さんだって惚れちゃう気がするっすけどね」
太公望の容姿は、悪いほうではない。
それでも、美女と言うには些か足りない何かがあるのもまた真実。
傷だらけの身体でも、彼女のもつまっすぐな瞳。
容姿外面を飛び越えて、内側から引き出される野生の美しさ。
「僕は、面食いじゃないほうなんだ」
「御主人だって可愛いっす!!」
少女のことを何かいえば、この霊獣が食って掛かる。
最大の難所はこの霊獣と、弟子と称する少年だ。
「君も、師叔のことが大好きだからね。そろそろこれを持って行かないと僕が今度は
 怒られちゃうから。師叔から甘い物を取り上げたら周全土に竜巻が起こるよ」
気遣いで見せる物ではなく、心の底から笑ってくれれば。
それだけでこの器は満たされていく。
「確かに師叔は綺麗だよ。君が与り知らない所の方が特に……ね」
仕事となれば、厄介な男達も近寄らない。
このときばかりは、彼女を独占することができるのだから。




「生き返るのう……流石は天才様じゃ。わしの好みを熟知しておる」
口元を綻ばせて、少女は碗に唇を当てた。
どの温度ならば彼女が喜び甘みが増すかまで完璧な計算の元にそれは作られている。
「何度も作れば、誰だって憶えますよ」
熟れた洲桃を侵食する濡れた唇。
一つを摘んで男のそれに押し当ててくる。
「美味い物は、分けて食えばもっと美味くなるぞ」
「果物はあまり得意ではありませんが、師叔からのは断るわけにはいきませんね」
そのまま太公望の手首を掴んで、指先ごと舐め上げるようにして口をつける。
果汁の一滴も逃がさないように。
「…………………」
閉じられた瞳と、凛とした眉。
伸ばされた濃紺の髪と、指に絡み付く唇。
「もう……良いのではないか?」
「どうしてです?」
「……その……っ……」
かり…と歯先が爪を甘く噛む。
それだけでぴくんと肩が竦んでしまうのだ。
「人間って、尖ったものに反応するんですよ。恐怖でも快楽でも」
「?」
「喉元に剣を突きたてられても、どこか心地よく感じてしまう。それと一緒です」
指先まで丹念に舌先が舐め上げて、手の甲へと移る。
細かな傷をなぞって、今度は細い手首へ。
「…ぁ……ッ……」
「試してみませんか?太公望師叔」





左腕だけはそのままに、外気に晒される裸体。
ぷるんと揺れる乳房に目を細めて、不安げに震える小さな唇に自分のそれを重ねた。
舌先が絡み合って、言葉よりも饒舌に気持ちを告げるから。
「ここの所、ずっと一人で過ごされてましたよね……師叔……」
少しだけ浮き出た鎖骨に押し当てられる唇に、ぎゅっと閉じる瞳。
「寂しい夜には、呼んで頂けるものだと思ってたんですけども」
ちゅ、ちゅっ…と繰り返し降る接吻の雨。
ヨウゼンの頬に手を伸ばして、視線を重ねた。
「女が男を呼べば、嫌な噂がたつ。まして……」
「発君は、この国の王ですからね。貴女としても余計な醜聞は晒したくない……と」
亡き文王から託された武王は、まだ一人で戦うには力が足りない。
軍師という立場を使って彼女はこの国に残り武王を護する。
「官女達は噂話が好きじゃ。おぬしのこともな」
美貌の道士を補佐官に持てば、それだけで噂は鮮やかに花開く。
それだけならばまだしも、武王と武成王の息子までも彼女の傍を離れようとしない。
「面倒ですね。人払いの香でも使いましょうか」
道士とは名ばかりで、実質仙人である彼は術も宝貝作りも完璧だ。
手腕も智謀も補佐官などにしておくには惜しい男。
それ故に、彼女には絶えず淫婦の字が絡みつく。
「大丈夫ですよ、師叔。これで誰も入れないですし声だって聞かれることもありません」
その笑みが、やけに妖艶に見えて、言い様の無い何かが背筋を走った。
「…や……」
逃げようとしても、身体が竦んで動けない。
「怖いですか?僕が……」
誰かと積極的に関わろうとする事の無い青年。
些細な事でも拒絶を恐れて、前に踏み出せないまま。
「怖くなど……っ……」
肩口を強く押さえつけて、寝台の上に身体を押し付ける。
「貴女の怖い物を、知りたいですね。本当は、妲己や聞仲すら恐れていないんでしょうから」
胸元に長い髪が触れて、くすぐったそうに瞳が閉じられて。
「貴女の心が得られないなら、せめて……忘れられないように一番怖い物になりたいですね」
触れてくる唇が、甘いからこそ身体が竦んでしまう。
隠し事の上手な天才道士に、いかさまは通用しない。
「!!ヨウゼ……」
「呪符も、作れるんですよ。何かの役には立つかと思ってましたが、こんな事に使おうなんてね」
完全なる密室で、光さえも遮断された空間。
「絶えず誰かが傍に居れば、一人の夜は寂しいと思いましたが……違うものですか?師叔」
「わしとて……一人で寝たい夜もある……」
額に、頬に、唇に。舐めるような口付けが優しく降る。
「嘘を付くのは、相変わらずですね。他は騙せても僕は騙せませんよ」
「アん…っ!!」
少女の手を取って、自信の陰唇に触れさせて。
小さく笑って、その闇色の眼を覗きこんだ。
「御自分でなさってましたか?師叔」
「ば……馬鹿者ッ!」
「でも、貴女のこの細い指で、ここは濡れますよ?御自分でならどうすれば、どこがいいかは
 熟知してるでしょうし……」
開かせた唇に、指先を滑り込ませる。絡み付いてくる舌先も、図分と従順になった。
それでも、完全な支配下に置く事は出来ないのがこの少女。
蠱惑的な仙女よりも余程、傾国の力を持つ。
「!」
組紐で脹脛と腿を密着させて縛りあげて行く。
柔肌に喰い込む赫の美しさ。
両脚の自由を奪われて、それを解こうとしても結び目に指は触れられない。
男に自由を請う以外には、これ解くことは不可能。
「夕べ、貴女が褥の中でしたことをここでしてくれれば……これを解きますよ」
言葉の意味も、自分の置かれた状況も、分からないほど愚かではない。
しかし、賢すぎることも時として不幸を招く原因となるのだ。
「……ぅ……」
躊躇いがちに指先が秘裂に触れる。撫でるようにその周辺をそっと擦りながら先端だけを忍び込ませた。
右手が陰唇を押し広げて、左手の指先がぬるついた体液を絡めだす。
「ふぁ……あ!!」
誰かに見られての自慰行為など、考えてみなかった。
「ああんっ…!!」
くちゅくちゅと淫猥な音だけが、室内に響く。
青年は目を細めてその光景を見守るだけで、言葉一つ掛けてこない。
「あ、あ……っは……」
震える指先が、薄桃色の突起をやんわりと押し上げてる。
親指と人差し指を使って、弾くように摘んではそれを繰り返した。
「…んぅ……あ!……」
支えを無くして、身体が敷布の上に崩れ落ちる。冷えたそれを銜えて、いつもの習慣で声を殺した。
「声を殺す必要など、ないでしょう?」
後ろから抱えられるようにして、身体が重なってくる。
「……あ!!……ヨウゼ…っ!!」
入り込んでくる指先に、身体が震えた。
生まれてしまった疼きを押さえる方法を知ってしまっているからこそ、厄介で悲しい。
根元まで銜え込んで、内側で蠢く指先の動きをからめとる為に襞が纏わり付く。
「あああんっっ!!」
ぎゅっと乳房を掴まれて、首筋に降る唇が肌を熱くする。
「指だけで、こんなに濡らして……」
「あ……んんっっ!!!!」
ふにゅふにゅと柔らかい媚肉が、吸い付く様に指を締め付けた。
顎を取って、自分の方を向かせて噛み付くような接吻を繰り返す。
「…っは…ヨウゼ……」
引き抜かれた指を追うように、腰が揺れた。
ぬるり…糸を引いて、秘所と指先がは繋がったまま。
「同じように、していただけますか?」
唇で下穿きの紐を解いて、そのまま引き下げる。
反り勃った陽根に舐めるような接吻を繰り返した。
「……ぅん……っ……」
太茎を横から銜えて、ぬるぬると上下する柔らかな唇。
撫でるように舌先が亀頭の先端を這い回る。
とろりとした瞳と、ほんのりとの染まった頬。
ぴちゃぴちゃと粘液が絡まる音が、否応無しに耳を支配して行く。
「もう……良いですよ、師叔……」
舌先と亀頭を繋ぐ粘液の糸。半開きの唇から零れるそれが、彼女の幼さをいっそう押し出す。
「んー……」
嫌々と首を振って、再び小さな唇がそれを咥え込んだ。
(なんだか、凄く悪いことをしてるみたいだ……童顔って……)
軍師として立っている時は、随分と大人びて見える。
その分、こうしている時の幼さの落差は激しい。
「我侭は……子供のすることですよ?」
まだ、身体の奥が満たされないままじんじんと疼いたまま。
「ひぁ……っ!!……」
引き離された身体に入り込んでくる男に、肩が震えた。
両脚の自由は奪われたまま、支えを得るためにヨウゼンの身体にぎゅっとしがみつく。
指よりも、ずっと欲しいもの。この身体を満たしてくれるもの。
「あ…っは……ヨウゼ……アあんっ!!」
上着と乳房が擦れるだけで、甘い声が上がってしまう。
荒い息と、体液が絡まる音。
「……師叔……っ…」
乱れる黒髪が、やけに艶めかしい。肌に浮かんだ汗と、火照った肌の妙。
突き上げるたびにぐちゅぐちゅと、混ざった半透明な体液が零れて。
「!!」
ずるり…引き抜かれるのを、無意識に腰が追ってしまう。
ぴくぴくともどかしげに四肢と、濡れた瞳が「どうして?」と誘うから。
君は羊。生贄になるべく捧げられた仔羊。
白い旗を掲げた振りをして、僕に問いかける。
「おいでよ」と――――――。
(誘いに乗ったのは、貴女ですよ……師叔……)
脊髄までとろかす様な接吻と、引き剥がした体を滑る指先。
「やぁ……ぅん!!……」
後ろに這いこんだ指先が、内側で踊るたびにぎゅっとしがみついて来る手。
十七で止めたはずの身体なのに、もっと幼く見えるのは罪悪感のなせる業なのだろうか。
「嫌じゃないでしょう?いつも、喜んで腰を振ってるじゃないですか」
「…ぁ……違…!!……」
冷たいものがそこにふれて、ぐぐ…と侵入してくる。
「あ!!や!!やだ……やぁ……ぅ……」
ごつごつとした何かが内壁を擦りあげるたびに、声にもならないような喘ぎが生まれた。
根元まで埋め込んだのを確かめてから、それの起動部を指先が押した。
「!!!!!!!」
羽蟲が蠢くような音と、始まる後穴の蹂躙。
「…か……っは……!……」
犯されるままに、ただ身体を預けることしか出来ない。
「きゃ……あ!!」
再度入り込んでくる音のそれと、薄壁一枚隔てて奏でられる淫曲。
「ぅ…ア!!や!!や……ああ!!」
「もっと、面白いことをしてあげますよ。師叔」
ヨウゼンの掌の中で動く何かに、太公望は声を失った。
蛭のようなそれは、粘着面に無数のイボと襞を抱えている。
「遊びで作った生体宝貝です。人体に害は出ませんので、安心してください」
「や!!やだ!!やめて……ぇ……」
剥き出しになった突起に、うねうねと動くそれが貼り付く。
「ひあ!!ああああっっ!!!」
きゅんきゅんと舐め吸うように蛭は動いて、いっそう彼女を攻め立てる。
全身を犯されて、だんだんと理性が崩壊して行く。
「あ……っは…!!……ヨウ…ゼ……!」
「ここにも、欲しいでしょう?師叔……」
濡れた乳首に吸いついて、唇がするようにちゅくちゅくと吸い嬲る動き。
「や……だ……!!……いや……」
何も考えられないまま、吐息が掛かるだけでもとろとろと愛液が溢れて。
すでに何度目かわからない絶頂だけが、身体を包み込んだ。
「やー……もぉ……っ……」
舌を絡ませて、何度も抱き締め合う。
「……望の……な、か……っ!!……」
「師叔……?」
「あ…は……望……こわれ……う!!…アあんっ!!」
その頭を抱いて、愛しいと額に何度も唇を押し当てた。
「……ヨ……ゼ……!!」
「……望……離れないで……こうして……」
手を取って、背中に回させる。
「掴まってて……望……」
「ひぁ……ああああ!!!!」
蕩け切った身体と手放した意識。
胎の奥でどろりとこぼれる粘液の感触だけが、熱いと感じた。





「……師叔……?」
身体を起して、自分のみの変化にヨウゼンは声を失った。
「く、首輪!?」
「さっきは、さんざん楽しんでくれたようだのう。ヨウゼン」
伸びた鎖を握る指先。
少女はにやりと笑って、青年に顔を近付けた。
「それにしては……随分と可愛らしい格好ですね」
太公望の身体を包むのは、幾重にも重ねられた白の薄布。
胸の形と身体の線が美しく浮かび、腰の括れの辺りで結び目が花を作っている。
腿に絡ませた吊帯(ガーター)と、細い首を飾る同じ誂えの花邊(レース)の輪。
そちらこちらに踊るふわふわの褶邊(フリル)が、少女の黒髪と鮮やかに対を成した。
「えーい!!一々うるさいわ!!これは元々わしのではない!!」
「では、誰の何ですか?」
「……普賢の袋と取り違えたのじゃ。まぁ、それはそれでよいのだが……」
見れば、確かに胸元がいくらが寂しい感じはする。
それでも、自分では絶対選ばないであろうその取り合わせが、かえって少女を可憐に飾る。
「可愛いですよ、師叔……痛たたたたた!!」
ぐい、と首輪を引かれてヨウゼンは悲鳴を上げた。
「仕返しは、させて貰うぞ」
「その格好で、凄まれてもなぁ……」
「たーわーけーっ!!おぬしは一々いつも余計な一言が多いのだ!!」
それでも、自分の着衣に乱れが無いのは彼女が危害を加える気は無いと言うこと。
じゃらじゃらとうるさい鎖を引いて、太公望はヨウゼンの身体に馬乗りになった。
「犬にでもなれば良いのですか?」
「ふぅむ……わしも、どうしたら良いか実の所わからん」
自分が良いようにされたのが悔しいがゆえの行動。
「犬に、なりましょうか?師叔」
「犬?確かにおぬしには哮天犬があるが……」
哮天犬は外見こそ長毛の犬ではあるが、ヨウゼンの宝貝の一つ。
「そうすれば、貴女の気も静まるでしょうし」
太公望の手を取って、その指先を舐め上げる。
「こら!!ヨウゼン」
「ワン」
「……犬になったとして、何が変わるのかのう……?」
先端から付け根まで丹念に舐め上げて、青年は少女を見上げた。
「耳まで、作りおったのか?」
髪の間から覗く獣の耳は、彼の擁する哮天犬に似せたもの。
どうせ遊ぶならと、御丁寧に長い尾もつけた。
「部分変化を、このようなことに……」
「くぅん?」
「……しかたのない、わんこだのう……」
さわさわと耳を撫でれば、擽ったそうに閉じられる瞳。
演戯の達人は、すっかり犬になりきって遊ぶことを選んだらしい。
「ははは。そうしてると可愛いのう、おぬしも」
「わん?」
元来、動物は嫌いではない。哮天犬や黒点虎を勝手に連れ出すこともある。
羊に囲まれて育った太公望にとっては、ごく普通のこと。
「これ、くすぐったいと言うに」
伸びた手が腰を抱いてヨウゼンの顔を跨ぐような形になる。
「ヨウゼン!!」
「わぅん」
逃げられないように、しっかりと手は腰を抱いたまま。
花模様と小さな飾りが彩る結び紐。
布地越しに唇が触れて、秘裂を啄ばむようにして上下する。
「こら!!」
「わぅ?」
「もう、犬の真似事は良いと言うに〜〜〜っっ!!」
慌ててそれを制しようとしても、器用に両端の紐を解いて薄布を取り払ってしまう。
「やめ……っ!!」
愛液が、裏地と秘裂を繋ぎとめる。薄布を引き離せば離すほどに淫靡な光景が広がった。
「あ!!やぁ……ッ……」
舌先が入り込んで、突き立てる様に蠢く。
唇全体で陰唇を包んで、ちゅぷ…と小さな突起を舐め嬲った。
「…っは……ア!……」
とろとろと零れだす体液が、男の唇を塗らす。
びくびくと震える腰と、まだ残っていた余韻が身体に火を点けた。
「ん!!ああああっっ!!」
崩れ落ちる少女を抱いて、親指で唇を拭う。
「たまには、御互いに服を着たままでもイイですよね?」
「!!」
発情期真っ只中の身体を絡ませて、真夏の夜に溺れよう。
罪も二人ならば、怖くは無い。
「ん、ぅ……」
繰り返される注入に、にゅぷ…にゅぐ…と水音が響く。
耳を塞いでも、目を閉じても、身体の奥底に響いて疼かせる。
片足を担がれて、露になる結合部。
肉唇が、男根を咥え込んで絡まるのがはっきりと見えた。
敷布をぎゅっと握る指先と、身体に纏った純白の禮服。
「あ……んんっ!!ヨ…ゼ……ぅあ!…」
何もかも熱さのせいにして、君と二人でこの空気に溺れよう。
体温と体液の間に揺られながら。
「…っは……師叔……ッ…!…」
「…あ!!ああアァんっっ!!」
互いに果てる顔を見つめあって、まだ熱いままの唇を重ねた。
涙目も懇願も、夏の夢にこじつけて秘密の遊びを知った。





「ヨウゼン、茶が無いのう」
「はいっ、ただいまお持ちしますっ」
書簡を開きながら、太公望は次々に青年に要求を出す。
その度にあちこちに走っては、彼は彼女の願いを叶えるのだ。
「腹が空いた」
「桃ですか?林檎ですか餡蜜ですか?」
何も知らなければ、甲斐甲斐しく走る青年の姿は滑稽にも見えるだろう。
「師叔、他には何が良いですか?」
「一々うるさい!!」
振り回される快感も、彼女に限れば許される事。
「……ヨウゼンさん、とうとう頭のどっか、いったさ?」
「いくら俺でも、あそこまでつくせねぇ……熱いからな、いったのかもしれねーぞ」
「王様に言われたら、終わりさ」
照りつける太陽に、まだおさまらない暑さ。
「師叔、今度は普賢さまに渡した方を着て下さいっ!!」
「うっとしいわ!!このたわけが!!」



愛して、泣かせて、追いかけて。
いたちごっこの楽しさは終らない。




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17:58 2005/07/30

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