◆崑崙の十二仙◆





崑崙山には仙道が多く住まう。
その中でも教主原始天尊を補佐する幹部、それが崑崙十二仙だ。
教主の直弟子である太公望と十二仙は同格に当たる。
十二仙に師事する天化、ヨウゼンが『師叔』と太公望を呼ぶのもこれが由縁であった。





「道徳、なにをぼんやり考えてるのかな?」
にこにこと人懐こそうな笑顔。
「普賢……」
隣に座ったのは普賢真人。道徳真君と同様、崑崙十二仙の一人である。
道徳真君は天化、普賢真人はモクタクの師匠という立場だ。
ざんばらに切られた髪は少しはね、あどけなさの残る顔をより一層幼く見せていた。
「お互い、弟子を戦場に送るのは辛いよね」
普賢は太公望と同時期に仙界入りしたものである。
そして、数少ない、仙女でも在った。
灰白の髪が陽に透けて銀色に輝く。
「でも、ボクらはまだ、出て行くべきではない…そうでしょ?」
ごろんと寝転んだ道徳真人。
「…その、『ボク』というのは直らないのか?」
「原始さまから、仙人になるなら女であることを捨てろって言われてるからね」
道衣から覗く肩。
「実際、仙人として生きるのに女も男も関係ないって思うし」
「そうかなぁ……」
寝転んだ道徳真君の頭を撫でる。その指先。
細い指と小さな爪。触れる柔らかさは女のそれ。
「そうでしょ?」
「そんなものなのかなぁ…俺は…なんか違うような気がする」
普賢の手を掴む。
「何?」
「なんとも思わない?」
普賢真人は少し困ったような顔をする。
道徳真君は実のところ、この普賢真人のことを密かに思っていた。
だが、戒律を重んじる普賢の性格は太公望以上で、まさに暖簾に腕押しの恋。
いくら追いかけてもとろんとした瞳でかわされてしまう。
「うん」
「もういい…」
ふいと横を向くと、普賢が覗き込んでくる。
「道徳、ボク……何か悪いことした?」
「……すまんが一人にしてくれ」




普賢真人は十二仙の中ではもっとも若く、仙人としての暦も浅い。
それでも、その才能は早くに開き、弱い百歳を待たずに仙人として歴任したのだ。
元来面倒見のいい道徳真君は普賢の世話を焼いていた。
おっとりとしたその性格は体育会系の道徳には新鮮なものだった。
少し膨らんだ胸も、なだらかな腰も、忘れていたはずの感情を引き起こすのには十分な逸材。
「なんで、ああも鈍いんだろう……」
はぁとため息をつく。
何度となく普賢に詰め寄ったことはある。
しかし、故意かどうなのか、のらりくらりとかわされてしまうのだ。
「太乙にでも相談してみるか……」
よろよろと身体を起こして、道徳真君は同じく十二仙の太乙真人を訪ねる。
世話焼き体質の太乙は仙道たちの相談役でもあった。
「ふぅん……相手が悪かったねぇとしかいえないね……」
「人事だと思って……」
「いっそ太公望に相談したらどうだい?彼女とは同期だし、仲もいいよ」
「あいつも似たようなもんだろうが……」
太乙はにやにやと笑う。
「仙界を出てからは大分変わったようだよ」
「そうかなぁ……」
卓上につっぷす道徳を尻目に太乙真人は戸棚から薬瓶を取り出した。
中には白くちいさな丸薬がころころと入っている。
「もし、どうしても駄目ならこれ使えばどんな女の子でも完全落城さ!」
全部言い終わる前に拳が太乙の顔面を捉える。
「そんなもんに頼るのは男じゃない!」
「だったらどうやってあの鈍感の塊を落とすのか言ってみろよ!」
向きになって掴みあう二人を割ったのは太公望だった。
「阿保二人で何をやっておる」
「太公望」
太乙の入れた茶を口にしながら大凡の話を聞き、太公望もはぁとため息をついた。
「それでも十二仙か……おぬしら」
やれやれと頭を振る。
「まぁ、よい。わしはこれから普賢のところに行って来る。それとなく聞いてみるよ」
ひらひらと手を振りながら太公望は消えていった。
漂う色香は、甘く妖しい。
そのつもりは無くとも、女を感じさせてしまう。
「あいつ、あんなに色気あった?」
「下山してから色々あったみたいだからねぇ」





久々の再開に少女二人は花を咲かせていた。
元々同期で格も同じくらいの二人である。
積もる話もあり、仙道ということを忘れて話し込んでいた。
「そういえばのう、道徳のことをおぬしはどう思う?」
「どうって……面白いと思うよ。望ちゃんもそう思うでしょ?」
「いや、わしが言っておるのはあやつを男としてどう思うかじゃよ」
普賢真人は少し考えた顔をした。
「……素敵だとは思うよ。でも、それ以上でも以下でもないよ」
とろんとした大きな瞳に長い睫。
同性でも守りたくなるような甘い風貌。
それでいて、ある一種したたかな強さと智謀とも言える不可思議な女。
それが普賢という仙人だった。
「でも、それがどうかしたの?」
「あやつはおぬしのことを好いておるのじゃよ」
「僕も道徳のことは好きだよ。望ちゃんだって好きでしょ?」
「少しはあやつのことをわかってやれ……」
さすがの太公望でも頭を抱える。
普賢の気持ちも分かるが道徳が不憫でならなかった。
(道徳よ、おぬしも今回ばかりは苦戦しとるのう……)
ただ、普賢はにこにこと笑うばかりだった。




太公望は周に戻り、崑崙山はいつものように動いていた。
無論、道徳も普賢も。
普賢は普賢でのんびりと草原に寝転んで太陽の香気を浴びている。
仙穴同様、自然界の香気は仙道の能力を高める効果があった。
(なんか……眠くなってきちゃった……)
うとうとと目を閉じる。
風が優しく普賢の髪を撫でていく。
(僕のこと好きって……言われても……困るよ)
太公望が残した言葉を紡ぎながら、普賢はまどろむ。
いつもなら、昼寝できる体制なのだが不思議とそれが出来ない。
(とりあえず、道徳に聞いてみればいいかな……)
身を起こして、愛用の球体の宝貝を手にする。
「道徳はどこに居るかな?」
数値とデータを入力すれば、大概のことは分かる。
あくまで、数字上での確立でだが。
「あっちか」
てくてくと歩く。背丈も太公望同様に小さな少女。
仙人にはおおよそ見えないその姿。
だまっていれば彼女が師表たる一人とはだれも思わないだろう。
紫陽洞の邸宅は静かで、普賢はそっと中に入り込む。
「道徳いる?」
「おわっ!普賢!」
「そんなに驚かなくてもいいじゃない」
あわてて道徳真君は薬瓶を後ろに隠す。
あれから結局太乙真人に無理やり渡されたのだ。
「ねぇ、望ちゃんに言われたんだけど」
「た、太公望がどうかしたのか?」
「道徳がボクのこと、好きって」
「な……た、太公望が!?」
「ねぇ、どうなのかな?ボクは道徳のこと好きだよ」
ぽつぽつを唇から零れる言葉。
耳の奥でゆっくりと脊髄を冒していくような呪文。
「道徳のこと嫌いな人なんていないよね」
「ふ、普賢!」
言葉が見つからないから、普賢の身体を抱きしめる。
「道徳?」
「俺のお前が好きってのはこういうことで…こうやって触ったり、抱きしめたりしたいって事で…
他にもいろんなことがしたいってことで……」
道衣越しに道徳の鼓動が伝わってくる。
「道徳、ボクはどうしたらいいの?」
「…俺だってわかんないよ……」
見えないはずの道徳の表情が見える。
どこか泣きそうな顔。
男の背中を抱くことも出来ず、ただ、されるがままに。
(ねぇ、望ちゃん、ボクはどうしたらいいの………?)




眠れないまま、普賢真人はぼんやりと道徳心君のことを思い出していた。
抱きしめられて、嫌な気はなかった。
だが、どうしたらいいかわからなかったのもまた、事実。
(眠れない……どうしよう……)
一人きりの洞穴で普賢真人はあれこれと考える。
それでも、どうしてか道徳真君の顔がちらついてしまうのだ。
(道徳、起きてるかな……)
天化が下山してから、道徳も同じように洞府に一人で過ごしていた。
身を起こして、簡素着を纏う。胸元が軽く紐で留められた道衣よりも簡素なつくりだ。
(行ってみよう。何にしても道徳を傷つけちゃったかも知れないし)
さわさわと夜露に濡れた草が足を絡める。
ゆっくりと歩く道を月は優しく照らしてくれた。
その頃、同じように道徳真君も寝付けないでいた。
普賢とはまた違って悶々として過ごさざるを得なかったからだ。
間近で抱いた感触と匂いが今も腕に残っている。
(あー、どうしろって言うんだよ、俺!!)
こつんこつんと扉を叩く音。
「道徳、普賢だけど……起きてる?」
「あ、ああ……」
普賢を招き入れて、椅子を勧める。
目の前に居る普賢は何も変わらない。自分の思いだけがとめどなく零れるだけ。
「さっきはごめんね。本当にどうしたらいいかボク……分からなくて」
「いや、俺こそすまなかった。寒いだろ?茶でも入れるよ」
茶器を取り、葉を入れる。
そのとき目に付いたのは太乙に押し付けられた薬瓶だった。
どの道叶わない恋ならば、いっそ力ずくで…そんな考えが頭をよぎる。
(普賢は俺のことは………)
叶わなくても、このままの関係でも良かった。
今まではそう思っていた。そう思えたはずだった。
普賢の体温が、匂いが、道徳を支配する。
普賢に気付かれないように、丸薬を一つ碗の中に入れる。
一瞬で溶けてそれは形を無くしていった。
「ありがとう」
なにも疑わずに普賢は口をつける。
「なんかね、眠れなくて……道徳に会いに行かなきゃって思って」
「……普賢」
「どうしても道徳にあわなきゃって…ボク、変かな…?」
「いや、俺は嬉しいけど……」
でも、その気持ちは慕情じゃないから。
「ボク、道徳のこと、好きだよ。嘘じゃないよ」
「うん……」
その『好き』は欲しいはずの意味合いではないから。
普賢の小さな手を取る。
この手が他の男に触れること考えると気が狂いそうだった。
見知らぬ相手への嫉妬に身を焦がす。
細い指に自分の指を絡めて行くと、びくんと普賢の身体が震えるのが伝わってくる。
「…あ…ごめん、なんか…ボク……」
頬が染まるのわかる。
「普賢」
「ボク、帰るね。ごめん、こんな遅くに」
立ち去ろうとする普賢の手首を掴む。
「…あ………」
ただ、それだけで耳まで真っ赤に染まり、普賢の動きが止まる。
「道徳、離して…くれない……?」
潤んだ瞳は男の劣情を刺激するには十分すぎた。
顎に手をかけ、強引に唇を合わせる。
最初は浅く。重ねるごとに深く、舌を絡ませて。
「……道徳……?」
「だから、俺の好きだっていうのはこういうことだよ」
布越しに少しだけふくらみの出てきた胸をやんわりと揉む。
「や…あん…っ…」
太乙の薬の効果もあって、普賢の身体は鋭敏に反応した。
本人の意思に反してだが。
うっすらと布越しに胸が上向くのが分かる。
そのまま、胸元の組紐を解くと、つんと上を向いた形の良い胸が露になった。
「ああんっ……!!」
まだ幼い乳房に沈む指。壊れ物でも扱うようにそっと吸い付く。
「…!…やっん……」
乳房に歯形が残される。こうした痛みでさえ、今の普賢の身体には強すぎる刺激だった。
両手でその柔らかさを確かめて、吸い上げていく。
そのたびに普賢は声を上げた。
震える膝を見て、道徳は普賢を抱えるとそのまま寝台に向かう。
そっと下ろして、覆いかぶさった。
剥ぎ取った道衣を床に落とし、裸体の普賢を道徳はじっと見つめた。
上気してほんのりと染まった肌。
想像していたよりもずっと細い腰。
「…や…道徳…やめ…っ……」
力無く押し返そうとする腕。
薬の効果がなくても普賢は力では道徳に勝つことは不可能だった。
「やぁんっ!!!」
舌で肉芽を突かれて普賢の声がひときわ高く上がる。
柔らかい媚肉に指をしのばせるとくちゅりとした感触が絡んでくる。
貪るような愛撫に普賢の意識も身体も翻弄され、羞恥に両手で顔を覆った。
「…普賢、俺にこんな風に触られるのは…嫌か?」
道徳はそっと普賢の手を外す。
「…わかんないけど…嫌じゃないよ……」
「これから、俺が何をするか分かるか?」
普賢は少し震えながらこくんと頷く。
「嫌だったら、俺のこと突き飛ばしていいから」
「…嫌じゃないよ……」
真っ赤になりながら、消えそうな声で普賢が言う。
あやすように頭を撫でると、道徳は慎重に普賢への侵入を試みた。
十分に濡れた秘所は意外にも道徳を飲み込んでいく。
「……っああ!!」
破瓜の痛みに上がる声。
汗と涙でぐちゃぐちゃの顔。
「や……っ!!嫌ぁ……」
それでも、今、自分の下で喘ぐこの少女が愛しくてたまらない。
「…普賢……」
ぎゅっと抱いて奥を目指す。
細い鎖骨も、しなやか首筋も、何度も唇を降らせて感触を確かめるように。
「…ぁ!!ん!」
何度か突き上げると普賢の声が変わってきた。
「…普賢……?」
「…なんか…ボク…変だよぉ…っ…」
恥ずかしそうにぎゅっと目を閉じる。
縋るようにしがみ付いてくる腕。
道徳が突き上げるたびに、普賢の肉は道徳を締め上げていく。
「ああっ!!……や…んぅ…!!」
ぐちゃぐちゃと卑猥な音が室内に響く。
「駄目っ…ボク……!!!!」
喘ぐ口を唇で塞いで道徳は普賢を強く突き上げた。
「!!!!!!!!」
塞がれたまま、絶頂に達して荒い息を上げる。
同じように道徳も普賢の最奥に熱を放った。






眠る体は酷く疲れたようで、道徳の心を痛めた。
もっときちんとした手段で接するべきだったと己を何度も叱責する。
半開きの唇から零れる寝息。
汗で張り付いた前髪を指でそっと払う。
「……どうしたの?道徳」
「……本当にすまなかった!!!!」
普賢は重そうにのろのろと身体を起こした。
「どうして謝るの?」
「その……嫌だったろ……?」
「ボク、嫌じゃなかったよ」
普賢の手が道徳の頬を包む。
「ちょっと……痛かったけど……嫌とか……思わなかった……」
言い終えて真っ赤になる姿。
今、この瞬間が幻ではないことを確かめるように抱きしめる。
「本当にか?」
「うん……わかんないけど、嫌じゃなったよ」
その言葉に少しほっとしたような笑みがこぼれた。
「普賢〜〜〜〜」
「どうしたの?道徳も変になった?」
少女の身体を抱きながら男はつかの間の幸せに陶酔した。
「なぁ、普賢。ひとつだけ頼みたいことがあるんだけど」
「何?」
「その……『ボク』ってのなんとかならないか?」
「ならないよ〜ダメ?」
「ああ……たまには……」
「原始さまに怒られない?」
「じゃあ、俺と一緒に居るときだけ」
「うん……」
小さな口付けを何度も繰り返す。
それから、遅い朝が来るまで求め合って、普賢はふらふらの身体を己の洞府まで
運ぶことが出来ず、結局道徳の洞穴に泊まることに。
翌日もだるさに悩む普賢を抱えて走る道徳の姿が目撃されたという。




それから数日たったある日のこと。
「太乙いる〜?」
「あ、普賢、何か用?」
アイゴーグルをたくし上げて太乙真人は振り返る。
「太乙、君……道徳に変な薬渡したね」
普賢はこれ以上無いという微笑を浮かべた。
「ふ、普賢!?」
ばちばちと手にした対極符印が音を上げる。
そうなのだ。
良心の呵責に耐え切れなくなった道徳真君は洗い浚い普賢に真相を話したのだ。
普賢は気にしなくても良いといったが、道徳の気持ちはおさまらず何度も頭を地に擦り付けて土下座した。
普賢は言葉の通り道徳を責める気持ちは欠片もなかった。
結果論だが、道徳とそんな関係になれたのもいいと思えるようになっていたのだ。
しかし、どこかおさまらない気持ちがやはりある。
その矛先は太乙真人に向けられたのだ。
「ボク……ちょっと怒ってるから」
「!!!!!!」
超小規模な爆発が乾元山で起こったのは言うまでもない。







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