◆コンプレックス142◆




「目を瞑っててくださいね」
前髪に、しずかに鋏を入れる。
ぱちん、ぱちん、と刃先が閉じてぱら…と亜麻色の髪が床に落ちる。
「もぉいい?」
「目に刺さって痛いって泣いたのは誰でしたっけ?」
「あたし」
大きな瞳と長い睫。彼女は私の目を覗き込むのが好きらしい。
「アランは短いほうが好き?」
事のついでに裾の方にも鋏を入れて、長さを揃える。
そんなに多い量でもないので、鋤かなくても綺麗にまとまってくれるのが嬉しい。
「短いほうが、君の顔がちゃんと見れるでしょう?」
「んー……わかんない」
椅子から下りて、ぺたぺたと歩き回る。
ゆるりとした白のワンピース。その下で小さな膝がくすくすと笑う。
「あー……」
「どうかしましたか?」
「アラン、見て見て」
わしわしと頭を掻き毟る指先。
「!?」
「えへ」
ぴん、と伸びた二つの耳。そして、当然の様に突出した尻尾。
ふわり。柔らかな音を立ててそれが揺れる。
「耳と、尻尾」
「そうですね……耳と、尻尾ですねぇ……」
もともと彼女は生物を統括する能力も持つ護神像。
耳やら尻尾やらがあったとしても不思議ではない。
合体時も私を防護するためにその形状はあるのだから。
「邪魔?」
「邪魔では……ないですよ」
決して邪魔ではないのですが。ないのですが……。
童顔の少女に耳付き尻尾つきというのは、その……何というか。
私も健康で正常な人間の男なので、そういうシチュエーションが好きか嫌いかと
聞かれれば、当然嫌いではないわけでして。
とたとたと歩く姿がいつもの二割増しで、愛らしい。
「アランー?」
小首を傾げて、見上げてくる瞳。
このあたりの機械はおおよそ片付けたので、今夜はゆっくりと眠れるはず。
「お日様、沈んじゃったね」
小さな足。その爪の色は鮮やかなオレンジ。粒の小さなラメが散りばめられて小さな銀河の様。
「夜は、ゆっくりと過ごすものですよ。マナ」
猫のような耳が、ぴるぴると揺れる。
そう、夜は長くて甘くて――――たっぷりとあるのですから。




「首輪でも、つけてあげましょうか?」
大き目の鈴と、首輪があればきっと世界一の愛玩動物になるでしょう。
「やー。要らないよぉ」
抱き寄せると、小さな唇が喉仏にキスをくれた。
互いに脱がしあって、何度もキスをする。
「きゃ…ぅん!!」
ぴくん、と伸びた耳が揺れた。
どうやらこの耳は、彼女にとっての弱点の一つらしい。
背中に指を滑らせて、そのまま尻尾の付け根へと。
「ゃん!!」
気のせいだろうか、仕草の一つ一つまでがどこと無くいつもよりも幼い。
「……んー……ぅ……」
親指に触れる唇。吸い付いて、小さな舌が絡まってくる。
空いた手で膝を開かせて、掌で撫で付けるように柔らかくなだらかな腹部を摩った。
押さえつければ、消えてしまいそうな小さな乳房。
「……もっと、おっきい方が……良かった?」
気にしているのか、少しだけ悲しげな色の浮かぶ瞳。
確かに、大きいか小さいかで言えば大きいほうではない。
けれども、女性の価値を胸だけに見出すことに私は同意できない方だ。
「どうして?」
「だって……おっきいほうが、触ったとき柔らかいよぉ……」
「マナの身体はどこを触っても、柔らかいですよ」
安心したように、抱きついてくる彼女を同じように抱きしめて。
「ほんとに?」
「本当ですよ。ほら、ここも……」
ぬるつく裂目に指を忍ばせれば、小さな声が上がる。
そのまま入り口から浅いところで指先を踊らせるとくちゅくちゅとぬめる体液が絡みつく。
「どこだって、柔らかくて可愛いですよ」
「…ぁ!!あんっ…!!」
奥に進めればびくびくと揺れる耳と細い腰。
こぼれてくる体液は、掌まで濡らすほどだ。
「……あたしの身体は柔らかい……?アラン……」
「ええ、とても柔らかいですよ」
「アランのは硬いのに、あたしのはどーして柔らかいんだろう……」
ぎゅっと小さな手が、私のそれを掴む。
だから、その姿でそういうことをされれば……。
「んー……なんで?」
今更ながら、前髪を切りすぎたことを後悔する。
さながら犯罪者の気分になってしまう。
子供とのセックス。けれども、実際の彼女は私よりも遥かに年長者なのに。
幼い身体に溺れて、罪悪感に抱かれての行為。
「あぁんっっ!!」
上に乗せて、下からゆっくりと動かす。
「なんか…ね……ここにあるのが…ぅんっ!!」
少しだけ膨らんだ下腹部に触れる指。
「……ちゃんと、わかるよぉ……」
村での休息よりも、私たちは砂漠での夜を選ぶことが多い。
一度、子供を連れ込んでいると言われて以来、誰も近付かないように念を押しての夜ばかりだ。
まぁ、覗くほうにも問題は大有りなのですが。
「ふ…ぁん!!!」
覆い被さってくる身体を抱いて、降ってくる唇を受け止める。
積極的に絡んでくる舌と、頭を抱いてくる腕。
さわさわと触れる耳に舌を這わせる。
「きゃぁんッ!!や!!あ!んっう!」
軽く噛むと、その度にきゅん、と彼女が絡みつく。
腰から手を下げて、尻尾の付け根を小突いて。
「あん!!ダメ…ぇ!!やぁん…ッ!!」
ああ、本当に鈴でもつけた首輪があったら……。
いや、そういう趣味は無いのですが。
そんなオプションもあればあったで良いわけで。
決して、手首にカフスがあったら良いとか、ヘッドドレスがあれば良いとかそんなわけではないのですが。
「…き……大好き…っ!……」
裸体の美しさ、愛しさ。
抱きしめあって、確かめ合って、私たちは同時に達した。





「にゃぁん」
猫のようだと笑ったら、そんな声が返ってくる。
「猫になりたいんですか?マナ」
違う、と小さく首が揺れた。
「……もうちょっと、おっきくしたいの……」
「?」
「……ココ……」
控えめに存在を主張するかわいらしい胸を両手で寄せて。
「そんなに気になりますか?」
「…んー……ぅん……」
俗説では揉めば大きくなるとはよく言いますが。
実際は乳腺を刺激して、女性ホルモンの促進を促がすのが効果的なわけであって。
毎晩こうしていれば、そのうちに徐々に育つとは思うのですがね。
「手伝いますよ。こうやって……」
「ぁん!」
「刺激してあげれば、そのうちに大きくなりますよ」
「ほんとに?」
まぁ、あればあったでいいのでしょう。
「あ」
「?」
「見てぇ、うさぎ」
耳は真っ白の長いそれに変わって、私の頬をくすぐってくる。
「うさぎ、嫌い?」
「好きですよ」
そうなってくると、今度は色々と考えてしまうこともあるわけで。
いや、だから……決してそういう趣味があるわけではなくて。
だから、彼女がそんな姿なのが……。
「あたしも好き」



ああ、眠れない夜はまだ続きそうな気配です。
でも、眠れない夜ほど楽しいものは無いんですけどね。




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23:16 2004/12/14

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