◆恋のターゲットボーイ◆
城門と門兵は強行突破。人質はこの国の軍師。
「太公望ーーーーっっ!!!!」
追いかけてくる発に向かって天化は舌を出して笑う。
「師叔は預かったさーーーっっ!!王様は旦さんからみっちり勉強教わるさねーーっ!!」
下準備は抜かりなく。事前に宰相に話は持ちかけた。
国政を担う旦からすれば武王に教授する時間はどれだけあっても足りない。
隙あれば軍師の尻を追い掛け回すのがこの武王だからだ。
「小兄さま!!今日は逃がしませんよ!!」
「うがーーーっっ!!憶えてろよ天化ぁぁああああっっ!!」
叫び声を背後にして二人は街中へと消えていく。
「天化君っっ!!」
「おーーっと、近づくとこの場で師叔を犯すさ」
天化の言葉に少女はわざとらしく「きゃー」と悲鳴を上げる。
笑いながら走り去る二人に零れるため息。
背中を見送って青年は空を仰いだ。
「師叔もああいうの楽しんじゃうもんなぁ……僕じゃできないし」
まっすぐな目線とわずかばかりの下心。
空に溶けて雲に変わった。
息を切らせて二人で紛れ込んだ雑踏。
しっかりと絡めた指先からつ伝わってくる体温。
「望、疲れたさ?」
「いいや。わしもこれでも道士じゃて」
見上げてくる顔は、こうしてみれば幼さが目立つ。
少女に成りたてのような妙齢。
派手な化粧も飾り気も無い素のままの姿。
「望は、わしって言う前は何て自分のこと言ってたさ?」
「何時ごろの話じゃ?」
彼よりも大分年上の少女は、それを気にすることが多い。
それでもそれを跳ね飛ばすような猛打でその心に入り込んでくるのが天化だった。
「んー、んじゃ、仙界入りする前」
「その頃は、普通に望と言っておったな。十二の頃じゃ」
「じゃあ、それがいい。今日だけでいいからさ」
半ば拝み倒すような天化に、太公望は小さく笑う。
「子供のようだと笑わぬか?」
「絶対笑わないさ!!」
きゅ…少しだけきつく指先が絡まる。
「天化、望をどこに連れて行ってくれるのじゃ?」
言葉尻が気にはなるがこれ以上を望むのは無理だろうと。
高望みをすれば願いはこの指を砂のようにすり抜けしまう。
「望の好きな甘味処。寒いから甘くてあったかいもん食ってからあちこち行くさ」
匙に白玉を掬って満足気に飲み込む。
広がる小豆と練乳の甘さに綻ぶ唇。
「よく見つけたのう……わしでも知らぬところじゃ」
「普賢さんに聞いたさ。望をだましきるのは俺っちには無理だから言うけども」
同じものを頼んで少年もそれを口にする。
「天化」
「?」
「ほれ、口を開けよ」
栗を掬って、じっと見つめられれば。
「な、え!?俺っち!?」
「それとも、わし……望の出すものでは嫌か?」
困ったように表情が曇って、悲しげな色が瞳に揺れる。
「違うさ!!すっげ嬉しい……」
「そうか?ほれ、あーん」
こんな何気ないことでも、二人にとっては新鮮な出来事。
言葉よりももっとわかりやすく大事なこともあるから。
「こうして天化と歩くのも、久しぶりじゃのう」
「ずっと望は忙しいさ。俺っちも我侭は言わない」
冬の寒さは今までの距離を縮めてくれる優しい冷たさ。
凍る空気が『おいでよ』とくっつけてくれる。
「今度はこっちさね、望」
彼女の歩幅に合わせて歩く。
(あ……ゆっくりさ……)
宮中では忙しく小走りになってしまう。普段の彼女はこんなにもゆるりゆるりと歩く
ことに今更ながら気が付いた。
周りの風景や人間を見ながら、一歩一歩確かめるように。
「早く……ないさ?」
「平気じゃよ、天化が望にあわせてくれるから」
煌く宝石も夢色の真珠も魔法を閉じ込めた琥珀も。
どれも彼女の心を射止めるものには成り得ない。
「寒い?」
横に触れる首と、寄り添ってくる小さな身体。
「寒くないよ。冬は嫌いではないから……」
もしも、自分たちが道士ではなかったらこうして街を歩く事だって普通だったのかもしれない。
けれども道士であったからこそこうして出逢うことが出来た。
出逢ってしまったことで得る悲しみや苦しみと、出逢わないままの幸福。
きっと一番の寂しさは出逢わないで迎えたであろう日常。
「あ、ここさ。ほら」
竹で作られた深底の桶の中、ちょこまかと走り回る兎たち。
伸びた耳がゆらら、揺れて冬毛の白さは綿帽子。
「兎か……可愛いのう……」
宮中で動物に触れることは滅多に無い。そしてそれだけ彼女も自由に動ける身ではないのだ。
手を伸ばしてその中でも少しだけ小さな仔を抱き上げる。
「ははは……くすぐったい」
頬に触れる耳と笑い声。
「好きさ?」
「好きじゃよ」
ふわふわの真白の雪よりも、もっともっと柔らかなその笑み。
(か……可愛いさねぇ……)
「兎よりもおぬしをな。天化」
一撃必殺の言葉はいつも、さりげなくなにげなく唐突に。
真摯に見つめるよりもさらりと言われるほうが効果が大きいから。
「雪……降ってきたさね。どっかあったかいとこ、行くさ……」
並んで今度は同じ歩幅で歩く。自分の肩の辺りに在る小さな頭。
こつん。触れられるだけで心臓が破裂しそう。
「望は、このまま歩いてるのも楽しいぞ」
「俺っちもさ。けど、望の足のほうが心配さね」
「天化の指、温かいのう……」
幸せの小道、ただ歩くだけでも満たされる。どこでも、どこまでも。
この坂道を登って、少しだけ息が切れても。
隣に君が居ることだけで何もかもが許せてしまう。
嗚呼、恋とはこんなにも心を穏やかにそして……醜くもしてくれる。
獣となってその胸を喰らって飲み込んで一つになりたいと思うのも。
抱きしめてただ触れ合っていたいと思うのも。
どちらも自分の真実なのです。
「と、とにかく中にはいるさっ」
雪は霙に変わって二人の肩を濡らす。
足元が汚れてしまうからと飛び込んだ先は曰くつきの店。
軒下でとどまるには少しばかり勇気が必要。
「べ、別に狙ったとかそんなんじゃ……望っ!?」
情宿(ラブホテル)の案内を見ながら、少女は興味深げにしげしげと見つめる。
「天化、望はここがいい。城の部屋と全然違って面白そうだ」
桃色を基調としているらしいその部屋に、少女はどこか興味が在るらしい。
「そ、そうさ……?」
そうしている間に鍵を受け取って、少年の腕に自分のそれを絡ませる。
「こういうところ、来たことがほとんど無いのじゃ。いい勉強だのう」
「俺っちもそんなに入ったことはないさね」
焦る気持ちを飲み込んで扉を開く。
ここから先は誰も入ってくることの無い空間。
ふかふかの寝台には羽飾り。ぽすん、と腰掛けて少女は枕を抱いた。
「ふわふわしとる。天化も来るがよい」
甘い匂いに誘われて寝台の上に座り込む。
足の間に身体を置いて、少女は少年にもたれ掛かった。
「どうかしたのか?」
「ん?何でもないさ」
顎先をくすぐる指先がそっと下がっていく。胸もとの組紐を解いて肌に触れて。
「…ァ……」
耳朶を噛んで下着の上から秘裂を指先が上下する。
小さく震える肩先と零れる吐息。
「ふぁ……天…化ぁ……ッ…」
何度も撫で擦られて時折きゅん…と肉芽を摘まれて。
じんわりと布越しに感じる体液の温かさ。
「んぅ……!……」
それでも焦らす様に決して中には入らないまま。
立てられた膝が震えて、見上げる瞳が甘く誘う。
「あ……ア!…ぅ……」
指先で分かるほど濡れてきても、悪戯に指先は布越しに動くだけ。
「も……や、あ……ッ…」
耳の先まで真っ赤に染めて、何度も何度も首を振る。
首筋を噛んで残す赤い痣。
「!」
敷布の上にそっと倒されて絡まっていた衣類を落とす。
晒された裸体と汗ばんだ肌。
「折角こんなとこ来たんだから、いーーっぱいやらしいことしたいさ」
残った下着に手を掛けてゆっくりと脱がせていく。
ぬるついたそこと布地を繋ぐ体液。
「やーらしいさねぇ……こんなに濡れてる」
指先が突起をくりゅくりゅと転がすようにすれば、その度に身体は震えて愛液が零れる。
脚を大きく開かせて舌先で裂け目を舐め上げた。
「ふあ……んんっっ!!」
捻じ込む様に入り込んだ舌が蠢いて、びくびくと腰が揺れる。
べちゃりと押し当てられた唇が音を立てて体液を吸い上げて。
そのまま舌先はひくつく突起に触れた。
「きゃあんっっ!!」
小突くように肉芽を唇が包み込む。ねじ込まれた指先が押し上げるように蠢いて。
根元まで沈めて彼女が一番喜ぶ場所を攻めあげる。
「びしょびしょさね……望……」
重なってくる唇と絡まりあう舌先。同じように天化の上着を脱がせて抱きしめ合う。
引き締まった身体とどこかあどけなさの残る顔立ち。
「そんで、ここにはこんな玩具があるさ」
街の情宿には思いもよらないものばかり。
「ほら」
手にしたのは男根を模した張り型。幹根と祈祷にはぼこぼこと歪な疣が何個も付いている。
「な……天化っ……!!」
先端が入り口に触れて、そのまま一息に膣内を犯していく。
ずり落ちないようにと革帯で腿に縛り付けて。
抵抗する間も与えずに、まるで肉欲人形のように。
「あ…ぅ……!!……」
うつ伏せにさせて腰だけを上げさせる。
隠微に光る入り口と溢れ出したぬるつく体液が太腿を濡らした。
隙間なく埋め込まれた淫具の色は深桃。
それが明らかに異物だと認識できる色。
「こっちも……」
「あんっ!!」
ひくつく蕾に塗りつけられる何か。そしてそれを瞬時に理解できてしまうこの身体。
大概ならば媚薬を塗りつけてあとは交わるだけ。
「んで、これも使ってみるさ」
「!?」
桃の種ほどの大きさの珠が幾重にも連なった淫具。
数は十五、六はあろうかというものだ。
「ふぁ…ああああぁんっっ!!」
数珠球が菊座に触れて内部への侵入が始まる。
前後を同時に犯されて上がる悲鳴にも似た嬌声。
潤滑油代わりの媚薬の力もあって、彼女がどんなに身体をゆすって抵抗しても苦もなく飲み込まれて行く。
淫球全部を飲み込ませて、一番最後についている金具に指先を引っ掛けた。
「あ……ふ……」
「気持ちいい?」
はぁはぁと荒い息と力無く横に揺れる首。
「嘘。すっげぇ濡れてんのに……やらしいこと大好きなくせに」
淫具で塞がれたはずの膣口から溢れて来る愛液。
言葉を封じるように、く…と数珠玉を引き抜く。
ぷちん…抜け出す際の粘膜への刺激に唇を噛んだ。
押し込んだそれを軽く動かす。
ゆっくりと嬲るように、一つずつ引き抜いていく。
「あ……天…化……っ……」
「ゆっくりだと満足できないさね、望……」
天化の唇が小さく笑って、それを一気に引き抜く。
「ひぁ…ぅんんんっっ!!!!」
ぼこぼこと擦りながら、張り型と薄膜一枚隔てて出て行く珠に蹂躙される肢体。
そのたびに腰が揺れて『もっと』とねだってしまうこの身体。
「ああああああっっっ!!!!」
びくびくと痙攣しながら、少女の身体が崩れ落ちる。
どろり…押さえきれない愛液が噴出すようにこぼれた。
唇からだらしなく零れる涎と、余韻に震える腰。
「あーあ……壮大にイッちゃったさね……」
力の抜けきった身体を抱いて、今度は天化のそれが後穴を貫く。
肉棒の熱さに痺れと疼きが生まれて、蕩け出す意識。
「ああぁぁんっ!!」
ぐちゅぐちゅと何度も突き上げられて、ぷるぷると乳房が揺れる。
ぎゅっと乳房をつかんで指先で尖った乳首をきゅん…と摘んだ。
「やぁ……!!ああああっ!!」
「……っは……ちょっとキツ……」
「んぅ!あ!ああっ…!!…」
背中越しに感じる体温と耳元に掛かる息の熱さ。
神経がそこに集中したかのように天化の動きに身体が鋭敏に反応する。
「これ、ここ押すと動くさ……」
「!!」
くわえ込まされた張り型がぶるぶると振動しながら膣内を抉るように動き始めて。
それまで使わなかった先割れの部分が剥きだしになった肉芽に添えられた。
全身の血液が逆流するような錯覚と甘い甘い攻め具の動き。
「きゃあああっ!!!あ!!ああアァッッ!!」
三箇所を同時に攻められて、何度も何度も絶頂の波に飲み込まれていく。
それでも人工物のそれは疲れなど知らずに少女を犯し続ける。
抉る様に回転したかと思えば、上下運動に切り替わり始めて。
肉芽に加えられる刺激も重なって敷布をべとべとになるまで愛液が濡らす。
「や、ああああっっ!!天化…ッ!!天化ぁ……ッッ!!」
「どっちも挿入ってると気持ち良いさ……?」
唇から零れる涎を舌先で舐め取って、抱き寄せて何度も何度も唇を重ねて。
この肌一枚でさえも邪魔だと思えるほどに求め合う。
「あ、ああっっ!!く……ぅん……ッ!!」
ぽろぽろと零れる涙と止まる事を知らない愛液。
内側で二つの亀頭が子宮を押し上げていく。
「ひぅ……ああああああっっっ!!!!」
びくんと一際大きく身体が震える。
天化の腕に手をかけてどうにか身体を支えようともがく。
腿に掛かった手が脚を広げさせて、結合部を見せ付ける。
「やー……っ!……」
「うっわ……やーらし……すっげ光ってぬるぬるしてるさ……」
違うと言おうにも言葉が口から出ない。
出るのはあえぎ声と吐息だけ。
獣染みた接吻を重ねて体液を交換し合う。
「ほら……見えるさ?どっちも咥えて『気持ちイイ』って言ってる……」
視界に入る己の恥部。淫具と男根を根元までしっかりと咥え込んで収縮を繰り返す。
「あ……ァ……!!…っ…」
己の身体の浅ましさとそれでもこの快楽を失いたくないと叫ぶ本能。
繰り返えされる注入は、指が触れただけでも反応するまでに身体を目覚めさせた。
張り詰めた乳房に指が触れてがくがくと膝が震える。
「ひぅ…っん!!…く…ァ…!」
「おれっちも……そろそろイかせて……」
腰を強く抱いて、よりいっそう激しく腰を突き動かす。
もう何も考えられなくて、ただ深く強くまぐわりあいたいだけ。
肉の塊が二つ、原始の卵に還る様に。
「アあんんっっ!!」
内側に溢れる白濁と汗の匂い。
身体が崩れたのは二人一緒だった。
「望……大丈夫さ……?」
枕に顔を埋めて、少女は肩で息をする。
「大丈夫……じゃない……」
「あー……やっぱそうさ?」
悪戯が過ぎたと、彼にも自覚はあった。それでも自制が効かないほどに彼女の痴態は
魅惑的だったからだと理由付けて。
「望があんな可愛い顔でやらしい声出すのが悪いさ」
「そーいう声を出させるのは誰じゃ」
頬にちゅ…と接吻してもつれるように抱きしめあう。
「まだまだ色んなことしたいさ。この先も望と一緒に」
ここから出てしまえばまた二人、軍師と剣士に戻るから。
「望の身体が壊れぬ程度にな……天化」
頬に手を添えて、鼻先に擽る様に触れる唇。
まだ痺れたままの身体は冷めることなど知らない。
「う…っわ!!」
「今度は望が天化を苛める番。覚悟しろ」
「待った、待ったさ!!ちょい、休憩……」
城を抜け出して、せっかくここまで来たのだから。
楽しむだけ楽しまなければ軍師には戻れないと少女が囁く。
「やらしくて可愛い軍師さまさねぇ……」
薄暗さもほんのり匂う麝香も、どこか人肌にも似た室温も。
すべてが房事に最適なように仕組まれたこの空間。
「一服させて。そしたらいーっぱい続きできるさ」
「望の分もあるならな」
煙草味の接吻は彼とだけ分かち合えるもの。
一つの灯を分け合って紫煙を吸い込む。
「まだ玩具いっぱいあるさ」
「しかし、情宿(ラブホテル)と言うのは、みなこうなのか?」
「いんや。望が選んだ部屋は玩具盛りだくさんのとこだったさ」
小箱の中から取り出した小さな避妊具。少女の掌に乗せて。
「使う?」
「要らぬ。子を孕む訳でもないしな」
「俺っちもあんま好きじゃない」
「ほかの部屋も面白かも知れぬな。次は誰と来ようかのう」
わざと意地悪な視線を作って、天化をちらり、と見やる。
「駄目。全室制覇するなら俺っちが付き合うさ」
「んー……そうか」
「そうさ」
少しだけ引いた火照り。それでも彼の指先がまた火を点ける。
終わらない夢のように。
恋は突然にときめくから。
閃き直感全部ひっくるめて君を追いかけよう。
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16:01 2006/02/03