◆嫉妬◆
時間は明日の正午。そういわれてしまえばその時までを埋めるしかない。
「太公望、あの方はやばいわよ」
「やばいもなにもスープーを取られておる。やるしかあるまいて」
「あのヒトさぁ……」
金号出身の蝉玉は続ける。
始祖である通天教主を筆頭にその下の三強、十天君と系列があるらしい。
三強とは妲己、聞仲、そして趙公明。
「あれが三強というツラか……」
「金号はね、秘密主義が徹底してるからあたしも初めて見たんだけども……」
二人のため息が重なる。
「まぁ、妲己、聞仲共にいずれはやらねばならん。ならばここは趙公明で腕試しといくか?」
太公望は道士連中を見つめた。
相手にとって不足はない。
「俺っちはその話乗るさ」
「あたしはハニーを助けなきゃ!!」
「師叔の命ですしね。僕も参加しますよ」
太公望はからかたと笑う。
「ならば明日の正午までは自由時間としよう。各々好きに過ごすが良い」
特にすることも無くヨウゼンは哮天犬にもたれて一人考え事をしていた。
いや、考えた振りというほうが正しいだろうか。
「ヨウゼンさん、ちょっといいさ?」
「珍しいね。君が僕のところに来るなんて」
ヨウゼンの真向かいに座り天化は慣れた手つきで煙草に火を点ける。
上がる煙にそぐわない少年の顔つき。
「ヨウゼンさんって、師叔に好きって言われた事あるさ?」
「……どうしてそんなことを聞きたいんだい?」
「ん〜、俺っち昨日言われたから。師叔に好きって」
意味深に笑う瞳。
「守ってくれって。この命預けるって言われたさ」
「……………」
「あのヒト、皆に優しいから」
箱から一本取り出しヨウゼンの手に乗せる。
「要らないよ。好きじゃないんだ」
「そう。師叔は結構好きみたいだけど」
天化の吸い差しを太公望は時折奪う。それかまったく別に火を点けるかのどちらかだ。
「何が言いたいんだい?」
「別に」
少年の特有の皮肉めいた笑い。喧嘩は正面から売る性質だ。
天才にも意のままにならないことがあると天化は挑発してくる。
「俺っちヨウゼンさんには負けないから」
「僕も……君だけには負けない」
美しく残酷な女は、その眼で何もかもを奪っていく。
「俺っち、『望』の護衛に行くから。時間取らせてすまなかったさ」
「気をつけて。くれぐれも師叔に傷など負わせないように」
「じゃあね、ヨウゼンさん」
天化の姿を見送り、ヨウゼンは唇を噛んだ。
ぎりぎりとした感触と、流れる血液の味。
(すいぶんと正面から喧嘩を売られたものだ……)
一番欲しかった言葉を先に奪われた。
能力で劣っているわけでもなく、おそらく数値の上では自分のほうが上だろう。
それでも彼女が選んだのは自分ではなく、彼だという。
(師叔……どういう心算なのですか……?)
歯が爪に触れ、がつりと噛みあう。
剥がれ落ちる爪と生暖かい血の流れにようやく事態を把握した。
これは『嫉妬』だ。
欲して止まないあの人の心の欠片を得たと宣言する少年への。
(師叔……僕では駄目なのですか……?)
この腕の中、彼女はいつもその身を預けてくれる。
けれども……その心には触れさせてはくれない。
痛む親指をそっと隠す。
まるで動揺を隠すかのように。
「やっと見つけたさ。師叔」
何事も無かったかのように岩場の上、太公望は印を結び瞑想に耽っていた。
趙公明と当たるのならば仙気を溜める必要がある。
そのための仙穴にその身を置いていたのだ。
「天化か……」
「師叔、膝貸して」
印を解かせて天化は太公望の膝に頭を乗せる。
「さっきヨウゼンさんのところに行って来た」
「珍しいこともあるよのう。喧嘩でも売ってきたのか?」
「なんで分かったさ」
「当たってしまったか……冗談のつもりだったんじゃが」
天化の髪を撫でながら太公望はやれやれと首を振る。
手を伸ばして彼女の頭を押し、自分の唇と重なるようにさせた。
煙草の味の接吻も、もう慣れた。
「男の意地。あの人には負けたくないさ」
力だけではなく、強さを解いてくれた人は傷付くことを恐れない。
「ヨウゼンさん、焦ってた。師叔……ヨウゼンさんには好きって言わないさ?」
「安売りはせぬ主義じゃからな。重みがなくなるであろう」
「ん……でもやっぱ俺っちは師叔に好きって言いたい」
「言われるのは嬉しいよ。ただ、わしは言わぬだけで」
優しく触れる指先。その手は風を生み、自在に操る。
本気で当たれば例え天才道士であっても相殺するのがやっとであろう。
教主の下、彼女は隔離された空間でその力を育ててきた。
時折見せるその片鱗が、恐くて……魅かれる。
「……望……」
あなたのために強くなるから。
「俺っちのこと……好き?」
「ああ……好きだよ……」
何も要らない。あなたがいてくれるだけで良いから。
「なんで泣きそうな顔してるさ……?」
「今こうして居られる事が……幸せだと思えるからかのう……」
それは嵐の前の静けさ。
穏やかな陽だまりに包まれていた。
大分使い慣れてきた左腕を摩りながら、太乙真人から渡された薬を口にする。
拒絶反応を防ぎ、より効率よく意思が伝達されるように太公望に義務付けられた行動の一つ。
「……っは……どうも好きになれぬ味じゃ」
苦いものと辛いものは得意ではない。
水で流し込んで口直しとばかりに昼間に見つけた洲桃に噛り付く。
「師叔、少しよろしいですか?」
「手短に頼む。そろそろ休もうとおもっておったところじゃ」
指先に残る甘みに唇をつける。
「手短に出来る自信がありません……」
「……立ち話もあれだ。座るがよい」
手を拭いて、下ろしていた髪を簡単に纏めて簪で留めた。
螺鈿細工のそれは黒髪の彼女に華を沿え、その艶を際立たせる。
「どうした。何かあったか?」
「昼間……天化君に喧嘩を売られましたよ」
「そういえばあやつも言っておったのう……あれは血の気が多いからな。多少のことは大目に見てやってくれ」
「大目に……ですか……」
「おぬしは本来ならば仙人として名乗っていてもよい立場じゃ。日の浅いあれのことは……」
「他に関しては寛容でも、あなたのことを大目には見れません」
「……………」
少し視線を落とし、太公望はヨウゼンに洲桃を一つ手渡した。
「やる。まずは食うが良い。空腹だとロクなことを考えん」
「空腹……ですか……」
「腹が満たされればそれなりに落ち着き、思考も安定する。まぁ、普賢の聞きかじりじゃがな」
そう言うと太公望もまた一つ口にする。
はぐらかすことの天才は呑気に洲桃を齧りながら自分にもそうしろと促す。
そのはぐらかしを解いたのがあの少年なのだ。
空腹は食物を入れれば満たされる。
ならば……この空虚な心は何を入れれば満たされる?
「僕が欲しいのは洲桃でなくて、あなたの心です」
「……そんなことを寝る前に言われてものう……明日のために体力は温存しておきたいのだ」
「ちゃんと聞いてください、師叔!」
「……分かった……」
寝巻きの襟元を直し、太公望はヨウゼンと向き合う。
崑崙の幹部。教主の直弟子。周の軍師。
多角的な顔を持つ一人の少女の目は、天才と呼ばれる男の心を奪った。
「わしの心とな……得てどうするつもりじゃ?」
「分かってます。これは……嫉妬です。彼への……」
「少しわしも意地悪が過ぎたかのう。嫉妬とはおぬしらしくない」
なら、自分らしいとは何なのだろう。
「師叔にとって僕はどう映ってるのですか?」
「そうだのう……多少自信過剰なところはあるが頼りにしておるよ」
「では……何故、天化君に護衛を……」
手を伸ばし、ヨウゼンの額に指先をつける。
前髪を軽く弾いて、ゆっくりと撫で摩った。
「あれは心の強さがある。おぬしよりも、わしよりも」
「心の……強さ……?」
「多少性格に問題はあるかもしれぬが真っ直ぐで良い眼だとは思わぬか?」
手を取って、ヨウゼンはそれを自分の頬に触れさせた。
「能力だけならおぬしのほうが格段に上じゃよ、ヨウゼン」
笑う顔が愛しいと思う。
それを自分ひとりだけのものしたいと。
「今夜はゆっくり休んだほうがいい。明日はあの趙公明と当たるのじゃからな」
「……師叔、ここに居てはいけませんか?」
「…………」
「ここに居させてください……」
「好きにするがよい。ただ……わしは眠いのじゃ……」
目を擦るその小さな手。
この計画の実行者がこの人でよかったと思う。
おそらく他の誰かの下に付けといわれたならば従うことは出来なかったはずだ。
全てを受け止めて、空の下で笑うヒト。
伸ばした手にはいつも光が抱かれている。
「……一緒に居られれば……それでいいんです……」
ヨウゼンの傍らに立ち、少し屈んで額に接吻をする。
「わしの悪い癖だ。子供を放置することは出来ぬ」
「子供?」
「わしに見えるのは泣きそうなのを堪えてる子供じゃよ」
小さく『そこに居る天才道士には内緒だがな』と加えた。
飾り物の簪は転がり、解かれた髪は闇に溶ける。
自分の上に降る男の髪を軽く引くと、弄る手が止まった。
「どうかしましたか?」
「いや……おぬしも変わったと思っただけだ……」
裸の身体が二つ絡まる。ぼんやりと闇に浮かぶ白い肌がやけに艶かしい。
「僕がですか?」
「よく笑うようになった。いいことではないか」
首筋に降る唇。悪戯に伸ばした指先を噛まれて身を捩る。
「師叔もよく笑ってますよね……」
「そうかのう……スープーがおるからかのう……」
耳朶を噛まれて少しだけ高い声が上がる。口元を片手で押さえて太公望はヨウゼンの胸を押す。
「早く……助けに行かねば……」
さらさらと自分の上に降る髪。
「……あっ…!……」
「僕が嫉妬するのは彼だけじゃないようです……」
脚を広げられ、舌先が媚肉をなぞり上げる。
探られながら指は内側を犯し、ひくつくそこが絡みつく。
「…んぅ……ヨウ…ゼ……!!……」
ぬるりとした感触を楽しむかのように指は奥のほうで動き、その度に揺れる腰が淫靡に誘った。
「……師叔……」
「!!」
唇を深く重ねたまま、ヨウゼンは彼女の中に自分を埋め込む。
上がる声を封じて、そのまま舌を吸い合って引き離されるのが嫌だとばかりに押さえ込まれる。
「あ!!」
びくんと揺れる腰つき。
男に広い背中に手を回し、力任せに引っ掻く。
細い爪が食い込み、皮膚を浅く裂く感触にヨウゼンの眉がわずかばかり寄せられた。
上がる息と絡まる吐息。
窮屈そうに折られた膝。押し割って絡まった肢体が二つ。
「んんっ!!!ヨウゼ……あっ…ん!!」
「……いつか、僕のことを好きになってくれますか……?」
その目は悲しげで、天才と謳われる男とは思えないくらいに脆弱で。
「…っは……!!!……」
繋がった部分が、じんじんと熱い。
剥がれた爪。血の滲んだ親指を咥えて舌でなぞった。
「……この爪は……どう…っ…あ!」
「……子供染みたことをしてしまいました……」
指先でヨウゼンの髪を留める髻を外す。
ばさりと降ってくる髪に太公望は笑った。
「……綺麗……」
「?」
「……おぬしは綺麗じゃのう……」
「何を言ってるんですか……師叔……」
吹きかけられる吐息に心が震える。
「こうしているときのあなたが一番綺麗ですよ……」
言われて照れがあるのか太公望はヨウゼンの髪を少しばかり強く引いた。
「痛いですよ、師叔」
「……歯の浮くようなことばかり言うからじゃ……」
絡まったまま笑いあう。それは些細なことで、とても幸せで。
この幸福の中でまどろんだままでいたいという思い。
二人折り重なったまま息絶えることができたなら。
「あっ……はんっ!!!……!」
押さえつけられたまま突き上げられて、一際高い嬌声が上がる。
舌先がぺろりと唇を舐めて、そのまま歯列を割って口腔を蹂躙する。
「……ふ…ぅ……っ……」
「……いつか、僕もあなたのことを呂望と……呼んでもいいですか……?」
一度離れた唇を、彼女のそれが追った。
軽く触れてすぐに離れて。そして、耳元で小さく囁いた。
「……好きに呼ぶがよい……」
「……もう少し、僕が勇気を持てるようになったら……」
柔らかい身体は溺れるには十分すぎた。
今更手放すことがどうしてできようか。
(ああ……こんな感情も持ち得るのか……)
嫉妬。そんなものとは縁遠いと感じていた日々が懐かしくさえ思える。
傷つく事を恐れずに自分の刃をその身に受けたあの日。
逝ってしまった人を涙を隠して見送ったあの日。
子供が一人泣いていると、心を覗かれたあの日。
「……師叔……っ……」
「やぁっ!!!あッ!!」
逃げる腰を抱き寄せて、一番奥深いところで絡み合う。
男の熱さを抉るように感じたいと身体が求める。
「〜〜〜っ!!!」
寄せられた眉と喘ぎながら半開きの口唇。
垂れた涎を唇で吸い取って、主に返す。
「…くぅ……っ……ヨウゼ……!」
ぷるんと揺れる胸を掴んで、軽く噛む。
「やっ!!」
休むことなく揺さぶられて濡れきった身体が二つ落ちるために加速していく。
「……師叔……っ!」
「あ!……ヨウゼ……ッ…!!!!」
二人同時に重なった声。
だらりと投げ出された身体とは裏腹に心は少し近づいたような気がした。
苦々しく煙草を揉み消して天化は空を仰いだ。
(……なんで他の男連れ込んでるさ……)
新しく火を点けて手持ち無沙汰に野路を歩く。
「……何してるさ、蝉玉」
「……天化……」
得にすることも無く天化は彼女の横に座り込む。
「要る?」
「好きじゃないの。要らないわ」
「ふ〜ん。女って煙草嫌いなほうが多いさ?」
立ち上る煙をぼんやりと眺める。
「普通はそうじゃないの?」
「師叔は結構好きみたいだから」
「それ、あんただから我慢してんじゃないの?太公望ってあんまり自分を主張しないじゃない」
「あの人、自分の欲求には忠実さ。酒、煙草、男、他にあったかな……まぁ、そんな感じ」
蝉玉は膝を抱えたまま小首をかしげて天化を見た。
「その自称恋人の天化クンはなんでこんなところにいるのかしら?」
からかう様な口調。
「……間男に隙を突かれたさ。ちょっとばっかタイミング逃した」
決まり悪そうに答える声に蝉玉は堪えきれずに笑いだす。
「間男ってヨウゼン?おっかしー!!本当に見てて飽きないわ、あんたたちって」
「そりゃどーも」
二本目に火を点ける。
ぼんやりとつく灯りはどこか優しい。
「前から思ってたんだけどもなんであんた達太公望が好きなのよ」
「あー……笑うなよ」
「何よ」
「俺っちの一目惚れ」
嘲笑を覚悟していたが蝉玉は穏やかに笑うだけ。
「なんだ、あたしと同じじゃない」
「そっか……」
足を伸ばし、前のほうに手をぐんと伸ばす。
「あの人は、綺麗な人さ。綺麗なんだけど、なんつーかさ、上手く言えない」
その独白は。
「脆くって、強くって。優しくて柔らかくて気持ちいーっていうかさ……凄ぇ欲しい人」
ぽつりぽつりとこぼれる。
「笑ったり、怒ったりいつも忙しい。でも……一番好きな顔はさ……」
慣れた手つきで小さくなった煙草を弾く。
「してるときにちょっと苦しそうに笑って、イキそうな時の顔かな……」
「……それ太公望が聞いたらあんた封神台直行よ」
「だって可愛いんだから仕方ないさ。男ってみんなそーゆー顔が好きさね」
「サイッテー」
やれやれといった感じの蝉玉の手を天化が掴む。
「何よ」
「試してみる?俺っち結構いいかもよ?」
「な……」
そのまま引き寄せて、いつもするように唇を重ねた。
「…っは……何すんのよ!」
「……やっぱ止めた。ツマンナイさ。師叔のほうがイイ」
蝉玉は指で唇を拭う。
「誰か連れ込んでても俺っちあの人じゃなきゃ嫌さ……」
バンダナを解いて、夜風に髪を泳がせる。
「あー、なんでこんなにヤキモキしてんだろ」
「それってやきもちよ。嫉妬ってやつ」
「嫉妬?」
「そ、自分のほう見ないで余所見ばっかしてるからいらいらしてくるの。あたしがそう」
うふふと笑って蝉玉は天化の頭を撫でる。
「愚痴くらいおねーさんが聞いてあげるわよ」
「誰が。そっちこそ浮気性のモグラしっかり捕まえたほうがいいさね」
笑いあってじゃれあって。
「ねぇ、あたしたちいい友達になれると思わない?」
「友達ならなれそうさね……」
「がんばろーよ。あたしはハニーを助けるの……」
それは同じように誰かを守りたいと思う瞳。
「俺っちは望を守るさ……嫌なこと全部から」
少し重い身体を引きずって、傍らで眠るヨウゼンの唇に触れてみる。
よほど疲れているのか寝息がかかるのが分かった。
(……眠らせておくか……)
まだ少し熱い身体を冷まそうと天幕の外に出る。
簡素着と擦れる肌。
足元に転がる吸殻。
(……煙草……聞かれておったか……)
あれこれ考えても仕方の無いことに、ため息だけがこぼれた。
どれを取るといわれても、選べない。
何一つ失いたくないのだ。
(子供はわしじゃ……どれも失いたくない……)
ふらふらと歩きながら星を数える。
「望」
「天化……」
「ヨウゼンさんは寝てるさ?」
「ああ……」
自分の吸いさしを太公望の口に咥えさせる。
そのまま受け止め、軽く吸い込んで煙を吐き出す。
「!」
おもむろに重なった唇。
「消毒。おやすみっ」
足早に去っていく姿を見送りながら、立ち込める煙を見つめる。
「あやつのほうが上手かのう……」
まだ少し残る煙草を咥え、太公望は満足げに笑った。
時間は指定された正午よりも少しだけ早い。
「相手は一筋縄ではいかぬようだ。皆、気をつけるのじゃぞ」
湖に浮かぶ巨大な船を見つめる。
(スープー、待っていてくれ……)
「師叔、大丈夫さ。俺っちがついてる」
「ああ……頼んだぞ、天化」
宝剣を仕舞い込んで天化は太公望の手を取った。
そっと抱き寄せて同じように正面を見据える。
「スープー……」
この人を悲しませ、苦しませるものすべてから。
「大丈夫さ……望……」
守るだけの力を、この手に。
太陽が頭上に昇り、時間は正午。
ゆっくりと幕が開き始めた。
BACK