このお話は、赤城凛、深月千夜の駄目大人二人組みによる、腐った煩悩によって展開されています。
パラレルがお嫌いな方は、お読みにならない事を激しく推奨いたします。
また、最初の19行のセンテンスで嫌悪感を抱かれた方も、その先に読み進む事をお止めくださいませ。
「全然OKです!」「あたくし、伊達に腐女子じゃなくってよ?」
と言う方のみ、どうぞお楽しみくださいませ。
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愛するがゆえ。
ネビル・ロングボトムは、放課後の地下教室で激しく落ち込んでいた。
「‥‥ネビル‥あまり、気にするな‥」
そんなネビルに、甲斐甲斐しく慰めの声をかけたのは、ドラコ・マルフォイ。
いつもなら、ドラコの声に、多少なりとも元気付けられるネビルも、今日に限っては、そうも行かない。ドラコの声を聞いた途端に、更に落ち込んだ様子を見せた。
「‥ネビル‥」
少し困った様な顔で、ドラコは小さく溜息を吐いた。今は、何も言わない方が良かったのかもしれない。
何しろ、ネビルがこんなに落ち込んでしまった原因は、自分自身にある。
例によって、例の如く、魔法薬の授業中の精製に失敗して、ネビルが放課後残された。それを手伝っていたドラコが、出来上がったネビルの薬を飲んだ事が、そもそもの始まりだった。
とにかく、魔法薬とネビルは相性が合わない。毎回、魔法薬の授業が近づくたびに、ネビルは落ち込むし、スネイプの声を聞いただけで、ネビルは震えだす。
自分の寮の寮監で、実はそんなに嫌な人でもないスネイプに、そんな反応を示すネビルに、ドラコは少しでも魔法薬を、スネイプを、好きになってもらいたかった。
そのドラコの考えが、裏目に出てしまった。
ネビルが止める声を聞かずに、ネビルが作った薬を飲んだドラコ。目の前で作っている過程を見ていて、可笑しな所は無かったし、例え失敗したとしても毒薬や劇薬になるような材料は使っていないし、気分が悪くなったり、腹痛を起こす程度で済むだろう‥と、ドラコは思っていた。しかし、飲み終わったドラコの身体に、予想外の出来事が襲った。
クィディッチ選手の、均整の取れたドラコの身体が細くなり、身長が小さくなって、なだらかな曲線を描くような身体の線を作った。胸には、小さな‥しかし、紛れも無い膨らみ。少し高くなった声。
‥‥ドラコの身体は、少女のそれになっていた。
その事実に気付いた時、二人同時にそっくり同じ驚愕の表情を称え、声も出なかった。
運悪く、丁度そこへ様子を見に来たスネイプが現れた。当然、説教を食らって減点されたグリフィンドール。ネビルの几帳面な性格が幸いし、何をどれだけ入れて、どのタイミングで刻み、煮込んだが、詳しく書かれたメモが残っていたので、スネイプはそのメモに目を通し、ドラコに「数時間で元に戻る」と言い残して、去って行った。
「‥‥‥‥‥‥ごめん‥僕が、ちゃんとしていたらドラコはこんな目には‥」
長い沈黙の後、ようやく口を開いたネビルが、項垂れたままでそう言った。泣いているのか、声が震えていた。
「‥‥ネビルは悪くない、全部僕のせいなんだ‥‥そんなに自分を責めるな」
思わず抱き締めたネビルの身体が、いつもより大きく感じる。少女になったドラコの身長は、ネビルと同じか少し低い。仕方の無い事かもしれないが、ドラコは少し苦笑した。
今のこの身体では、いつものようにネビルを抱き締める事も、抱き上げる事も、身体を重ねる事すら出来ない。
ドラコの抱擁に、縋り付く様にして、ネビルからもドラコの背に腕を回す。
「‥‥ごめん‥」
ネビルがもう一度謝って、二人はキスをした。
「‥‥ドラコ‥‥‥小さい‥変な感じ‥」
唇を離して、ネビルは困惑した表情でそう感想を述べた。
普段キスをする時には、ネビルがドラコの身長に合わせて背伸びをするが、今はその必要が無い。むしろ、ドラコの方がネビルの身長に合わせて少し顔を上げている。
「‥細いし、柔らかいし、‥ドラコじゃないみたい‥‥匂いはドラコなのに‥‥ごめんね、僕のせいだ‥」
少女のドラコの身体をきつく抱き締めて、ネビルは自責の言葉を紡ぐ。
「気にするな‥直ぐ戻ると‥‥スネイプ教授が仰っていただろう?」
ドラコの言動は、普段通りなのに、何故か今は大きな子供を慰めているような、不思議な気持ちになってくる。
性別が、体格が、違っただけで、こんなにも気分が変化する物なのか‥と、ドラコは冷静に自分を分析し始めた。
(いつもなら、慰めついでにネビルを押し倒す所だが‥今は無理だな‥‥いや、方法はあるか‥)
「‥‥ドラコ?」
無言でにやけているドラコに、ネビルは怪訝そうな視線を向けた。ドラコは慌てて取り繕うようにして、にっこりとネビルに微笑んだ。元から綺麗な顔立ちのドラコは、常と違う色気をその笑顔に称えていた。根本的には、顔の造りに変化は無いが、少女になった事で、何かが変わったようだ。見慣れている筈のドラコの表情に、拭い去れない違和感を感じて、ネビルの困惑は更に深くなった。
「取り合えず、僕の部屋に行こう‥このままここに居るわけにも行かないし、な?」
口調は、普段通りのドラコのものなのに、声色が微妙に違うので、ネビルは頷きながらも解せない顔をしていた。自分のせいで、恋人の性別を変えてしまった事へのネビルの懺悔は、まだまだ終わりそうに無い。
(‥‥そんな可愛らしい顔をして、僕を煽っているのか!?‥あぁっもうっ!!理性が持たない!!)
ドラコの秘めた心の葛藤に、全く気付いていない様子で、ネビルは項垂れたまま、教室の出口へ向かってドラコの後について歩く。
(‥‥くそっ歩きにくいな‥)
背が小さくなったドラコに、いつもの制服の丈が合わず、思いのほか歩くのに難儀した。ドラコが心の中で、長すぎるズボンの丈に悪態を吐いた瞬間だった。情けない事に、自分の服の裾に躓いてドラコは転んでしまった。
「わっ‥」
「危ないっ!!」
咄嗟に、ネビルがドラコを抱えて、どうにか転倒は免れた。しかし‥ネビルに抱きかかえられてしまうほどに、軽く小さくなった自分の身体。その事が、ドラコのプライドを傷つけた。
「‥‥大丈夫?」
後ろからドラコの腹の辺りに腕を回し、抱き締めたままでネビルがドラコを心配そうに覗き込む。
「‥あぁ‥大丈夫だ‥‥すまない」
そう言って、ネビルの腕から抜け出したドラコは、改めて今の自分の情けない格好を見回した。
ズボンの丈は元より、ローブの丈も、シャツの袖も長すぎて不恰好だ。
(ネビルの前で、何て失態だ‥僕としたことが‥‥くそっムカつくな‥この服‥‥そうだ‥)
「ちょっ‥ドラコ?何やってるの!?」
突然、目の前でローブを捲り、ズボンの裾を折り始めたドラコに、ネビルが驚いて声を上げた。
「まぁ見てろって‥」
そう言いながら、見る間に両足の膝上までズボンを折り曲げてしまうドラコ。白くて細いしなやかな生足が、ネビルの目に晒される。それから、ベルトの穴を一番小さく調節し、髪型のオールバックを崩して長めの前髪を垂らし、その上にローブのフードを被ってしまう。
「どうだ?女に見えないか?」
ネビルを見上げて、悪戯っぽく微笑むドラコ。‥確かに、少女に見えないことも無い。ローブを着ている時、男女の制服の違いの判別は足くらいなもの。膝上までズボンを上げてしまえば、女子生徒の制服とそう変わらなかった。
それに、少し長めの袖元が妙にキュートで、本物の女の子より可愛らしいかもしれない。そう思って、ネビルの顔が、少し赤くなってしまった。
「‥‥さ、行くぞ‥転ばないように、勿論手を繋いでくれるよな?」
にやりと笑って、ネビルに手を差し出すドラコに、ネビルは赤い顔のままその手を取った。
明るい時間に、城の廊下を手を繋いで歩く。秘密の恋人同士の二人には、初体験の出来事。
秘密の恋人同士でなくても、例え性別が男女であっても、ネビルはこんな事、嫌がるだろう。人一倍恥ずかしがり屋で、気の小さいネビル。今だって、真っ赤な顔をして顔を伏せて歩いている。それでも、ネビルはドラコの手を離さなかった。
自分に責任を感じているからなのだろう。それでも、ドラコは嬉しい。この際、自分の情けない女装のような格好は捨て置いて、嬉しい。
「‥‥こういうの、恋人同士って感じで良いよな?」
意地悪く、ネビルを見上げてそう言うドラコに、ネビルは軽い眩暈を覚えた。
全くもって、ドラコは強い。例えばこの状況が逆だったら、自分は恥ずかしくて手を繋ぐどころか人前を歩く事だって出来そうに無い。
更に真っ赤になって俯いたネビルの頬に、ドラコはちゅっと触れるだけのキスをした。
「なっ‥ドラむぐっ‥‥‥」
驚いて、叫び声を上げそうになったネビルの口を、ドラコの陶器の様に白く、小さな掌が塞いだ。そして、もう片方の手の人差し指を唇に当てて、「静かに」というジェスチャーをした。
「僕は今、ネビルの彼女なんだから‥名前を呼んではいけないだろう?」
楽しそうに笑って、そう囁くドラコに、ネビルは本気で眩暈を覚える。ドラコは、この状況を楽しんでいる。
信じられない事だけれど、自分の性別が変わってしまった事を、少しも悲観していない。普通なら、「いつまでこのままなのだろう」とか、「このまま元に戻らなかったら‥」とか、いろいろ悩んでしまう所だろうに。
「‥どうして‥君は‥‥そんなに‥」
明るく居られるの?僕のせいで、こんな事になってしまったのに‥。ドラコを見詰めるネビルの顔が、泣きそうに歪んだ。
「泣くなよ‥‥女の前で泣くなんて、紳士失格だぞ?」
茶化すようにそう言って、ドラコは臆面もなくネビルを抱き締めた。
すれ違う生徒たちが、好奇の目で二人を見ている。
「‥だって‥‥」
抱き締められた腕を、やんわりと引き剥がしながら、ネビルの声は涙で震えていた。
「大丈夫だ‥‥僕にはネビルが付いていてくれる‥‥‥もし、‥例え元に戻らなかったとしても、僕を嫁に貰ってくれるだろう?」
「何言ってるの?‥そんな馬鹿な事‥」
ネビルが驚いてドラコを凝視する。
「嫌なのか?」
間髪入れずにそう聞いたドラコに、思わずネビルは首を横に振る。責任をとる事は嫌じゃない‥けど、ドラコが元に戻らない事が嫌だ。
「だったら、問題ないだろう?」
にっこりと笑うドラコに、ネビルは困ったように頷くしかなかった。
「あれ?ネビル?」
再び、手を繋いで歩き出そうとした二人の耳に、聞き慣れた声が聞こえた。
ネビルとドラコは、一瞬びくりと肩を揺らせる。今は、あまり知り合いに会いたくない。
恐る恐る、ネビルが振り返った先に居たのは、同室の友人たち。ハリー、ロン、ディーン、シェーマスの四人だ。
ドラコは振り返らなかった。ネビルの手を握ったまま、俯く。
「‥‥や‥やぁ‥皆揃って、どうしたの?」
少し不自然な、明るい声でそう言うネビルの笑顔が、少し引き攣る。
「‥‥いや、別に‥な?」
そう言って、にやりと笑うディーンに、シェーマスも頷いて笑う。二人の視線は、ネビルとドラコの繋がれた手に釘付けになっていた。
「‥ネビル‥‥誰?その子‥」
ディーンとシェーマスとは対照的に、複雑な表情を称えたハリーが、怪訝そうにネビルに問う。ドラコとネビルの関係を知っているのは、ホグワーツでたった二人きり。ハリーとロンだけだ。そして、ドラコの嫉妬深い性格を知っているのも、当人たちとこの二人だけ。
こんな人前で、ネビルと手を繋いでいる少女に、同情にも似た視線を送っているのはロンだ。彼は専ら、ドラコの嫉妬の矛先を向けられる対象でもあった。
ハリーは少し違う見解のようで、恥ずかしがり屋で、気の小さいネビルが、ドラコにバレる恐れが多分にある場所で、堂々と女の子と手を繋いでいる事に疑念を抱いているようだった。
「‥え〜と、‥‥」
一瞬、視線をドラコに向けたネビルに、ドラコは一度頷いた。ネビルは、真っ赤になって、それから観念したように溜息を吐いた。
「ぼ‥僕の‥‥彼女‥だよ‥」
歯切れ悪く、小声になったネビルに、ドラコは堪えきれなくなって、喉の奥でクツクツ笑った。
「「「「ええっ!?」」」」
ネビルの返答に、四つの声が重なって聞こえた。
ディーンとシェーマスは、純粋に驚きの声を、ハリーとロンは、「ドラコはどうした!?ついに愛想を尽かしたのか!?」という意味の、驚きの声を、それぞれ上げた。
「うわっ僕、ネビルに先を越された!?」
「嘘っ!可愛い顔して、ネビル侮れない!!」
ぎゃあぎゃあと、喚きだしたディーンとシェーマスをよそに、ハリーとロンはネビルの腕を引っ張って、廊下の端に連れて行く。手を繋いだままのドラコも、一緒にくっついて行った。
「‥どうしちゃったの?ネビル‥マルフォイと別れたの?」
真剣な表情で、一応ネビルの横に居る女の子を気にして、小声になったハリーが問いただす。その声は、残念ながらドラコに筒抜けだった。
「‥‥うぅん、そういう訳じゃナイよ?」
本人がすぐ傍に居るのに、とんでもない!と言った様子で、ネビルは首を横に何度も振った。
「じゃぁ、どうしたのさ、‥こんな事、マルフォイにバレたら‥‥」
修羅場を想像しただけで、鳥肌が立つ!と、真っ青な顔をしてロンが大げさに首を振った。
「‥‥それは‥え〜と‥‥」
「お気遣いなく、ミスター・ウィーズリー」
困惑した表情で言い澱むネビルの声に、凛とした可愛らしい声が重なった。
耳慣れない声で名前を呼ばれたロンは、驚いて声の主‥ネビルと手を繋ぐ少女を見た。ハリーとネビルも、驚いて少女‥ドラコを凝視した。
三人の視線に晒されても、ドラコは臆した様子を見せなかった、ゆっくりと伏せていた顔を上げて、にやりと笑う。
「「‥‥!?マっ‥‥もごっ‥むぐっ‥‥」」
驚いて叫び声を上げそうになった二人の口を、ネビルとドラコの掌が塞ぐ。
「しーっ駄目っ!バラしちゃ駄目!!」
「黙れ、単細胞」
小声で、それぞれ黙っている様にと、口を塞いだ相手に詰め寄る。この場合、どっちがどっちの口を塞いだかは、想像にお任せします。(バレバレですが‥)
「ど‥‥どういう事‥なの?」
もう口を塞がれていないハリーが、困惑した表情でちらちらと横目で、少女のドラコを見ながら、ネビルに聞いた。ロンに至っては、声も出ない様子で無遠慮にドラコを凝視している。
「‥え〜と、‥‥僕が‥作るのに失敗した薬を、ドラコが飲んじゃって‥僕止めたんだけど‥」
言いながら、ネビルがだんだん項垂れて行く。そんなネビルを見上げて、ドラコがもう自分を責めるなと、繋いだ手に力を込めた。
「‥‥それで、女の子になっちゃたの?」
信じられない、と言った顔で、怪訝そうにドラコとネビルを見比べるハリー。
「‥‥うん‥」
話しながら、どんどん落ち込んでいくネビル。見ていて、ハリーの方が切なくなってくる落ち込み様だ。ハリーと同じ様に、眉を顰めてネビルを見ていたロンは、ふとネビルの隣で心底心配そうにネビルを見上げているドラコの表情に気付いた。
嫉妬深いドラコは、その気持ちに見合う深い愛情を、ネビルに向けている。ロンはその事を知っていた。
「でもさぁ、『性転換薬』って作るの凄く難しいんでしょ?ネビル良く作れたね?」
だからロンは、いつもお節介を承知で、一言も二言も饒舌になる。今だってそう、『性転換薬』なんて薬、聞いた事も無い。
「当然だろう?ネビルの調合の腕は最高だ、お前たちなんて比べものにならない」
そう言って、にっこり笑ったドラコは、これ見よがしにネビルの腕に腕を絡ませて密着する。項垂れていたネビルは、肘に当たったドラコの胸の感触に、小さな悲鳴を上げて顔を真っ赤に赤らめた。そんなネビルの様子に、ドラコだけでなくハリーとロンも笑った。
「‥‥と、言う訳でネビルは今晩帰らないので、よしなにしておけ‥‥では、ごきげんよう」
可愛らしい顔で命令口調。正体を知らなければ騙されそうな、さわやかな笑みを残して、ドラコはネビルを連れて歩き出した。
「えっ?えっ?何で?僕帰るよ??ちょっ‥ねぇ?」
腕を引かれるままに、困惑した様子で消えていくネビルの後ろ姿。
それを見送りながら、ハリーとロンは顔を見合わせる。
「‥と、いう訳で‥‥って?どういう訳?」
「‥‥‥‥さぁ?‥」
見合わせた顔のまま、合わせ鏡のような仕草で二人揃って首を傾げた。
「ねぇ、どんな子だった?ネビルのカ・ノ・ジ・ョvv」
「可愛かった?美人だった?」
そこへ、少し離れた位置から様子を見ていたディーンとシェーマスが、待ってましたとばかりに話に加わってきた。
「‥え〜と‥」
「‥‥どうだったかな?」
二人は、数秒前と同じ様に顔を見合わせて、首を傾げるしかなかった。
「あ〜‥‥ビックリしたぁ‥」
ドラコの私室に着いて、ドアを閉めた途端に、ネビルは床に座り込んでしまった。先刻、ハリーたちに運悪く出会ってしまった時のドキドキが、未だに収まっていない。一方ドラコは、部屋に入るや否や忌々しげに制服を脱ぎ出した。
「くそっ‥たかが布のクセにっ!!よくも、ネビルの前で僕に恥をっ!!許さんっ!!」
乱雑にローブを床に叩きつけ、ベルトを放り、ズボンを脱ぎ捨てた。床に放ったそれを、尚も足蹴にして地団駄を踏む。そんなドラコの様子に、ネビルは苦笑して、床に散乱している服を拾って回った。
「もぅ‥着替えておいでよ、そんな格好で暴れている方が恥でしょ?‥」
困ったように眉を寄せて、しゃがんだままでドラコを見上げた。ネビルに言われて、ようやく我に返ったのか、ドラコは少しバツが悪そうに顔を赤らめた。
「‥‥そうだな‥」
ドラコは素直にそう言って、何故かネビルの手を取ってから、バスルームへと向かった。
「‥ねぇ、ドラコ?何で僕もここに居るのかな?‥‥それに、着替え‥持って来てないよね??」
脱衣所で、服を脱ぎ出した少女のドラコの身体を直視出来ず、背を向けながらネビルがドラコに問う。
「一人にしておくと、君はまた落ち込んでしまうだろう?ネビルの泣き顔は見たくない」
「だって、それはっ!!‥‥あっ‥‥‥ご‥ごめん‥」
会話の勢いで、思わず振り返ってしまったネビルの視界に、男物の下着を付けただけの、半裸の少女の姿が映った。顔を真っ赤にして、再び背を向けたネビルに、ドラコは可笑しそうにくすくすと笑った。
それからドラコは、洗面台の鏡で自分の肢体を眺め回してみる。‥‥多少、胸が小振りだったが、まぁまぁ綺麗な身体をしていると思った。少なくとも、グレンジャーやパーキンソンくらいになら、負けない自信があった。(実際に見た事などないが‥っていうか、ドラコはそんなもの見たくも無い)
「‥良しっ‥‥ネビル、服を脱げ‥」
「はぁぁ?‥何言ってるのさ!?」
突然、訳のわからない事を言うドラコに、ネビルは思いっきり素っ頓狂な声を上げた。大体、「良し」って、何の事なのかさっぱりわからない。その上、服を脱げだなんて‥そんな要求、ネビルにはとてもじゃないが受け入れられない。
「良いから、脱げよ‥僕の服は今の僕には合わないんだ、ネビルのくらいが丁度良い‥」
そう言って、ネビルを後ろから抱き締め、耳元に唇を寄せるドラコ。ついでに、ネビルの耳元に息を吹きかけた。
「ひゃっ‥」
ビクッと身体を揺らし、ネビルは肩を竦めた。背中に当たるドラコの胸の感触に、ネビルの鼓動が早くなる。
「なぁ‥脱げよ‥‥ネビル」
聞き慣れない、少女の声に、ネビルの背筋に鳥肌が立つ。ドラコだと、わかっていても、なんだか落ち着かなくなってくる。いけない事をしているような、そんな気分になってくる。
「わかった‥から、離れて‥」
震える声でそう言って、ネビルは自分の身体に巻きついたドラコの腕を解いた。
「‥‥はい‥」
早速ローブを脱いで、後ろ向きにドラコに手渡すネビル。その表情は、ドラコには確認する事は出来なかったが、耳まで真っ赤に染まっている。きっと、顔も真っ赤に違いない。
ネビルからローブを受け取ったドラコは、素肌の上にそれを羽織ってみる。自分のものと比べて、ネビルの服は思った通り、少女のドラコにぴったりだった。
「‥思った通りだ、‥見ろよネビル、僕にぴったりだ‥‥見ろって、もう裸じゃないぞ?」
声を掛けても、一向に振り返ろうとしないネビルの前方に回り込んで、ドラコはネビルの赤い顔を見上げた。
「ほら‥凄いだろう?」
そう言って、両手を広げるドラコに、ネビルは一瞬顔を上げ、再び俯き頷いた。素肌にローブを羽織ったドラコは、確かに裸ではなかったが、剥き出しの腹と素足が覗いていて、ネビルは直視出来ない。
「‥‥ネビル、僕だ‥そんなに意識しなくても良いんだぞ?」
そんなネビルに、今度は正面から抱きついて、ドラコが笑う。
言われなくても、ネビルにだってそれくらいわかっている。しかし‥ドラコの常と違う少女の面を見る度に、ネビルは申し訳なくてドラコの顔を見れないで居た。それに、ドラコと何度も身体を重ねてはいるネビルだが、未だその行為に恥ずかしさを感じている上に、女の子に耐性が出来ていないネビルには、今のドラコの行動が何もかも、恥ずかしくて仕方が無い。
今だって、少女のドラコに抱きつかれて、心臓が痛いくらい早く動いている。
「‥‥ネビル‥可愛いな、君は‥」
自分こそ可愛らしい顔立ちになってしまったドラコが、そう言ってネビルに口付けた。
「んふっ‥‥はぁ‥」
どんどん深く、激しくなっていく口付けに、どちらからともなく、甘い声が響きだす。
(‥ヤバ‥僕もう、限界かも‥)
ネビルの腰と肩に回した腕に、力を込めてドラコは、常とは違う自分の身体に言い様の無い疼きを感じていた。
何度も角度を変えて、お互いの口内を味わい尽くした後に開放された唇から、お互いの間に唾液の糸が伝う。
その卑猥な光景を見ている二人の視点は、夢見心地に潤んでいた。
「‥‥ネビル‥やりたい‥‥今すぐ、しよう‥」
うっかりドラコのペースに嵌りかけていたネビルの思考が、ドラコの発したその一言で、一気に覚醒した。
「は?‥‥何言ってるの?」
こんな状況で、そんな事、無理に決まっているじゃないか。と、ネビルの見開かれた瞳が語っていた。
「‥‥僕は本気だ‥ネビル、僕の初めてを君にあげるから‥」
にっこりと、蕩ける様に微笑んで、ドラコが言う。
「は‥‥初めて‥って、ドラコ!?」
困惑から混乱に変わりつつある思考の中で、ネビルは何度も目を瞬かせてドラコを凝視し、耳を疑った。
「‥‥今日は、僕がネビルを受け入れる‥こんなチャンス、滅多に無いだろう?」
「‥そりゃあ‥そうだけど‥‥‥‥やっぱり、ドラコ怒ってるでしょう?僕の事‥恨んで‥」
ドラコは、ネビルの唇をキスで塞いだ。放っておくと、何かを言うと、ネビルは直ぐに深読みをして、勝手に落ち込んでしまう。本当ならば、ネビルがそんな事を考える暇が無いくらい、ベッドの上で激しく責め倒している所だ。
「‥ネビル、その話はもう無しだ‥‥僕を犯せ、今直ぐに」
唇を離したドラコは、ネビルを睨んで言い放った。自分を犯せ、と。
ベッドのスプリングが、ぎこちなく揺れる。
自分の下にドラコを組み敷いて、常とは違う立場と視点に、戸惑うネビルに、ドラコが優しく声を掛けた。
「‥‥緊張しているのか?」
「‥当たり前でしょ?‥‥初めてなんだから‥」
真っ赤な顔で、情けなく歪んだ表情のネビルが、ドラコを見下ろす。顰めた眉に、困惑の瞳に「どうしてこんな事になってしまったのか?」と書いてある。
そんなネビルに苦笑して、ドラコは優しくネビルの頬に触れた。
「誰でも初めては緊張するものなんだ‥何も考えなくても良い、好きにしろ‥」
そう言って、にっこり微笑むドラコ。
「‥‥嘘つき‥初めての時、ドラコ余裕だったじゃないか‥」
真っ赤な顔で、そう言って少し拗ねたようにネビルがドラコを睨んだ。
「‥‥覚えているのか?‥」
少し意外そうに、ドラコがネビルを見上げた。
「‥‥‥覚えてるよ‥」
憮然とドラコを見下ろして、居心地悪そうに赤い顔のままのネビルが言う。
「‥へぇ‥‥僕も誘ってやろうか?‥『優しくしてぇvv』って」
悪戯な視線を向けて、そう言ったドラコに、ネビルは噛み付くようにキスをした。
「黙ってよ‥僕も言ってあげる、『アイシテルヨ』、『キレイダヨ』、『カワイイヨ』‥‥‥すっごく恥ずかしいんだから‥後で後悔しても止めてあげない‥」
半ば自棄になって、ようやく覚悟が決まったらしいネビルは、ドラコの首筋に顔を埋め、行為を開始した。
そんなネビルに、ドラコは嬉しそうに微笑んで、ネビルのぎこちない愛撫に身を委ねた。
「はっ‥‥んくぅ‥はぁっ‥‥あっ‥」
ネビルの舌が肌の上を滑り、歯を立てる度、ドラコの口から切ない吐息が零れる。
「‥声、聞かせて‥‥殺しちゃ駄目だよ‥」
無機質に感情を抑えたネビルの声に、ドラコの背筋をゾクリとした快感が這う。それでも、ネビルの声に従わず、ドラコは声を殺し続けた。強い快感の波に、喉の奥で殺せなくなった声は、指を噛んで耐えた。自分のものではない甘い声が、恥ずかしくて仕方が無い。
「‥‥駄目だって、ドラコ‥‥止めるよ?」
やんわりとドラコを諌めて、ネビルはドラコの口元から引き離した指を、自分の口に含み舌で舐め回す。
「やっ‥ネビルっ‥‥やめっ‥」
ネビルに舌技を教え込んだのはドラコだが、ネビルのそれはとにかく上手い。指を舐められているだけで、下半身の疼きが増していく。
妙にしおらしく頭を振るドラコに、ネビルは満足そうににやりと笑った。
「ドラコ‥『カワイイヨ』‥‥いっぱい聞かせてね、ドラコの『可愛い声』‥」
にっこりと笑い、ドラコの耳元に舌を這わせるネビルの顔は、既に熱に酔っている。
ドラコの首筋、鎖骨、肩口を、余す所なく唇を這わせて、赤い花を散らしたネビルは、次いでドラコの小振りの胸に指を這わせ、徐々に掌で包み込むようにして、やわらかく揉みだす。
「あっ‥んんっ‥ネビルっ‥」
ネビルの指が、既にピンと張り詰めていた胸の突起に触れると、ドラコの身体がビクリと揺れた。
暫く指で弄ぶ様に強弱をつけ集中的にそこを弄り、ドラコの反応を楽しんでいたネビルは、自分の指の動きに合わせて快楽の喘ぎを紡ぐドラコに、満足そうに笑って、その場所に顔を埋めた。
「ああっ‥んあっ‥やっ‥あっ‥」
ネビルの舌の動きに翻弄されて、ドラコは甘い声を紡ぐ。
快楽にビクビクと揺れる身体は、次第に腰を揺らめかせ始める。ドラコの女性器は、既に快楽の液を絶えず流し続けていて、下着を濡らしている。それに気付いていて、ネビルはあえてそれを無視した。
存分にドラコの胸の突起を舌で味わった後も、腹や太腿を舌や掌で撫で回すだけで、肝心な場所に一切触れてはやらない。
「ネビルっ‥‥もっ‥虐める‥なっ‥」
喘ぎの合間に、耐え切れなくなってドラコからそう哀願した。
「‥虐めてないよ?‥僕はドラコを『愛している』だけだよ‥わからない?」
尚も意地悪く言うネビルに、ドラコの目尻に涙が浮かんだ。
「‥頼む‥‥もぅ‥入れてくれ‥」
潤んだ青い瞳に、涙を沢山溜めて、ドラコはネビルを見上げた。ネビルは、嬉しそうにくすくすと笑った。
「‥‥恥ずかしいでしょ?‥いつも、僕がどんな気持ちで居るか、少しはわかってくれた?」
優しくドラコの目尻の涙を舌で舐め取って、ネビルが悪戯な視線をドラコに向けた。それに、ドラコは何度も頷く。かなり条件反射に近いが、ネビルの気持ちは十分に満たされた。
下着を剥ぎ取り、ドラコの足を開かせて、そこをじっと見詰める。ネビルに視姦されて、ドラコは恥ずかしそうにシーツを握り締め、顔を背けた。
「‥女の子の身体って、こうなってるんだね‥‥いやらしい液がいっぱい出てる‥」
冷静に感想を述べるネビルに、ドラコは両手で耳を塞いだ。あまりの恥ずかしさに、とても聞いていられなかった。
「どっちが良い?」
ドラコの濡れた秘部に指を這わせて、ネビルが問うが、恥ずかしさで半泣きのドラコはもう聞いていない。
「‥あっ‥‥やあっ‥ああん‥はぁん‥」
十分に濡れているドラコの奥の蕾に、ネビルが指を押し当て、浅く押し込むと、ドラコの口から嬌声が上がる。
「こっちも興味があるんだけど‥‥やっぱり、こっちだよね?折角、ドラコが女の子なんだし‥」
そう言って今度は、既にヒクついていやらしい擬音を立てている、ドラコの本来無い筈の場所へと指を這わす。
「んんっ‥ネビルぅ‥もっ‥あっはん‥‥頼む‥か‥らぁ‥」
焦らすように割れ目を撫で上げて、ドラコの反応を楽しんでいるネビルに、ドラコは涙を流して哀願した。
「駄目‥いきなり入れたら痛いでしょ?‥それとも、ドラコは痛いのが好き?」
更に意地の悪いネビルの台詞に、ドラコは目を見開いてネビルを見た。熱に浮かされた表情で、愛しげに自分を見詰めるネビルの顔。ネビルを抱いている時、自分もこんな切な気な表情をしているんだろうか‥。
「良い‥痛くても、構わないから‥」
涙で滲む視界でネビルを見据え、ドラコが哀願する。
「うああぁっ‥ひぃあっ‥‥んあぁっ‥はぁ‥」
ドラコの言葉に従って、ネビルは慣らしていない場所へと、深く指を差し込んだ。ドラコの熱い内壁が、指の進入を拒んできつく絡みつく。当然、ドラコに与えられたのは、快楽とは程遠い苦痛。悲鳴にも似た声を上げ、ドラコの眉が顰められる。
「‥‥痛いでしょ?‥ドラコ、何て言うんだっけ?」
表情は笑顔を形作っているネビルの目は、笑っていない。複雑な視線で、ドラコの目を見据える。
「あっ‥‥『優しくして』‥ネビル‥」
「そう、‥『良い子』だね‥ドラコ『可愛い』‥」
今度は満足そうに瞳にも笑みを浮かべ、ドラコの中に指を埋め込んだままでネビルはドラコに何度も口付けた。
「‥抜くよ?痛いけど、我慢してね?」
ドラコの顔にキスの雨を降らせた後、ネビルは優しくそう言ってドラコの身体からゆっくりと指を引き抜いた。ドラコは身体を強張らせて、その痛みに耐えていた。
それからネビルは、ドラコの股間へと顔を埋めた。
「やっ‥そんな‥ああっ‥ネビっ‥ひあっ‥あっん‥あっ‥あぁ‥」
舌先で入り口や割れ目を舐め回し、ドラコの中まで舐め尽した。同時に、指は秘められた小さな突起を探り当て、執拗にそこを嬲った。
ドラコの腰が引っ切り無しに揺れ、甘い声が絶えず零れてはネビルを煽った。
舌で十分に愛撫を加えたそこへ、再び指をあてがうと、先刻の痛みを思い出したドラコの身体が強張った。
「ドラコ‥力を抜いて?優しくするから‥ね?」
あやす様に優しい声で言い、ドラコの頬を指で何度も撫でるネビルに、ドラコはコクリと頷いた。
「そう‥『良い子』だね、‥」
にっこりと微笑んで、ネビルの指がゆっくりとドラコの中へ挿入された。先程の様な痛みは無く、ドラコはネビルの指をすんなりと受け入れた。それから、ネビルはドラコの内部を確かめる様に指を蠢かす。指を曲げ、出し入れを繰り返す。
「あっ‥あっあ‥‥んあっぅ‥」
ドラコの嬌声にも、打って変わった快楽が色濃く含まれている。
ネビルは指を増やしながら、ドラコに苦痛を与えない様に、長い時間をかけてドラコを優しく嬲っていく。
三本目をすんなり出し入れ出来る様になった所で、ネビルはドラコの中から指を全て引き抜いた。
「‥‥あ‥あはぁぁ‥」
ドラコの口から、明らかな不満の声が上がる。
「‥‥ドラコの味‥いつもと少し違うけど、‥おいしいよ‥」
ドラコの愛液にまみれた指を、舌で舐めあげ、そんな事を言うネビルに、ドラコは真っ赤な顔で何か文句を言いたかった。けれど、言えなかった。言う言葉が見付からなかった。
「‥‥‥もう、入れても良い?」
自分を真っ赤な顔で凝視するドラコに、苦笑を浮かべたネビルが聞いた。それに、ドラコは頷いた。それを確認して、ネビルは自分のズボンの中から、張り詰めた欲望を取り出して外気に晒した。
「‥辛そう‥だな‥」
同じ男なら、何度も身体を重ねた相手なら、見ただけでそれくらいは把握出来る。
思わず言ったドラコの言葉に、ネビルは溜息を吐き出した。
「‥当然でしょ?あんなに可愛い声を聞いて‥‥僕も男だもん、ずっと我慢してたんだよ‥」
ネビルはそう言って、ドラコの身体に圧し掛かった。
「痛かったら、我慢しないで言ってね?」
最終確認のようなネビルの言葉に、ドラコは目を閉じて頷いた。
「あぁ‥早く、ネビルを感じたい‥」
こんな時まで、ドラコの台詞は恥ずかしい。思わず赤面してしまって、ネビルは深呼吸をした。こんな状況で萎えてしまったら、男として恥ずかしいし、何よりドラコに申し訳ない。
ドラコの足を高く肩に抱えあげて、ネビルは先端をドラコのヒクつく入り口にあてがう。それから、ゆっくりと腰を押し進めた。
緩慢な動きでドラコの中に埋没していく、自身の光景。熱い内壁が、包み込んで締め付けてくる感覚を、ネビルは堪能するように酷くゆっくりと腰を動かす。
「あっ‥熱っ‥ネビル‥はぁ‥熱い‥」
うわ言の様にそう言いながら、ドラコの腕がネビルの背を引き寄せた。
ネビルが半分くらいまで自身をドラコの中に埋めた時、何かに進入を阻まれた。‥先端にあたるコレは、噂に聞く、初体験の女性が痛がるという、アレだろうか?
一瞬、その先への侵入を躊躇ったネビルの腰の動きが止まる。ネビルから与えられる熱に酔っていたドラコが、不思議そうにネビルを見上げた。
「‥‥どうした?」
「いや‥‥ちょっと、ドラコ‥この先は‥痛いかもしれない‥」
心配そうにそう言って、自分を覗き込むネビルに、ドラコも直ぐに思い当たった。
「‥‥躊躇うな‥処女膜なんて気にしないで、破ってしまえばいい‥ネビルは僕の、最初の男になるんだろう?‥」
にっこりと微笑むドラコの顔は、ネビルの良く知っているドラコの顔だ。
「‥良いの?‥‥痛いよ?」
まるで経験者のように言うネビルに、ドラコは場違いに笑が込み上げてくるのを感じた。
「平気だ‥‥僕は早く、奥にネビルを感じたいよ‥」
ネビルの不安を取り除く様に、優しくその身体を抱き寄せて、ネビルの耳元に囁く。
「もう‥‥キザなんだから‥‥後で泣いても知らないよ?」
「僕を泣かす事が出来るのは、ネビルだけだ‥」
ネビルの嫌味に、真っ向から返答を返してきたドラコの背を抱いて、いつもより随分軽い身体を腰ごと抱き上げると、ネビルはドラコに自分の腰を跨がせた。
「ひぃああああっ‥ああぁっ‥‥ネビ‥ル‥‥酷っ‥こんな‥乱暴なやり方‥あっ‥」
自分の体重で、一気に最奥までネビルを咥え込まされたドラコは、悲鳴を上げて背を反らせた。痛みと圧迫感に、生理的に涙がいくつも頬を伝う。
「ほら、泣いた」
いつもなら、可愛いと言って抱き締めたくなるネビルの天使のような笑顔が、今日に限って悪魔のようにしかドラコの目に映らない。
「‥‥ネビルも十分に『鬼畜』じゃないか‥」
普段言われている中で、一番傷付く台詞を投げかけて、ドラコは未だ痙攣のようにビクビクと跳ねる身体を、完全にネビルに預けた。
「仕方ないよ‥僕は、鬼畜な人の抱き方しか知らないんだから‥ドラコのせいだよ?」
含み笑いを称えながら、楽しそうに言って、ネビルはドラコの腰を抱えたまま、暫く触れていなかったドラコの胸へと唇を寄せた。
「あっん‥ネビル‥あぁっ‥はんっ‥」
途端に背が反り返って、甘い声を紡ぎ出すドラコ。
「‥踊ってよ‥僕を‥感じたいんでしょう?」
顔を上げずにそう言って、ネビルはドラコの体中にキスをする。その度にビクビクと揺れるドラコの身体が、何度も身体の中のネビルの欲望を締め付ける。
「んあっ‥‥ネビ‥ル‥無理‥‥だっ‥動けなっ‥あっあぁ‥」
ネビルの背に回した腕も、ネビルの腰を跨ぐ足や腰にも、全く力が入らないドラコは、涙を流して鳴いた。身体中を支配する快楽を、どう処理していいのかわからない。
そんなドラコの様子を見て、ネビルはくすくすと笑う。
「可愛い‥本当に女の子なんだね、ドラコ‥‥」
ドラコの胸の突起を指の腹で擦り、摘み上げて、泣きながら快楽に抗えないドラコを見下ろし、ネビルはうっとりと囁く。
「もっ‥言うなっ‥‥あぁっ‥ネビル、‥‥早く‥動けっ‥あっ‥狂ってしま‥う‥からぁっ‥」
そう言って、泣き喚くドラコに苦笑し、ネビルは再びドラコの身体をベッドのシーツの上に優しく押し倒す。いつもは自分が言っている卑猥な台詞‥、こんないやらしい表情をしてドラコを煽っているのかと、妙に冷静な頭で考える。そして、ドラコは襲い来る激しい欲情を、理性で押さえ込んでいるのかと‥考える。今の自分がそうであるように。
「‥‥ごめんね、ドラコ‥虐めすぎちゃった‥‥あんまり可愛いものだから‥‥‥好きだよ‥」
優しくドラコに口付けて、ネビルはドラコの足を再び抱え直す。
「‥ネビル‥」
にっこりと、大好きな笑顔で「好き」だと言われて、ドラコの胸が乙女のように高鳴った。自分でも恥ずかしいくらいに、ネビルに抱かれている事に幸福感を感じていた。
「あっ‥はぁっ‥‥やっん‥ああぁっ‥ネビルっ‥あんっ‥」
ネビルの腰の律動に合わせて、惜しみない声を上げるドラコ。その声に煽られて、更に快楽を求めるネビルの身体。
わかっていた事だけれど、立場が変わっても、二人の身体の相性は最高に良い。
「ドラコ‥‥平気?痛くない?」
激しい行為とは裏腹に、優しく問うネビルの声に、ドラコは微笑んで頷く。
「‥んっ‥良いっ‥ネビルっ‥‥あっはぁ‥凄く‥熱い‥」
「そう?‥良かった‥‥ドラコの中も熱い‥よ‥‥気持ち良い‥僕もう‥‥イきそう‥」
悩ましげに眉を寄せて、囁いたネビルの言葉に、ドラコの背筋を甘い疼きが走り抜けた。
「‥出せ‥‥僕の奥に‥ネビルを沢山‥感じたい‥」
熱く柔らかい内壁でネビルの欲望を締め上げて、ドラコは妖艶に誘う。その表情に煽られて、ネビルは我慢の限界に達していた白濁の欲望を、ドラコの身体の奥へと注ぎ込んだ。
「あぁっ‥ドラコっ‥」
ドラコをきつく抱き締めて、ネビルはビクビクと身体を痙攣させて、何回かに分けて熱い迸りをドラコの中へ注ぐ。その度に、ドラコも身体をビクンと揺らせ、ネビルの身体に縋り付く。
「‥んんっあぁ‥ネビル‥‥ネビル‥熱い‥凄く‥‥良い‥」
熱で浮かされた表情の二人は、身体を繋げたままで何度も口付ける。
「愛している」
と、囁いたのはどちらからだっただろう。行為だけでは伝えきれない愛しさを、何度も言葉で、身体で、お互いに伝え合った。
恋人同士の酷く甘い、濃い時間が終わりを告げたベッドの上に、毛布でくるまれた二つの人間蛹が転がっていた。
ドラコとネビルは、初めての行為と、自分の乱れ様に、恥ずかしさのあまり顔を合わせることも出来ずに、お互いに背を向けて、頭まですっぽりと毛布に包まっていた。
毛布の下の顔は、二人とも真っ赤で、気を抜くと脳裏にフラッシュバックしてしまう、先刻までの自分の痴態を、何度も頭を振っては思考から振り払う。
溜息が漏れたのは、二人同時だった。
二人は、一瞬ビクリと肩を揺らして、思わず息を潜めてしまう。
行為の後、二人は一言も会話を交わしていなかった。
その静寂の均衡を破ったのは、ドラコだった。
「‥‥なぁ‥ネビル?」
擦れてしまっていても、明らかに自分のものでは無い、少女の声に、ドラコは自分で苦笑してしまう。これでは、今のネビルに掛けた声は、更にネビルを落ち込ませてしまっているだろう。
「‥‥‥‥何?‥」
震えた、小さな返答が帰って来て、ドラコは少し驚いた。‥無視されてしまうと思っていた。
「‥僕は‥‥その、‥‥良かった‥か?」
自分でも、なんて間抜けな問いかけだろうと思う。この期に及んで、何て色気の無い質問だろう。
「‥‥‥‥‥ドラコこそ‥‥‥どうだった‥?」
ドラコの問いには答えずに、ネビルは震えたままの声で、そう問い返す。
「ん?あぁ‥‥良かったよ‥最高の初体験だな‥」
更に色気の欠片も無い自分の台詞に、ドラコの口から自嘲気味の笑みが零れた。
「‥‥本当に?‥‥‥‥僕を軽蔑してない?」
ネビルの声の震えは、既に嗚咽に近い。
「‥‥‥ネビル?‥」
我慢できずにドラコは毛布から抜け出して、ネビルを見た。包まった毛布ごと、ネビルの身体が震えている。‥本当に泣いているのかもしれない。
「ネビル?‥顔を見せろ‥‥泣いているのか?」
ネビルに近付き、そう問いかける。
「‥‥だって‥僕‥‥狂ってた‥初めての女の子に、あんな事‥‥どうかしてる‥僕、‥自分が嫌だ‥」
とうとう泣きしゃっくりまで聞こえて来たネビルの声に、ドラコは困惑を隠せない。
「‥‥ネビル‥‥‥そんな事を言うな‥僕は、‥嬉しかったから‥‥ネビルに抱いてもらえて‥だから、ネビル‥‥泣くな‥」
毛布の上からネビルの身体を抱き締めて、ドラコは頭に浮かんだ気持ちをそのまま言葉にして吐き出した。
誘ったのは、自分。乱れ、喜んだのは、自分。ネビルが落ち込む必要は無い。
「‥僕‥‥前からおかしかったんだ、‥自分は男なのに、男の人に抱かれて、はしたなく喜んで、‥‥無理やり犯されて、嫌なのに、‥心のどこかで、喜んでいる自分が居て‥‥だから、ドラコが僕を乱暴に抱くのが嬉しくて‥‥‥僕、変態なんだ‥いつも君に酷い事を言って、嫌がったフリしてた‥本当は、喜んでる自分を知っていて、‥‥隠してた‥最低で、変態で、鬼畜で‥狂って‥」
「ネビルっ!!もう言うなっ‥!!」
淡々と自分を否定し出したネビルの言葉をこれ以上聞いていられなくなって、ドラコは怒鳴ってネビルの言葉を遮った。
ネビルのこれまでの性的発育は、決して明るいとは言い難い。ドラコと恋仲になる以前にも、それ以降にも、何度も強姦や輪姦を無理強いされて、その度に自分を「汚らわしい」と蔑んで生きてきた。その実、ネビルは決して穢れてなんかいなくて、いつだって天使のように清らかにドラコの目に映る。
男の欲情を煽るネビルの魅力は、その神々しいまでの清らかさゆえ。何度犯しても、汚しても決して堕落しない、まさに天使のような笑顔ゆえ。
ネビルは、そんな自分を理解できなくて、ゆえに好きになれなくて、ドラコが自分を愛している事実に、何年も気付こうとしなかった。
「嬉しかったんだ‥ドラコが、こんな汚らわしい僕を好きだと言ってくれて‥でも、‥‥やっぱり僕は‥」
毛布の上から自分を抱き締めるドラコの制止を無視して、ネビルは喋り続けた。
「止めろっ!言うな‥」
強引にネビルを包む毛布を引き剥がして、ドラコが必死でネビルを諌めようともがく。いつもなら、力でネビルに負ける事などないドラコも、少女の腕力では毛布を引き剥がす事すら満足に出来ない。それでも、ようやく毛布の奥にネビルの泣き顔を確認して、ドラコは安堵の溜息と共に、ネビルの身体を直接抱き締めた。
「‥‥もう、言わなくて良い‥‥悪かった‥」
ネビルの首筋に縋り付いて、そう言ったドラコの声が、泣き声になっている。
「‥‥どうして‥‥‥ドラコが‥謝るの?」
涙で濡れた声なのに、ネビルの声には感情と言うものが感じられない。
「僕が無理強いしたんだ‥僕を犯せと、強要したのは僕だ‥‥ネビルが自分を責める事なんて無い‥無くて良い‥」
「でも‥‥きっかけはどうあれ、僕はドラコに酷い事をしたよ‥‥‥強姦と変わらない‥ドラコを弄んでしまった‥‥僕、知らなかったんだ‥自分の中にあんな‥汚らわしい生き物が棲んでいたなんて‥」
「‥‥ネビル‥」
「‥‥僕は‥知らない‥‥どうやって人を抱いたら良いのか、サディスティックに弄ぶ以外に、‥‥‥人を愛する方法を知らないんだ‥おかしいよね?‥強姦と変わらない行為なのに、愛するだなんて‥」
「ネビルそれは‥‥僕が‥僕がネビルにそうしているから‥僕が君の言うように、鬼畜な人間だから‥」
「違うよ、ドラコはそれで良いんだ‥僕は嬉しいし、気持ち良いし、‥愛されてると感じられる‥‥でも、ドラコは違うでしょう?増してや、女の子なんだ‥‥優しく労わってあげなくちゃ‥‥ドラコの初めてを、僕なんかが汚してはいけなかった‥‥」
ネビルは会話の間中、一度もドラコの顔を見なかった。寝転がって、頑なに伏せた顔に零れる涙が、不思議な軌道を辿って落ちていく。
「僕‥‥君に会わせる顔がない‥いっそ、死んでしまいたいくらい‥‥‥僕は自分が嫌いになった‥‥」
止め処無く零れる涙と同じ様に、ネビルの自虐の詩も終わらない。後悔は底を無くし、堕ちていく思考は、どんどん深みに嵌っていく。既にドラコの言葉は、ネビルに届いていない。
ドラコは溜息を吐いて、ネビルの隣に横になった。ネビルの首筋に再度腕を絡ませて、顔を上げないネビルに、何度も謝罪と、「愛してる」の言葉を繰り返し伝えた。
ネビルはもう、何も言わず、ただ黙って身体を震わせていた。
何時の間にか、二人とも眠ってしまっていた。‥‥あの、激しい運動の後なのだから、無理も無い。
最初に目を覚ましたのは、ネビルだった。ドラコはまだ女の子のままで、ネビルの首筋に縋り付いた格好で寝息を立てていた。
大好きなドラコの匂いに誘発されて、思い出してしまった、常と違う彼との情交。自分がしてしまった、酷い行い。思い出している内に、再びネビルの瞳に涙が溜まり始めた。霞む視界に映るのは、ネビルのシャツを羽織った白くて華奢な少女の身体と、そこに残った暴行の痕。ネビルの眉が、苦しそうに寄せられる。
ドラコは優しい。いつだって、愚かで愚鈍な自分を寛容に包んで、許してしまう。その優しさに、溺れてはいけなかったのに。その慈悲深い愛に、甘えてはいけなかったのに。自分は愚かにも、身の内の欲望に負けてドラコを穢してしまった。
幼い頃から、何度も祖母に言い聞かされてきた筈だったのに。『どんな理由があっても、婦女子を傷付けるような事をしてはいけません。愛する人ならば、尚の事それは許されない罪なのです。』‥その教えを、理解しているつもりで居た自分。そして、その結果がこれだ。‥‥‥なんて情けない。ドラコだけではなく、お祖母さまにだって会わせる顔がない。
気付けばネビルはベッドを抜け出し、バスルームへとやって来ていた。ここになら、アレがある筈だから。
(ドラコが起きてしまう前に、素早く事を運んで終わらせよう)
ネビルが探していた物は、難なく洗面台の下の戸棚から発見できた。それもその筈。以前、持っている自分が怖くなり、ネビルがこの場所に隠していた物だった。
(後は、バスタブに水を張って‥‥それから‥)
「何をしている?」
蛇口からバスタブに向かって勢い良く流れ込む水を、ぼんやりと眺めていたネビルの背に、唐突に声が掛けられた。
バスルームの床に座り込んでいたネビルの身体が、大きくびくりと跳ねる。
「‥‥お‥お風呂‥入ろうと‥思っ‥て‥‥身体、‥ベタベタするし‥‥」
声の主に振り返らずに、ネビルはたどたどしく言葉を紡ぐ。その声は擦れ、震えている。
「‥シャワーも浴びずに、服を着たままでか?‥‥それに、見た所‥それは水だな?」
声がだんだんとネビルに近付いてくる。ネビルの身体は、カタカタと震え出し、まだ刃の部分に紙が巻いたままの、真新しい剃刀が、ネビルの手から滑り落ちて、床にカランと音を立てながら落ちた。
「髭を剃るにしては、不自然に大きな剃刀だな?‥‥‥ネビル、何度目だ?‥随分、用意が手慣れている‥‥」
床に落ちた剃刀を拾い上げ、ネビルの手の届かないバスルームの隅に投げ捨てて、ドラコは震えているネビルの身体を後ろから抱き締めた。
「ネビル、何度目なんだ?‥‥僕が知らない間に、何度自殺を図った?‥」
何も答えず、ただ震えるだけのネビルに、ドラコは再度問いかけた。
「‥‥‥‥‥ネビル、答えろ」
今度は少し、強い口調で言って、ネビルを抱き締める腕に力を込める。
「‥‥さ‥ん回‥」
自分を抱き締めるドラコの腕の強さに、密着した身体の温かさに、観念したように、ネビルが小さな呟きを吐き出した。
「‥‥今が、‥‥四度目なのか?‥本当に?」
ドラコの声に、ネビルは小さく頷いた。
(十五年間の人生で四度の自殺未遂‥多すぎる数だ‥‥僕なんて、未だに経験した事が無いと言うのに‥)
「‥‥‥‥死ぬほど、嫌だったのか?僕との事が?‥」
ドラコの問いに、ネビルは首を横に振った。
「‥‥違う‥‥僕が嫌なのは‥嫌だったのは、僕だ‥‥ドラコじゃない‥」
更に首を振って、ネビルは吐き出すように言葉を紡いだ。
「ネビル‥‥もう止めろ、僕の知らない所で、そんな事‥‥もうするな‥‥‥逝くなら僕も一緒に連れて行け‥‥僕には君と離れる気は無い‥だから、僕も一緒に、ずっと傍に居る‥」
耳元で聞く、大好きなドラコの声は、ネビルに向かって悲しい言葉を紡ぐ。一人で死ぬ事を許さないと、死ぬ時は一緒だと、悲しいくらい優しく、深くネビルの胸を抉るドラコの言葉。
「‥‥無‥理、だ‥‥ドラコ‥僕には、君を‥道連れ‥にする事なんて‥‥」
(だって、今までの僕の自殺を躊躇わせたのは、ドラコ‥‥君なんだから‥)
ネビルは力無く、頭を横に振って、涙を零した。
「出来ないなら止めろ、二度とするな‥‥僕を置いて行くな‥いつまでだって傍で君を守るから、例え冥界にだって一緒に行ってやるから‥」
ドラコは、ネビルの肩口から首を伸ばして、ネビルの頬を伝う涙に口付け、舐め取るように舌を伸ばす。何度も、ちゅっと音を立て、ネビルに優しいキスを繰り返す。
その口付けを受け止めながら、ネビルは何度も頷いて、ドラコに「ごめんなさい」と謝った。後ろから自分の腹に伸ばされた、寸足らずの袖口を無意識に握り締め、自分から身体を捻るようにして、ドラコにしがみ付いて行く。それを黙って受け止め、優しく微笑んだドラコは、キスの合間に囁いた。
「‥‥‥愛してるよ‥ネビル‥‥」
(君が死を望むなら、その前に僕を君の手で殺してから逝くと、誓って欲しい‥僕は、いつだって君の傍で‥死の瞬間でさえ、君の傍に居たいんだ‥)
「‥‥‥‥ん‥僕も‥‥僕も、好き‥ごめんね‥‥ごめんねドラコ‥僕が相手で‥ごめんね‥」
泣きながら、謝りながら、好きだと縋るネビルを、愛し気に抱きしめて、ドラコは微笑んだ。
「君だから‥好きなんだ‥‥ネビルになら、僕は殺されても良い‥‥‥愛してるんだ、ネビル‥僕の傍に居てくれ、僕が一生君を守ると誓うから‥」
いつもにも増して、饒舌にキザな台詞を紡ぐドラコに、ネビルは目を見開いてドラコを見た。大きな鳶色の瞳は、まだ涙で濡れてはいるが、その眉は苦痛に歪んではいない。
「‥‥随分物騒だけど‥‥プロポーズみたい‥で、何か‥」
ぽつりと零れたネビルの台詞に、今度はドラコが目を見開いて、ネビルを凝視する。
「‥‥‥僕は、いつでもそのつもりだったが?‥‥気付かなかったのか?」
「‥‥え?ええぇぇっ!?」
ドラコのあっさりとした告白に、ネビルから上がった声は、奇声に近かった。
「‥‥‥だって‥プロポーズって‥えぇ?‥僕たち、‥男だよ?‥‥結婚なんて‥」
ドラコを凝視して、抱き締められた身体を引き離すようにして、何度も目を瞬かせる。
「構わないじゃないか‥‥僕たちが愛し合っていれば、他に何の問題があるんだ?」
にっこりと微笑んで、ネビルの額に自分の額を付けて言い放つドラコ。その顔は、ネビルの大好きな笑顔だった。
「‥‥‥な‥い‥かも‥‥しれない‥けど‥‥でも‥」
困惑の表情で、目の前の切れ長のアイスブルーの瞳を凝視するネビル。
「‥だろ?‥‥‥それに、昔から決まっているだろう?女は処女を捧げた男と結婚するんだ‥」
そう言って、ネビルにキスをする。至近に迫ってきた大好きな笑顔に、ネビルは極自然に目を閉じて受け入れ‥‥ようとして、ドラコを押し戻して自分から引き離した。
「そういえばっ‥‥ドラコ身体っ!‥いつの間に戻ったの!?」
言いながら、記憶を辿ってみたネビルだが、ドラコがバスルームに入って来た時には、もう既に普段のドラコの声だった‥気がする。現に、今目の前に居るドラコは、正真正銘、ネビルの知っているドラコで、着ているネビルのシャツが小さすぎて不恰好だ。
「あぁ‥‥さぁ?起きたら戻ってたな‥」
良い所でキスを邪魔され、少し不機嫌になったドラコは、憮然とそう答えて、離されたネビルとの距離を再び詰める。
「か‥身体は?痛い所とか、辛い所とか、痒い所とか無い?大丈夫?」
ドラコに引き寄せられて、唇同士がくっつきそうな位置で、ネビルが心配そうにドラコを見上げる。
(‥痒い所‥‥?何だそれ?)
あんまり必死なネビルの様子に、思わずドラコは噴き出した。
「‥安心しろ、どこも痛く無いし、痒くも無い‥僕は至って健康だ‥」
本気で心配しているというのに、不謹慎にも噴き出したドラコを怪訝そうに見上げるネビル。そのネビルの顎を持ち上げて、今度こそドラコはその唇にキスをした。
「愛してるよ‥ネビル、答えは?」
「‥‥I`ll see master‥‥」
顔を赤らめて、恥ずかしそうにそう言って、今度はネビルの方からドラコに口付けた。
沢山のごめんなさいと、ありがとうを込めた、優しいキスだった。
To be continued‥‥。
反省会。
‥‥凛さん。は‥恥ずかしいですってか、長いです。そして、恥ずかしいです‥死んでも良いですか??(><#;)
うっかりドラコとネビルの受け攻めを逆転してしまいそうで、何度も直しながら書きました‥(苦笑)
挿絵の方も、恥ずかしかった‥でも、ちょっと楽しかった。怪しい趣向に嵌ってしまいそうな自分が怖い(爆)
ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます。愛してます。次もよろしくです。←姑息。
追伸:駄文のTOPの紹介文にあのフレーズを抜粋せよと言ったのは、凛お姉さんです。深月じゃありません!!(強調)
駄文担当、玉砕マスター・深月。
深月さん、お疲れ様です。恥ずかしいとか言いつつ、楽しそうだったじゃないですか(笑)さぁ、本性をお出しなさい‥(爆)
エロシーン多めで‥と言う、私の無理難題を、しっかりクリアしつつ、修羅場も多めで、とか言う更に無理な条件をサラリとクリアして下さって、ありがとう!
こんな腐った企画にお付き合いくださった、モニターの前の貴方もありがとう!続きます。そして、深月さんとドラネビさんが更に壊れます!お楽しみにぃ〜。
企画・原案担当、赤城凛。
2004・08・02 蒼向上委員会。←そんなコンビ名(!?)だったのか‥知らなかった‥(深月)←第一駄目人間発見。