季節はずれの幽霊奇談 六話
















 

 夜の帳は全てを包み込み、群雲から覗く密かな月明かりだけが、静かに木々を照らし出していた。

 秋口ともなれば陽が消えるとともに、ぐっと気温が下がる。
 虫の音は耳朶を震わせ、賑やかなのが唯一の救いのようだった。
 少年達は「かったるい」と口端に上らせつつも、緊張した者や、興奮を隠せない者などで、厭がおうにも気持ちは昂ぶる。

 部屋ごとのグループに分かれ、懐中電灯を一つだけ支給された。
 スタート地点から、遊歩道として整備されている道を一周。

 軽井沢の別荘地帯というのは私有地が多く、山をひとつ柵で囲ってたりするので、まず人通りは無い。

 夜には車でしか動かないためなのか、常夜灯さえまばらだ。
 女子のグループは先に敢行したらしく、嬉しそうな悲鳴があちこちから上がっていた。

「オレ、女の子と一緒のほうが良かったなあー」
「あーん? そりゃこっちの台詞だぜ。何が悲しくて、こんなむさ苦しいメンバーなんだか」

 千石がぼやけば、跡部が噛み付く。

「弦一郎に失礼だぞ」
「……蓮二?」

 実はオレのことが嫌いか…。そう思わずにいられれない、真田であった。

 星さえ見えない、薄曇りの空。朧月夜とくれば、情緒たっぷりといって申し分ない。
 風に靡く髪を抑えつつ、真田は闇夜に目を凝らした。
 古い日本家屋にて暮らす真田にとって、別に闇夜は怖いものではない。ただし、予想外の事態が苦手なのだ。

 例えば、暗闇からいきなり「わっ」と驚かされたり、背を叩かれたり、動かないと思っていたものが動いたり。

 そうなるともうダメだった。

 幼い頃、イタズラ好きの祖父と兄に、「どんな時にも動じない男になれ」と、散々夜トイレに行く時などに脅されたのだ。慣れるよりも、疑い深くなるばかりで、かえって根深く恐怖心が植え付けられた。

「な…なあ、蓮二。いきなり蛇が降ってきたり、後ろから日本刀で襲われたり、鎧武者が部屋で寝てたりなんてないよな?」
「――お前は一体どんなトラウマを持ってるのだ」

 遠くで声援が上がる。一組目が送り出されたらしく、ざわざわと空気が動き出す。

「十分間隔で、順番通りに行くぞー」

 コーチの声に「あれ?」と千石が首を傾げた。

「順番って?」
「さあ? 訊いて来る」

 柳がコーチの元に行こうとしたら、目の前に三年達が立ちはだかった。怪訝に感じ、なにか? と問う。

「お前等の順番だよ。六番目」

 目の前に出された番号札に、四人は目を瞠った。

「いつの間に決まったんだよ」

 跡部が前に出る。それを、柳が止めた。

「オレ達が変わりに引いてやったんだよ。ってか、口の聞き方知らねー二年だな」

 にやにやと笑うのは、柳が主犯格と見ていた通りの面子。東、松本、藤堂、樋山だ。

「最後のほうがゆっくりと楽しめていいだろう? 先輩達の心配りだ。受けとんな」

 真田は樋山の手から番号札を奪うようにして、取る。

「ならば先輩達は先ということか。オレ達はこのような幼稚な遊びで、楽しむのはとうに卒業している。さっさと終らせたいので、先輩達も道草など食わぬよう行って頂きたい」

 まあ…、と続けて真田は口端を上げた。

「震えて遅くなってしまうのであれば、仕方ないことですが」
「んだと?」

 一触即発、空気が張詰める。

「ったくよー。年下に負けたからって、やる事なすこと情けねーんだよ。悔しいなら、実力で来いっつーの」
「あははは! 跡部くんったら本当のことズバリ言ったらダメだよ〜」

 しかも跡部と千石が煽る方に回ってしまった。柳はとりあえず静観。

 三年達の顔色が益々険悪さを増してゆく。

「おい、なんかあったのか?」

 不穏な気配を察したのか、付き添いの教員が寄ってきた。
 舌打ちをし、三年達は「なんでもないっすよ」と去っていく。

 柳は肩を竦めた。

「まったく。今まで軽く躱してきたのに、どういう風の吹き回しだ、千石」
「いやあ〜。だって真田くんがヤル気満々だったからさー」
「意味もなく莫迦にされて、笑って流すことなどできん」
「武士だねえ」
「…まだ、ひと波乱ありそうだな」
「面白いじゃねえか。売られたケンカは倍にして返す主義だぜ」

 傲岸不遜に言い放つ跡部に、溜め息を漏らしつつも、柳は「ケンカじゃなくて、夜道が怖いかどうかだろう」と水を差したのだった。

 スタート地点から、人が順々に減っていく。

 ゴールは合宿所の近くなので、終った少年達はホールに集まり他の組が戻ってくるのを、お茶を飲みつつ待っているらしい。

 五組目が出発する。三年達だ。

 こちらをチラチラと見ての、スタートだった。

「わざわざ五組目を選んだあたり、イヤな感じー」
「待ち伏せて、何かあるかもしれんな」
「上等じゃねえーか」
「お前、坊ちゃんクセにケンカっぱやいなあ」

 千石、真田、跡部、柳。

 十分後きっかりに、スタートを告げられた。

「うわ! けっこう真っ暗だねえ」
「千石、ライトをフラフラさせるな」

 遊歩道と言っても、別にコンクリート敷きなわけでなく。ただ林を切り崩して、色づく木々を眺めることができるだけの道だ。

 木の根っこなどで盛り上がっており、ごつごつして歩きにくいことこの上ない。

 ひとつだけのライトを、千石がなんとはなしに持っていたのだ。が、足元ではなく、ちょっとでも興味を惹かれる林の中などを照らすので、その光先は定まらない。

「じゃあ、真田くん持っていいよ」
「う…? うむ」

 あっさり譲渡されて、真田は内心焦った。ライトを持っている者が先頭を歩かねばならないのである。

(――別に怖くなどないぞ。そのような意気地ない男ではない!)

 言い聞かせると、オレについて来いと言わんばかりに、先をゆく。
 闇は深く、数メートル先も見えなかった。草と土の匂いが、濃厚に夜に溶けている。ちらほらと、遠くに見える光は、別荘の明かりだろうか。

 車のエンジン音もどこからか聞こえてくる。少々、ほっとした。

 ――時だ。

 背中を、首筋からなぞられた。

「―――――っ!!!!」

 全身が総毛立ち、声も出ない。

「うふ。けっこうイイ筋肉つけてますねー、真田くん」
「ななな! 何をするんだっ!」

 真っ青になって振り向けば、千石がにんまりと笑った。

「だってー。こう、骨の形がカッコよかったんだもーん」
「やめんか、気色の悪い!」
「なんだ、やっぱり怖いのかよ。代わりに持ってやろうか?」

 跡部が手を出したが、真田はムキになって「大丈夫だ!」と歩き出す。

「でもよー。結局ただ道を歩くだけだろう? つまんねーことこの上ねえな」
「―――そうか…。なら、少しだけ面白味を加えよう」
「え?」

 跡部の不用意な一言に、柳がぽつりと漏らした。

「この上にある別荘であった惨劇。やはり実話だったよ」
「―――なんで、知ってんだよ」
「夕飯のあとに、食堂のおばさんにそれとなく訊いてみたんだ。確かに、七年前。この上の外れの別荘で殺人事件を起こした犯人が殺した女の、子供を連れ込んで―――死んでいる」

 一番後ろにいた柳の声が、深淵に滑り込むように流れてくる。

 明るい場所でならば、普通に訊ける話だ。しかし現状では、体温をいたずらに下げるだけである。

 跡部と千石は、不気味に這い上がってくる寒気に、知らず真田の近くに移動した。

「しかも、当時世間を震え上がらせたほどの凶悪事件の犯人だったらしい」
「きょ…凶悪事件ですか?」

 恐る恐る、千石が問う。

「男は、三人の女を殺し。躰をふたつに切断し、放置して逃げた」
「―――……」
「その男は別荘で、腹を包丁で一刺し。自殺だとも考えられたが、それにしては不自然なことが多く。唯一の目撃者である子供も、錯乱して病院行き。事件は真相解明ないまま終った」

 しん、と重苦しい沈黙が四人を支配した。

「なんか…怪談より怖いんですけど…」
「胸糞悪い事件だな―――と、言うか千石」

 真田は顔を顰める。

「なに?」
「腕を放せ、腕を!」
「えー、いいじゃーん。腕組んでるわけじゃないんだしー」
「だから気色悪い!」
「弦ちゃんの意地悪―」

 いつの間にか、千石は真田の腕を掴んで歩いていたのだ。

「真田くんの隣だとなんか安全っぽそうなんだもん。ね、いいじゃん。ダメ?」
「――……仕方ないな」
「お前には男のプライドってもんがねーのか?」
「跡部くんも一緒にどう〜」
「断る」

 数歩後ろで、柳は長嘆した。

(ここに精市がいなくて良かった。ここまで弦一郎に物怖じせずに甘えられる奴がいるとはなあ)

 井の中の蛙大海を知る、ぐらいには衝撃を受ける情景だ。
 あの丸井でさえ、真田と腕を組もうなどとはしないだろう。
 中間地点にまで差し掛かっただろうか。その頃には、皆暗闇には慣れていた。妙な連帯感も生まれ、四人ならば本物が出ようとも大丈夫な気持ちになっていたのだ。
 ただ別に危惧しなければならない事柄もある。跡部は目を凝らしつつ、前方の注意を怠らない。

「あいつ等、絶対どこかで待ち伏せしているか、罠でも張ってそうだよな」
「そうだな…。暴力で訴えるようなバカでないと思いたいがな」
「でも暴力できても、真田くんなら余裕じゃない? なんか武道やってんでしょう?」
「剣道だぞ? 素手でどうしろと言うんだ」
「じゃあ、オレがそっから木の棒拾ってくるよー」
「千石、あまり弦一郎を揶揄うな。暴力沙汰になったら困るだろうが。ウチを棄権させる気か」
「冗談だよう。怒らないで、柳くん」
「――――しっ」

 鋭く、真田が静止を促した。

 一気に緊張が走り、皆の足を止める。

「―――どうしたの?」

 ごくり、と唾を飲み込んで、千石は厳しい表情の真田を見た。

「何か聞こえないか?」
「……っ?」

 耳を澄ます。

 虫の声だけがいやに大きく聞こえた。が、その隙間を縫い、悲鳴のようなものが耳に届く。

「――なに…っ。なにかあったのか?」

 跡部も訝しく、眉間を寄せた。確かに、前方で誰かが「わあ」やら「ひい」と言った喚き声がする。

 目をそれぞれ近くの者と見合すと、駆け足で急いだ。

 ただし罠かも知れないと、気を引き締めることは忘れなかった。
 ぴたり、と真田が止まる。その背中に、千石がぶつかった。

「え、なになに?」

 当たった鼻を摩りつつ、真田から離れる。ふと、隣にいた跡部が青くなって固まっているのが見え、ついで、柳までもが固唾を飲んで前方を凝視しているのを知る。

「―――?」

 前を向いた。

「誰だ?」

 真田の固い声が響く。千石は、ぞくりと背を粟だたせた。

 誰かが、立っていた。

 闇夜のカーテンが、その者の輪郭を滲ませる。喬木の側に立ち、こちらをじっと見つめているようだった。白いものを着ていて、それだけがぼんやりと浮かび上がっている。

(誰かあんな格好してた奴いたっけ?)

 考えれば考えるほど、じりじりとした恐怖が足元から這い上がってきた。
 背格好は同じくらいだろうが、女だか男だかもわからない。

(動かないのが怖いんですけどーっ!)

「松本達か…?」

 三年の名を、真田は呼んだ。しかし、答えは返ってこない。

「おい」

 ライトを、その者に当てた。

 肌の白い、細面の女。黒い髪に、闇に溶ける双眸。

 幽艶な滑らかさで、微笑をこちらに向けた。

「――――っ!」

「――――っ!」

 千石は声にならない声を上げて、真田にしがみ付く。それは跡部も同じだった。

 いっぺんに二人に闇雲に抱きつかれた真田は、そっちのほうに驚いて「うお!」声を上げる。腕力のある二人だ。真田は勢いあまり、尻餅をついた。

「おい! お前等! しっかりしろ!」
「うわーっ! うわーっ! 見ちゃったよーっ!」
「……っ。……オ…オレは、仏教徒だーっ!」
「しっかりしろと言っとる! 落ち着け!」
「美人な女幽霊なんて、怖すぎるーっ! 不細工もヤだけどさーっ!」
「オレに取り憑いても樺地が居るんだからなあーっ!」

 長らく続いたストレスが一気に崩壊したことにより、錯乱状態に入ってしまったらしく。二人は目をしっかり瞑って、真田から離れようとしない。

「ああ…もう! なんでお前が居るのだっ? 幸村!」
「――仲のよろしいことで」

 ひやり、と冷たい声が降りかかった。

「蓮二、お前は知ってたのかっ?」
「知らぬよ。オレもびっくりした。迷って出て来たか?」
「人を生霊みたく言わないでくれないか。足だってちゃんとある。ほら」

 と、千石と跡部の背中を蹴った。

「…っ!」
「え? 誰だって?」

 柳と真田。二人の冷静な態度に引っ張られて、乱れ打っていた鼓動が収まっていく。

 跡部と千石は、抱きついたまま背後を振り仰いだ。

 そこには――一人の少年が、艶やかな笑顔で立っている。

 暗闇の中だったために女性だと勘違いしてしまったらしい。それほど、整った優しい面立ちの少年だった。

「はじめまして、立海大附属中テニス部部長。幸村精市です」
「―――へ」
「なに?」

 多分、凄い間抜けな顔をしていただろうなあ、とはのちの千石の回想である。

「驚かせてしまったようだ。すまない。こちらからだと、誰が来たのか顔が見えなかったのでね」

 くすくすと密やかに笑む。確かに生身の人間がそこに居た。


「本当に、どうしたのだ幸村。お前、結婚式は?」
「今日無事に終ったよ」
「それでわざわざ来たのか?」

 驚く真田に、「まさか」と肩を竦める。

「言ってなかったっけ? 軽井沢で結婚式だったんだよ。少女趣味なイトコでね」
「訊いておらん」
「そうだっけ。ウチこの近くに別荘あってさ。それで明日帰るんだよね。オレ、昨年合宿に参加だったから、この時間ならこの道通るかな…て待ち伏せてみました」
「危険だろうが!」
「すぐそこで、父さんが車停めて待ってくれているから平気」

 頭上で交わされる会話に、跡部と千石は漸く事の次第を理解した。素に戻ると同時に、羞恥心が凄まじい勢いで襲ってくる。それとなく、しかし素早く、真田から離れた。

「大丈夫か?」

 柳が申し訳無さそうに、千石達に手を貸す。無言で、立ち上がった。

「すまなかったな…その。ウチの突拍子もない部長のせいで」
「と…突拍子…」

 それで済ませられるのだろうか。千石は乾いた笑みしか出てこない。

「なんだよ、蓮二。ちょっと顔出しにきただけだろう」
「――常識的な顔の出し方できなかったのか」
「この夜道で、けっこう待ってたんだぞ。その根性を誉めてもらおう」

 胸を張った立海大附属の部長に、跡部は眩暈がした。

「お…お前はこんな所で、じっと待ってたっつーのか…。真田達が来るまで……」
「初対面で『お前』呼ばわりか? 悲鳴あげて、ウチの副部長に抱きついた、氷帝のわるべ君とやら」
「跡部だ! ……わ、悪かったよ!」

 抱きついた所を目撃されたのだ、分が悪いと早々に跡部は謝罪する。しかし、解せない。

「幸村くん…、キミこんな所で一人で居て怖くなかったの…?」
「うん?」
「あ、オレ山吹中二年の、千石って言うんだけど」
「千石くんか、ウチの真田と柳がお世話になったようで」
「いえいえ。オレこそお世話になりっぱなしです。はい」
「怖いって言うけど。どっちかと言ったら、人がたくさん居る所のほうが怖いじゃないか。いきなり殴られたり、連れ込まれたり」
「――お前までどんなトラウマ背負ってるんだ…」

 柳は少しだけ、友人選びを考えた。

「でもさ、近くに人が死んだ別荘があるんでしょう?」
「あるね。知っているよ。でも別に…」

 幸村は右方向、林の向こう側を睨み、すぐに千石に戻す。

「いないよ」
「―――あ…そう…っすか」

 なんだろう、この自信は。訊きたいような、訊いたら後悔しそうな。千石は懸命にも押し黙った。

「しかし、幸村。二度とこのようなことはするなよ? お前に何かあったら大変だ」

 苦言を呈す真田に、幸村は目元を柔らかくする。

「心配させてしまったか…」
「するに決まっている! お前あっての立海大だ!」

 腹にずしりとくる叱咤に、跡部と千石はびっくりした。この真田にそこまで言わせるほどの人物なのだ。この幸村精市という少年は。

「ちょっと茶目っ気が過ぎたな。すまなかった。…でもまあ、お前に何事もなくてよかったよ」
「なんのことだ?」
「さっきな、前を通った四人組が、石を投げつけようと潜んでいたから。ちょっと心配したんだ。何か他にされなかったか」
「石だと? けしからん! どこまでスポーツマンシップを汚す奴等だ!」
「大声でお前達の悪口言っていたから、大体何があったかはわかったけどね。まあ、気をつけてくれ――おっと」

 背後を振り返った。

「意外と早かったな。じゃ、オレはこれで。跡部くんも千石くんも大会で会えるのを楽しみにしているよ。では」

 片手を上げると、さっと闇に溶けてしまった。

「おい! 送るぞ!」

 慌てたのは真田だ。まさかこのような暗闇の中で、一人で帰すわけにはいかない。しかし、柳に肩を掴まれた。

「待て、弦一郎。様子がおかしい」
「え…」

 前方から複数のライトが光り、こちらに向かってくる。

「お〜い」
「大丈夫か〜!」

 切羽詰るような、大人達の呼ぶ声。

 跡部はもう何がなんだかわからず、千石もぽかんと口を空けた。

 息せき切って駆けつけたのは、三人のコーチと教員。
 真田達を見つけると、ほっとしたように「良かった!」「無事か? ケガはないか?」口々に心配した。

「何かあったんですか?」
「あったんだよ…。まいったな…。まあ、真田くん達が無事でよかった」
「キミ達の前の子達がね、暴漢にあったらしくて、そこで気絶してたんだ。ゴールの近くだったから良かったけど」
「起きたら口々に…その幽霊にやられたって言ってるし。でも、関節外す幽霊なんて居ないだろう? 今から警察に…って思ってるんだけど」

 苦味潰した様子で、説明され。四人は真冬の山中に、素っ裸で放り出された如く固まった。

「キミ達、誰か不審人物見なかったか?」
「いーえ。まったくもって見てません。ねえ?」
「見てないです」

 千石と跡部は機械的に答え、

「何かの間違いじゃないですか?」

 真田は生真面目に答えた。

 柳は――後ろで一人。樹に手をかけて、落ち込んだ。

 







 結局。

 よほど怖い目にあったのか、四人はガタガタに震えながら幽霊だったと言い張り。

 千石達も「そう言えば、白いものが流れていくのを見た」と、意見を翻したので、困った教員達は警察に届け出を出すのを止めたのだった。

 まさか、幽霊にやられました。などと、警察には言えない。
 裏では、大事になるのを恐れたというのもあるだろうが。柳は、間一髪で不祥事から免れたと安堵した。
 千石と跡部は、もう精魂尽き果てたといった具合で、部屋に戻ってからというものぐったりとしている。

 真田だけが、

「幸村は暴漢に襲われなかっただろうか…」

 と、勘違いも甚だしい心配を仕切りにしていた。
 それを横目に、千石は憐憫の眼差しを柳に向け、

「――立海って、やっぱりバケモノの集まりなんだね」
「じ…人外なのは…一部だ……」

(オレ、立海大附属では絶対やってけない。いっつも地味地味言ってごめんね…南、東方。普通が一番だよな。なんだか…お前等がいやに懐かしいよ…)

 おもむろに携帯メールを打ち出した。

「幸村が…今の中学生テニス界で…トップなんだよな」

 今度は跡部が、胡乱な様子で顔を上げた。

「もう…トップがあんな奴で申し訳無い…」
「――部長なら…もう少し自重しろと…。ああ、無駄だろうな。言っても…」

 柳は泣きたくなった。

(精市…、だからお前は外に出したくないんだ……)

 遠くから見れば、容姿もいい。才能もある。人当たりも柔和だ。

(いや…もう何も言うまい。そうだ、蓮二よ。この世の中、完璧な人物などいないのだ)

「幸村はもう無事に着いているだろうな…。携帯の電波立つ場所だろうか…」

 真田に沸いた殺意を押し殺して、柳は就寝準備をしたのだった。






 

 翌日、無事に岐路に着き。

 跡部と千石が最初に向かったのは、自分達の学校で。

 部活に勤しむチームメイトを見て、ほっと胸を撫で下ろしたのは余談である。

 

 

 

 





















私自信、なにが書きたかったのかよくわかってません(切腹)
何気に、色々他の話と繋がってますね。
その別荘で、助かった子供が…です。





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