◆武成王の昔話と酒癖の悪い男◆







左の傷の化膿も落ち着き、太公望はいつものように兵の訓練を監督していた。
殷郊との一戦以来、女だからという理由で太公望の指揮を拒むものは無く、
周軍の強さは日に日に増してきている。
「師叔、具合はどうですか?」
「大分良いよ。そう気にするほどでもない」
風にひらひらとそよぐ袖口が目を引いた。
太公望本人は特に気やむ事も無く、日常生活を営んでいる。
ただ、その痛々しさに珍しく男三人は協議しあいしばらくは太公望の部屋への夜這いは取りやめることにしていた。
「天化と武成王か……親子だからかのう、型も間合いもよく似ておる」
「武術に長けてますからね。黄家の人間は」
ヨウゼンと二人、階下を眺めながらぼんやりと話し込む。
「ヨウゼン、おぬしらに言っておかねばならぬことがあるのじゃが」
「どうかなさいましたか?」
「今のわしは宝貝の使いすぎでただの人間になっておる。暫くはそのままらしい」
「え……?」
「だから、おぬしらに守って貰わんと最悪わしも封神されるということじゃ」
あっさりと言ってのける太公望にヨウゼンは言葉を失う。
「どういうことですか?」
「宝貝を持つことも出来んということじゃ。哮天犬に触ることも当然出来ぬ」
その言葉を聴いて傍らの哮天犬が悲しげにクゥンと鳴いた。
「すまんのう……元に戻ったらまたおぬしと昼寝がしたいものじゃ」
「昼寝?」
「ああ、言ってなかったかのう。天気のいい日にはスープーとこやつと昼寝しておったのじゃよ」
哮天犬は長毛種の犬によく似ている。
毛並みを櫛で整えると、中々に美しいものだ。
柔らかい毛とその身体は寄りかかって寝るには丁度よく、太公望は昼寝の時にはこっそりと連れ出していたのだ。
ヨウゼンはじろりと哮天犬を見る。
「どうして僕に言わなかったんだい?哮天犬」
「そう攻めるでない、ヨウゼン。こやつを連れ出したのはわしじゃ。」
太公望に諌められ、ヨウゼンは溜息をついた。
「どれ、わしもあの二人に稽古でもつけてもらうかな」
そういうと太公望はとことこと降りていく。
「天化、わしと手合わせしてもらえぬか?」
咥えた煙草がぽろりと落ちた。
現在の太公望は利き手を失っている。
それに今まで剣を握ってる姿を見たことも無い。
「丁度良い、これを借りるぞ」
ぼんやりと口をあけている兵士の剣を取り、太公望は天化と向かい合い剣を構える。
「ちょ…ちょっと待つさ師叔。俺っち怪我人とやりあうのは趣味じゃないさ」
「ほう、わしが相手では不満か?」
「第一、師叔は剣なんて使えないさ」
「それはどうかのう」
口だけで笑ったかと思えば、一瞬で天化の横に回る。
頬を掠めた剣先には流れる赤い雫。
「これでもわしの出は姜族でな……剣術は幼少から父に仕込まれたのじゃが」
「……面白いさ。この勝負乗った!」
言うなり天化は太公望の剣を弾こうとする。
しかし、太公望とて簡単にやられるような器ではない。
天化とは身長、重量、体格的に比べても太公望のほうが不利である。
動きや技の重さかで比較しても贔屓目に見て互角とでも言おうか。
「師叔じゃ俺っちには勝てないさ!」
「それはどうかのう」
天化が力技で勝負を掛けようとすれば太公望はその小柄な身体を利用して逆に天化の懐を狙いに来る。
お互いの剣先がぶつかり合い、大地を蹴る音が響く。
元々負けず嫌いの天化ではあるが、今期だけはことさら負けなくないという気持ちが強かった。
利き腕を無くし、剣をとるのも久方振りだと言う太公望。
ましてや、それが惚れた女ならば。
少し息の上がってきた太公望に対して天化にはまだ余裕がる。
(師叔は体力がないさ……この勝負貰った!)
莫夜の宝剣が太公望の手元を狙う。
太公望は小さく笑い、剣を引き、一瞬で横に変える。
結果宝剣は柄を削り、痺れが直撃した天化の手元から転がり落ちた。
一方、太公望も衝撃を防ぎきれずに膝から崩れ落ちる。
「引き分け…ってとこだな、天化」
武成王が笑う。
「ちょっと吃驚したさ。師叔」
「やはりおぬしには勝てぬな。わしも修行不足だ」
はぁはぁと息をしながら、太公望は立ち上がる。
「じゃが、いい運動にはなった。時々手合わせを頼んでも良いか?」
「もちろんさ。俺っちもがんばるさね」
そんな太公望と天化のやり取りを見ながら武成王は少し懐かしそうな目をしていた。




いつものように天祥とナタク、そしてたまたま通りかかった天化を強制的に風呂に入れ終え、
太公望は自室で体力回復を図っていた。
「御主人、大丈夫っすか?」
「……スープー、あの三人を風呂に入れるという単純行為が何故にこんなにも疲れるのだろうな……」
「お酒でも飲んで、今日は休んだほうがいいっすよ」
「すまんのう……」
「僕は天祥君のところに行ってくるっす。ちゃんと早く寝るっすよ、御主人」
そういう四不象につっぷしながらひらひらと手を振る。
悲しいくらいに綺麗な月の夜。
こんな時に一人酒も馬鹿馬鹿しい。
(さて、誰のところに行くかのう)
酒徳利を右手に下げ、回廊をゆっくりと歩く。
「太公望殿?」
「おお、武成王か……丁度いい。一杯やらぬか?」
にっこりと笑い太公望は徳利を振ってみせる。
仙界特製の逸品だ。
無類の酒好きの太公望が持ってくる品を断るような男でもない。
「ありがたい話だ」
連れ立って武成王の部屋に向かう。
なんだかんだと戦況のことを話しながら酒を進め、半分ほど空けた頃だった。
「そういやぁなんで俺を誘ったんだ?」
「ん〜〜〜〜?」
少しとろんとした目で太公望は笑った。
「他にも相手は一杯いるだろう」
「発は旦から禁酒を言われておる。ヨウゼンは飲むとくどくなる。天化は酒癖が悪い……親である
おぬしの前で言うのはあれじゃがな」
少し酔っているらしい。太公望にしては珍しくそんなことを言ってのけた。
「ははは、俺の息子は酒癖がやっぱり悪いか」
豪快に笑い飛ばす。
「のう、何か面白い話をしてくれ」
「面白い話しなんざ無いぜ」
「じゃあ……賈氏とおぬしの馴れ初め聞かせてくれ」
「俺そういうの苦手なんだが……」
「わしの話なんぞ天化から筒抜けであろうしな」
仕方ないとばかりに武成王は口を開いて、少しずつ話し出した。





「親父、今何て言った?」
飛虎は父親をぎろりと睨んだ。
先ごろ遠征より戻ったばかりの疲労した身体である。
それに追い討ちを掛けるようなことを父親はあっさりと言ったのだ。
「嫁になる娘が居ると言ったが」
「俺はまだ嫁なんか要らん。女は戦の邪魔だからな」
「それならば安心せい。文武に長けた相手を見繕ってきた。なに。わし戦友の娘なのだがな、器量はいいのだが
多少破天荒なところがあるらしくてな。まぁ、気に病むほどではないから快諾してきたのだ」
かっかっかと笑う父親を飛虎はな具体気持ちで一杯だったが、握った拳を隠す。
「快諾って……」
「あとは祝言を上げるだけだということだ。まぁ、一度会いに行って来るが良い」
がっくりと肩を落とし、部屋に戻る。
まだまだ軍人としては駆け出しで妻を娶る余裕などは無い。
「まぁ、あっちだって断わりたいだろうしな。逢いにだけ行くか」
翌日、身支度をして飛虎はその少女に会いに行った。






四つ角を曲がった先の邸宅が少女の住まい。
躊躇いがちに伺いを立てると住人には知れ渡っているのか中庭に案内される。
「賈氏様、飛虎様がお見えですよ」
「何度も言ってるでしょう、私は自分よりも弱い男と一緒になる気はないと!」
長い黒髪と、同じ色の瞳。
鼻筋は知性的で端正な顔立ちの少女。
手には己の身丈ほどの剣を持っている。
「おいおい、いきなりそりゃ酷ぇな」
「私はどうでもいい男の子供を身ごもる道具ではありませんから」
言い切る賈氏に飛虎は堪え切れずに噴出した。
「威勢のいい女だな。気に入った!」
「誰がお前なんかと!!」
賈氏は飛虎の喉元、剣を突きつける。
「じゃあ、こうしようぜ。俺が勝ったらお前、俺の嫁になれ」
「ならば私が買ったならばこの話は無かったことにしてもらいますから」
互いに剣を構え、向かい合う。
賈氏の剣先は的確に急所を突いてくる。実践と経験からでてくる強さ。
一方の飛虎は大技と破壊力は賈氏とは比べ物にならない強さ。
「賈氏様は今まで九十九人の求婚者を返されてますから」
そんなことを給仕の者が言っていた。
「なぁ、お前相当な人数突っぱねてきたろ」
「だったらどうだというの」
刃と刃が擦れ合う。
「俺は百人目にはならねぇ。最初の一人になる!」
賈氏の剣を突き返し、正面から当ててゆく。
みしみしと刀身から音がする。
「!!」
炸裂音と共に、賈氏の剣が砕け散る。衝撃を受け止めきれずに彼女の身体は宙を舞った。
「危ねぇ!!」
地表に叩きつけられる寸でのところで飛虎は賈氏を抱きとめた。
「この勝負俺の勝ちだろ?」
「…そうね、私の負けだわ」
悔しそうに笑う。
「でも、気に入ったわ。いいわ、一緒になりましょう」
賈氏は立ち上がり、飛虎の手を取った。
「お父様、私、嫁ぐことにします。後日荷物は送ってくださいませ」
凛とした声が響く。
「な、なにもそんな急に」
「黄家の御方からは今すぐにでもと言われてました」
「まぁ、いいけどよ。ところでお前幾つなんだ?見たところ……」
口篭る飛虎に賈氏はあっさりと応える。
「今度の夏で十六になります」
「じゅ、十六!!??」
あんぐりとする飛虎に賈氏はうふふと笑った。



その身一つで嫁いできた彼女。
用意された別宅に飛虎と二人の生活が始まった。
家事をこなしながら空いた時間で剣技の稽古と読書。
彼女は休み無く何かをしている。それでいて飛虎が何かを望むとすぐさま行動を起こすのだ。
「なぁ、少し休んだらいんじゃねぇのか?」
独楽鼠のようにくるくると動く賈氏を見ながら飛虎はそう言った。
「まだここに慣れないから……どこに何があるかも分からないし」
「焦んなくていいからよ。のんびり行こうぜ。先は長いんだしな」
よほど口うるさく躾けられてきたのか、賈氏の料理の腕前は非の打ち所が無かった。
次から次に皿を空ける飛虎を見ながら「作りがいがあってうれしい」と零すほど。
この一週間で大分彼女のことを理解したような気がする。
だが、飛虎にはひとつだけ疑問があった。
二人のために用意されたこの別宅、当然寝室も一緒である。
二人で寝入るが、如何せん良心が咎めて飛虎は賈氏に触れようとはしなかった。
(まだ、子供だしな……どうしたもんか……)
賈氏は知ってか知らずか飛虎の腕枕で眠る。
まだ幼い素顔を見るとうかつに触れることが出来なくなってしまうのだ。
そうこうしているうちに一月が過ぎたが、飛虎は同じように思い悩んでいた。
「ねぇ」
風呂上りで少し濡れた髪。
「な、なんだ?」
「私はそんなに魅力が無い?」
まるで胸のうちを見抜かれたような言葉。
「な、何言って……」
「だって、飛虎は私に指一本触れてこない」
少し拗ねたよう口調。
「あー、そのな、魅力がねぇとかじゃないんだ…その、なんつーか良心が咎めるっていうか…」
その身一つで嫁いできた彼女。
「もっとお前が大人になってからでもいいかと思ってよ……」
「その間に飛虎が死んだら私はどうすればいいの?」
「賈氏……」
「黄家のお父様が言ってたの、飛虎は危険なところにも遠征に行くって」
「………」
「子ども扱いしないで……」
賈氏は飛虎の胸に身体を預ける。
自分の胸ほどしかないその身丈。
「悪かった。ガキ扱いして…」
膝下に手を入れて抱き上げる。
「きゃぁ!」
「覚悟できてんだろうな?」
寝台に下ろして、覆いかぶさる。
触れるだけ口付けを受けて、賈氏は飛虎の頬に手を当てた。
無骨な指が柔らかい乳房に沈む。
飛虎の唇が吸い上げるたびに賈氏はくすぐったそうに身体を捻った。
指先が秘裂を摩り、ゆっくりと入り込む。狭い入り口はまるで拒むように飛虎の指に絡みついた。
「っ……たっ……」
異物の進入に強張る身体。
一度指を抜き、舐め上げて濡らして再度侵入を試みる。
「…やっ……」
それでも何度か繰り返すうちに内部がしっとりと濡れてくる。
自分の身体の変化に、彼女自身も驚く。
「あんっ!!」
舌先が肉芽を嬲り上げ、賈氏を追い込んでいく。
「あぅんっ!…やぁっ!!!!」
初めての絶頂に意識が霞む。
体液で濡れた唇を指で拭って、飛虎は賈氏に深い口付けを落とした。
舌を絡ませた、男女間の接吻。
知らずに同じように舌を求める自分に、彼女は女の本能を知った。
「ちゃんと掴まってろよ」
賈氏の手を取り、己の背に回させる。
こくんと頷き、彼女は男の広い背中を抱いた。
張り付く皮膚の感覚と汗の匂い。
膝を折って飛虎は賈氏の内側に己を沈めていく。
「っ……いった…っ……」
中程まで繋がったが、賈氏の表情を見ているとどうも罪悪感が生まれてくる。
「大丈夫か……?」
泣きながら、必死に笑おうとする彼女が愛しく思えて。
この女を生涯の妻に出来る己の幸せに酔いたくなる。
「平気……だから……」
奥まで繋がり、痛みと圧迫感に震える賈氏に甘い口付けを降らす。
貫かれた痛みと流れた血液は己の身体が女であると克明に告げていた。
「…飛…虎……」
百人目の相手がこの男だったのは天命だったのかもしれない。
天が与えた相手ならば、添い遂げようと。
痛みに震える身体の奥に放たれる熱源。
受け止めながら、胎の奥がぼんやりと暖かくなるのを彼女は沈む意識の中で感じていた。





それから数ヶ月後、子供を身ごもった賈氏だが何も変わらずに剣を取る日々が続いていた。
「おいおい、腹に障るだろーが」
「飛虎と私の子ならこれくらいは平気でしょ」
「まぁ、そういやそうだな」
少し膨らみ始めた腹部には似合わない幼い顔つき。
「子供は何人いてもいいもんだしな。頼んだぜ、賈氏」
そういわれて少し赤くなる彼女。
あの夜以来ほぼ毎晩のように抱かれていることを思えば、大家族になることは想像するに容易かった。
そうやって、二人は青年と少女から夫婦に変貌を遂げていったのだ。
子育てに追われながら賈氏は夜中に一人剣を取る。
飛虎はそれを見て見ぬ振りをする。
子供たちも健やかに育ち、仙界入りする才気あるものもいた。
笑顔で送り出し、月明りの下で一人泣いている妻を見て男はその肩を抱くほかに出来なかった。
「なぁ、俺は幸せだ。お前と一緒になれたんだからな」
「ええ……私もです。あなたとこうしていられるのですから」
「あいつが帰ってきた時に家族が増えてたら喜ぶだろうな。妹がほしいとか喚いてた位だからな」
息子のことを思う姿は母であり、公の場に出る姿は武成王の妻である。
そして、今ここでこうして肩を寄せる姿は賈氏という女そのもの。
長い年月を掛けて、父と母になり、夫と妻になった。
その日々は永遠に続くと信じていた。





「…王、武成王、どうかしたのか?」
心配そうに覗き込んでくる太公望。
その長い黒髪は、失くしてしまった女を思い出させた。
「!」
強く抱かれて、息が詰まる。
「すまねぇ……昼間天化との手合わせ見てても似てるって思ったんだ……」
「奥方にか…?」
「ああ、あいつも強い女だった。俺なんかよりもずっと……」
少し噛み殺した嗚咽は、その思いの強さを語っていた。
太公望も賈氏をまったく知らないわけではない。
朝歌で深い傷を負った自分を手厚く看護してくれたの優しさを忘れるはずは無い。
「武成王……」
「飛虎……俺の名だ……」
酒の力も加わって、二人の身体が絡みあう。
お互いに思う相手はこの世には居ないのだ。
重ねたのは身体だけ。
心は……遠くに。




飾り模様の彫られた蝋燭に火を灯す。
その柔らかい光は外界とこの部屋を優しく隔離しているようだった。
「すまなかった……」
「いや、わしも似たようなものだ……」
うつ伏せになり枕を抱える。
「左腕はもういいのか?」
「たいした事は無いよ。おぬしの息子がよくしてくれるからのう」
あっさりと答えて笑う太公望。
「太子のことで思ったんだが……俺は聞仲と戦えるんだろうか…正直わからねぇ…」
「…………」
「今の自分の立場は分かっているつもりだった。だが……太子たちが封神された時に、酷く胸が痛かった。
はたしてかつての友を斬れるだろうか……」
太公望は男の頬に手を伸ばす。
「わしは何があっても聞仲を倒す。たとえ腕を失くしても、血で汚れても」
その手を男は受け止める。
「強くなったな、お前……」
笑う顔が彼女に重なる。
そのまま二人は目を閉じた。




翌朝、珍しく二日酔いで頭を抱える太公望に心配そうに四不象に水を持ってくる。
「すまんのう…スープー」
「大丈夫っすか?御主人」
「一瓶空けたからのう……今頃あやつも二日酔いに悩んでるであろうて……」
同じように武成王も頭痛を抱えながら政務についていた。
「親父、大丈夫さ?」
「おお、俺も年だな……」
「師叔も二日酔いらしいさ。まぁ、二人とも年って言ったら年なんだろうけど、どうなのさ」
こめかみを押さえながら武成王は笑った。
「あー、久々に賈氏の夢を見たんだよ」
「おふくろの?そーいえば聞太師を追い返したって話はいつ聞いても面白かったさ」
賈氏は飛虎の許可無きものはたとえ聞仲であってもその邸宅に入れようとはしなかった。
持ち前の剣術で追い返されたものも少なくない。
そんな二人の血を最も色濃く引いたのが次男の天化である。
「おふくろ、いい女だった?」
「ああ、俺には勿体無いくらいのな」
仙界入りしてからはごく稀にしか天化は下山しなかった。
尤も、自宅に着く前に道徳真君に見つかりたっぷりとお灸を据えられることが多いというのもあったが。
「今のお前の姿を見たら、喜ぶだろうな……」
「ん……おふくろ、最後までいい女だったんだろうな……」
「ああ。お前の女の趣味は俺の血だな」
「うあっ!?おふくろも気が強くて凶暴なとこあったのさっ!!??」
咥えていた煙草がぽろりと落ちる。
親子二人、笑う声が響いた。







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