◆太公望の弟子◆




西伯候姫昌の嫡男、伯邑考が妲己の策略にはまり死んでから数日。
姫昌は西岐に戻り、同じように太公望も西岐に身をおいていた。
太公望は次期を焦らない。何も知らぬ振りをしながら、時期を見るのである。
「御主人、西岐は平和っすねぇ」
「うむ…朝歌とはこいも違うものかのう」
白桃を片手に街をふらつく。
霊獣付きの道士はどこにいっても目立つ姿。そこかしこで声をかけてくる。
「あれが太公望…」
二人を物陰から見つめる影。
「原始天尊さまも言っておったが、聞仲のことも色々と気になるが…」
妲己、聞仲、申公豹。
朝歌には太公望でははるかにかなわない敵が多すぎる。
どうしたものかと頭を捻るが、そう簡単に妙案が出るわけでもない。
「まぁ、そのうちいい案も降って来るじゃろうて」
「御主人はのんきっすからねぇ」
「スープー、打神鞭で撃たれたいか?」
まるで仙道などの必要無い世界。
「あ…あの…」
そんな二人に声をかける影。
「あなたが太公望さんですか?」
「そうじゃが、どうかしたか?」
人懐こそうな顔で影は言った。
「僕、武吉っていいます。この西岐できこりをやってます!」
武吉は大地に両手を付いて、頭を下げた。
「お願いです!僕を弟子にして下さい!道士太公望の武勇伝を聞いてずっと憧れていたんです!」
聞く耳を持たないという風に太公望は武吉の傍を立ち去っていく。
「待ってください、本気なんです!」
先ほどまで後ろにいたはずの武吉がもう目の前にいる。
「な…なんすかこの人!?ワープしたっすか!?」
「スープー、飛んで逃げるぞ!」
四不象の背に飛び乗り、指示を出す。霊獣の速さは何にも劣らないはずなのだ。
「な…あの人走って追いかけてくるっすよ!!」
霊獣のプライドを打ち砕かれ、四不像は涙声。
「あれは…天然道士というやつじゃな」
仙人、道士は仙人骨を持つものだけが成り得る。無論、太公望とてそうだ。
仙人骨を持つものが仙界入りをしないと武成王や件の武吉のような特異体質になってしまうのだ。
そんな輩が人間界にいては混乱を生じる。
故に仙人、道士とするべく、仙界入りさせるのだ。
「スカウト漏れっすか?」
「だろうな…原始天尊さまも案外いい加減なところがあるしのう…」
砂煙を上げながら武吉はなおも太公望を追う。
「でも、あの人を味方にしたらきっと役に立ってくれるっすよ」
「味方はいいが、弟子は取らん…ん…あれは…いかん!ぶつかる!」
太公望は思わず目を閉じてしまった。
武吉が衝突したのは視察中の一段、西伯公姫昌だったのだ。
「き…姫昌様!?」
武吉も呆然とする。
「父上!大丈夫ですか!!??」
「 妲己の刺客か!?」
姫昌はついた埃を払い立ち上がる。
「す…すいませんでした!!国の宝である姫昌様になんてことを…!!
どんな裁きでも罰でも受けます!!」
瞳と同様にまっすぐな声。
姫昌は穏やかに笑った。
「立ちなさい、青年。いい目をしている…健やかで正しいものだけが持ち得る目だ…
君には人をひきつける何かがある。それは君のもって生まれた人徳だ…
私は君を許そう。傷もたいしたことは無い」
姫昌も元々は武人として名を上げた男。
傷の一つや二つはどうということも無かった。
「姫昌さま………」
「許してなりません、父上」
第四子、周公旦が言い放つ。
国の頭で法規である人間が、自ら法を犯すようなことがあってはならないと。
一度崩れた均衡が戻るのが容易くないことは、殷王李氏が何よりも雄弁だ。
「姫昌様、周公旦様のおっしゃるとおりです。でも、僕なんかを気にかけてくださって
ありがとうございます。やっぱり姫昌様はすばらしいお方です」
かくして武吉は法の裁きを受けるべく、西岐城に幽閉される。


満月が影も纏わぬ夜、太公望はそっと武吉のとらわれた部屋を覗き込んだ。
ひざを抱えて、武吉は神妙な面持ちだ。
「武吉」
「お師匠様!」
「師匠はよせ。第一わしは道士だから弟子は取れぬ。だが…」
太公望は言葉を続ける。
「おぬしにならいい仙人を紹介してやってもいいぞ。同期に面白い奴もおる」
「仙人なら、誰でもいいってわけじゃないんです」
武吉の話はこうだった。
彼の父親は仕事の関係で朝歌にいたらしい。
そして、姜族同様、妲己に殺されたのだ。
武吉がそれを聞いたのはかろうじて武成王に救出された少数の人間からだった。
彼らは口々に太公望を罵った。低脳の道士が薮蛇を突いたからだと。
「みんなはお師匠様が悪いって言います、でも、よく考えれば悪いのは妲己です。
お師匠様は逃げずに一人でも妲己に立ち向かいました」
「すまん…武吉…」
「だから、僕も一緒に戦いたいんです。平和に暮らしたいから」
武吉はなんでもないことのように笑う。
父を死に追いやった原因の太公望を憎みもせず、師と仰ぐのだ。
「心残りは年老いた母のことです…」
「放っておく事は…できんのう」
打神鞭から生まれる風が城壁を打ち砕く。
「御主人…」
「こやつに罪人は似合わぬよ。わしがなんとかするしかなかろうて」
月の下、武吉を乗せて四不象は彼の家へと急ぐ。
太公望は策を案じながら。


母親の元に四不象を残し、二人は西岐の首都豊邑に戻っていた。
「最後にお母さんにあえてほっとしました」
「だから、何度も最後ではないと言っておろうが」
てくてくと並んで歩く。
何度言っても武吉は頑として聞き入れない。
自分が犯した罪を償うというのだ・
「みんな、幸せに暮らせるようになるのが一番ですよ」
「そうじゃな……」
この男を死なせてはならない。
なにかが、そう告げるのだ。
「僕も、こんな世の中じゃなかったら素敵な人と恋とかしてみたかったです」
「……武吉」
「手とかつないだり…」
武吉も年頃の男子である。
「武吉、手を出せ」
「?」
太公望は手袋をはずし、武吉の指と自分のそれを絡めた。
「お師匠様?」
「ああ、これでは気分が出ぬか…」
しゅるりと頭布をとる。
肩の辺りまで伸びた黒髪が一斉に解き放たれ、少し短い前髪が少女の顔を作る。
「お師匠様!?」
「この方がよかろう?」
「お…お師匠様、女の子だったんですか!?」
「一応な」
太公望は普段から女性のような行動はまずとらない。
初見ならば誰もその素顔を知ることはできないだろう。
「お師匠様………」
武吉の緊張が指から伝わってくる。
(世話のやける子供じゃのう……)
人気のなさそうな小屋に武吉を連れ込んで、鍵をかける。
「死に行くならば、心残りが無いほうがよかろう?」
「お、お師匠様!?」
着衣を落とし、武吉に手をかける。
「それとも、わしが相手では不満か?」
目の前にいるのは一人の美少女。
そして、敬愛して止まない師匠。
「よ…よろしくお願いします!」
「わかったからそうきつく抱くな。苦しい」





闇雲に口付けを落としながら武吉は太公望の体を弄る。
細い首も、白桃のような胸も、なだらかな腹部も。
「お師匠さまぁ……」
「これ、武吉、わしに乗っかってるほうが泣いてどうする」
自嘲気味に太公望は笑った。
お互い未完成の身体。
申公豹やヨウゼン、李氏紂王とも違う身体………。
「あ…んっ……」
胸を吸われ太公望の腰が浮く。
内壁を指で擦られ、体液が零れてくる。
荒々しく、慣れない愛撫。
それでも、いいと思えたのは武吉のまっすぐな思いからだろう。
(この男を死なせてならぬ…罪人になるべきものではないのだ…)
「お師匠様…いい…ですか…?」
几帳面にも伺いを立ててくる。
思わず吹き出し、武吉の小鼻をきゅっと摘む。
「一々聞かぬでもよい」
そして、自ら武吉の上に乗る。
「ンゥ……っ…!!」
武吉の手が腰を抱き、結合を深める。
「お師匠様の中…凄く…熱いですっ……」
武吉の髪を撫でて、その額に唇を落とす。
どっちが抱かれているのか、わからない。
そんな感覚だった。
自分の内部で脈打つ武吉を感じながら、太公望は腰を動かす。
(道士失格でも何でもよい…わしにはほかにこやつを納得させる方法が浮かばぬ…)
「お師匠様……凄く…綺麗です……」
「お前がそうさせておる…武吉……」
泡沫の夢でもいい。
ぐちゅぐちゅと絡み合う淫音。
動きも、腰を抱く手も強くなっていく。
「お師匠様…僕……」
「かまわん…わしの中で……」
何度か大きく突き上げられ、武吉自身が最奥で膨張する。
そして、弾けるのを感じながら、太公望は武吉の上に折り重なった。



眠る武吉を起こさないように静かに小屋を抜け出す。
目指すは西岐城。
「おぬしが周公旦…西岐でもっとも才覚ある政治家か?」
太公望は静かに、ゆっくりと旦と話す。
真に手腕のあるものならば、殷全体を栄えさせることも可能であろうと。
旦が反抗する暇も与えずに。
そして、失った息子を引き合いに姫昌のことを問い詰める。
国頭がその体たらくではどうするのかと。
武吉の罪についても。
結果、名高い周公旦は一言も返すことができなかった。
旦は逐一、父である姫昌に告げる。
「私の罪か……」
遠くを見る眼。
「旦、武吉は釈放だ。何も言うでない」
「父上がそう言うのでしたら…」
「その道士は賢人だ。ぜひとも話を聞きたい」
「ならば、呼びつけましょうか?」
「いや、私のほうから出向くのが礼儀であろう」


「お師匠様…僕……」
「かまわん…わしの中で……」
何度か大きく突き上げられ、武吉自身が最奥で膨張する。
そして、弾けるのを感じながら、太公望は武吉の上に折り重なった。



眠る武吉を起こさないように静かに小屋を抜け出す。
目指すは西岐城。
「おぬしが周公旦…西岐でもっとも才覚ある政治家か?」
太公望は静かに、ゆっくりと旦と話す。
真に手腕のあるものならば、殷全体を栄えさせることも可能であろうと。
旦が反抗する暇も与えずに。
そして、失った息子を引き合いに姫昌のことを問い詰める。
国頭がその体たらくではどうするのかと。
武吉の罪についても。
結果、名高い周公旦は一言も返すことができなかった。
旦は逐一、父である姫昌に告げる。
「私の罪か……」
遠くを見る眼。
「旦、武吉は釈放だ。何も言うでない」
「父上がそう言うのでしたら…」
「その道士は賢人だ。ぜひとも話を聞きたい」
「ならば、呼びつけましょうか?」
「いや、私のほうから出向くのが礼儀であろう」



武吉に案内させて姫昌は太公望のいる渓谷へと向かう。
天気のよいときには釣り糸をたれながらこの仙穴で仙気を養うのが日課だった。
「釣れますかな?」
「大物が掛かったようじゃのう」
太公望の傍に腰を下ろす。
「兵の一人も付けずに来たのか?」
「ここは安全ですから」
くしゃくしゃの笑顔。
「暇つぶしに世間話でもしませんか?」
緑のにおいを乗せた風が吹き抜ける。
「お聞きしたい…私はなにを成すべきなのか」
「この国は壊れておる。これ以上あっても民を苦しめるだけじゃ」
「………」
「挙兵して殷を討て。新しい国を作り、おぬしが王になるのじゃ」
「…重いな…歴史の重圧でつぶれてしまいそうだ…」
老賢人は目を伏せる。
「しかし、これが私の天命なのかもしれない」



そこにあったのは老賢人ではなく、殷全土に名を轟かせた名将の姿。
そして、太公望が心を寄せた男の在りし日の姿だった。


   


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