◆咲き乱れよ、乙女たち〜道徳真君編〜◆



さらさらと流れる薄。
仙界にも四季はあり、その移り変わりを愛でるのもまた一興。
「そう、明日は満月なんだよ」
「月見酒でもやりたいのう」
頭を垂れた薄の穂。一本を手に取り太公望はくるくると回す。
「しかし、わしは戻らねばならんのだよ。おぬしの胡麻団子と果実酒を楽しみにしておったのだが……」
庭先に出した卓台と長椅子。
彩る花々と樹木の色は秋模様。朱色、黄色、緋色、洛陽。
全てが最後の色を見せ、鮮やか過ぎる彩を織り成す。
「じゃあ、持っていく?天化とでもお月見するとか」
「……あれは風雅を愛でる心を持ってはおらん」
その言葉に普賢もはぁ、とため息をついた。
「師匠によく似た弟子だね……道徳にもそんな心無いよ……」
秋の夜長、たまには名月を見ながら穏やかに過ごしたい。
そう思えるのは女心。
秋の夜長、濡れた身体を抱き寄せて、暖かさと熱さに溺れていたい。
下心と紙一重の恋心を持ち合わせるのが男心。
「じゃあ、ヨウゼン?」
「あれは下心が見え見えじゃ。まったく玉鼎によく似て……」
たまには恋心無くして風雅に身を沈めたい。
その気持ちを酌んでくれる男が身近にいないと太公望は嘆いた。
「そういえばモクタクに花を貰ったことがあったのう。おぬしの教育か?」
「ううん。多分それはモクタクの御母堂の教えだと思うよ。季家の子供は皆、心優しいからね。
ナタクだって、道行には攻撃しないからね。太乙には力一杯するのに」
まるで子供をあやすように、道行天尊はナタクに接することがある。
母となったものだけが持ち得る感情。
その手の中に、小さき魂を抱くのだ。
「お月見、望ちゃんとしたかったな」
「昔は二人でよく月を眺めたものだったのう……」
今は、二人。
別の場所で同じ道を進み行くから。
昔した小さな『約束』は『誓い』に形を変えて互いの胸の内にある。
進み道も、見る未来も同じ。
ただ、あるべき場所が違えるだけで。





薄を束ねて、細身の瓶に挿す。
庭先に積もった紅葉は目に鮮やかな赤。
(たまには一人でのんびりとお月見しようかな)
吹き抜ける風は、冬の気配をさりげなく運んでくる。
終焉の季節を向かえ、来るべき芽吹きのために生命は深い眠りにつく。
「普賢」
「ああ、どうしたの?」
窓を開けて、風を入れれば室内の空気がぴしりと変わる。
「いや、用は無いんだけども……その……」
改めて言われればどう答えれば良いか戸惑ってしまう。
「明日だったら良かったのに。満月でお月見とか……」
「泊まってく。二日くらい洞府空けたって何も問題なんて無いから」
にこにこと道徳真君は笑う。
(道徳ってたまに……時々、仙人じゃないみたい)
まるで自分の洞府のように振舞う姿。
(いいんだけどね。どうあったって道徳には変わりないんだし)
誰かが居ると口にしないが、甘いものが好きな恋人のために。
とっておきのお茶と御菓子を。
(そういえば、前にもいきなり来たことがあったよね……凄く泥酔してた時に……)
ぼんやりと思い出しながら小さな花を一撮み茶器の中に入れる。
薄桜色の花は湯に触れて優しく開く。
(そうそう。あの時も満月だったんだ……)




「師匠、ご機嫌ですね」
のんびりと書物を開く姿。小さな眼鏡を指で押し上げて、普賢はモクタクの頭を子供にするように撫でる。
「モクタクは可愛いね」
「師匠に可愛いって言われたら、男として問題があるような気がするんですけども」
子供が二人並んだようなこの師弟。じゃれあっている姿はさながら兄弟の様でもある。
揃ってのどかで穏やかな気性。基本的に争い事は好まない性分。
「今日は道徳師伯のところに行かないんですか?」
「モクタク、まるでボクが毎日道徳のところに通ってるみたいな言い方だね」
「いや、師伯と師匠の関係知らない奴なんか崑崙にはいませんよ」
そういわれれば反論の余地が無い。
お互いの洞府を行き来しているのは公然の秘密とされていた。
師表に当たる十二仙道士の逢瀬は本来は禁じられている。
一度教主にそれとなく問われたときに答えを思案していたところ、彼は堂々とこう言ったのだ。
『恋人に逢いに行くだけです』と、ただ一言。
叶わないならば、この仙号は返上すると付け加えて。
(あの時はさすがの原始様も何も言えなかったみたいだし……)
今夜はその問題の恋人は、旧友たちと宴会に興じている。
たまには師弟してこうして過ごすのも悪くは無いと普賢は笑みを浮かべた。
「でも、師匠には意外な相手ですよ。道徳師伯は」
「皆そう言うんだよね。誰なら言われなかったのかな」
「だって、師匠には賑やか過ぎるっていうか……もっとこう……」
言いかけて自分と並ぶ師匠の姿を思い浮かべてモクタクは口を閉じる。
恋したと同時に失った恋。
(あともう少し背が高かったら道徳師伯よりも、俺のほうが……)
普賢よりも、頭一つ分大きな恋敵。
自分の背丈では抱きしめることも叶わずに逆に抱きしめられてしまう。
(ちぇ……好きで小さく生まれたわけじゃねぇ……)
不貞腐れて卓の上にこつん、と顔を乗せる。
その額に触れる指先。
「そうだね。でも、皆が言うほど考え無しの人じゃ無いんだけどね。優しいところあるし」
(師匠、俺のほうが将来絶対にいい男になりますぜ!師伯には負けませんって!!)
「モクタクも、将来好きな人が出来たら大事にしてあげるんだよ」
(俺が好きなのは……あなたですよ……普賢師匠……)
窓の四角に囚われた月はそんな心を見守るように丸く、柔らかい光。
そして、それを打ち砕くようなドンドンと扉を叩く音。
「誰だろう、こんな時間に」
そっと扉に手を掛ける。
「どなた?」
「普賢、俺だよ。とにかく開けてくれっ!!」
「慈航?」
怪訝に思いつつも、ゆっくりと扉を開く。
「どうしたの?宴会なんでしょう?」
「……すまんっ!!!道徳、置いて行くからっ!!!」
肩を借りながら、真っ赤な顔の道徳真君。
「ちょっ……慈航っ!!!」
「普賢〜〜〜ただいまぁ〜〜〜」
視点も定まらないまま、抱きついてくる恋人。掛かる息には濃い酒気の影。
「頼んだっ!!!じゃっ!!!」
「慈航!!!あとで知らないからねっ!!!」
ぎゅっと抱いてくる男を支えながら、普賢はため息をついた。
「折角モクタクと二人でゆっくりできると思ったのに……」
「ん〜……」
ちゅっ…と舐めるように降る唇。
「こら!!道徳っ!!!」
「普賢〜〜〜〜」
額に、小鼻に、頬に、繰り返される接吻の雨。
手で押しのけようにも、力では勝てないことは分かりきっている。
「あ!やだっ!!」
胸元を弄る手。やんわりと揉みながら、空いた手が道衣の中へと入りこむ。
「ダメって言ってるでしょ!!!」
いつもよりも少しだけ強い口調。
酔っ払いには何を言っても通じないということを普賢はよく知っている。
太極府印を取ろうにも、しっかりと抱かれて身動きも取れない状態だ。
さすがにこの場に残るのは気が引けるとモクタクはそそくさと荷物を纏める。
「師匠〜、俺、文殊師伯のところに行きますから〜」
「ちょっと待ってモクタクっ!!」
「気にしないで続けてください。じゃっ」
「モクタクっ!!続けてくださいって何ッ!!」
小脇をするりとすり抜けてモクタクは兄の師匠である文殊の元へと行ってしまった。
その間にも指先は帯を解いて、素肌の上を滑っていく。
顎先をぺろりと舐められてびくんと肩が竦む。
「普賢〜〜〜〜」
「やだっ……酔っ払いは嫌いだよ!!」
「嫌い?」
哀しげな瞳で見つめられれば、心が動かないはずが無い。
「俺のこと、嫌い?」
「……嫌い……じゃないよ……」
「良かった……」
笑顔で頬をすり寄せられて、ぎゅっと抱きしめられる。
(もっと……ビシっと言わなきゃいけないんだろうけども……でも……)
ぱさり、ぱさりと一枚ずつ脱がされて。
「ここじゃ……嫌……」
「嫌?」
「だから……」
答えるたびにちゅ…と唇が降ってくる。
(もういいよ……成る様に成っちゃえば良いんだっ……)
「…あ……やんっ……」
下着の中に入り込む指に、上がる甘い声。
未だ少し奥まで入り込むには乾いた感触が指に伝わる。
「嫌?」
関節二つ分だけ内側に沈めたところで動きを止めて。
くい、と軽く押し上げて焦らしながら動きを僅かばかり加えていく。
「…んぅ……あ……!…」
「嫌?本当に?」
ぬる…指に絡んでくる体液は言葉よりも饒舌だから。
ぎゅっと道衣の胸元にしがみ付いてくる手。
「…や……意地悪…しないで…っ……」
「嫌なら、しないよ」
慣らされてしまった身体は、快楽に従順で微細な動きでも逃すまいとして絡みつく。
「…くぅ……んっ!!……」
「嫌?」
がくがくと崩れそうな膝。
向かい合わせ、普賢は両手で道徳に縋るような格好のまま首を横に振った。
「…嫌……っ…じゃないよ……」
奥まで押し入れて、指先を折って軽く突き上げる。
「あんっ!!!」
はぁはぁとこぼれる吐息と目尻に溜まる涙。
(…や……なんで…立ったまま……)
くちゅくちゅと濡れた音を立てながら、指を抜き差しさせればその度にびくびくと身体が震える。
「…あっ!…ダ…メぇ……!」
「何が駄目?こんなに濡れてるのに?」
「ここじゃ……やだぁ……っ……」
耳を噛まれ、腰を抱いていた手が乳房へと回る。
「あぁんっ!!やぁ…っ…」
「何で?こっちもこんなになってるよ……」
普段よりも、ずっと自分を甘く責める言葉。執拗に、拒絶の言葉を排除しようと。
(ボク……こんなの嫌だよぉ……)
きゅっと濡れた指が敏感になった乳首を軽く捻り上げると、細く括れた腰がびくんと跳ねる。
吸い付くような肌の上を、男の手はするりと撫でるように這い回っていく。
ただ、それだでも疼く様に造り上げられた身体。
「あ…あ!……あああぁッ!!」
とろとろと零れた体液が床に染みて行く。
「指だけでイっちゃった?」
まるで犬がするように頬を舐められる。ぬるぬると流れる体液は道徳真君の指を濡らして、もっととねだる様。
「ひぅ……っ…」
尚も奥で蠢く指に翻弄されながら、振り切れそうな意識を繋ぎとめる。
「!」
ずる…引き抜かれる感触。それすら甘い痺れを随伴するから。
抱きかかえられて、どさりと寝台に下ろされる。
「やっ……」
覆い被さりながら、つつ…と指は背筋を走り、小さな尻肉にたどり着く。
やんわりと揉みながら上向きの乳房に甘く噛み付いた。
「あ!ああっ!!やだぁ……道徳…っ!!」
ぴちゃぴちゃと舌は全身を舐めまわして、意識を蕩かす。
指で濡れた秘部を押し広げて、舌先を捻じ込む。
「きゃ……んっ!!やんっっ!!」
充血して敏感になった突起をちゅる…と吸い上げる。
「んんんッ!!!」
逃げようとしてもしっかりと抱かれて逃げられない。
唇全体を使って、道徳はそこを重点的にせめ上げていく。
「や!!やぁんっっ!!!」
「嘘……こっちは嫌じゃないって言ってる……」
「あぁッ!!止め…てぇ……っ!!」
「ヤダ」
びくびくと跳ねる細い身体。
舐め上げたり、吸ったりと強弱を付けて嬲られ、ただ喘ぐことしかできない。
かり…甘く噛まれて一際強い痺れが走る。
「あ!!やあああっ!!!」
力の抜け切った普賢を見て、道徳は満足げに笑う。
足首に唇を降らせて、踝を舐め上げる舌。
「…っは……やだぁ……っ…」
指を噛んで、上がる声を殺そうとすればその手を払われる。
唇はそのまま脹脛を噛んで、ぺろ…と舌先が怪しく動く。
「!!!」
ぐ…と濡れた入口に指が沈み、その感触に細い腰が跳ねる。
やんわりとした動きは、濡れた身体を焦らすよう。
「や…ぁ……」
「嫌?」
「…んぅ……嫌……じゃない……っ…」
内側で動く指と、触れるだけの接吻。
(や……意地悪……っ……)
懇願するような目で見られても、素知らぬ振り。
「どうして欲しい?」
耳元で囁かれ、沸き起こる羞恥心。染まった耳をパクリと噛まれて息を吹きかけられる。
腕で押し返そうとすれば、空いていた片手で両の手を拘束される始末。
「ちゃんと言って」
「やんっ!!……意地悪しないで……」
つぷ…と引き抜かれて、それを追うかのようにびくつく身体。
濡れた指先は触れるか触れないか、入口とその周辺をなぞり上げる。
「…っは……やぁん……」
「ほら……ちゃんと俺に聞こえるように言って」
舌先が掠めるように乳首を舐め上げていく。
「…指……だけじゃ……やぁ……」
赤面しながらたどたどしく発せられた言葉。
「ああッ!!」
腰を抱かれて、一気に入り込んでくる感触。
女の身体はそれを待ちわび、締め上げていく。
「……?……」
「あとはどうして欲しい?」
酔いの力も加わってか、いつも以上に焦らされ、強要される言葉。
教え込まれた身体は従順で、もっと欲しいと感じてしまう。
「……動いて……ぇ……っ…」
ぐ…と突き上げられて上がる悲鳴。
「それから?」
「…もっと……動いてぇ……ッ…」
ぼろぼろと零れる涙。両手で顔を覆う姿ににやりと唇が笑う。
人一倍羞恥心の強い人間を陥落させるのは一緒の悦楽。
脚を折って、抉る様に動けばその度に悲鳴交じりの吐息が漏れる。
「んんっ!!!」
ぬるぬると咥え込んで離さないのは女の本能。
しっかりと飲み込んで『もっと』とせがむ。
顎先を舐めてくる舌先。仰け反った喉元を噛まれて息が詰まる。
敷布を握る手を自分の背に回させ、腰を抱く。
肩口と頭が僅かに触れるばかり。
「あ!!やァっ!!!!」
「ん……嫌?」
「や……じゃない……あ!!んッ!!」
大きく脚を開かせて、より深く繋がれる様に。
「…ひ……ッ…ああッ!!!」
軋む身体、折られた脚、持て余す感情。
「!!!!」
甘い声を唇で塞ぐ。逃げられないようにしっかりと抱いて。
ふるふると揺れる乳房。その先を摘まれてびくつく腰。
「誘う身体だよな……お前って……」
いつもよりも低い声が耳の奥に沈んで行く。
ぎゅっと揉まれて、柔らかい胸は手の中でふるると揺れた。
「あ!!ァんっ!!」
「随分と、いい声出すようになったよな」
重なる胸。掛かる吐息。いやでもこの身体が女であると自覚させられる。
どれだけ女を捨て去ったつもりでいても、抱かれてしまえば女だと嫌でもわからされるのだ。
「あ、ん!……道…徳ぅ……ッ!!」
突き上げるたびに、ぬるぬると零れる液体が腿を濡らす。
親指でくっと突起を擦ればその度に甲高く甘い嬌声が耳を支配していく。
「ちゃんと覚えておけ……お前は女なんだよ……」
ぐちゅぐちゅと濡れた音。
混ざって、絡まって、受け入れる側の身体。
「ひゃ……ぅんッ!!あ、ああァ!!」
それは恐怖と隣り合わせの快感。
今、自分の命を握っているのは自分を貫いているこの男。
「だから、甘えたい時は甘えてもいいんだ……」
「……道…徳……ッ!」
一際強く突き上げられて、声にならない小さな悲鳴が上がった。





ぐったりとした身体を休ませるだけの余裕はなく、何度となく抱かれた。
ゆっくりと落ちた意識が目覚めたのは明け方近く。
「……ん……」
のろのろと身体を起こして、自分を抱いて眠る男を見つめる。
「……意地悪……もぅ、知らないよ……」
口先だけの言葉。唇は笑っているから。
まだ、肌寒い空気に身体は敏感に反応する。
その寒さに理由をつけて、普賢は道徳の腕の中で目を閉じた。






ずきずきと痛む頭を押さえながら、朝日のまぶしさに眉を寄せる。
「……あ〜……頭痛ェ……」
ふと目線を下ろせば、やけに疲れきった顔で眠る普賢の姿。
互いに裸であることを考えれば自分が夕べ何をやったかは明白だ。
(……って、俺、何も覚えてねぇ!!なんて勿体無いことをっ!!!)
慈航道人の所で酒を呑んであれこれと普賢との関係を聞かれたことまでは憶えている。
だが、その先がまったく白紙で何もないのだ。
(やばい……むしろ、まずい……俺、慈航の所でなに喋ったか覚えてねぇ……)
元々話し好きの慈航はあれこれと聞いてくる。
今までは適当にかわしてきたのだが、酒の力も相まって何かをこぼしたかもしれない。
それが自分一人の事ならば良いのだが、酒の肴は女の話。
黄竜真人も合わさって三人それぞれ悲喜交々。
(慈航……憶えてないと助かるけどな……)
あれこれと考えるうちに眠たげな瞳を擦る手。
「……おはよ……」
だるそうに身体を起こそうとするが、どうもうまく行かないらしい。
「あ、その……夕べは……」
「……道徳なんか知らないっ……意地悪だってわかったし」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!俺、本当に何も覚えてなくて……」
「……あんなことまでしたのに?あんなに何回もしたのに?あんなことまで言わせたのに?」
不信感丸出しで見上げてくる灰白の瞳。
「え、あ!?俺、お前に……」
「もういいよ。顔洗って髭剃ってきて」
ぷい、と素知らぬ方向に身体を向けて普賢は目を閉じる。
仕方無しに言われたように洗面所に向かう姿。
(もう……酔ってなきゃ怒ってたよぉ……恥ずかしかったんだから……)





(本当に、もう……それでも嫌じゃなんだからどうかしてる……)
庭先に一人。
(ねぇ、ボクたちはこの月の様に不完全だね。だからきっと一緒にいられるんだ)
少しだけかけた月に薄くかかる雲。
薄を徳利に入れて普賢は外に出した長椅子に座り、脚を伸ばす。
秋の夜風に触れる素足。
「月見は明日するんじゃなかったのか?」
風呂上りの雫が覗き込まれてふいに落ちる。
「今日も、明日も、綺麗だと思うから」
撫で上げる指先に、絡む秋風。
同じように隣に座って、道徳も僅かに欠けた月を見上げた。
「確かに、綺麗だな」
「たまには、こういうのもいいよね」
二人で肩を寄せ合って、頭上の月を見上げる。
不完全なその形はまるで自分たちを表すよう。
そっと顎に手を掛けて、唇を重ねる。
それはまるで初めて接吻したかのような甘く、優しいもの。
「……こういうの、久しぶりかも……」
はぁ…と息をこぼして、胸に顔を埋めてくる。
「俺も、ちょっとドキドキした」
抱きしめられて、うっとりと目を閉じる。
激しく抱かれるよりも、たまにはこうして包まれていたい。
「もう一回……して。今みたいの……」
きゅっと夜着を掴む指。
「一回じゃなくて、何回もしたい」
「……ダメ。今度はボクが意地悪をする番だから」
「なんだそりゃ?」
吹き抜ける風は少し肌寒い秋のそれ。
その寒さを忘れられるように、こうしていよう。
「前もね、道徳はこんな月の夜に酔っ払って意地悪したから」
「じゃあ、今度は酔った普賢に俺が苛められるのか?」
どことなくにやついた笑い顔。
「……そうだね。苛めようかな。お酒は無しで」
「待て!!それって本当にいじめじゃないかっ!!」
「知らない。こんな綺麗な月夜に下心丸出しな人のほうが悪いよ」
恋人たちの喧騒は、流れる風に攫われて。
絡めた指の暖かさと、頬を撫でる夜半の冷たさ。




ただ、秋風にされるがままに。




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