◆真夜中のサイクリング◆




ほろほろと口の中で砕けるケーキ。
何度かかんで飲み込んで、ミルクたっぷりの紅茶に口をつける。
菓子類は食べるためのものであって、作るためのものではない。
作れるものといったら海賊見習い時代に厨房を任されたときに覚えたもの。
男ばかりの船で、かわいらしいものなどは縁は無かった。
頭の中で笑うのは天下無敵の女海賊。
誕生日やイベントを大事にするこの女海賊だが、バレンタインも例外ではなかった。





「副長、ホワイトデーどうしますか?」
「今考えてたところだ。恐ろしいもの貰っちまったからな」
咥え煙草で頭を抱える姿。
一月前にシャンクスは手作りチョコレートをクルー全員の枕元に置いた。
それは普段のわがままからのほんの些細な礼のつもりだった。
「副長は……その……やっぱスペシャルなやつだったんですか?」
新入りが恐る恐る聞いてくる。
「…………そうだな。インパクトのあるプレゼントだったな…………」
二月十四日の丁度真夜中。
真っ赤なリボンをチョーカーよろしく首に巻いた姿。
ガーターとビスチェ。
胸元には生クリームで描かれたハートマーク。
『どうだ!!お前仕様にしたスペシャルなチョコレートだぞ』
勢いよくベッドに押し倒されて、チョコレートといっしょに食われたのは自分。
(思い出すだけでも、頭痛がする…………)
こめかみに指を当てて、首を振る姿。
それだけでその後の追及を出来る勇者は早々居ないだろう
「どころで、元凶はどうした?」
「それが、どこかに出かけてしまって……」
「まぁいい。いなければそれだけ仕事がはかどる」





港に降り立つ女の髪が風に靡く。
艶やかな黒髪に、塩香を絡ませて前を見据える瞳の色は薄茶。
踏み出せばかつん、と声を上げるストラップシューズ。
「すいません、スモーカー中尉はいらっしゃいますか?」
細いうなじと甘い声に、海兵は身じろぐ。
「お約束は?」
「いえ……先日、心無い者に追われている時に助けていただきました……お礼を一言申し上げたくて……
 噂でこちらに滞在しているとこのことでしたので、田舎から飛び出してまいりました」
そういわれれば、心が動かないはずがない。
ましてや、儚げな美女。
「中尉が戻るのは夜です。その頃にもう一度お尋ね下さい」
「ありがとうございます、兵士様」
頼られるのは、誰も悪い気はしない。
それが上玉であればあるほどに。
(中尉いいなぁ、今夜は御馳走ってやつだよ……)
左手で隠した口元が小さく笑う。
誰にも気付かれないままに。
そして月に雲が翳る頃、彼女はもう一度その地を踏みしめた。




通された通路は何処も同じようだと心の中で笑う。
「中尉、昼間のお方ですが……」
「あー……どうぞ」
戸惑いがちな声。
ドアをノックして彼女は静かに後ろ手で扉を閉める。
その慣れた手つき。
鍵をかけてくすくすと笑う顔。
「……あー……その、おぼえはありすぎて……誰なのかも……」
少女はうふふと唇で笑った。
ほんのりと塗られたチェリーグロス。
首筋からは甘い香り。
髪が揺れるたびにぷわん、と引き寄せられる。
「憶えてないのですか?」
「あー……すまない……っ!!」
男の胸に凭れて、そっと手を添える仕草。
上目で見上げられて、小首を傾げられれば胸の奥がぎゅっと締め付けられる感触。
「しょーがねーよな。俺が助けてやったんだから。酒場のねーちゃんにからまれてるところをさ」
その声にスモーカーは耳を疑った。
「なっ!!おまっ!?」
ばさりと外れる黒髪。
窓から差し込む明かりを受けて、ストロベリーブロンドが華のように煌めく。
「へへ……入り込むには頭使わなきゃね」
ハンカチで顔を拭けば、トレードマークの三本の傷。
「赤髪の……ッ!!」
さっとスモーカーの唇を手で塞ぐ。
悪戯っぽく片目をぱちり、と閉じて小さく笑う唇。
「中尉、誰かに知れれば降格ものですよ?」
薄い唇が猫のそれのように歪んで笑う。
ベッドに座り込んでシャンクスは腕を伸ばす。
傷だらけの細い腕。それでいて、サーベルを軽々と振り回す魔法の腕。
「何をしにきた」
「お、十二時回ったな。今日、何の日か知ってるか?」
「三月十四日だろうが」
「ホワイトデーって言うんだよ。バレンタインにチョコやったろ?お前にも」
そういわれれば一月前、窓際に小さな小箱が置いてあったこと思い出す。
真っ赤なリボンでくるまれて、カードに残されたイニシャルは『X』の一文字。
「まさか、あれは……」
「ちゃんと名前残してやったろ?俺様の手作りチョコなんて超レアもんだ」
首筋に手を伸ばして、じっと見上げてくる大きな瞳。
「お返し、貰いに来たんだけど」
小首を傾げる様は、まるで少女のようで心をくすぐる。
傷が無ければそこいらの女よりもずっと色香のある容貌。
細やかな筋肉で作り上げられた身体は、余計なものを削ぎ落とした美しさ。
二つの乳房は、掌に余るほど。
刻まれた傷は泣かせた海兵の数よりも少しだけ多い。
ちゅ…と触れるだけのキスと唇を舐める舌先。
「きゅ…急に来て要求する方が間違ってるだろうがっ」
「だぁ〜〜ってビックリさせたかったんだモン」
「可愛らしく言っても、騙されんぞ!」
真っ赤な髪をかき上げて、シャンクスは哀しげに笑う。
薄い唇と、伏せられた睫。
「そんな言い方しなくたって……折角逢いに来たのに……」
半分泣き出しそうな声。項垂れる姿を見れば鉄の心も一瞬で溶けてしまう。
海賊は手先が起用。いとも簡単に縛り付けていた鎖を解いてしまう。
強奪、奪取は日常茶飯事。
『欲しければ、奪え!』が海賊なのだから。
「……シャンクス……」
そっと頬に触れる大きな手。
「なんて言うと思ったか?だからお前すぐ騙されんだよ」
頭の後ろで手を組んで、シャンクスはこきりと首を鳴らす。
「逢いたかったのは、本当だぜ。船を抜けてここに来たんだから」
この街は、海賊にとっては死を意味する場所。
その中に単身乗り込んだ女海賊は、大胆不敵に優しく笑う。
上着に掛かる細い指。
「キスの一つくらい、貰っていこうかな」
「……………」
小さな頭を押さえるように抱き込んで、貪るように唇を重ねる。
入り込む舌先に応えるように、シャンクスはスモーカーの背中を抱いた。
「……っは……あ!?」
ひょい、と持ち上げられてベッドの上に落とされる。
強かに腰を打ちつけたのか、彼女は眉を顰めた。
「キスだけで足りるか?」
「足りねぇよ。分かってんじゃん」
三本傷に唇が触れて、ぺろ…と舐めあげる。
「久しぶりだけど……朝になる前に帰るってだけ言っておく」
シャンクスは少し寂しそうに笑った。





「……んっ……!……」
向かい合わせで抱き合って、女は男の割れた腹筋に手を掛ける。
手を取って、自分の腰に回させて。
「凄い傷だな……」
左肩から、右胸にかけて斜めに走る刀傷。
それを唇でなぞりながらスモーカーの手はゆっくりと下がっていく。
「あ……ッ……」
「躊躇無しで斬ったって感じだな」
まだ薄っすらと赤く腫れたそれは、彼女の肌の上で存在を誇示する。
両手でまだ張ったままの乳房を包むように揉んで、その頂に唇を当てた。
掠めるように触れる舌先。
柔らかい乳房は、少し力を入れるだけでその形を変えてしまう。
少しだけ体重をかければ、素直に倒れる身体。
「んっ!」
ちゅぷっと乳首を吸われて、肩が揺れる。
そのまま甘噛するとぎゅっと目を瞑る仕草。
捻るように摘み上げて、左右を交互に舐め嬲る。
きゅん、と親指で押すたびにふるふると揺れる二つの胸。
「あ……!!」
舌先はぬるぬると下がって、小さな窪みを舐めあげていく。
所々に噛痕を残しながら。
腰骨を撫で上げて、無骨な指が膝に掛かる。
そのまま左右に押し割って、脚を開かされた。
薄い赤茶の茂みに、顔を埋めて舌先を入口に捩じ込む。
「やっ!ちょ…待て…ッ…!」
上がる声などお構い無しに、唇全体を使って貪るようにしゃぶりついてくる。
肉襞を確かめるように動く舌先。
「あ!!や、ま……って……」
腰を押さえるように抱かれて、自由に動くことさえままならない。
ぐりぐりと別の生き物のように、舌先は内側で動き回る。
時折じゅる…と音を立てて吸い上げられて、その度に彼女の体が大きく跳ねた。
「あ……っは…!……」
少しずつ、力が抜かれていくのが自分でも分かる。
膝はがくがくと震えて、されるがままに開かされたまま。
「……ふ…ぅ……ッ!…」
せめて、上がる声と吐息だけでも抑えようと親指を噛む。
爪と歯が触れ合って、乾いた音を上げた。
その手を外されて、唇が重なる。
絡む舌先をうけながら、同じように返して吸い合う。
離れてはまた重ねて、噛み合う様なキスを繰り返した。
細い向脛を這う唇。踝を噛んでそこに走る傷を舐め上げる。
「あ!!あ、やだ…ァ…!」
執拗に繰り返されるそこへの接吻に、耐え切れずにシャンクスの指先が男の頭に触れた。
「意外なところが弱いんだな」
「ちが…ッ!!」
翻弄することには慣れていても、翻弄されることにはまっさらな身体。
乳房がシーツに触れるギリギリの所で、腰を浮かさせる。
「……?……」
「力抜いてろ」
何かを窄まりに塗りつけられる感触。
ぬるりとして、背筋に走るぞくぞくとしたもの。
「!!」
ぐ…と押し広げながら入り込んでくる太い指先。
それが進むたびにびくんと震える身体。
「アッ!!」
背中に走る傷をなぞる舌先。そのまま背骨の線を辿って肩甲骨に唇が触れた。
かり…と噛まれて、指先に力が入る。
シャンクスの緊張と動揺などお構い無しに、スモーカーの指は奥へ奥へと沈んでいくのだ。
かき回すように、時折押し広げるように。
「……っは……あ!!」
溢れた粘液は、シーツの上へとろとろとこぼれる。
ぐぐっと蠢く指に、ただされるしかないこの歯がゆさ。
支配する側であって、されることには抵抗のありすぎる女。
「コッチは……初めてか?」
意地悪く耳元に吹きかけられる息。
「その趣味は……ねぇ……」
「素質は、十分みたいだけどな」
指の本数を増やしながら、ゆっくりと解して行く。
なれない場所に受け入れさせるにはそれ相応の下準備が必要だ。
浮いた汗と、シーツをきつく握る指先。
指先をくわえ込ませたまま、空いた手でシャンクスの体を少しだけ押さえつける。
「余計な抵抗は、考えねぇほうがいい」
「……後で、殺す……ッ……」
細い首筋に噛み付いて、彼女の力を奪う。
「あ!!あんッ!!」
今、この状態でならば海軍を泣かせまくる女海賊を容易く捉えることが出来る。
そんな考えがスモーカーの頭を過ぎった。
けれども、シャンクスは海賊としてではなく一人の女としてここに来ている。
そして、そうすることは彼の美学にも反していた。
「息だけ、ゆっくりと吐いてろ……」
無骨な手が、少しだけ優しく赤い髪を撫でる。
目尻に溜まった涙と、染まった頬。
いや、耳まで真っ赤に染め上げて、何処もかしこも鮮やか過ぎる色合いだ。
「!」
先端のあてがわれる感触に、ぎゅっと閉じられる瞳。
まるで楽しむかのように、それはゆっくりと侵入してくる。
今、自分が犯されているだということを知らしめるかのように。
「……ひ……ァ!……」
小さな悲鳴は無視を決め込んで、中程まで挿入してあったものを一気に貫通させる。
質量と衝撃に逃げようとする体を押さえつけて、腰を進めた。
「あ!!や……だ……ッ!!」
深々と貫かれて、荒い息だけが室内に響く。
「動かすぞ」
「や……だ…ァ!!」
言葉は聞かない振りをして、容赦なくスモーカーはシャンクスを突き上げていく。
走る痛みと圧迫感。一突きされるたびに、粘膜を擦られる感覚。
「!!!」
ふいに走る甘い悦楽。
「あ!!……っは…ンッ!!」
剥かれた突起を親指で攻められる。まるで戯れるかのように時折きゅっと摘まれてその度に嬌声が上がった。
不快感と快感の混在は、彼女を執拗に攻め立てる。
「あ!!あんっ!!も……っと……!!」
「何がどうしたいって?あぁ?」
備考をくすぐる煙草の匂い。
「そこ…ッ!!もっと……触って…!!」
赤い茂みを十分すぎるほど濡らした体液を救って、擦り上げる。
「ひ…ァ!!ああァッ!!」
後ろから抱かれるような形に変えられて、何度も強く打ち付けてくる男をいつの間にか腰を振って受け入れていた。
嫌だったはずの感覚は次第に薄れて、『もっと』とねだる。
「あ…んんッ!!イ……ッ…」
ぷるんと揺れる乳房を形が変わるほど鷲掴みにされても良いほどに。
痛みは、いつの間にか快楽に摩り替わっていた。
「素質は……十分だな……」
ぺろ、と耳朶を舐められて鼻にかかるような甘い声。
くわえ込んだ後穴が、じりじりと二人を追い詰めていく。
「……っん!!……バカ……ッ!!」
「悪態吐けるのは、さすが赤髪ってとこか……ッ」
男の顔を抱き寄せて、貪るように唇を求める。
舌先も、口唇も、全部使った卑猥で淫猥なキス。
欲しいのは心じゃなくて、今だけならば持て余したこの体を冷まさせるためのもの。
もっと、熱くなっても構わない。
「ンんんッッ!!!あ!!ああアッッ!!」
濡れきったそこに入り込む三本の指。
内側で執拗に蠢くそれを締め付ける柔肉と襞。
海賊になって何度か無理やりに抱かれたことはあっても、初めての快楽にシャンクスの理性は簡単に吹き飛んだ。
強さは、紛れも無く彼女を守ってきたのだ。
膝を折られて、体を曲げられてより深くまで繋がっていく。
根元までしっかりと受け入れて体全部が性感帯にでもなったかのような錯覚さえ生まれた。
「……ふ…!……ぅん!!」
張り詰めた乳首をきゅっと摘まれて、こぽ…と入口から体液がこぼれる。
「あ!!もっと!!も…っとぉ…ッ!!」
充血した突起も、浮いた腰骨も。
何もかもが男の手を、熱を欲して止まない。
「あああああッッッ!!!」
一際強く貫かれて、シャンクスの体はゆっくりと崩れ落ちた。





「結局何が欲しいんだ。お前は」
のろのろと重い身体を起こして、シャンクスは窓枠から見える風景を指差す。
「あれ」
細い指先が示すのは、海の上に笑う月。
「無理を……」
「あの近くまで、連れてってくれよ」
覗き込まれて、言葉をなくす。その瞳は海賊の目ではなく、一人の女の目だった。
脱ぎ捨てたワンピースを身に纏って、シャンクスは大きく窓を開けた。
「綺麗な月だ。やっぱりあれが一番欲しい」
「しょうがないオンナだな。来いよ」
エスコートでもするかのように、スモーカーはシャンクスの手を取った。
「ここに座れ」
「前に?」
「後ろに立てるほど、腰立ってねぇだろうが」
咥え煙草の男の前に座って、シャンクスは膝を抱えた。
初期型のビローアを走らせて、飛び出したのは真夜中の海。
黒と紫の混在する世界は、見慣れているはずでもどこか違っていた。
「綺麗だな〜〜〜、やっぱ」
潮風がシャンクスの髪をかき上げる。
月光が眩しいのか、彼女は手で目を覆った。
「この月が欲しかったんだ。ずっと」
「…………………」
海軍を困らせるはずのオンナは、まるで子供のように笑う。
どれだけ望んでも、手の届かないもの。
それは、どこか恋にも似た気持ちだった。
「俺にもっと力がありゃあ、奪い取れるんだけどな」
「月を?」
スモーカーの唇から煙草を奪って、咥える薄い唇。
「お前をだ。あの船から」
「…………スモちゃん、いっつもそんなキザなこと言ってんの?」
「言うかッ!!お前が言わせたんだろうがッ!!」
す…と手が伸びて、その首を抱きしめる。
「嬉しい。そんな言葉言われたこと無いから」
「……シャンクス……」
赤い髪からはほんのりと甘い匂い。
それはまだ少しだけさきの『春』という季節。
「月はやれねぇ。ありゃ、誰のものでもねぇからな」
「……ん……」
上着のポケットを探って、スモーカーはそれをシャンクスの首に掛けた。
幻といわれた猫目石のペンダント。
売れば数十奥ベリーは下らない一品だった。
淡い光を放つそれはどことなく月とシャンクスに似て、主の場所に戻ったかのように彼女の首で揺れる。
「いいのかよ。これ」
「どうせ飾られるだけのもんだ。お前が持っててもおかしくはねぇ」
宝玉にキスをして、そっと頬にも同じように降る唇。
「ホワイトデーとやらには、お返しをするんだろ?」
「……サンキュ……」
浮かぶ月夜に、影が二つ。
ゆやゆらと秘密の話をした。
「来年も、チョコ欲しいか?」
「ああ。もらえるんならな」
「すっげーの、作ってやるよ」






明け方前に、シャンクスは来た道を一人で戻っていく。
その影が見えなくなるのを確かめてから、スモーカーは顔を洗った。
さっきまでの男から、海軍中尉になるために。
朝焼けは同じようにシャンクスを女から手配中の海賊に染め上げていく。
(そういや、ミホークとバギーからまだお返し貰ってねぇな。回収すっか)
誇らしげに笑う猫目石を摘み上げてシャンクスはいつもの顔で笑った。
シャンクス21歳、スモーカー23歳。
まだこの時は互いの未来など、見えなかった。





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19:45 2004/04/19

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