◆Happy days―後ろから抱きしめる―◆




「ヨキ、もう一回!!!!」
女の細いうなじに、男の唇が触れる。
「頼む!!このとーり!!」
細い指が、それにかかって女のため息が宙に溶けた。
「…………何故お前のポーカーの相手を何度もせねばならんのだ!!」
「ヨキさん、強いんだもん」
「お前が弱るぎるんだ。むしろ……」
びし!とアルを指し、ヨキは声を強めた。
「お前の頭が、弱すぎるんだ!!アル!!」
「アッチのほうなら強いのは、ヨキさんがいちばん良く知っていると思いまーす」
カードを切りなおして、ヨキはそれをアルの手前に並べていく。
事の始まりはアルの一言だった。
カードで負けたほうが、一枚ずつ脱いでいこう。
全部脱がせられたら、ゲームセット。
その結果、アルは下着一枚の姿まで剥かれたのだ。
「数を読めば、簡単なことだろう?アル」
「おう。もう一回」
そして、数分後には何の苦も無くヨキは完全勝利を決めてしまった。
狙うつもりも、何も無かったと加えて。
「アル、風邪引く前に服を着ろ」
「ヨキ〜〜〜〜〜〜」
後ろから、ぎゅっと抱きしめてくる腕に手を掛けてやんわりと視線を返す。
そして、衣類越しに感じる異常事態。
「……アル、お前何を考えてる」
「あ?ヨキのこと」
「そうじゃない!私に何をくっつけてると言ってるんだ!!」
「ナニですが、何か?」
ふつふつと湧き起こる怒りを、どうにか沈めてヨキは引きつった笑みを浮かべた。
「ならば、すぐにしまえ」
「無理。生理現象はどうにもならねぇもん。あ、ヨキが抜いてくれ……あがっ!!」
顎下からストレートに入ったパンチは、鮮やか過ぎるほどに。
「いいパンチだぜ、ヨキ先生」
「今すぐそれを何とかしろ!」
素っ裸の男は、女の手を取ってそれを握らせる。
「先生、苦しいんでどうにかしてください。息子もこう言ってますんで」
「離せ!!!」
「本当は口がいいけど、ヨキ、してくんねーだろ?」
ため息をつきながら、アルは淡々と声を放つ。
「ぅわっ!!」
ぐい、と体重をかけてアルはヨキをベッドの上に倒す。
胸元を結ぶタックタイをゆるり、と外して。
「お、今日はなんか豪華な感じ♪何だかんだ言ってもヨキだって俺のこと愛してるクセに」
胸を包む邪魔なものを剥ぎ取って、その柔らかく白い谷間に顔を埋める。
「どけっ!!」
肩を押さえ込まれて、封じられた動き。
睨んでも、それは意味を成さないから。
「息子共々、お世話になります」
ヨキの上に覆い被さり、アルは両手を合わせて神妙に拝んだ。
「あ!!」
ちゅぶ…乳首を吸い上げる唇。挟み込んで、口腔で舌を使って転がす。
左右を、ねっとりと嬲りながら、その先端をきゅん、と指先で捻りあげる。
「ふぁ…ッ!!あんっ!」
「やーらかい。ヨキもさ……やっぱ女の子だ……」
ふにゅふにゅと柔らかい乳房を、まるで果物でも味わうかのように。
舌と唇は、その感触を確かめる。
柔らかさ、甘さ、たわわな果実。
ちろちろと掠めるように触れる舌のもどかしさに、もぞもぞと揺れる細い腰。
ぐ…と乳房をつき合わせるように寄せれば、ふにゅんと形を変える。
「…ぁ……んっ!!」
ちゅぷ、ちゅく…乳首全体を口中で舐め嬲って。
ちゅ、と唇を離せばぬらぬらとそこがやけに淫靡に光った。
「やーらしいカラダしてる。ヨキって」
「そ…なこ……ぅん!」
つつ、と下がった指がつぷ…と秘裂に沈む。
間接一つ分を咥え込ませて、ぐい、と折るように蠢かせて。
「ァあんっっ!!」
「あ、当たっちゃった?やっぱ、ここ?」
指が動くたびに、くちゅくちゅと濡れた音と滲み出す体液。
それを指先に絡めて、アルは女の目の前に突きつけた。
そして、人差し指と中指をゆっくりと離していく。
ぬる…ぬめった糸が二本の指を繋いだ。
「これ、何?ヨキせんせ」
「…………………」
真っ赤になって、顔を背ける。
「何でこんな風になるのか、教えて。ヨキの得意な……イガクテキセツメイってやつで」
空いた手は、なだらか腹部をくすぐるように撫で擦る。
親指で熟れた突起をくりゅくりゅと強弱を付けて摘んで。
「ふぁ……アンっ!!ア…アル……ッ!!」
首筋に噛み付いて、付けた赤い花。一つ、二つ、咲き乱れさせる。
「ちゃんと言って。ヨキ……」
「異性を……受け入れて…っ!!」
襞肉が少しだけ盛り上がった箇所を、無骨な指が攻めあげていく。
その度にびくびくと腰が揺れ、膝が小さく震えた。
「続けて」
「受胎の…っ!!た…めに…あ!!あァんっ!!や…っは…ん!!」
根元まで沈めて、その指を増やす。
アルの指を濡らしきって、それでもまだ溢れてくる生暖かい愛液。
視姦するように、彼女が視線を感じずにはいられないように膝を割る。
ひくつく突起にふぅ…と掛かる吐息。
「あ!!ああァン!!」
「こんなになるくらい、俺の事好き?」
どう答えても待ち受ける結果に変わりは無い。
嘘をつく必要もないからと、彼女は小さく頷いた。
「受胎のためにこうなるんだったら、俺の子供孕んでくれてもいいってわけだろ?」
その言葉はいつもならばかわす事が出来たはずだった。
しかし、今日だけはそうも行かない。
その言葉の意味そのもので、アルの子供を授かってしまう可能性が高いからだ。
「ダ……ダメだっ!!アル!!」
「あ?何が?」
アルの胸を押し返して、なんとか脱出しようとしても。
「俺のこと、嫌いになった?」
じっと見つめてくる瞳に、その力さえ奪われてしまう。
「そうじゃない……けど…っ!!」
奥の方を小突く指先に、身体は力を失って。
「……本当に、子供が……」
「俺、いい親父目指す。問題無し!!」
膝に手を掛けて、ゆっくりと開かせる。
とろとろと零れだした愛液は、ぐっしょりとシーツを濡らすほど。
とろけきった入り口に、その先端を押し当てて焦らすようにちゅくちゅくと出入りさせる。
亀頭の先だけが内側を掠めるように擦る感触に、腰がもどかしげに揺れた。
「あ……あんっ!アル……ん…!」
「でも、中で出しちゃったら子供できちゃうかもなー。センセ」
すい、と手が伸びてアルの耳に触れる。
「あだだだだだだだっっ!!!痛っってぇ!!何すんだヨキ!!俺のこと愛してねーのか!」
「本当に出来たらどうするんだ!!」
「だから、問題ないって。俺、いい親父になるから」
子供のように笑って、アルは女を抱きしめる。
細い背を、腰を。包み込むように抱きしめた。
「それに、ヨキだってこのままじゃ嫌だろ?」
ぬりゅ…太茎が入り口をぬるぬると撫でるように擦り上げていく。
「ふぁ…あんっ!!」
「こっちの口は涎こぼして、ちょーだい、アル♪って言ってんだけどなぁ」
「な……っ!!」
言い終える前に、ずく!と打ち込まれてぎゅっと目を閉じてしまう。
肉襞一杯に男を感じて、満たされていく女としての感情。
意味を持たないと思っていた性交渉は、感情を伴うことで幸福感を生み出してくれる。
隣に居たはずの友は、いつの間にか恋人へと進化を遂げて。
この感情が『恋』と言うものだと教えてくれた。
「あ!アル…っ!!あぁんっ!!」
きつく絡まって、抱きしめあって、舐めあって、溶け合うキスを。
舌先を絡ませて、ぴちゃぴちゃと体液を分け合う。
括れた腰を抱いて、無我夢中でその身体を突き上げていく。
きゅん、と絡んでアルの動きを僅かでも逃すまいとヨキの肉襞は纏わりついてくる。
「ひ…ァア!!!ああんっ!!!」
根元ぎりぎまで引き抜いて、最奥まで沈めて。
それを何度も繰り返されて敏感になりすぎた肌。
「!!」
両手で胸をぎゅっと掴んでかりり…と尖った乳首を噛む。
「ヨキ……すげぇいい……」
膝の下に手を入れて、そのまま身体を少し倒して。
「あ……アァアアアッッ!!!」
ずく、ぢゅく…くちゅくちゅに蕩けた身体を、尚もアルは攻め上げる。
落ちそうになる意識は、与えられる快楽で引き戻されてしまうから。
ただの発情した男と女。
「やぁ…っ!!アル……!アル…っ!!」
言葉を消し去るキス。
肌が触れるだけで、じんじんと身体が痺れてしまう。
「あん…!!やだ…やぁ…ぅん!」
ずぷ、ぢゅぷ…繰り返される抽入に限界が近いのは同じだった。
「あ!!アル!!アルっっ!!!」
「……やべ……っ!」
ヨキの身体を押さえつけて、ずるり…と引き抜く。
「ごめん…っ!!」
細い手を取って、熱く勃ったそれを握らせる。
「あ……」
ヨキの手の中でアル自身が熱さを増して、一気に弾けた。
掌の中でびゅくびゅくと感じる脈と、生暖かい湿った体液。
「ふ…ぇ……!」
半泣きの顔、そっと唇を当てる。
「望まない妊娠させないのも愛だろ……?」
「手……洗いたい……っ……」
「俺は汚染物質か!!」
汗でべたついて不快なはずなのに。手も汚されて嫌なはずなのに。
どうしても、嫌いになれない何か。
「あーもう!!絶対に孕ませてやる!!」
ぺし!とアルの顔面に当たる小さな箱。
「使わなかったら今後一切やらせない!!」
「避妊具……俺好きじゃないんだよな。それにどーせならイボ付きのとか……あがっ!?」
鳩尾に入る、小さな拳。
それでも、派手な音の割には痛みが無いのが彼女の気持ちだった。





ようやく落ち着いたのはそれから小一時間ほどしてからで。
男の腕の中で女は眠りを待つこととなる。
「蜘蛛の糸?世界の中心に何をしに行くんだ?」
「そこに、真実があると聞いた。私が求めるものが」
眠たげな目を擦りながら、ヨキは続けた。
「砂漠を数え切れないほど越えて……機械から逃げながら……」
「俺も行くよ。ヨキ」
「……アル、お前はここで……」
その唇に、そっと指を当てる。
「俺も行く。お前を守るのは俺だから」
抱きしめあって落ちる夢は、蒼すぎるほどの青空。
後ろから抱きしめて得られる安定と、不安。
この手を、肌を、離してしまうことの寂しさ。
「俺が愛してんのはヨキだけだから」
うなじに触れる唇。
(このまま……アルとずっと絡まっていられたら……)
「ヨキ」
じっと、見つめられて早くなる鼓動。
「……アル……」
「やっぱ二回戦やろう……うがぅ!?」
がすん、と入る拳。
「調子に乗るな!!」
「俺が乗りたいのはお前だ!!調子じゃねぇ!!」


前途多難の恋はまだまだ。
まだ、まだ、終わらない。



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1:17 2004/09/29

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