アルカナの加護を受けた者同士が戦闘を行う場合、元々の身体能力の差はさほど勝敗を左右しない。
特に、少女が互いに戦闘に縁の無い一般人となれば尚更である。
現在公園で交戦中の廿楽冴姫と大道寺きらは、まさにその「一般人」であった。
かたや中学生、かたや小学生。
純粋な力比べとなれば、体格で劣るきらが勝つ見込みは皆無であろう。
しかし――アルカナを用いたこの戦闘では、きらが冴姫を圧倒していた。
「なんで……!?」
「なんで、だと?そんな事も分からん愚民がきら様に逆らおうなど100万年は早いわっ!!」
きらが叫びと共に放つ無数の水の塊を避ける為、冴姫は大きく飛びずさる。
標的を見失った水玉は、破裂するとともに地面に大穴を開けた。
冴姫の体がアルカナの力を得ているとはいえ、まともに食らえば相当のダメージを受けるだろう。
「ヴァンリー!」
冴姫は反撃に雷を飛ばすが、それはきらの周りを浮遊する水玉に吸い込まれ、音も無く消えてしまう。
「何度やっても無駄だというに」
「くっ…!」
そう。
冴姫のアルカナによる攻撃は、いくら繰り返そうと同じように防がれてしまうのだった。
「電気なんぞ水に通してやればこの通り……私はお前に攻撃できて、貴様の攻撃は私には届かんのだ。
 そろそろ我が軍門に降ったらどうだ?奴隷長ぐらいにはしてやらんこともない」
人格には大いに問題があるが、大道寺きらは確かに天才なのである。
アルカナという未知の力の扱いに関しても、その才能を遺憾なく発揮していたのだった。
きらは完全に勝ち誇り、奴隷兼移動手段兼戦闘員のスライムの上でふんぞり返る。
そんな彼女を睨み付け、冴姫ははっきりと拒絶の意を口にした。
「誰があなたの奴隷になんかなるもんですか!」
先ほど出会い頭に「おい貴様、私の犬にしてやる!」と言われた時、冴姫は迷うことなく背中を向けた。
変質者にはなるべく関わらない主義なのだ。
だが、その後に続けられた
「ほーう、戦わずして逃げるか。
 それならあの『愛乃はぁと』とかいうふざけた名前の女から屈伏させてやるとするか」
という言葉には足を止めざるをえなかった。
今この場で屈するなり逃げるなりすれば、きらは迷うことなくはぁとの元へと向かうだろう。
それだけは避けなければいけない。
「年長者をあまり甘く見るんじゃないわよ!」
冴姫は地面を思い切り蹴り、全速力できらへと突っ込んだ。
(強引に近づいて、力技で片を付ける!)
もはや、なるべく怪我をさせないように……などという余裕はない。
自分だけが攻撃を避けるために動き回らされ、体力もそう残っていないのだ。
近距離での取っ組み合いならば、元の力で勝っている分だけ有利に戦えるはず。
そう信じ、何発かの水玉をその身に受ける覚悟を胸に、冴姫は間合いを詰める。
青い髪が地面と平行にたなびいた。
「笑えるほど……いいや、呆れるほど単純な思考回路だな」
冴姫の鬼気迫る特攻を認識しても、きらは一歩も動くことはなかった。
水玉を発射することもなく、涼しい顔で冴姫の接近を待つ。
「ふっ……!」
きらの眼前まで近づくと、冴姫は鋭く息を吐いた。
本気で自分と親友の体がかかっているかもしれないのだ、手加減などしない。
「たあぁぁっ!」
骨の一本や二本折ってしまっても構わないつもりで拳を打ち出した。
そして、その一撃がきらの腹に触れようとした瞬間。
「たわけめ」
それまで何の動きも見せなかったスライムから一本の腕が生え、冴姫の拳をがっしりと受けとめた。
「っ!?」
スライムは硬くはなく、それどころか液体であるような肌触りだ。
あまりの抵抗の無さに、冴姫は一瞬、攻撃を空振ったのかと錯覚したほどである。
しかしそれでいて攻撃の勢いを完全に殺し、冴姫の右手をしっかりと捉えて離さない。
「近づけばなんとかなると思ったか?ん?」
スライムの異質な感触に困惑する冴姫を見下ろし、肩を竦めて嘲笑うきら。
「っ……このっ!!」
右手を封じられたまま、今度は左足でハイキックを繰り出す。
が、それもスライムが生やした新たな腕に阻まれてしまう。
「あっ……」
こうなってしまえば為す術がない。
スライムから新たに2本の腕が伸び、残った左腕と右足をしっかりと拘束した。


 

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