
媚びを売る女の声音は愛らしい。媚びを売る女の肉体は柔らかい。
飽きるまでの短い暇潰しには最適だった。
「好い加減になさらないと、性病など移されますよ陛下」
呆れ混じりに吐き捨てた男は、吐き捨てた瞬間鳴り響いた携帯電話を開き、愛想笑いを浮かべる。
「ハイ、エレナ。どうしました?おや、それはいけませんねぇ。判りました。それでは今夜、エンペラーホテルで」
何処のパトロンだか。利益になる相手には優しい男は、ひらひら手を振った。
「とにかく妊娠だけは勘弁して下さいよ。私はともかく、貴方はグレアムの会長なんですからね」
「セカンド」
「何か?ディナーの準備で忙しいんですが、私は」
「日本に行け」
「…は?」
「今からだ。ベルハーツに帰国許可が出たらしい」
目を見開いた男が、僅かな希望を眼差しに宿す。
「有り難うございます、陛下」
そんなに嬉しいのか。高々、初恋の相手に会えるくらいで。
「陛下はどうなさいますか?」
「気が向けば」
「本当にもう。性病になるまで判らないんですね、貴方は」
毎日が退屈だ。
望むものは片っ端から手に入り、叶わないものはない。
「実に、面映ゆい」
後悔する事を知りながら手を伸ばしてしまう。そんなもの、存在するのだろうか。