◆未来視達の弁証法◆
それは優しい殺し方というに等しい物語。
彼女が先だったのか彼が先だったのか。
今では予想するにしかできないその思いはまるで春の嵐のよう。
吹き荒れた後に残る甘い芳香、今や幻。
黒衣のその人はただ世界を思うだけの存在となった。
今や彼女のことを知るものは僅かとなりそのほとんどが鬼籍に入っている。
もとより「ヒト」ではない彼女は誰よりも「ヒト」になりたかったのかも知れない。
「ひさしぶりですね、太公望」
岩に座り、女は静かに印を結んでいた。
時折おきる揉め事や些細ないざこざを静かに片付けるのが精々の役目。
それ以上は手出しはならないと自戒してのことだった。
「申公豹か。何用だ?」
振り返らず伏せられたままの瞳の美しさ。
愁いを帯びた横顔は小さく笑うだけでも花のような愛らしさを誇る。
「元気そうでなによりです。ああ、そうです。普賢真人がこれをあなたにと」
それは久しく会うことの無くなった友人からの手紙。
自分がまだヒトだと信じられていたころの優しい思い出。
「ほう……ヨウゼンの指揮下で皆頑張っておるな……よいことだ」
願ったこと全てがかなう様な世界を作ることを彼女は拒んだ。
だからこそ自分自身の望みも捨て去り一人でその身を隠すように生きることを選んだのだ。
気高き翼はどんな風にも折れることはない。
「ここはあなたのお気に入りの場所ですからね」
原始、少女は別天地より舞い降りた。
自分の家をもう一度得るために。
戦いの果てに得た結論は孤独。
彼女はもう一度の命を、一人で過ごすことを選んだ。
「私と初めて出会ったときのことを覚えてますか?」
その言葉に静かに少女は頷く。
あの時は未来など何も知らずにどこまでも進めると信じていた。
己の理想とする世界のために。
その裏に仕組まれた綾絡まりの糸など知りもせずに。
「あの時は何も知らずにすごせたのう……懐かしい……」
「伏羲……とは呼びたくないのですよ、あなたを」
彼女を大切に思うものは皆、太公望とそのままに呼ぶ。
伏羲は世界に愛され、太公望は運命に愛された。
「懐かしいですね。けれどもまだたった十数年のことなのですよ」
瞬きするほどの短い時間。
けれども、彼女にとって最も愛すべき日々。
あの一瞬が愛しくて悲しい。
輝く光は思い出だからこそ美しく優しくその暖かさを感じさせるように。
彼女の掌で溶け行く一片の雪のような思いは今もなお降り積もる。
時空の狭間に身を隠すように少女は佇む。
添えられた花が一輪見守るように鎮座するだけの空間。
時計の秒針が狂おしい程に静けさを彼女に告げる。
「こんなところに居を構えていたのですね」
硝子で作られた小さな鳥籠。
その中に留まるのは透き通るような青さの蝶。
「わしにとっては心地よい空間じゃ」
蝶はひらりと舞い踊り時折切なげに羽を閉じる。
しかし、よく見ればそれは人工的に作られた蝶を模した何かだった。
「生命を生み出すことはわしにもできぬ。始まりのヒトなど、所詮その程度じゃ」
刻まれていく歴史を彼女はこの先どんな瞳で見つめるのだろうか。
融合すら許されぬたった一人の最初の人間。
同胞たちはこのすべての命に宿る。
自分は一羽の蝶すら生み出せない。
夢はまた夢、そもそもはこの星に降り立ったことすら私情。
あの日の懐かしい声はもう聞こえない。
「茶でも飲まぬか?」
「いただきます」
燻る香りに細まる瞳。彼とこうした時間を過ごすのはいったいどれ程振りだろうか。
いや、誰かと茶を交わすことなど忘れていた。
自分の時間は止まってしまったのだから。
「碧螺春ですね。珍しい」
「白牡丹のほうがおぬしの好みだったかな」
「覚えててくれたんですね。嬉しい限りです」
凛とした香りを楽しみながら二言、三言重ねていく。
もともとそう口数の多い二人ではない。
だからこそ感じる言葉の重み。
「痩せましたね」
君に降る深々たる雪は止むことも解けることも知らない。
誰よりも春を望み焦がれるヒトはただその冷たさに身を沈めるだけ。
「そろそろわしも引退じゃ。人間にすべてをゆだね様と思う」
巡り来る季節の中、彼女は一人ぼっち。
影と踊る日々も、もう辛いだけ。
「あなたはそこに行きたいのですか?」
行きたい場所などどこにも存在はしない。
生まれた場所すらもう失ってしまった。
「どこに行きたいわけでもない。わしは……わしであることをやめようと思うのだ。
同胞たちがみな大地に還ったようにわしも始まりの人として……」
春の嵐のようなあの日々は今はただ懐かしく霞が掛かってしまった。
この腕の中でどれだけの命を見送っただろう。
大好きだったあの人に似ていた彼も逝ってしまった。
遺言は静かに遂行され、彼女はいよいよ一人ぼっち。
束縛する約束も今や無くただ流れるままの日々をすごすだけ。
「不自由の中で憧れる自由……まさにそうだったのだな……」
濡れた睫の艶やかさ。
伸ばした指に触れる未来は消えてしまったまま。
それから彼は夜毎に彼女を訪れるようになった。
手には毎晩違う花を。
一言二言交わしてたまに杯を交わすばかり。
同衾することも無く朝焼けの前には帰ってしまう。
砂時計が刻む流れに彼女は瞳を閉じるだけ。
「おぬしも酔狂よのう……暇なわけでも無かろうて……」
「いいえ、こうしていられることが私にとっても最も至福と言える瞬間ですよ」
今宵は月下美人。
たった一晩でその美しさを散らしてしまう月の香気。
「白磁か……見事な大きさよ……」
「あなたと見ようと思いましてね。戴いてきました」
「?」
「普賢真人にです。貴女にといったら快く手渡してくれましたよ」
親友は時折便りをくれる。
どこにいてもどんなときでも、一種の呪法を使って彼女の元へ。
姿こそ見せないものの絶えず伝わる思い。
忘れられた存在ではないと彼女が感じられる瞬間のこと。
「子供は大きくなったかのう……道徳にばかり似おって……」
「二人目が腹にいますよ。今度は普賢真人に似た子供になるのではないでしょうか」
神として祀られる彼女は神界を出ることを許されない。
文に思いをしたためるだけでは伝えきれない思いを橋渡してくれるのが申公豹の存在だった。
月下美人を手渡す際に告げられた妊娠と子供の成長。
少しだけ消えた幼さと芽生えた母性。
「この花のようですね。あの日々は。思い出せば一瞬のことだった」
「そうようのう。おぬしに会った瞬間から戦いの日々は始まった」
そっと男の手に重なる少女のそれ。
月光にさらされた指先は驚くほどに細く頼りなかった。
「あぬしにあの場所で告げられて、戦いも終わった。始まりの人とはまさしくおぬしよのう
申公豹。わしは単なるおまけじゃ」
はじめからこの未来は決まっていたのかもしれない。
見ない振りをしながら必死になって前だけを見つめていたのに。
それを決めたのはほかならぬ始まりのヒト。
まさしく彼女自身だった。
あの夕暮れを追いかけて兄と歩いた記憶は偽り。
母に抱かれ父の背中を見つめたのもはるかな残像。
もともとこの命は仮初であり、呂望という少女は生まれてまもなく死んでいた。
中にあるは『伏羲』の魂。
器に選ばれた彼女と狐狸精のそれはどう違えただろう?
宿主は共に命を食らわれた。
そして二人は出会ってしまうのだから。
やさしかったあの日も全部虚像だと知ってしまった。
みなが愛するのは自分ではないもう一人の自分。
最初のヒトは一人で生きて、最初のヒトは最後まで一人。
誰も彼女を彼女として受け止めてはくれない。
「申公豹」
薄明かりの下で見る彼女の顔は今までのどの瞬間よりも穏やかで優しい。
鋭利な刃物のようだった光は消えうせて儚げに咲く月の花。
「わしはジョカと同じように塵になろうと思う」
これで最初のヒトはすべていなくなってしまう。
どれほど誰かを傷つけただろうか?
「私にそれを見送れと?」
静かにうなずく姿に男は首を振る。
五千年生きてきて初めて出会えた運命の少女。
どうしてその手を離すことができようか。
「死に行くものが美しいのは幻想です。生きてこそ見えるものだってあるでしょう?」
彼は必要以上に少女を求めることは無かった。
こうして訪れてもただ物語るだけ。
指先が触れ合うだけで満足だと笑い、傍らの霊獣は安らかな寝息を立てている。
「あなたがいたからこそみなが戦えた。そうさせたのは伏羲、他ならぬあなたです」
思い描いた未来は砂の城と同じ。
何度も何度も作り変えてそのたびに仲間は散っていった。
幾度目かの世界の終止符。人間は道しるべを外れてついに歩き出す。
彼もまた彼女たちが作り出した存在。
「伏羲の存在が無ければこの世界はいまだジョカの支配下のままだった」
重なる視線。
「あなたは世界の母ですよ。紛れも無く」
「世界はわしを許すまいて」
「ならば私があなたを赦します。あなたに作られた世界で生まれたこの私が」
救いの言葉を一番に欲していたのはきっと彼女で。
誰にも姿を見せずに消えてしまった意味を彼は知っていた。
だからあの場所に立ち彼女と出会うことができた。
すべての始まりの場所で。
「甘い夢でしたね。寝覚めには何をしましょうか、伏羲」
「どこにでも。きれいな水が見たい」
「ならば行きましょう。あなたが最も愛するであろう場所へ」
飛び散った女のかけらはこの世界に吸収されて彼女は大母となった。
すべてのものに存在したいという最も尊大な願いを叶えて。
すべてから消えたいと願った一人の少女。
二人の女の道はいまや違う。
朝焼けを追いかけてどこまでも走り行くその姿。
黒衣のヒトはとても優しい。
「大きな水の塊……」
「海です。生命は何度もこの水の中から生まれ出てきました」
「この中にも妲己は存在する……」
互いにきっと愛して憎んでいた。
「この先の未来もあなたは知ってるのでしょう?」
「知らない。わしの知っていた未来とは離れてしまったから」
風が彼女の黒髪をかき上げる。
「この先の未来をおぬしなら知りうるのではないのか?申公豹」
「ええ。少しばかりならば」
細腰を抱いてその頬にそっと唇を押し当てる。
柔らかさは彼女の体が新しく生まれたものの証明だった。
「古いものは捨ててしまいましょう」
少女の細腕に絡まる篭手を外して勢いよく投げ捨てる。
「黒も美しいのですが、もっとほかの物も似合います」
「選んでくれるのか?」
「ええ。旅支度もしなければなりません。忙しくなりますよ伏羲」
今度は『伏羲の体』で『伏羲』として生きていくために。
いずれ訪れる終焉を見届ける役目を誰かに担うために。
「さあ行きますよ。世界はとっても広いんです」
それははるか昔のお話、まだ仙人がこの世界に存在したころ。
一人の少女が崑崙で修行を積んでいた。
名は呂望、字は太公望という。
運命を背負った少女は静かに岩上で瞳を閉じて念を。
「太公望師叔!!」
ばさりばさりと舞い落ちる真白の羽。
「白鶴童子ではないか。どうかしたのか?」
「元始天尊様がお呼びです」
不思議顔で首をかしげて少女は白鶴の翼を借りて謁見の間へと向かう。
「元始天尊様、一番弟子が太公望参りました」
まるで書でも捲るかのように繰り返される幾度目かの歴史の終わり。
あの日の少女はいまや女に変わった。
羊雲を追いかける遊牧の民。
「兄様、どこまでいったら世界の果ては見えるのでしょうか?」
手に槍を持ち少年は幼い妹の小さな手を引く。
「面白いことを考えるね、望は」
伸びた影か草原に二つ。兄は頭上の空を指し示す。
「ほら、仙人様だ」
「あ、本当」
「仙人様になったらきっとわかると思うよ。難しいとは思うけれども」
天を駆る虎に乗り仙道は世界をゆっくりとよぎる。
それを見つめる少女の瞳にまだ運命の色香は見えもしない。
彼女の時間はもう少ししたらとまってしまう。
彼女は彼女でないことを知り、それでも彼女として生きることを望む未来があることも。
「黒点虎、珍しいと思いませんか?姜族の子供……ああ、しかも統領服を着ています」
少しだけ先の未来が見える彼にはこの先一族が辿る運命がわかっていた。
哀れな子羊のように捧げられる犠牲と生贄。
「あの子達も命を落としてしまうのでしょう。妲己は次は姜を滅するつもりです」
一族を根絶やしにするまで皇后の大虐殺は終わらない。
悲鳴は甘い音色となって彼女の感情を満たしてくれる。
「かわいそうだね。あの子達まだ小さいよ」
燃えるような紫の空は動乱の予感。
運命の破片をつかんで男はそれを噛み砕く。
「ええ、確実に死にますね。けれども…………」
含み笑いは彼の癖。それしる長年の相棒は視線をあげた。
「彼女が運命に愛された子供ならば話は別です」
「難しくてよくわかんないよ」
「私もただの予感です。あの子は死なずに済むような気がするのですよ……しかし、
不思議ですね。あの子はすでに死臭がします。けれども嫌な匂いでは無い。長年
生きてきましたがこんなこと初めてですよ」
くるくると回る時間軸の中で少女は己の意味を知る。
それは今から季節が七回巡るころ。
花の色は鮮やかに憎しみを写し取る。咲き誇る準備に入るために。
二人の女は運命を背にしてその道を重ね合わせた。
「……羲、伏羲」
揺り起こされて少女はその瞳を開く。
霞のような夢はもう一人の自分の記憶。
あれは偽りのはずなのに涙が溢れてとまらない。
とうに人間など捨て去ったはずなのに。
「申公豹……わしは伏羲として生きればいいのか?太公望として生きればいいのか?」
選びきれない答えを彼に求めるのは間違いなのかもしれない。
それでもこの閉鎖された空間から連れ出してくれるその手を離すことなどできなくて。
かつての同胞が呟いた「孤独は嫌」という声が耳から離れない。
彼女も優しく美しかったはずなのに。
「一人に戻るのは嫌だ……わしは……このさきもわしとして生きていたい……」
神にもヒトにもなれない彼女はいつだって一人ぼっち。
傘をさすことを知らないから濡れたままで裸足で歩く。
未来視たちの弁証法など何の役に立つだろうか。
迷うのは彼女が人間である証。
けれどもそれを認めてしまえば伏羲の存在が消えてしまう。
「あなたは伏羲でもあり太公望でもあります」
涙をぬぐう指先。
「認めてしまいなさい。どちらも自分だと」
「わしの罪は咎められぬか?」
「ならば判断を仰ぎなさい。あなたが最も信頼するものたちに」
あわただしい日々の中、幼子の手を引きながら彼女は膨れた腹をさする。
「普賢さーん!!コーチ知らねぇさ?」
銀色の髪が光に透けて美しく輝く。
いまや菩薩となった少女は穏やかに答えた。
「その辺で修行してると思うよ。じゃなかったら燃燈のところだね。困ったお父様だ」
川縁に居を構えて少女は静かに視線を移した。
「おかえり、望ちゃん。みて、ますます道徳に似てきたでしょ?」
「気付かれておったか」
「これでも仙人ですから。ふふ……ほら、望ちゃんにご挨拶して」
子供を抱き上げて少女は目を細めた。
第三世界の申し子たちは着実に育っている。
「さっきまで天化も居たんだけども……そのうちくるよ。ゆっくりしてって」
彼女の策で親友はその命を鮮やかに散らした。
仲間と恋人が死に行くのを両目を開いて逸らさずに見つめて。
「普賢」
「この間美味しい羊羹の作り方習ったんだ。ヨウゼンとかに差し入れしたけど喜んでたから
今度一緒につくろうね。今日のお夕飯は張り切って作っちゃおう」
「普賢」
あの日に聴けなかったあの言葉を。
「わしを……恨んではおらぬか?」
振り向かずに彼女は静かに答える。
「どうして?」
「わしは……おぬしを殺した……」
あの日の彼女の気持ちを誰よりも知る銀髪の少女。
「馬鹿だね、望ちゃんは」
「?」
「ボクは後悔なんてしてないよ。最後までずっと道徳と一緒だった。今も一緒に居る。
何も変わってないよ、ボクも」
あの日と変わらない笑顔。
差し伸べられた手に震えるそれが触れた。
「おかえり、望ちゃん」
「……わしは……わしは……」
「ずいぶんと長いこと席を空けちゃったね。教主補佐の座は空いたままだよ。みんな喜ぶね
望ちゃんのことずっとずっと待ってたから」
涙は暖かいものだからきっと人間に与えられたものなのだろう。
「望ちゃん、帰ってきたら返ってきたときの言葉は?」
「ただいま……普賢……」
「おかえり、望ちゃん」
ただこの言葉だけを待ち望んでいた。自分の存在を認めてくれる場所を。
夢の終わりはいつだって唐突なのかもしれない。
けれども、甘い夢ならば少しくらい溺れても許されるだろう。
「あーーーー!!師叔!!」
「おかえり天化。道徳は見つかったの?」
「師叔!!本物さ!!師叔!!」
この腕の中で見送った命さえこの世界では存在し得る。
「どこ行ってたさ!!俺っち散々心眼使って探したさ!!」
「おぬしにみつかるほどにまだわしも衰えてはおらぬ」
「ともかく!!もうどっこも行っちゃだめさ!!師叔!!」
どんな形であれ彼女は世界に愛された。
同じように本当は彼女も世界を愛していた。
愛しすぎたからこそ形は憎しみとなり最後は世界の中で消えた。
「太公望師叔!!」
「おっしょーさまー!!」
掛けてくる教主と愛弟子の姿。
そして黒衣の彼女は視線を動かす。
「ご主人ーーーーっっ!!おかえりないさいっす!!ご主人っっ!!」
「ただいま、スープー」
君と二人で旅に出た。
君がいることが当たり前だった。
大地に足をつけて歩くことの奇妙さ。
どこかしら寂しく思いながら歩き続けてきた。
「ヨウゼンさんの変化じゃないっす!!僕のご主人っす!!」
「待たせたのう、スープーや……」
「僕はまだまだ飛べるっす!!ご主人と一緒ならどこだって行けるっす!!」
この先の不確定な未来の行方は自分ではない誰かが見ればいい。
もう始まりのヒトは必要ないのだから。
「おかえりなさいのお祝いしなくちゃね」
「もちろんです!!師叔の帰還ですからね!!十二仙にほかのみんな……金鰲のみんなも!!」
しばらく見ないうちにしっかりと教主として根付いた青年に少女は笑う。
自分を待っていてくれた当たり前の未来。
ようやく手に入れたほしかった未来。
「申公豹……?」
「言ったでしょう?あなたが思うよりもずっとみんなあなたを待っていた。はじめから
あなたに罪など無かったのだから」
生まれ来る新しい世界と命。
それは定められたものから外れて初めて得たもの。
それはまだはるか昔のお話。
この世界に仙人と呼ばれる者たちが存在したころの物語。
20:29 2007/07/31