◆Honeymustard◆
「と、とーちゃんっ!?な、なにしてるすか!?」
裸で絡み合う一組の男女。
男の腕の中で、銀の髪の少女は困ったような顔をした。
「あー、なんちゅーか、そのな」
「だ、誰すか!?」
柔らかい乳房を揉みながら、同じような笑みを浮かべて男も首を捻った。
「アールマティ。毎日見てっだろ?」
「アールマティは護神像す!!」
「の、人間形態。な、シオ。とーちゃんも男だからたまに人肌恋しくなんだよ。
で、身も心も重なってないと、防人と護神像は上手くいかねぇように出来てんだわ」
後ろから抱きしめる背面座位は解かれていない。
男が僅かでも動けば、少女は切なげな声を上げるばかり。
「…ふ…ァ…!!……」
「ついでだ、シオ。お前もまざれ」
「ええっ!?と。とーちゃんっ!!」
アルの指先が、繋がった箇所の上をやんわりと触る。
「あんっ!!」
甘く甲高い声は、子供心にも身体を熱くさせてしまう。
「アル……ッ!意地悪……しないで…ぇ…」
長い髪を揺らして、強請るように唇を重ねる。
小さな舌と、絡まる父親のそれ。
見ているだけでも、もじもじと身体が反応してしまう。
「ああんっ!!やぁ……!」
「シオ、マティもこのままじゃ可愛そうだとおもわねぇか?」
「え……」
「女の子が、こんな風になってるときは、気持ちよくしてやるのが男の務めだからな。
ちゃんと憶えておけよ」
首筋を、つつ…と舌先がなぞりあげる。
「ふぁ…んっ!…」
もどかしげに動く腰を、ぐい、と抱き締めて。
「きゃぁんッ!!」
ごくり、と息を飲むのが伝わってくる。
「……シオ……」
小さな手が、震えながらそっと伸びて触れた。
「おいで」
その手を取って、少年は小さく呼吸をした。
「ちょっと、ここ触ってみ?」
シオの手を取って、少女の腹部へと導く。
柔らかなそこを、ためらいがちにシオの手が動き回る。
「……ここ……?」
ピンク色の小さな突起を、震える指先で軽く摘む。
「きゃぅ!」
その反応が、勝手に指を進めさせる。
くりゅくりゅとこねくり回して、時折捻るように押し上げて。
その度に零れる声に、鼓動が早くなるのが分かった。
「んで、ここ。ぬるぬるしてんだろ?」
とろとろと零れる半濁の体液。
「指につけて、ここ、擦ってやって」
言われるままに愛液を指に絡めて、再度クリトリスを擦り上げる。
「ああっ!!あ…んんッ……」
「女の子は、ここ触ってやると気持ちよくなるようにできてんだ。でもな、乱暴にしちゃダメ
だぞ。俺らと違って、ちょっと力入れても痛くなるように出来てっから」
指で挟みこんでは引き抜く。
その度にびくびくと腰が揺れた。
後ろから身体を抱かれて、前からはたどたどしい少年の愛撫。
男の手が膝の下に入り込んで、脚を大きく開かせる。
「どうなってる?見てみろ」
「……ぬるぬるして、光ってるす……」
「そっと、中に指、入れてみ?」
人差し指を一本、膣口から静かに沈ませて。
指で感じる温かさと襞の複雑さに、シオは息を飲んだ。
「動かして」
「う、うい……」
まだ幼さの残る指が、肉壁を刺激する。
中指を加えて、その動きは次第に増して行く。
「と、とーちゃん……もれ……」
「あん?」
「もれ……何だか……」
そわそわと自分の身体をもてあますように、シオはアルを見上げた。
「んとな、俺たち男は女の子にこーいうことすると、そうなるように出来てんだ。
病気じゃねぇし、むしろ健康だってことだぞ、シオ。良かった、お前もちゃんと
男なんだな。とーちゃん、ちょっと安心したぞ」
「う、うん……」
「ちょっと待ってな」
アールマティの身体を抱き上げて、シオの指を引き抜く。
零れ落ちる体液と、指が離れるのを嫌がるように細い腰が揺れる。
「マティ、四つんばいになって」
「や……アル…ぅ……」
「何もしなくても、こっちまで濡れてるし♪」
零れる愛液を掬って、後ろの窄まりに塗りつけていく。
「やぁんっ!!」
「はいはい。そんな甘えた声出してもダメ♪」
ぐぐ、と入り込んでくる指先にびくびくと細い身体が震えた。
その度にふるる…と揺れる二つの柔らかい乳房を、少年は息を飲んで見つめる。
(アールマティって……とーちゃんとこんな事もしてたすか……)
武骨な指が、ぐちゅぐちゅと音を立てて動き回って。
その度に、とろとろと零れてくる体液がシーツを濡らす。
「んぁんっ!!あ!!や……ぅ!」
ぎゅっとシーツを握る指先。
乳首がそこに擦れるだけで、甘えた声が上がってしまう。
「んじゃ、行きますか」
指を引き抜いて、反り勃ったそこに後穴を押し当てる。
(え……っ!?と、とーちゃん、そっちはお尻……)
「きゃぁんっっ!!」
深々と太茎が貫いて、一際高い声が上がった。
後ろから細い身体を抱き締めて、より奥まで繋がりたいと男は腰を使う。
「…ふ、あ!!あ……アル…ッ!!アル……ぅ…」
舌先が絡み合って、ぴちゃぴちゃと体液を交換させる。
男の頭を掻き抱いて、少女はうっとりと目を閉じた。
「シオ」
「う、うい……」
「分かってんだろ?来い」
躊躇いがちに、父がそうしたように少女の唇に自分のそれを重なる。
初めて触れる他人の唇の柔らかさ。
何度かそれを繰り返して、恐る恐る口中に舌を捻じ込んだ。
「……ん…ぅ……」
舌先が触れ合う奇妙な感触に、ぎゅっと目を閉じる。
ちゅっ…と離れてアールマティの視線がシオを捕らえた。
「怖い?」
「う、うい……ちょっと、怖いす……」
頬に触れる柔らかい唇。
「大丈夫よ……怖くないから、おいで……」
その声に導かれるように、指先が乳房に触れる。
掌でふにゅふにゅとした感触を確かめて、その先端の小さな乳首を口にした。
唇で挟み込んで、軽く吸い上げて。
「あん……っ…」
(もれでも……女の子にこんな声、上げさせることが出来るんすね……)
唾液でぬるついた乳首を指先で挟み込む。
「あぁんっ!…シオ……っ…」
左右を交互に舐め嬲り、きゅぅ…と吸い上げるたびに抱きしめてくる細い腕。
そろそろと指先が下がって、教わった動きで肉芽を攻め上げる。
指先に感じるぬめりと、温かさ。
これが、女の身体。
「と、とーちゃん……もれ……」
泣きそうな顔の息子に、アルは苦笑した。
「ここに、挿入れてやんねぇと、マティが可哀想だろ?シオ」
ぬらぬらと光る入り口に感じる底知れぬ恐怖に近い感情。
「……いいすか……?アールマティ……」
恐る恐る見上げれば、頷く小さな顔。
幹元に手を添えて、にゅぐ…と挿入して行く。
(……うは……何か……変な気分……)
絡まってくる襞と肉の奇妙な圧力。
薄い背中を抱き締めて、ぐいぐいと腰を進める。
「あぁんっ!!あ!!あぅ……!」
はぁはぁとこぼれる吐息が絡み合う。
混ざり合って溶け合う生殖行為。
「うはっ!?」
少年の腰を抱き寄せたのは、男の大きな手。
「ひゃぁんッ!!」
最奥まで収まった少年のそれが、びくんと反応する。
「はは。シオもマティも気持ちいい方がいいもんな♪」
がくがくと震える身体をあやす様に抱いてくるのは優しく細い腕。
「シオ……!!あ!!」
何度も何度も唇を押し当てて、舌を吸い合う。
灰銀の髪が、少年の頬と男の腕をくすぐる。
「あ!アルっ!!ダメ……!だめ…ぇ……」
下から突き上げられて、薄壁を隔てて二本の肉棒が前後を犯して行く。
開いた唇からは、呻きとも喘ぎとも区分できない声。
「うぁ……!!も、もれ……ッ…」
先走りの体液が、愛液と混ざり合う。
「悪ぃな、マティ。シオ、初めてだからさ」
「あ!!あ、あ……っはぁんっ!!」
「ははは。マティもシオと一緒にイッちゃいそうだな」
ぐちゃぐちゃと絡み合う音と汗の匂い。
鼻に掛かる甘い声と、柔らかい身体。
「う、はぁ……あ!!……っっ!!」
二つの細い腰がびくん、と跳ねる。
「あああっっ!!!」
ぐったりとする二人を、あやす様に抱いてアルは困ったように笑った。
(あー……俺がイクまではやっぱ無理だったか……)
重なる心音と、未成熟な二つの肢体。
まだ、産毛の残る柔肌を、月明かりがぼんやりと照らしていた。
「シオ」
膝を抱える少年の隣に、少女は佇む。
銀の髪に、プロテクトスーツ。
形の良い唇は、うっすらと濡れてどこか妖艶ささえ感じさせる。
「アールマティ……」
「お隣、良い?」
ちらり、と目線が眠る少女に向けられた。
「神様、寝てるすよ」
「そうね。赤き血の万能なる神…………」
この胸に抱いた思いは、永遠に閉じ込めたまま。
この身体の中に、最愛の男は眠るのだ。
口の中に広がった、あの人の味。
骨の一欠片も残さずに、全て飲み込んだ。
「この世界に幸福と災厄をもたらす赤き血の神。私たちの創造主……」
「神様はこの世界の、争いを無くす御方すよ」
両手を合わせて、少年は静かに瞳を閉じる。
(でも……どうしてだろう……コトと同じ匂いがする……)
胸のざわめきを殺して、少女は首を振った。
「シオ、これからずっと……あたしと一緒に生きるのよ」
「うい……もれ、防人すからね」
唇を噛んで、シオは声を殺した。
後ろから包み込むように、抱いてくる腕。
「シオ、泣きたいときは泣いていいのよ。あたしも……」
肩口に埋まる顔。
布越しに感じた涙。
「一回だけ、泣くから……ッ……」
大好きなあの人は、最後まで優しすぎて。
涙を零すことさえ、出来なかった。
「……アールマティ……」
彼の血を継ぎ、自分を駆る少年。
けれども、彼はない事の寂しさ。
「大好きだったの……本当は、食べたくなんてなかったの…っ……」
「とーちゃん……っ……どーして、どーして死んじゃったすか?とーちゃん……っ…」
抱き締めあって、砂に落ちる涙。
あの日と同じ月だけが、二人を見つめていた。
「アールマティ……もれ、まだ戦えるよ……」
身体を引きずりながら、シオは護神像を揺さぶる。
腰椎を打ち砕かれて、すでに呼吸も間々成らない。
それでも、彼は赤き血の少女を守ろうとするのだ。
「アールマティ……アールマティ……」
瀕死なのはどちらも同じで。
彼女も彼の呼び掛けに応じる力は最早無い。
「アールマティ……アールマティ……お願いだ……マティ……」
流れる血が、床に染みて行く。
『……シ…オ……』
「……マティ……合体だよ……神様を……神……さ、ま……」
願いはいつも、悲しい色。
献身と敬虔の名を持つ少女は、少年の願いを必死に埋めとめようと指を伸ばす。
『シ……オ……ア…ル……』
「……お願いだ……とーちゃん…っ!!」
散り行く花びらの如く。
その純粋なる魂は、美しく悲しい。
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23:18 2005/03/27