◆ギブス――晒す身体、晒される身体――◆
「ヨキ、あんまり強くすんなよ……痛ぇから……」
ぴちゃぴちゃと舌が生み出す淫靡な音。
細い指を勃ち上がった男のそれにかけて、舌を這わせる姿。
「……もう……やだ……ぁ……」
「だってぇ、負けたのはヨキさんだもん。俺は勝ったんだもんね」
唇が亀頭から離れ、ちゅ…と糸を引く。
「ダメ。もっと続けて」
太茎を横から挟むように咥えて、そのまま上下させる。
その下の二つの袋を擦り合わせるように指は動き、時折零れると息が耳に心地良い。
「んー……おっぱいで俺の挟んで舐めて♪」
「いいかげんに……ッ……」
曇った音と機械音。
「ふぁ!!あぁんッ!!」
「ヨキ、かーわいい♪もっと苛めたくなっちゃうな♪」
アルの手の中に握られたリモコンが、ヨキの膣内に埋め込まれたものを動かす。
内側を犯すのは無機質な機械の一部。
「あ!!あ…ぅんっっ!!」
言われるままに、乳房を寄せてそれを包み込む。
覗くその先端を含んで、ちゅぷんと吸い上げていく。
鈴口に舌を入れて、口中で転がすように唇を動かして。
「……っふ…ア、アル……もう……」
「おっきくなった?ちゃんと」
こくん、と頷く姿。
とろとろと、小さな口と繋がるのは先走りの粘液。
「たまに、俺が勝てるって日もあんだね。ラッキーだった」
「カール!!」
青年の背中を叩く手。
「誰がカールだ!!俺の名はカーフだと何回言えば分かる!!貴様の脳味噌は皺一つ無い
球体か!?」
「固いこと言うなよ、カープ。折角三人でいるんだから交流を深めようぜ♪」
こんな時のアルの提案は、大概が自分にとって災厄でしかないことを彼は知っている。
アルの手の中には銀色のカード。
「やろうぜ。脱衣ポーカー」
「……乗った。三人、だろ?」
「ああ、俺とお前と、ヨキ」
カードはさららと声をあげ、アルの手の中で踊る。
「夜、部屋来いよ。楽しもーぜ」
男の唇がゆっくりと歪む。
ただ、それに気付かずに彼は男の背を見送った。
「自分で挿入れて……ヨキ……」
黒髪を掴んで顔を引き上げる。
「…ぅあ……!!……」
ぬちゅ…亀頭の先端が裂け目に触れてぬらぬらと飲み込まれていく。
内側を押し広げて、それが入り込んでくる感触。
ぷるぷると揺れる二つのたわわな乳房。
「あ…んんっっ!!」
ぢゅく、と奥まで繋がってはぁはぁと荒い息が漏れる。
喘ぎと、唇の端を伝う涎。
「ヨキ、キスしよーぜ」
こぼれるそれを舐め取って、小さな頭をかき抱くように唇を押し当てて。
舌先を淫靡に絡ませて、何度も何度も腰を突き動かす。
「…ふ…ア!!アル…ぅ…!」
胸板に乳房が重なって、小さ目の乳首が擦れる。
それだけでもびくびくと震える肩先。
「あは♪ヨキ、いつもより濡れてんな♪」
「や…っだ……!!もぅ……ッ!…」
くりゅ…クリトリスを摘み上げる指先。
「アぁんッ!!」
「ここ、なんか硬くなってんなぁ……なんでだろう……?」
くりくりとそのまま指先は踊って、その度に締め付けはきつくなる。
ヨキの身体を抱きしめて、そのままアルは後ろに身体を倒した。
「こっちまで濡れてんじゃん……」
「……馬鹿…あ!!あぁ!!」
子宮が押し上げられて、震えと疼きが全身を駆け巡る。
もっと、強く、きつく。
身体全体がまるで性器にでもなったかのように敏感になっていた。
「んで、ヨキにもっと気持ちよくなって欲しいから、俺からのプレゼントが
あるんだけど♪まぁ、大したもんじゃないんだけどさぁ……」
朦朧とする瞳。
「カーフ、来いよ。今日の勝負は俺の一人勝ちだったからさ」
「アル!!」
「大丈夫だって。この間だってちゃんとできたし。俺よりは下手かもしんねーけど
やっぱ三人のほうがヨキが気持ちよくなれるからさ」
小ぶりな尻を上げさせて、ぐ…と押し開く。
濡れた秘所と繋がる茎。そこに絡まる白濁とした蜜。
「カーフ!!」
「貴女がよくなれるなら、三人でも俺は構わないから……」
ぐぐ…と武骨な指先が窄まりを広げる。
「や!!」
指が蠢くたびに零れる吐息。
「カーフ、使うか?」
投げつけられる小さなクリームケース。
中の軟膏状のそれを掬って、丹念に塗りつけていく。
「ヨキ、俺の相手もして♪」
女の身体を挟むように、男二人。
内側で妖しく踊る指に意識が蕩けていく。
「あぁんっっ!!!や、やぁ…ッッ!!!」
先端が窄まりを抉じ開けるように入り込み、ずく!と貫いた。
「ぅあ!!あ、ああ!!」
前後から貫かれて、僅かな内壁を隔てて二つの亀頭が擦れ合う。
後ろから伸びた手が、執拗に乳首を攻め上げる。
くりくりと摘んだかと思えば、ぎゅっと捻って。
震える乳房を両手で揉まれて、荒い息がこぼれた。
「カーフ、乳好きなのか?」
「悪いか」
「別に。俺も好きだモン」
つ…とわき腹を滑って、濡れた指先で再度クリトリスを捻り上げる。
「ふぁんっっ!!!」
「おわ……ッ…いきなり締めんなって、イッちゃいそうになるだろ?カーフが」
「ふざけんな!!アル!!」
負けじと強く後ろを貫かれて、必死にヨキはアルにしがみ付く。
「んぁんっっ!!あ!!やぁ!!
零れた愛液は二つの茎をしっかりと濡らし、その動きを円滑にしてくれる。
「あ!あああぁぁんっっ!!!」
「あー、イッちゃった?ヨキ♪」
猫のように、アルの舌が頬を舐めて。
「まだまだ……もっと楽しんで」
カーフの唇が首筋に触れた。
「ひ…ァ!!」
下から伸びた手が乳房を掴む。そして、その先端を嬲るように舌先が掠めた。
その度に吹き出るように溢れる半透明の粘液。
抜け出そうにも、二人を軸にして支えられる格好でそれもできない。
「…は…ぅ……ふぅ…ん!!」
アルの手を取って、親指に吸い付く。
下から上に舐め上げて、その先端を咥え込んだ。
「あ、なんかフェラされてる気分……コレって俺の特権だからな、カーフ」
「何時まで、その自信……保てるかだな」
ぐ…押し付けられる腰。そのまま指を滑らせて、震えるクリトリスに。
「や!!ダメ……あ!!」
尖った乳首、濡れたクリトリス、塞がれた前後の穴。
熱くなった肌に掛かる息だけでも、震えてしまう。
「何抜かしやがるんだか。ヨキは俺のもんです」
「それも何時まで続くかと言ってるんだ」
「んだと?やんのかゴルァ!!」
「上等だ!!」
暴言と付随するように動きが加速する。
ぢゅぐ、じゅぷ…絡まる水音と溢れる体液。
「馬鹿も休み休み言え!!こんの寝癖野郎!!」
「お前こそ脳味噌少しは鍛えろ!!」
互いが負けじと腰を進める。
何度も何度も絶頂へと押し上げられて、声すら零れなくなった。
乾いた悲鳴と甘い喘ぎ。
「や…!!!アああァァッッ!!!」
定まらない意識の中。
吐き出された体液のぬめりと引き抜かれる感触だけがやけにありありと身体に残った。
二人の男の接吻を受けながら、シーツに倒れこむ。
「ヨーキ、俺んとこおいで♪」
「がさつな男よりも、俺のところへ」
自分の頭上でぎゃあぎゃあと言い合う男たち。
二人の手を取って、ヨキはどちらからも守られるような形を取った。
二人に挟まれて、抱きしめられるように。
「これではダメかい?」
疲れきった笑顔。
「俺がヨキと寝んの!!」
「うるせぇ!!俺が!!」
なおも言い合う二人に、零れるため息。
そのうちに身体が睡眠を要求しだした。
言い合いが終わる気配は微塵も無い。
そして、身体は休息を要求してくる。
「いい加減に……しろといってるだろうがっっっ!!!!」
二人を部屋から蹴りだして、手際よく真新しいシーツに代える。
体液の染み込んだシーツではとても眠れない。
「ヨキ〜〜〜〜、せめてパンツくらいくれぇ〜〜〜」
僅かに空いた隙間から投げ出された二人分の男物。
ばたん!!と閉じてそれきり扉は開かなかった。
(ようやく眠れる……)
残滓を流した体が、シーツの上に倒れこむ。
ひんやりとた感触は肌をゆっくりと淫夢から開放してくれるようだった。
(あの馬鹿ふたりが……頭を冷やせ)
それでも、二人が自分のことを愛してくれてるのは事実。
それだけは素直に嬉しいと感じられた。
ただ、それをもっと違った形で見せて貰えれば。
(アルの大馬鹿者が……)
不意に指が肌に触れる。
「!!」
まだ、しっかりと体中に染み付いている愛撫。
それだけでびくんと震えが生まれてしまう。
(ダメだ……寝よう。疲れも取れないし……)
久しぶりに一人で眠れて、身体は快適なはずなのに。
どこか、隣が寂しく自分を抱く腕が無いことを違和感として感じてしまうことに
ヨキは苦笑した。
明日のことは、誰もわからないから。
そばに在るぬくもりに抱きしめられたい。
互いの身体を晒して、心を曝け出して。
優しさに包まれて眠りたい。
(おやすみ……アル……カーフ……)
自分で自分を抱きしめて。
彼女はゆっくりと意識を夢の中に沈めた。
「煙草吸うか?」
「寄越せ」
「ホレ」
咥え煙草で男二人、ずるずると壁にもたれる姿。
「まだ道はなげぇよな。蜘蛛の糸ってどこなんだ?」
「この世界の中心にあるらしいぞ」
「ふーん」
パラパラとページを捲って、アルは目を止める。
「次はやっぱコレか。櫓返しってやつ」
「……何だそれは」
「四十八手読本。古本屋で見つけた。大事だろ、こういう古き良き文化を敬うことは」
背表紙にキスをして、アルはけらけらと笑った。
「あきれた男だ。やはり貴様に彼女は渡せん!!」
「あ、後で貸してって言っても貸さねーぞ」
「誰が借りるか!!貴様と一緒にするなっっ!!!」
「飽きれたな……それで二人とも大痣を作ったのかい?」
アルの頬に軟膏を塗りつけて、ヨキはため息をついた。
快適な目覚めを邪魔したのは男二人の声。
寝ぼけた目が見た光景は二人のつかみ合い。
「ヨキ、こんな性悪な男なんか今すぐに捨てたほうがいい」
「んだとやるか、ゴルァ!!」
再度掴み合う二人。
やれやれと首を振って、ヨキは薬を鞄へと仕舞いこんだ。
性悪、色好き、女癖の悪さ。
どれをとっても一級品の男。
(それでも、その男が良いって思えるんだから、私の趣味が悪いんだろね……)
まだまだ前途多難。
トラブルは進んで請け負う三人組。
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1:04 2004/11/11