愛するがゆえ７。～子守りの巻・後編～
魔法薬の授業は、学年問わず静かに進む。
生徒たちは皆無言で鍋と睨み合い、決して私語は喋らない。
長い教師生活の中で、スネイプが作り上げた魔法薬の聖域がそこにはあった。
ドラコの笑いの発作がようやく収まった時、ネビルは怒ってドラコを無視し、皆と同じ様に無言で製薬に没頭していた。
目尻に涙を溜めたドラコは、自分を呆れた視線で見詰める寮監に、何度もジェスチャーで謝罪をしていた・・・・・その時だった。
「ぎゃあぁぁぁうぅ・・・・うあぁぁぁん・・・・びぃえぇぇぇ」
静寂を切り裂く赤子の泣き声が静かな教室に響き渡った。
その場に居た全員が肩を大きくビクリと揺らして、手元だけに固定されていた視線を上げて、何事かと周囲の者たちと顔を見合わせる。
中でも一番驚き、焦ったのは声の主・・・ハナの両親だ。聞き慣れた我が子の泣き声は、教室の隣にあるスネイプの部屋から聞こえてきていた。どうやら先刻ハナの様子を見に行った際、スネイプが扉を開けたままにしていた為に、ハナの泣き声が分厚い壁に反響し、教室にまで侵入してきてしまったらしい。
焦ったのはスネイプも同じだった。もしもの時の為に・・・と、良かれと思って開けておいた扉。本当にもしもの事態になってしまった今、その行為の浅はかさに遅ればせながら気づいた。
内心で３人が焦りと対応を思案している間にも、ハナの泣き声はどんどん大きくなっていく。
そんな中、最初に行動を起こしたのはスネイプだった。人生経験の豊富さゆえ、苦境を乗り切る知識も豊富だった。
「ロングボトム！！」
教室中に響く大声で、ネビルに怒鳴った。
「は・・・・はいぃ」
突然怒鳴られたネビルは、条件反射で返事を返す。
スネイプの大声に、ざわついていた教室が一気に静まり返る。その中に、ハナの泣き声だけが更に盛大に響いている。
「貴様が我輩の部屋に持ち込んだマンドレイクの赤子の声だ！！・・・・今すぐどうにかしてこい！！！！」
「・・・・はい、すみません！！」
スネイプの咄嗟の機転と嘘の言葉に頷いて、ネビルは教室から走って消えた。
「グリフィンドール、５点減点・・・・・全員さっさと作業に戻れ！！」
更に続けたスネイプの言葉に、２人のやりとりに注目していた生徒たちはそそくさと作業に戻る。直後、目を離していたせいで、ロンの鍋が炎を噴き出し、生徒たちはその混乱の中、先刻聞こえた泣き声の事を深く考える暇も無い。
「グリフィンドール、更に５点減点！！」
スネイプの怒鳴り声が続き、生徒たちは余計に神経を製薬作業へと集中させざるを得ない。
気づいた時には、あれほど五月蝿かった泣き声はぴたりと止んでいた。
「はぁ・・・・ハナ、スネイプ先生に迷惑かけちゃ駄目でしょ～？」
抱き上げてあやし、何とかハナの泣き声を止めさせたネビルは、困った顔でハナを諌めた。
「・・・・うっくぅ～・・・あ～ぁ・・・」
ハナは未だ機嫌が優れない様子で眉間に皺を寄せ、ネビルに何事かを訴える。
「オムツ・・・・じゃないし・・・お腹空いちゃったの？」
言いながら、ハナのお腹に手を当ててみたが、ぽっこりとせり出したその場所は空腹というよりはむしろ満腹状態だ。昼の時間にちゃんとご飯を食べさせてもらえた証拠である。
「違うみたいだね？・・・・・どうしたの？」
「あ～あ、・・・あ～あ、・・・・・うっくぅ～」
問いかけるネビルに、ハナは更に何かを訴えた。
「・・・・・うっくぅ・・・って、言われてもなぁ・・・ハナ、ママにわかるようにお話できたらいいのにね・・」
早く授業に戻らなければならないネビルだったが、ハナを１人にしても置けず、かといって彼の要求を満たせなくて、ネビルは心底困ってしまった。
早く授業に戻って他の生徒たちの不審を買わないようにしなければ・・・・とは思いつつ、出来る事ならこのままハナの傍に居たい気持ちも湧いてくる。
「・・・・どうしよう・・・困ったな」
ハナを抱いたまま、ネビルは思案を重ねていく。そんなネビルを見上げて、ハナは尚も何かを求めて口を開いた。
「・・う～・・・・・せっぶぅ～・・・・・ぶ～・・・・あ～ぁ、・・・ぶ～」
「まさか・・・・ハナ、スネイプ先生に会いたいの？」
ネビルの口から漏れた言葉に、ハナはにこにこと笑った。
「ぶ～・・・・セブ～・・・・・あ～ぁ、せっぶぅ・・・」
「駄目だよ・・・ハナ、先生は今お仕事中なの・・・・・・」
すっかりスネイプに懐いてしまったハナに、ネビルは心底困った顔をした。
「せぶぅ・・・・・せっぶ～・・」
そんなネビルにお構い無しに、ハナはスネイプの名前を連呼する。
「駄目なの・・・・・ハナ・・めっ！・・・・我侭言わないの！」
困ったネビルは、思わず口調を荒げてしまった。
「・・ぅ・・・・・うぅ・・・・・・うあぁぁぁぁん」
「わっ・・・・ハナ、ごめん・・・・ごめんね？・・・泣き止んで・・・」
怒られたと悟ったハナが再び泣き出してしまったのを見て、ネビルは慌ててハナを抱いた腕を揺らして部屋の中を歩いて回る。少しでも早くハナの機嫌を持ち直させて、再び寝入るまで持っていかないと、授業に戻る所ではなくなってしまう。
しかし、大好きなネビルに怒られたのが相当ショックだったのか、ハナの機嫌は一向に良くならない。ネビルの制服を強く掴んで、眉間に皺を寄せたまま、今にも泣きだしそうな表情を崩さず、じっとネビルの様子を伺っていた。
「・・・・・・・・ハナぁ～・・・・駄目だってば、・・・・ママもスネイプ先生も一緒に居てあげられないの・・・お願いだから、良い子にしてて？・・・・授業が終わったら、いっぱい遊んであげるから・・・・ね？」
出来るだけ優しい口調でネビルが話しかけても、ハナの機嫌が治る様子は無い。
「・・・・・・・・い～やっ・・・ぶ～・・・あ～あ、ぶ～！」
未だ言語が未発達のハナが、現時点で唯一まともに覚えた言葉は、「嫌」だった。普段は専らルシウスに向かって紡ぐこの言葉を、ハナはネビルに向かって投げかけた。
「・・・・・そんなぁ～」
はっきりと拒絶され、先ほどまでよりももっと強く縋り付かれて、ネビルは情け無い声をあげた。
「・・・・・難儀しているようだな？」
背後で聞こえた声にネビルが振り向くと、そこには何時の間に現れたのか、スネイプが立って居た。
「先生・・・・ごめんなさい・・僕・・・」
スネイプが自分を迎えに来たと思ったネビルは、居心地悪そうに謝罪の言葉を吐いた。
「・・・・・・貸せ」
そんなネビルに構わぬ様子のスネイプは、ネビルに向かって両手を差し出した。
「・・・・せっぶ～・・・・・・ぶぅ～」
ようやく現れた想い人（！？）に、ハナは嬉しそうに笑顔を覗かせ、ネビルの腕から身を乗り出して早くもスネイプの腕に抱かれる準備をしている。
そんなハナの様子に、少しだけ表情を和らげたスネイプ。ネビルの動きを待たずに、ハナを自分の腕の中に移動してしまった。
「親を困らせては駄目ではないか・・・・・・と言っても、理解してはくれんだろうがな」
スネイプの腕の中で嬉しそうに笑っているハナ。まんざらでもなさそうにハナを抱くスネイプ。そんな２人を傍観し、てっきり怒られると思っていたネビルは、気の抜けた表情をしていた。
そうしてひとしきりハナを抱き、あやしたスネイプは再びネビルの腕の中にハナを戻した。
「ロングボトム・・・授業に戻らなくても良い、子供をあやして居ろ・・・・・・・我輩が誤魔化しておく」
スネイプはそう言って、来た時と同じ様に足音も立てずに部屋を出て行こうとする。
「でも・・・・先生・・・・」
そんなスネイプの背中にネビルは何事か言葉をかけようとした。
「構わぬ・・・・・・幼子を１人で泣かせておくわけにもいかぬだろう？」
しかしネビルが言葉を紡ぐ前に振り返ったスネイプにそう言われ、ネビルは最後まで言葉を吐き出すことが出来なかった。
「・・・・・ドラコ！」
授業が終わり、教室から人の気配が完全に消えた頃、教室と続きになっている扉とは別にある、廊下から続く扉の方からドラコが顔を出した。その姿を視界に捉えたネビルは、ハナを抱いたまま安心したように駆け寄った。
「すまない・・・・大丈夫だったか？」
自分に駆け寄ってきたネビルを、ドラコはハナ諸共上手に胸に抱き寄せて優しい言葉をかけた。
「うん・・・・・・僕の方こそごめんね、・・・そっちは大丈夫だった？」
自分とハナがドラコに迷惑をかけてしまった負い目を感じて居るネビルは、ドラコを見上げて心配そうな顔をする。
自分が中途半端に授業を抜けてしまったせいで、多分ドラコは２人分の鍋や道具を片付ける事になっただろうし、ハナをあやしに行ったきり戻らなかった自分の事を、きっと心配してくれていただろうから。
「あぁ・・・・問題ない、スネイプ教授が上手く誤魔化してくれたからな」
ネビルの不安の根が下りるのを和らげようと、ドラコは微笑んでそう言った。
「そう・・・・・良かった」
ネビルが心底安心したように表情を和らげる。ドラコはそんなネビルを、ハナごときゅっと更に抱き寄せた。
「だ～だ、・・・・だ～ぁ・・・・・・あ～ぁ・・・」
２人の間で、ハナが嬉しそうに笑った。
「ハナ、・・・・良い子にしていろよ？まだまだ先は長いんだぞ？」
ネビルの腕からハナを抱き上げたドラコは、自分の顔の高さにハナの顔の高さを合わせて、言い聞かせるようにそう言った。
「あっくぅ～・・・・・う～・・っくぅ・・・・だ～だぁ～？」
そんなドラコの言葉を、わかっているのかいないのか・・・ハナはにこにこ笑いながら、ドラコを見ている。
「・・・・・・可愛いやつめv」
そんなハナを見て、緩んだドラコの顔。そのまま、そんな事を言いながらハナにちゅっと口付けた。
仲の良い親子の様子に、ネビルの顔も自然と綻んだ。
「君の笑顔も最高に可愛いなv」
更にそんな事を言ったドラコは、ネビルの唇にもちゅっとキスをした。
ハナの親になった事で、ドラコの恥知らず病は以前にも増して酷くなった。ハナだけでなく、ネビルに対する愛情もどんどん深く、強くなっていくらしい。学年初めの駅でのキスからこちら、廊下や図書室で、ほんの数秒逢瀬が叶った時には必ず、ネビルを人目の届かない場所へと引き込んでキスをした。
そんなドラコに呆れながらも、彼の存在に焦がれているネビルは・・・そんな時、確かに嬉しかった。
「全く・・・・・ハナの前だと、天下の監督生が鼻の下伸ばしちゃって・・・」
苦笑しながらキスを受け止めて、ネビルはドラコの頬をハナにいるもするみたいな仕草で突付いた。
「悪いな、僕は監督生である前に君の夫で、ハナの親だ」
ネビルの軽い嫌味もどこ吹く風で流してしまうドラコは、飄々とそう言い放ち、これ以上無いくらいに綺麗な顔でにっこりと微笑んだ。
「取り込み中、失礼する」
ラブラブ家族オーラ全開の３人の傍で、低い声がして３人とも一斉にそちらに視線を向ける。
ドラコの背後に、ひっそりとスネイプが立って居た。
「・・・・・・・・ス・・・スネイプ、・・・・せんせい」
「ひゃあっ・・・・・・・・・・・・・・重いぃ・・・」
「・・・・・・・せっぶ～・・・・・しぇ～・・・ぶ～・・・ぶ～」
３人の反応は見事に同時で・・・しかしそれぞれに状況は異なった。思わずスネイプを振り返ったまま身を引いたドラコは、結果的にハナごとネビルに圧し掛かる形になって、受け止めきれないネビルはその重さに悲鳴をあげて、・・・・ハナはドラコの肩から上半身を乗り出して、スネイプに向かって手を伸ばしていた。その様子は、まるで喜劇の一場面のようだった。
鉄仮面と言われる魔法薬教授も、思わず笑みをこぼしてしまう。
「悪いがご両親、ご子息をお借りするぞ？・・・・マダムが五月蝿くて適わん」
口元に笑みを貼り付けたままそう言ったスネイプは、ドラコの肩越しにハナを抱き上げた。
「え・・・えぇ、構いませんけど・・」
ドラコを受け止めた格好のまま、律儀に返事を返すネビルに、ネビルに身体半分圧し掛かったままのドラコも頷いた。
今日は午前中をマクゴナガルが、午後はスネイプがハナを見てくれる予定なのだが、・・・どうやらマダムが予定よりも早く帰ってきたらしい。夕方～夕食くらいの間は、生徒も教師も忙しい時間帯なので、マダムの所にハナを連れて行く約束になっていたのだ。
２人の返事を聞く前に、スネイプはハナの上に薄い布を被せて出かける支度を始めていた。
マダムの所へ行くには、城の中を通らなければならない。故にハナが目立たぬ工作が必要だった。そのための布・・・特殊な魔法がかけられていて、布の表面に中身とは全く別の映像を映し出す。つまり、ハナに布を被せれば、スネイプの腕の中に在るのは赤子ではなく、何かの薬品の壷に見えるのだ。実はコレも、双子の店の悪戯グッツ。偽りの映像で相手を安心させておいて、突然目の前で布を取って驚かせるサプライズグッツだ。モノがモノだけに、悪用される危険性が高く、商品化にはいくつかの制約が伴った。布の下にナイフや銃を隠して居た場合、殺人や事件に繋がってしまうのだ。故にこの布には武装解除呪文に限らず、どんな些細なものでも杖を向けて魔法を唱えれば、直ぐに中身が見えるようになっている。
しかし、このホグワーツでスネイプに面と向かって杖を向けるような、命知らずの生徒は存在しない。マクゴナガルやダンブルドアも、また然り。
今回のハナの移動には持ってこい道具だったのだ。
軽く姿見に目をやって、ハナの姿がちゃんと隠れている事を確認したスネイプは、ハナを連れて部屋を出て行った。
部屋に残された２人は、どちらからともなく視線を合わせて微笑んでいた。自然の中に必然が存在する行為。視線を合わせているだけで、嬉しい、愛しい。
ハナの存在は決して邪魔では無い。むしろ２人に愛の証を授けてくれた神に感謝しなければならない・・・本心でそう思う。日々心に刻むのは、神への感謝とハナへの感謝・・・そして何より、愛しい伴侶への感謝の気持ち。そんな２人。
だけど・・・・・・・愛に満ちた安穏を手に入れるには若すぎた２人。頭で理解するよりも遥かに正直な身体は、・・・・やっぱり潤いを求めてしまう。
主が居ないこの部屋には、尋ねてくるような命知らずな生徒は殆ど居なくて、・・・・他人の目を気にする必要も無い２人は、向かい合って立っている。・・・・そんな中で、お互いの唇が重なったのは自然の流れだったかもしれない。
最近ハナと一緒に眠る事を覚えた２人は、週末の帰省時に身体を重ねる時間が減っていて・・・それ以外の日常に、お互いの接点は少なすぎて・・・・・・何より、先日ルシウスに邪魔されて身体の熱を持て余していた２人。他に誰も居ないこの僅かな時間を無駄にする余裕なんてなかった。
重なった唇が開かれ、深く交わり、絡み合う舌が静かな部屋に水の音を生む。いつしかお互いの背に回された腕は、塞がれた唇が紡げない想いを表すように、強くお互いを引き寄せあった。
「・・・・・・ん・・・はぁ・・・」
長いキスの後、潤んだ瞳でドラコを見上げたネビル。たった一度の口付けは、ネビルを妖艶な姿へと変貌させた。
甘い吐息を吐き出す唇が、無言でドラコを誘惑する。
「・・・・・・・」
ドラコは無言のままで急速にネビルを求めた。荒々しくも優しさを纏う仕草で、ネビルの首筋に顔を埋めていく。
「あっ・・・・ん・・・・・・・ドラコ・・・最後まで・・は、駄目・・・」
ドラコの熱を求め、与えられる快感を受け止めながらも、ネビルの思考の片隅に残った僅かな理性が、恩師であるスネイプの部屋での行為を躊躇っていた。
「・・・・・・抗えるなら・・・抗えよ、僕は止めない・・・」
そんなネビルの律儀さに、ドラコは口元を歪めてそう言い放った。
ドラコとて、この場所での情事に躊躇いが無いわけではなかったが、今は目の前の欲情の方が強かった。スネイプが今すぐにでもここへ戻ってくるかもしれない・・・そんなスリルすら今は興奮を高める要素でしかない。この困った性癖は・・・・自分だけのものでは無いと、ドラコは知っていた。
「あっん・・・・・はぁ・・・」
ドラコの容赦の無い愛撫に、ネビルは既に流されていた。
口では躊躇いの台詞を吐いてはいたが、ドラコの背に回された華奢な両腕が広い背中を掻き抱いてドラコに「もっと」と、その先の快楽を強請っていた。
「あぁん・・・・やっ・・・・そこっ・・・」
ドラコの巧みなエスコートによって、部屋の隅に置かれた真新しいベビーベッドの所まで追い詰められたネビル。腰の高さに感じるベッドの柵と、自分の肌を翻弄していくドラコに挟まれて、身動きを完全に封じられていた。冷たい石の床に崩れ落ちる事も許されず、震える両足で半裸の身体を支える。迫り来る快楽に全てを委ねる事が出来ないネビルは、喘ぎ混じりに弱々しい抵抗の言葉を吐き続けることしか出来ない。
「ふぅん・・・・ここが・・・・悦いのか？」
ネビルの胸の突起を舌でいじくっていたドラコ。そこがネビルの感じるポイントだと知っていて、更に嬲る。
「やぁ・・・・・・・駄目・・・・・・僕、・・・・」
シャツを大きく肌蹴、白い肌を薄く桃色に上気させたネビルは、首を緩やかに左右に振って、ドラコへと切ない声で抵抗と、催促を続けた。触れられた肌の熱さと、慣れた快感に腰が揺らいで、頭の中が霞み始める。場所や時間を忘れて、もっと強い快感が欲しくて仕方がなくなる。
後ろ手にベビーベッドの柵を掴んでいたネビルの手は、いつしかドラコの首筋に周り、窮屈な体勢のまま、甘えるような仕草を見せた。
「・・・・・・イきたいか？」
触れなくても、ネビルの腰の昂ぶりを知っているドラコ。頃合を見計らって、ネビルを堕とす最後の一押しを耳元で囁いた。
「・・・・・・・・」
ネビルは至近に迫ったドラコを潤んだ目で見上げて、暫くの間何かを考えている様子だった。
ドラコは静かにネビルの答えを待つ。
薄く開いたネビルの唇は、何度かか弱い吐息を吐き出した後、小さな言葉を紡いだ。
「・・・・このまま・・・・シて・・・？」
思いもよらなかったネビルの誘いに、ドラコは目を僅かに見開いた。
「先生が帰ってくる前に・・・・・・お願い」
自分の言葉に答えてくれないドラコに、ネビルは切実な顔で訴えた。
こんな場所で行為に及ぶことの愚かさと、羞恥と、堕落感・・・・・・その全てを凌駕してしまう飢え。ネビルなりに妥協できるギリギリの提案だった。今は、いつも通りに前戯や、愛を囁く事に時間を割くことは出来ないから・・・それでも、熱と快感が欲しいから・・・・急速に事を進める以外に方法を思いつけなかった。
頻繁にドラコとの逢瀬を叶えられないネビルにとって、急速な行為は自分に苦痛が伴う事はわかっていた。慣れているとはいえ、男の身体にドラコを受け入れるのはやっぱり苦しい。それでも、ネビルは今、ドラコが欲しかった。
赤く上気した頬、紅を付けたように艶やかな唇、潤んだ鳶色の瞳。ネビルの全てが、ドラコを欲していた。
「・・・・・・あぅ・・・・ん・・・・く・・」
一気に欲情を煽られたドラコは、無言のままでネビルの身体を床に組み敷き、噛み付くようにその肌に触れた。
自分の意思が認めてもらえたと実感したネビルは、ドラコの荒々しい愛撫に恍惚の表情で微笑んだ。
ネビルの下半身を包んでいた布を全て剥ぎ取り、露になった素肌にドラコの指が、唇が飢えた狼のように触れていく。
「あっ・・・・あぁ・・・・・んぁ・・・・・ドラ・・・・・いぃ」
いつもより、少しだけ素直で積極的なネビルは、ドラコの耳に心地よい甘い声を絶えず奏でた。
ネビルが達する事を望まないので、ドラコはいつも口に含んで愛撫するネビルの腰の猛りを、ゆるく舌で突付いただけで、早速奥の蕾へと愛撫の手を伸ばしていく。既にひくついているその場所は、穢れを知らない清らかな印象をドラコに与えた。
ネビルは何度その場所に男を咥え込んでも、半年もすると処女のように身体を硬く閉ざしてしまう。男だからとか、本来の用途ではないからとか・・・・そんな事を抜きにしても、ネビルの身体は不思議なくらい清らかさを捨てない。色形は元より、根本的に穢れを知らない天使のようなその場所。今からここを、自分の欲望を貫くのかと・・・想像しただけで、達してしまいそうな興奮を覚える。
ドラコはまるで挨拶でもするみたいに、ネビルの中へと続くその場所に口付けた。たったそれだけの刺激で、敏感なネビルの身体はビクッと震える。
内腿の筋肉が緊張したのを、指先であやすように愛撫しながら、今度はドラコの舌先がネビルの蕾に這わされる。蕾の周囲や入り口を、丁寧に優しく這い回っていく濡れた感触に、ネビルの身体が可哀相なくらいに震え、意図的に堪えてくぐもった喘ぎ声が甘い余韻を部屋に響かせる。
「あ・・・・・はぁん・・・・そんな・・・舐めちゃ・・・いやっ・・」
両足の間にドラコの身体を挟んだネビルは、大きく開いた足を閉じることも出来ず、彷徨う両手で無意識にベビーベッドの足を掴んでしまっていた。強い快感を耐える方法を、ネビルは何かに縋る以外に知らなかった。いつもなら、シーツなり、敷かれたローブなりを掴む事が出来たが、今日に限ってベッドの足しか掴む事が出来なかったのだ。
両手を頭上に掲げ、足を大きく開いたその体制が、男の嗜虐心を煽る事なんて・・・今のネビルには考える余地がない。
ネビルの蕾を舌で存分に味わい、滑りを加えた所で、ドラコは慎重に指を一本中に侵入させた。
「ひゃあっ・・・んぅ・・・・あぁん」
ネビルの背が、快感に反り返る。
その反応に、ネビルが痛がっていない事を確認し、ドラコはゆっくりと根元まで指を埋めた。
ドラコの猛りとは段違いの太さの指を、ネビルの内壁がきゅうっと締め付け、ドラコの侵入を喜ぶように蠢いた。こんな状態の身体に、太くて大きな自身を挿入したら・・・考えただけで、ドラコの背筋をぞくりと快感が這い登っていく。
「・・・・・・・入れても・・構わないか？」
指で少しだけ中を解しただけで、ドラコはネビルにそう願い出た。ドラコの欲情が狂ったように増幅を続けていて、これ以上は待っていられなかった。
顔を上げ自分を見上げてきたドラコに、ネビルは恥ずかしそうに瞳を伏せて小さく頷いた。ドラコの欲情に酔いしれた表情に煽られて、ネビルもこれ以上待っていられなかった。
ネビルを後ろ向きに立たせ、ベビーベッドの柵に上半身を乗りだす様な体勢にさせてから、ドラコはネビルの背を抱き、自身を入り口に宛がった。大して解されていないネビルの身体の負担を和らげる為か、ドラコは焦らすように入り口に自身の先端を擦りつける。
その行為に、ネビルの口は上も下も卑猥な音を奏でた。
「んぁっ・・・・あっ・・・・・・いやぁん・・・・ああっ・・・」
なかなか挿入してくれないドラコに焦れて、ネビルは自ら腰を振ってドラコを誘った。無自覚であろうその仕草に、ドラコは口元を歪ませてぐちゅっと音を立ててネビルの入り口を自身の先端で押し広げた。
「・・・・ふっ・・・・くぅ・・」
先ほどの指の何倍も大きなソレに、流石に漏れたネビルの呻き声。ドラコはネビルの耳元に顔を寄せ、あやすように優しく囁く。
「大丈夫か？」
それにネビルは何度も頷いて答える。
「・・・へ・・いき・・・・・もっと・・・して」
気丈にも笑顔まで覗かせて、ネビルはドラコを誘う。この瞬間、２人が同時に欲しているのか、快楽だけ。他には何も要らないくらい、狂った欲情が快楽を・・・身体の繋がりを求めた。
ゆっくりとネビルの身体を労わりながら侵入を続けたドラコ。ネビルの身体がその全てを飲み込んだ時には、思わず２人同時に溜息にも似た吐息を吐き出していた。
ドラコはそのまま動く事をせずに、ぐっと腰を強くネビルに押し付けて、ネビルの身体を強く抱き締めた。刹那に、これ以上無いくらいまで押し広げられたネビルの身体は、際奥まで飲み込んだドラコの熱を一気に強く締め付ける。
「・・・・これで・・・僕たちはひとつだな」
ＳＥＸの最中だと言うのに、ドラコはのんびりとした口調でそんな言葉を吐き出した。掠れた声と、身体の奥に感じる熱だけがネビルに今の自分たちの行為を理解させていた。
「・・・・・・そうだね」
ドラコにならって穏やかな口調になったネビル。甘えた仕草で自分を後ろから抱くドラコに頭をもたれかけ、微笑んだ。
多少無理な仕草で目の前に晒されたネビルの首筋に、ドラコは迷わず吸い付いた。
思いもよらないドラコの悪戯な責め方に、ネビルの身体は面白いくらいに跳ね上がり、ドラコの自身をきつく吸い上げるように締め付ける。
「ああっ・・・・・ん・・・・駄目・・・・意地悪しないで？」
悪戯に身体の熱を上げられ、焦らされたネビルは、困ったように眉根を寄せてドラコを見上げた。
「・・・・・・あぁ・・・そうだな」
そんなネビルにドラコも笑って、今度はネビルの唇に吸いつくようなキスをした。
「あっ・・・・あぁ・・・・あああん・・・・あっあぁ」
静かな部屋の中にネビルの喘ぎ声と、ベッドがギシギシと揺れる音、ドラコの荒い息遣いがない交ぜになって響いていた。
ドラコの容赦の無い攻め立てに、ネビルは堪えていた限界を押さえられずに、既に一度高みに上り詰めていた。それでもドラコの腰の動きは緩まずに、ネビルは達した余韻を味わう暇もなく甲高い声を上げ続けた。
「あっ・・は・・・・・ドラ・・コ・・・・・・中・・・・・・・・お・・くにっ・・・・全部・・・・出してっ・・」
ドラコの動きに切羽詰ったものを感じ取って、ネビルが切れ切れの言葉を紡いだ。
元よりこの場所はスネイプのテリトリーで、２人が行為に及んだ痕跡など残せるはずも無かったのだが、たった一言の呪文でドラコの欲情の証を消してしまいたくなくて。・・・・たとえ入浴するまでの間だけでも、自分の中にドラコの存在を留めておきたいネビルの切実な願いだった。
ドラコはそれに答えを示さなかったが、激しい動きでネビルを突き上げ、攻め立てた後、ネビルの腰を掴み、その奥に全てを吐き出した。
「ああぁぁっ・・・・・・はぁ・・・・・・あ・・」
断続的にドクン、ドクン、と自分の中で脈打つドラコの存在を感じながら、ネビルはうっとりと吐息を吐き出し、身体をベッドの柵に預けた。後ろから覆いかぶさってきたドラコの荒く、セクシーな息遣いが耳に心地よくて、ネビルは知らず微笑んでいた。そんなネビルに、ドラコも微笑んで激しい運動に汗の滲んだネビルの頬にちゅっと啄むようなキスをする。
「良かったか？」
甘い低音でそんな事を聞かれ、ネビルの笑みが苦笑へ変わる。
「勿論・・・・凄く良かったよ」
答えのわかりきった問いを投げてくるドラコに、ネビルは彼の望んだ言葉を与えてあげた。ネビルの視界の中で、ドラコのアイスブルーの瞳が嬉しそうに細くなる。
そのまま２人は額をくっつけ合って、キスを・・・・しようとした。
「・・・・・だろうな」
突然背後で聞こえた声に、今まさに触れようとしていた２人の唇がぴたりと止まった。閉じかけた瞳を勢い良く見開いて、見詰め合った２人の顔から血の気が失せていった。
「・・・・・あの・・すみませんでした」
情け無い顔でドラコが相手の顔色を伺いながら、そう言葉を吐き出す。ネビルは彼の背中に張り付いて顔を上げず、まるで小動物のように身体を震わせていた。
２人とも、この後に当然与えられるだろう怒声に備え、必要以上に怯えていた。
相手とは・・・・・勿論、スネイプ。自分の部屋で無断で行われた２人の情事を、しっかり見てしまったスネイプ。普段から仏頂面の彼の表情からは、その感情を読み取る事は出来ない。
繋がったままの２人に「１分で身支度を直せ」と告げた後、彼は隣にある寝室に消えた。言われた通りに身支度を整えた２人は、今こうして彼に謝罪を述べている。
自分たちの軽率さと、謝罪しきれない非礼を知っている２人は、元来の律儀さゆえ怒鳴られる為にスネイプの前に立って居た。
そんな２人をちらりと見たスネイプは、溜息を吐き出し口を開いた。
「・・・・・・そんなに怯えずとも、罰を与える気など無い・・・・・・無論、お前らを見て煽られる気持ちが存在するほど我輩は青くは無いつもりだが？・・・・・・・何の為の謝罪だ？」
いつもの腹に響く低音の声音に、ドラコは緊張した面持ちで聞き入った。しかし、その台詞に自分たちを非難したり、咎める色が含まれていない事に驚いた。
「あの・・・・・勝手に部屋をお借りした上に、あのような事・・・・・先生は僕たちに怒っていらっしゃるでしょう？」
そしてその疑問を、ドラコは正直に口にした。
「確かに、軽率で愚かな行為であったな・・・・・・・・・・・しかし、お前らの行為を咎める気など無い」
スネイプの言葉は謎かけのように意味が掴めず、ドラコは困惑した。２人の会話を聞いていたネビルも、ドラコの影で首を傾げる。そんな２人の様子を黙って見ていたスネイプは、自分が座っているソファーの向かいを示し、２人をそこに座らせた。
「いつからだ？」
そして突然そう問いかけた。
「・・・・・え？」
全く意味がわからず、ドラコは間抜けな擬音しか返せない。
「いつからしていない？」
どこか楽しんでいるような響きの声で、スネイプは更にそう問いかけた。そこでようやく２人にも、スネイプの問いかけの意味が理解できた。
「・・・・・・・・・・・・２週間・・・だよね？」
ネビルが確認するようにドラコを見上げて、そう言った。
「違う・・・・１７日だ」
するとドラコは、そう訂正した。
そんな２人のやり取りを見て、スネイプの口元に笑みが浮かぶ。
「子供が生まれて、お前たちが大変な気持ちを我輩も多少は理解しているつもりだが・・・・・罰を与えてほしいかね？」
小さく笑いを零したスネイプに、２人はただただ驚いた。勝手に部屋を借りＳＥＸをした２人を咎めないばかりか、夜の生活まで心配されていたなんて・・・・・あの、スネイプに。
正直に信じられなかった。
「どうした？・・・・・・罰が欲しいのか？」
何も答えられない２人に、虐めっ子の様にそんな事を言うスネイプ。学生のように悪戯な瞳は、２人の知っているスネイプでは無い。
「いえ・・・・・・許していただけるのなら、それに越した事はありません」
常と違うスネイプの様子に困惑しつつ、ドラコはそう答えた。その隣でネビルも頷く。
そんな２人に、スネイプは満足げに頷いた。
「・・・・しかし、ロングボトムは意外と大胆なのだな・・・・『奥に全部』など、ポルノ雑誌でもそうそう出てこぬ台詞だ」
そして悪戯っぽい瞳でネビルを見て、そう告げる。その言葉を耳に入れたネビルの顔が、一気に真っ赤に染まった。
「いつもあぁなのか？」
そして今度は、ドラコにそう聞いた。
「いえ・・・・いつもはもっと、可愛らしいんです・・・恥ずかしがって泣き喚くのが常で・・・・・」
思わず素直に答えたドラコに、瞳に涙を溜めたネビルの肘が見事に鳩尾に埋まる。ドラコは「ぐえ」と蛙の鳴き声のような呻き声を上げて、腹を抱えて蹲った。ネビルはそれでも怒りと恥ずかしさが収まらないのか、無言でドラコの後頭部に何度も拳を振り下ろす。
そんな２人に、スネイプはくすくすと楽しそうに笑い声を上げた。
夕食までの間３人はそんな様子で延々猥談を続けたのだった。
「びっくりしたね」
「あぁ」
夕食を終え、ドラコの部屋に戻った２人の会話の始まりはこんな言葉だった。
ベッドの上に並んで座る２人の間には、今さっきマダムの所から連れ帰ってきたハナがうつ伏せに寝転がり、腹を起点に両手足をバタつかせきゃっきゃっと楽しげな声をあげている。
「ハリーのお父さんだったなんて・・・・」
そんなハナを視界に捕らえ、時折頭を撫でてあげながらネビルが話を続ける。
「ポッター家の事件は、ダブルでショックだったろうな」
ドラコも、ハナの小さな掌に自分の指を掴ませ、それを揺らしながら相槌を打つ。
２人の話題は、夕方スネイプに聞いた話の素直な感想だった。
あの後、「ロングボトムの選んだベッドは流石に丈夫だ」などと、意地悪い事を言われつつも和やかに恥ずかしい話を続けていた３人。
話題はいつしかスネイプの若い頃の話に移り、２人はそこで始めてスネイプの過去を知ったのだった。
スネイプには学生時代から男の恋人が居て、その相手はジェームズ・ポッター・・・・ハリーの父親だった。卒業を気に、スネイプは彼との関係を清算し、自分の気持ちに終止符を打った。男同士の自分たちに明るい未来が来ないと知っていたからだ。その気持ちは、２人にもよくわかる。ネビルの薬の失敗が無かったら、２人だっていつかは同じ様な結論に達していただろうから。
けれど、スネイプはジェームズを忘れる事が出来ず、寂しさを紛らわせる相手を探すうち、気づけば「死食い人」になっていたと言う。その生活は安穏としていて、決して悪くはなかったが、やっぱり付き纏うジェームズの影にスネイプは何度も自棄になっては仲間に激しいプレイを懇願していたそうだ。そんな折、突然スネイプの前にジェームズが現れた。何の前触れも無く、本当にひょっこりと。別れた時とは比べ物にならないくらいに堕落したスネイプを見て、彼は苦笑し少しだけ咎めたそうだ。「自分を大切にしなければいけない」と。
そして２人はかつての様に肌を重ねた。
行為の前にジェームズはスネイプに薬を飲ませた・・・・それはネビルが１年前に作ってしまった、「性転換薬」。ジェームズはスネイプに「息子が居る」と告げ、更に「セブルス、僕の子供を産んでよ」と囁いたそうだ。ジェームズの事を片時も忘れられなかったスネイプに、その台詞を拒める筈も無く、気休めの媚薬だと知っていて、女としてジェームズに抱かれた。
そして妊娠し、死喰い人を追われたスネイプ。愛する人の子供を産む為に性転換薬を作るべく、１人試行錯誤した。しかし結局駄目だった。彼にとって十月十日という時間は短すぎた。
薬を作ったはずのジェームズは、スネイプの妊娠を知る前に他界していて・・・・スネイプに頼るべき相手は居なかった。子供も、愛する男も失って・・・・彼に残されたのは、膨大な薬学の知識だけだった。
後にわかったことだが、ヴォルデモート卿はスネイプの過去を知っていて、意図的に彼を集団から追い出す時期を見計らっていたらしい。自分の思い人の事も、スネイプには一切明かさなかった。
あの日、ジェームズがスネイプ会いに来たのは、自分の最後が迫っていると知っていたからだ。そしてスネイプを妊娠させたのは、彼を守る為。自分が死ねば、子供を産めなくなる事くらいわかっていたのだ。それでも彼に「子供を産め」と言ったのは、彼がこれ以上死喰い人と関わって、犯罪に加担しない為。全ての準備を整えて、ジェームズはヴォルデモート卿を挑発し、自分諸共死ぬ賭けに出た。勿論ハリーとリリーを助けたかったはずだが、それは叶わなかった。唯一彼の思い通りに助かったのは、スネイプだけだ。
スネイプが事の全容を知ったのは、全てが終わった後だった。
ハリーが孤児として叔母の家に預けられると知って、「自分が引き取る」と申し出たりもしたらしいが、その時既に薬学教授としてホグワーツに居た彼の願いは、聞き入れてもらえなかった。今回の事を考えれば、確かにここで子育ては無理だったろう。残酷だが、妥当な決定だったろう。
ヴォルデモート卿がポッター家を襲撃し、ハリーの両親を殺した話は２人も知っていた。だが、そこに死食い人が関わっていたなんて初耳だった。
スネイプは最後に、２人に「必ず幸せになれ」と言った。自分が過去に起こした過ちを絶対に繰り返すな・・・と。
２人の憶測だが、スネイプにとって同性間の性行為は、酒やドラッグ等と同じ効果があるらしい。饒舌に・・・しかもとても人には言えないような赤裸々な過去を話すスネイプの姿は、どこか夢見がちで終始掴み所が無く・・・・そしてとても優しかった。
壮絶な過去の記憶と経験から表情を閉ざし、心を閉ざす術を身に付けたスネイプは、ドラコたちの情交を見て素顔の自分を引き出す事が出来たのだろう。
「幸せになろう」
ドラコがネビルの目を見詰めて、言った。
「今でも充分幸せだよ」
ドラコの真剣な眼差しが恥ずかしくて、ネビルはそんな事を言う。
「今以上に・・・・・だ」
ドラコはハナを膝の上に抱き上げて、もう一度言った。
「・・・・・・・・・うん」
ネビルは観念したのか苦笑して、ドラコの言葉に頷いた。
To be continued‥‥。
チヨリンさん・・・・仲直りした？？
凛「チヨちゃん、助けて！」
千夜「・・・・・？」
凛「・・・チェスに勝てない！機械に２７連敗した！！」
千夜「・・・・・・・（馬鹿？）」
―間―
千夜「・・・・・クソゲーめ！！」
凛「でしょでしょ？」
千夜「もう一回！！」
凛「けっぱれ～！」
結局、千夜は１４勝７敗、凛は２勝５６敗でした。
２人ともチェスの才能皆無でした。