◆まなつのよるのひみつのあそび◆




「もう遅いし、今夜は泊まって行くがよい」
話し込んでしまえば、時間など忘れてしまう。
気がつけばあたりはすっかりと日が暮れて、虫の声まで聞こえてくる。
「良い?」
「俺は別に構わないけど」
「ありがとう。望ちゃんと逢うのも久々だから……」
嬉しそうに笑う顔を見れば。咎めるわけにも行かない。
太公望と一緒にいるときの普賢の表情は、自分といるときとはまた違ったもの。
「あのね、この間……」
「それなら、わしもあったのだが……」
女同士の話の間に、華を添える茶と菓子の可愛らしさ。
「おっしょーさま、普賢真人さん、お茶とお菓子の御代わりですっ!!」
冷たい紅茶と、杏仁豆腐。二人分の器と、小さな匙。
「すまんのう、武吉」
「ありがとう。武吉くん」
少女二人に微笑まれれば、嫌な想いは誰もしない。
いそいそと空いた茶器と皿を下げる姿に、道徳も思わず笑ってしまう。
この少年には、人を和ませる何かがあるらしい。
それゆえか太公望も傍に置いて、手放す気配も無いのだ。
「道徳さんも、いかがですか?」
「俺はいいよ。俺の分は普賢にやってくれ、ちょっと向こうの方にいってくる」
ひらひらと手を振って、静かにその場を抜け出す。
止まる気配の無い会話に、少年は次のどんな甜食(デザート)を準備しようと笑った。





「御師匠さまーーーーっ!!浴巾(バスタオル)ここに置いておきますねーーっ!!」
浴室から聞こえてくるのは、少女二人の声。
扉の前には屍累々の男達。
霊獣二匹は顔を見合わせて首を振った。
「無様っす……無様っすよ!!」
「馬鹿ばっかりだね……御風呂って覗きたい物なのかなー」
「仮にも仙人や道士、王様までいるっていうのに、無様すっよ!!」
それだけこの二人に魅力が有るのだろうが、それでも仙界の者としてこの光景は見るに耐えない。
「スープー、武吉も一緒に入れと呼んでくれ」
「武吉くんも?ボク、出ようか?」
邪魔するのもなんだと、立ち上がる普賢を太公望は引きとめた。
「わしの、可愛い可愛い弟子を見てみぬか?」
「んー……見ようかな」
湯浴みの香りは、甘い魔法。招かれれば、断れる男はそうはいないだろう。
「おっしょーさまー?入りますよー?」
「武吉、風呂に入るときは服は脱ぐものじゃぞ?」
「ええっっ!?」
太公望だけならまだしも、その隣には普賢がちょこんといる。
当然ながら二人とも全裸なのだ。
「武吉くんも入ろうよ、今日は暑かったしお風呂入るとすっきりするよ」
自分と年端も変わらないように見える二人の少女。
おいでと招かれて、意を決して入り込む。
「そんな端ではなく、こっちへ来るが良い」
「は……はい……っ……」
顔が赤くなるのは湯のせいだけではなくて。
目の前にいる、大事な人が優しく誘うから。
「武吉」
「?」
さば!と桶で頭から湯を掛けられて、武吉はふるふると首を振った。
「おっしょーさまー、びっくりしましたー」
「ははは。どうじゃ、わしの武吉は可愛かろう?普賢」
その様子を普賢は唇に指を当ててじっと見つめる。
彼女にも武吉とそうも変わらない愛弟子が居るのだ。
しかし、どれだけ可愛がっても成長してしまった今は一緒に入浴などは不可能に近い。
「いいなー、ボクも武吉くんほしい」
「ダメじゃ。これはわしのじゃ」
少年の頭を抱えて、胸に抱く。
ふにゅんと柔らかな乳房に押し付けるような形になって、思わず身体が固まる。
「えーーー、ちょっとだけでいいから貸して。何だったら道徳貸すよ?」
「要らん。武吉はわしのじゃ」
同じように木咤を抱き締めたくとも、逃げ回られるのが関の山。
懐いてくれる弟子ほど可愛い物は無い。
「まぁ……一緒に遊ばせる事は出来るぞ?」
「どんな?」
少年に聞こえないように、太公望は普賢に耳打ちする。
小さく頷いて、普賢は少年の頬に手を伸ばした。




「やっぱり武吉くん可愛いー」
乳房で挟みこむようにして、普賢は少年の頭を抱いた。
ちょうど、胸の谷間に顔を埋める形になって武吉はぎゅっと目を閉じる。
「わしのじゃと、言うとるに」
後ろからまだ未完成の体を抱いて、太公望は少年の耳元に唇を当てた。
「お、おっしょーさま!?」
軽く息を吹きかければ、びくんと肩が竦む。
薄い胸板に指先が触れて、脇腹をくすぐりながらゆっくりと下がって行く。
「よそ見しちゃダメ」
柔らかな乳房を腕で寄せて、押し付けるようにして抱き締める。
「ふぁ……い……っ……」
髪を撫でる指先は、自分が知っている物とは違う優しさ。
背中に感じる甘い乳房の感触。
板ばさみの状態で、自由は奪われている。
「!?」
肩口を軽く噛んで、太公望の指が勃ち上がったそれに掛かった。
「おっしょーさまっ!?」
「だまってわしらに遊ばれろ」
「みんなには、内緒だよ?」
異なる音色の二人の声。早まる鼓動と、行き場の無い感情。
「わしでは、それはしてやれんからのう」
「柔らかい?硬い?」
ふるふると小さく首を振って、言葉を繋ぐ。
「柔らかい……です……っ……」
「そう?良かった」
「ぅあ!!」
太公望の手が、やんわりと扱きながら上下し始める。
背中に当たる胸の感触が一層鼓動を早くして、額に触れる普賢の唇の甘さが意識を蕩かす。
「ちょっとだけ、上向いて?」
頬を手で包んで、舌先でその唇を舐め上げる。薄い唇が軽く触れては離れた。
手を取って、指先から付け根まで丹念に舐め嬲る。
「ふぁ……おっしょーさまぁ……」
上ずった声が、繰り返す言葉。
「何だか、武吉くんって女の子みたい。可愛い」
「これは、わしのじゃ」
少年の胸板を手が滑って、小さな突起を捻り上げる。
弄り飽きれば、また陽根を扱いて寸での所で手を止める有様だ。
鈴口を嬲る指先と、首筋に噛みつく唇。
「あ……ッ…おっしょーさ……ッ!!」
びくびくと震える少年を、柔肌の少女が抱き締める。
荒い息と崩れる身体に、二人は小さく笑みを浮かべた。






「武吉くん、湯あたりしちゃてるかも」
ぐったりとしている武吉を、介抱しながら二人は顔を見合わせる。
「表で覗いてる馬鹿どもも駆除せんとならんからのう」
「まだ起きれないと思うよ脱衣所の前に色々仕掛けて置いたから」
ぼんやりとした視界に飛び込んでくる二人の少女の顔。
「あ、気がついたみたい」
「武吉、大丈夫か?」
思い出すだけでも、顔が真っ赤になって行くのが自分でもわかる。
「おっしょーさま……普賢さん……」
太公望の手が、少年の頬に触れる。
愛しげに撫で擦って、唇が囁いた。
「続きをするぞ、武吉」
「ええっ!?」
男に一人に、二人の女。
経験が無いわけでは無いが、二人が相手というのは初めてのこと。
「で、でも……!?」
薄い唇が重なり合って、普賢の指先が太公望の乳房にかかる。
首筋を舐めるように唇が下がって、その肩口に残る小さな赤き痣。
両手で揉み上げるように乳房を包んで、その先端を舌先が嬲って行く。
「……ん…ッ……」
小さな白い歯がちらりと見えて、そこを甘噛する。
「ふ…アんっ…!……」
身体をすり寄せて、細い背中を抱き締めるように手を伸ばして。
ふにゅんと乳首が擦れ合って、どちらともなく嬌声が上がった。
「望ちゃん、どんな風にして欲しい?」
腰を撫で上げる手が、ゆっくりと下がっていく。
ひくつく秘裂を擦りながら、指先をじらすように躍らせる。
「……普賢……!!」
諌めようとする唇を、無理やり塞いで舌を捻じ込む。
身体を離して、今度は背後から揉み抱くように丸い乳房に指を這わせた。
「……っは…!……」
力の抜け切った脚をどうにか閉じようとするのを制して、膝を開かせる。
「ほら、ここ見て。武吉君」
こぼれてくる愛液を掬って、震える突起に擦り付ける。
「ひ…ぅ…!!」
「こうやってあげると、凄く気持ち良くなるの」
じ…と見惚れる少年の手を取って、そこに導く。
先ほどの少女の指の動きを忠実に再現し、そのたびに溢れてくる体液に息を飲んだ。
太公望を取り囲む数人の男たち。居並ぶ美丈夫に感じていた劣等感。
「…ん…ぁ……!…」
背後から抱き締めてくる手が、そのまま小さな乳首を攻め上げる。
細くどこか少年めいた身体がびくんと跳ねた。
太公望の身体はどちらかといえば中性的な魅力を備えている。
細身の筋肉と無駄のない脂が構成する美しさ。
「このままだと、望ちゃんが可哀相でしょ?」
力が抜けて、床にぺたんと座りこむ姿。
「だから、ここに……挿入れてあげて」
「は……はい……っ……」
少女を気遣いながら、そっと樹床の上にその身体を倒す。
ぬるつく秘所に亀頭を当てて、そのまま一息に貫いた。
「ふ……あああっ!!」
じゅくじゅぷと突き上げるたびに、上がる嬌声。
爪を噛んで必死に声を殺そうとする仕草。
両脚を開かせて、夢中になって腰を擦り付ける。
ふるふると揺れる乳房と、涙ぐんで潤んだ瞳。
「あ!!」
顎先から落ちた汗が乳首に触れるだけで、体中が熱くなる。
「…っは……おっしょーさまぁ……」
頭を押さえ込んで、噛み付くような接吻を繰り返す。
舌先が口腔を嬲って、薄い胸板と乳房がぴったりと重なる。
「いーなぁ……ボクも武吉みたいな子ほしいなぁ……」
もじもじと膝を合わせて、ただ見守るしか出来ないこの状況に少女は苦笑した。
そっと抜け出して、衣類を着込みまだ気絶したままの恋人を引きずりながら回廊を進む。
(でも、たまにはこういう指導も楽しいかも。モクタク帰ってこないかなぁ……)
治まらない身体の奥の小さな炎。
(道徳も早く起きないかな。悪戯はしたけど、浮気はしてないよ)
誰かを羨むことがあっても、一番大事にしたい恋人。
(重いなぁ……どうやって連れて帰ろうかな)
時々する意地悪と悪戯は。愛情ゆえだと笑ってほしい。
分かりあえるからこその恋。分かち合えるからこその信頼。
二つ合わせて愛に変えて、いつまでも一緒にいられますようにと小さく祈った。




「……武吉…っ…腰がおかしくな……!!」
細い腰をしっかりと抱いて、隙間なく陽根を埋め込む。
普段は自分が手引く方が多いために、武吉に委ねることには妙な新鮮味があった。
ぐちゅ…ぢゅぷ…聞こえてくる水音と荒い息遣い。
愛しげに少年の髪に指を挿して、そっと顔を近付けさせた。
「…おっしょー…さま……?」
「こんな時ぐらい、名前で呼べ」
ほほに触れる唇と、うっとりと閉じられる瞳。
長い睫はしっとりと濡れて、普段の彼女のよりもずっと幼さと儚さを窺わせた。
「……あ!!」
じんじんと疼く奥と、それを満たすための衝動。
両手で口を覆えば、それを外されて真摯に見つめられる。
「駄目……です。僕も……声が聞きたい、です……」
繋がったまま少女を抱き起して、舌先で唇をなぞりあげる。
軍師として立つ姿からは想像も出来ないような甘えた表情。
汗ばんだ肌と解かれた黒髪の艶やかさが、鼓動を早めた。
「あ!!……ぃ…ぅ……」
仰け反る背中をしっかりと抱いて、何度も乳房に口付ける。
きつくなる締め付けに唇を噛んで意識を繋いだ。
染まった頬と汗で額に張り付いた前髪。
それを払って、がむしゃらに唇を押し当てた。
呼吸と腰の動きが重なって、ただ絶頂を向かえるためだけにそれを加速させる。
「や…ああああっっ!!」
「…ぁ…!……望…ッ!!」
背中に走る爪がくれる痛みと、腕の中の少女がこれが夢ではないと教えてくれる。
胎の奥に注がれた体液に、少女は小さく肩を震わせた。





「おぬしはそうしておるほうが良い」
「でも、邪魔になります、おっしょーさま」
くしゃくしゃと武吉の髪を崩しながら、ゆっくりと回廊を進む。
軍師の秘書という肩書きは、彼女のそばにはなれずにいるためには便利な物。
「まぁ、良いか。スープー!!」
「はいっす!!」
「汗を掻いた故に、風呂の準備をしてくれぬか?」
主人の言いつけに忠実な霊獣は、慣れた動きで彼女の部屋へと向かう。
「あの……おっしょーさま……準備なら僕が……」
「おぬしはわしの背中でも洗ってもらうかのう」
「ええっ!?」
「おぬしはわしの身の回りの世話をするのが仕事じゃ。異論はあるか?」
二人だけの個人授業に味を占めたのは彼女の方。
手を取ってにこやかに浴室へと向かう足。
「ありませんけど、でもーーーっっ!!」
「文句は言わせぬぞ。わしはおぬしの上司じゃからのう」





晴天直下に響く声。
まだまだ終らない夏の夢。




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16:23 2005/09/05

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