この話はあくまでパラレルです。

原作の世界を愛している方は、お読みにならないで下さい。

絶対に、絶対に、絶対に、後悔します。読まないで下さい。

「あたくし、伊達に腐女子じゃないと・・・・言った筈でしてよ?」という方のみ、どうぞ。

 

 

愛するがゆえ3。〜僕らで育てる華・2(後編)〜

 

ロングボトム家に到着したドラコは、暖炉から出た瞬間に、硬直してしまった。

無駄に広いマルフォイ家と違い、一般家庭では暖炉が居間にしかないのが常だ。

・・・・・・・・・そう、ドラコはロングボトム家の居間に現れ、そこに居たネビルの祖母と、ばっちり目が合ってしまったのだ。

つい癖で、ドラコが先に出発してしまったのがいけなかった。

突然やってきた訪問者に、祖母は鋭い視線を向けて、言葉を発する事をせず、無言の圧力でドラコの言葉まで封じてしまった。

ドラコは、祖母だけでなく、その頭上・・帽子の上に居る鷲の剥製にまで睨まれて、蛇に睨まれた蛙の如く固まるしかない。

ドラコにとって、悪夢のように長い数秒間の後、ようやくネビルがやって来て、事態を収拾してくれた。

「・・・ただいま戻りました、お祖母さま・・・・・・・・紹介しますね、同級生のドラコ・マルフォイ君です」

ネビルの言葉に、祖母は険しい表情のまま、ドラコを一瞥した。

「・・も・・・申し遅れました・・・・ドラコ・マルフォイです・・・・はじめまして」

祖母の険しい視線に、たじろぎながらドラコは辛うじて失礼にならない態度で、そう自己紹介をした。

「ごめんね、・・・お祖母様、人見知りするんだ・・」

フォローするようにドラコにそう耳打ちしたネビルに、ドラコは内心(・・・人見知りって、あんなに敵意をむき出しにするものなのか!?)と思ったが、心の中だけに留めておいた。

 

「・・・・・ネビル、大切な話とは何なのですか?学校を休んで帰省するくらいですから、それなりに重要な話なのでしょうね?」

ドラコの存在を一切無視して、祖母はネビルにそう言った。

ネビルは、神妙な顔で頷いた。

「そうですか・・・・・立ち話というのも、そちらの方に失礼ですから・・・お掛けなさい」

ドラコに向けた視線と言葉には、やっぱり鋭く棘が仕込まれていて、ドラコは居心地悪い事この上無かった。

祖母の態度がこれ程までに邪険な事の要因の一端に、少なからず「マルフォイ」という家名が影響を及ぼしているのは言うまでも無い。

10年以上前・・・・ドラコたちが生まれる前に、世間には公表されて居ない、「死食い人」という過激派グループがいた。

そこへ属している人間の大半が同性愛者で、中でもリーダー格だったヴォルデモート卿という男が、とんでもない奴だった。

自分の愛を相手に押し付けるその手段は、常軌を逸しまくっていて、手に負えず、彼の名前は、魔法省のブラックリストの常に上位に位置していた。

魔法省の中に「闇払い」という役職がある。神秘部の中にあるその部署は、元来は闇の魔術を悪用する魔法使いを狩るのが仕事だが、当時彼らの仕事の大半は「死食い人」の逮捕に費やされていた。しかし、男性の闇払いは、追い詰められた死食い人に逆に手篭めにされてしまう事件が後を絶たなかった。

ネビルの両親はその、闇払いの仕事をしていた。

そして、ドラコの父ルシウスは「死食い人」だった。

事件が起こったのは、14年前。

当時ヴォルデモート卿のターゲットだったのは、ハリーの父ジェームズ・ポッター。リリーと結婚し、ハリーを授かった幸せな家庭に、ある日突然単身乗り込んでいったヴォルデモート卿は、あろう事か身勝手な無理心中をハリーやリリー諸共引き起こしたのだ。生き残ったのは、幼いハリーだけだ。

当時既に死食い人を卒業していたルシウスをはじめ、多くの元死食い人が、ヴォルデモート卿の一途な思いに賛同し、妻子を顧みずに男色へと走った。

そして、各地で起こった大惨事の数々。今でも裏の歴史上の汚点として語り継がれているその渦中で、ネビルの父もまた被害者となった。

数人の死食い人に輪姦され、失意の果てに狂った。そして、その光景を目の当たりにしていた夫人も、当然の如く狂ってしまった。

ルシウスは、後にその時の事を深く反省し、全てを告白し5年間刑務所に服役した。

表向き、彼の身は潔白になっている。

しかし、当時の事を良く知る被害者家族にしてみれば、彼は憎むべき人間に他ならなかった。

裏の歴史の事は、ごく一部の人間しか知らない。

間接的に当事者であるドラコとネビルだって、知らない。

故に、ドラコには、ネビルの祖母の敵意の視線の意味を知る由が無い。

 

「・・・・・では、聞きましょう・・・大切な話・・とやらを・・・」

2人が向かいの椅子に座った事を視線で確認し、祖母はそう言ってネビルに話を促した。

ネビルは、不安気に一度ドラコを見詰めてから、意を決した表情で話を始めた。

「お祖母様・・・・・あの、僕・・・・・・結婚したい人が居るんです」

ネビルの言葉に、祖母の眉が片方だけ上がる。しかし、言葉は何も発さなかった。

「それで、・・・その・・・僕は、・・・・・・その人との間に、子供を作ってしまいました・・・」

祖母の鋭い視線に晒されながら、ネビルは怒られる事を予期した子供の様に怯えた表情でそう言い切った。

祖母の表情は、眼に見えて怒りに歪んでいた。「学生時代に過ちを起こすなと、あれ程言っておいたのに!!貴方ときたら!!!」と、怒鳴り声が今にも聞こえてきそうだ。

怒鳴られるのを待っているのか、ネビルは目を硬く瞑って俯き、迫り来る恐怖に肩を小刻みに震わせていた。

「・・・・・・・相手は誰です?」

祖母は怒鳴る事はせず、怒りを押し殺した声でネビルに聞いた。

ネビルは俯いていた顔を上げて、祖母を見て、それからドラコへと視線を巡らした。

ドラコは無言で頷いた。

ネビルはそれに頷き返して、祖母に向き直る。

「・・・・・・ドラコ・マルフォイ・・・・彼です」

祖母を見据えたままそう言って、ネビルはドラコの腕を掴み、少しだけ自分に引き寄せた。

当然の事ながら、祖母は絶句した。

マルフォイ家でも体験した、居心地の悪い沈黙の中、気付けばドラコとネビルは手を繋いでいた。

 

「・・・・・・どうやって、そんな突拍子も無い事をしでかしたのです?」

ようやく頭の中でネビルの言葉を理解したのか、祖母が沈黙を破った。

ネビルは、事の顛末を一生懸命に説明した。

ドラコとの馴初めも、その前にあった忌まわしい出来事も、包み隠さずに、勿論春の一件の事まで全てを語った。

会った時から、祖母がドラコを快く思っていない事を薄々気付いていたネビルは、自分がどんなにドラコを愛しているか、どんなにドラコを必要としているか、一生懸命に話した。

全てを一気に話し終わって、ネビルが意図的に外していた視線を祖母へと戻すと、祖母の肩が怒りに震えていた。

縋るように傍らのドラコを見上げると、ドラコは青い顔で少し引き攣った表情をして、祖母から視線を外せずに居るようだ。

人間、怖いもの見たさと言う厄介な感情は、得てして抑えられないように出来ている。

ネビルもドラコにならって祖母を見た。

繋いだ手に力を込めて、祖母が発する怒鳴り声に備えて、逃げ出したい衝動を理性で必死に抑えていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・た」

「「・・・・え?」」

数十秒の間が空いて、祖母が発した言葉に2人は我が耳を疑った。

てっきり浴びせられるのは、罵声だとばかり思っていた耳に届いた、思ってもみない言葉に頭が全く付いていっていない。

間抜けな声で揃って聞き返した2人に、祖母はもう一度はっきりと同じ言葉を紡いだ。

「でかしました!!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうして??

ドラコとネビルの頭に?マークがいくつも浮かぶ。

今までの展開を踏まえて、どうして祖母の口からそんな台詞が出たのか、さっぱりわからない。

「2人とも!結婚でも、出産でも、何でもお好きなようになさい!!」

対照的に、先刻までとは180度違う態度に変わった祖母は、笑顔でそんな事を言った。

「・・・・・・・・あの、・・・・・・・・お祖母様????」

おずおずとネビルが彼女に声をかけた。

当事者でありながら、この場の状況を全く理解できていないのは、酷く居心地が悪いものだった。

しかし、彼女は聞いていないのか、「これで、あの忌まわしいルシウス・マルフォイの鼻を開かす事が出来ますわ!!」等と、1人喚起の渦中に身を置いていた。

「・・・・・・・・・どうしちゃったのかなぁ?」

困ったようにネビルはドラコにそう聞いた。

「・・・・・・・・・・・・・・・さぁ?」

ドラコは曖昧な返事しか返せなかった。

こうして、2人の心労の種は、やけにあっさりと解決した。

 

 

 

 

「・・・・・終わったぁ〜!!!」

ネビルはそう言って、ふかふかのベッドの上にダイブした。

ここは、マルフォイ家の客間。

あの後、ナルシッサとの約束通りに祖母を連れてマルフォイ家へとやってきたネビルたち。新しく家族になる者たちが、仲良く食卓を囲んだ。

それから、ルシウスがスネイプへと梟便を送り、ネビルとドラコは一晩ここへ泊まる事になったのだった。

「・・・・・・おい、制服が皺になるぞ?」

子供みたいにベッドの上で伸びをしながら転がっているネビルに、苦笑してドラコはそう言った。

「・・・・・だってぇ〜・・・緊張しちゃったんだもん・・・」

寝転がったままそう言って、ネビルは目を閉じていた。・・・このまま寝入ってしまいそうだ。

「ネビル・・・駄目だって言ってるだろう?」

ベッドの上に肩膝を乗せ、両腕をつき、ネビルの上に覆いかぶさりながら、ドラコはそう言いながらネビルを見下ろした。

「・・・・・・・・・・だって僕、着替え持って来てないよ」

至近にあるドラコの顔を見上げながら、ネビルはそう言ってはにかんだ。

その甘えるような視線に、微笑みながら、ドラコはネビルにキスをした。

「着替えなら、僕の服を着たら良いだろう?・・・・お望みなら、服を脱がす所から僕がしてやっても良いぞ?」

唇を離して、そんな事を言い笑うドラコ。

ネビルはうっとりと視界にドラコの顔を捉えながら、鳶色の綺麗な瞳を細めて笑った。

「・・・・・甘えついでに、マッサージも追加してもらえると嬉しいんだけど・・・・・・駄目かな?」

甘えた仕草でドラコの首筋に腕を絡めて、妖艶に誘うネビル。

一昨晩の行為の記憶が新しい所に、その台詞と仕草は、あっと言う間にドラコの思考を支配した。

「・・・・勿論、スペシャルコースでおもてなしだな・・・」

妖しい笑みで、そう答えたドラコに、ネビルは楽しそうにくすくす笑った。

 

「・・・・・・・・・・・あっ・・・・ん、ドラコっ・・・・そこっ・・やっ・・・」

灯りの消えた部屋の中に、ネビルの甘い声が響く。

空気は甘い湿り気を帯びて、2人の間に淫靡な空間を作り出していた。

「・・・・・嘘はいけないな?・・・・ホラ、ネビルのここは・・・嫌だって言ってない・・」

ネビルの身体に覆いかぶさったドラコは、片手だけでネビルの身体を絶頂近くへと追いやっていた。

空いた方の手でネビルの頭を抱き、片手を忙しなく素肌へと滑らせていく。

肝心な場所には殆ど手を触れていないというのに、ネビルの身体は熱を増し、腰をくねらせる。

先ほどネビルが嫌がった場所・・・背筋を優しいタッチで指で辿りながら、ドラコは楽しそうにくすくすと笑う。

意外な場所にネビルの性感を見つけ、悪戯心に火がついたようだ。

「あぁんっ・・・駄目って・・・・・言ってるじゃなっ・・・やあんっ・・・・・もっ・・・お願い・・・・・やめっ・・・」

触れるか触れないか、と言う場所を行き来するドラコの指先。

その微妙な刺激に、ネビルの身体は過剰に反応する。

涙目になって、嫌々をしながら、快楽に喘ぐ様は絶景。

ドラコの欲情を酷く刺激する。

窓から差し込む月明かりに晒されたその姿は、美しすぎて霞みそうだった。

「・・マッサージしろと言ったのは、ネビルだろ?」

少し意地悪く言ったドラコに、息の上がったネビルは答えられなかった。

ドラコの指先に翻弄されて、触れられても居ない場所が、開放を求めて疼いて止まない。

「あっ・・あぁっ・・・もっ・・・ほんとにぃ・・・やめってぇっ・・・・・んはっああぁっ・・・」

切なく鳴いて、ネビルが果てた。

ドラコに直接触れられていない場所から、白濁の蜜が溢れ出す。

「・・・・・・・いやらしいな、触っても居ないのに・・・こんなになって」

耳元で囁かれたドラコの台詞に、ネビルは耳を塞ぎたかった。けれど、射精後の倦怠感が襲ってきて、そんな事ですら息が上がってままならない。

「・・・・・・・・・いじわる・・・・」

ネビルはそう言って、拗ねたようにドラコの胸に顔を埋める。

ドラコは苦笑を吐き出しながら、愛しいその身体を抱き寄せた。

 

「・・・・・ネビルがあんまり可愛い声を出すからいけないんだ・・・僕だって、触っても居ないのに・・・・もぅ、こんなになってる・・・」

抱き寄せたネビルの腰に、自分の腰を押し付けて、ドラコはネビルの耳元に甘い言葉を囁いた。

服の上からでもわかる、ドラコの熱い猛り。

知らずネビルの喉がゴクリと鳴った。

「・・・・・・・・・・・・・口で・・・してあげようか?」

熱に酔った視線で、そんな事を言う口が、自分でも信じられない。

けれど、快楽を知っているネビルの身体は、言う事を聞かない。

「・・・・お願いしたいが・・・無理はしなくて良い・・・・無理にとは言わない・・」

少しネビルを気遣って、ドラコはそう言った。

春のあの事件以来、ネビルが口でドラコに奉仕した事は無い。

抱き合う時は、スタンダードに行為に及んでいた。少しでも、あの時の記憶を呼び起こさせる行為は、極力ドラコが避けていたから。

「・・平気だよ・・・・・ドラコだって、気持ち良くなりたいでしょう?」

そう言って、ネビルの方からドラコに熱烈なキスをした。

ドラコの頭を両腕に掻き抱くようにして、深く交わる唇。

長いキスの間に、ネビルは器用にドラコの身体を自分の下に組み敷いた。

たっぷりと互いの口内を味わってから離れていく唇。それを惜しむように繋がった唾液の糸が、切なく月の光に光って消えた。

ネビルの頭が、ドラコの下半身へと降りていく。

服の中から、壊れ物の様に取り出されたソレ。ネビルのそんな仕草がおかしくて、ドラコの口の端に笑みが浮かんだ。

ネビルは、初めて見るものでもないだろうソレを、まじまじと見詰めて、「・・・熱い」と呟いた。

いつも、ドラコがネビルの中で果てた時にネビルが言う台詞。

そのたった一言で、ドラコの熱は体積を増した。

「・・・・まだ何もして無いよ?」

ネビルはくすくすと笑って、その先端へとキスをした。

それから、まるでドラコに見せ付けるような仕草で、舌を這わせていく。

巧みなその舌技に、ドラコのソレはどんどん熱を増し、大きさを増した。

ネビルの唇の中に誘い込まれるように含まれた時には、もう既に限界が近い程だった。

可愛らしい唇から出し入れされる、猛ったグロテスクな塊。

その絶妙で淫猥な取り合わせに、ドラコの目は釘付けになった。

くちゅくちゅ、ぴちゃぴちゃと、いやらしい水音が、酷く耳についた。

ドラコが快楽に負けてしまうのに、そう時間は要さない。

あっと言う間に登りきった欲情は、あっけなく弾けてネビルの口内を犯した。

 

突然放たれた粘つく液体を、無理やり喉の奥へと嚥下して、ネビルはドラコを咥えたままで大きくむせた。

それから、唾液と精液にまみれ、力を失ったモノがネビルの唇から、ずるりと這い出てきた。

「・・・・・・早いよぉ・・・・・・もう少し、遊ばせてくれても良かったのに・・・」

恨めしそうにそう言って、ドラコの精液の残りを口の端に付けたネビルが、ドラコを見上げて睨んだ。

「・・・・僕の身体で、遊ぶなよ・・」

ネビルの発言があんまりだったので、謝るより先にドラコの口から悪態がついて出た。

「・・・・・・・・だって・・・・」

尚もネビルは残念そうに言って、ドラコの腰から顔を離さなかった。

「・・・・もう良いから・・・・・・・・・・・・拗ねるなよ、・・・・・ネビル?」

ネビルの身体を、抱えあげるように抱き寄せて、ドラコは口の端に残っていた精液を、指で拭ってやった。

「・・・・・・・・ドラコ、いつから早漏になったの?」

恨めしい視線で、そんな事を言ったネビル。

この言葉は、少し・・・・いや、かなり、聞き捨てならない。

「・・・・・僕が早漏なら、ネビルは上に大がつくだろう?」

困ったような、怒ったような、曖昧な表情でそう言って、ドラコはネビルを見据えた。

「僕は良いの!・・・・・・・ドラコに、もっと気持ち良くなってもらいたかったのに・・・」

拗ねた表情のままネビルはそう言って、ドラコの指に付いていた精液の残りを舌で舐め上げた。

今夜のネビルは、珍しく積極的だ。

熱を開放したばかりだと言うのに、ドラコの身体は既に疼き始めて仕方が無い。

「・・・・可愛い事を言うな・・・・・・もっと酷くしたくなるだろう?」

ドラコは抑えきれなくなった欲情を、ネビルの耳へと吹き込んで、耳たぶを舌で愛撫する。

「ひゃっあっ・・・・・・・やんっ・・・ドラコ、・・・・して、酷くして良いから、・・・・・・・もっと、愛して・・・」

喘ぎ声に乗せた、ネビルの哀願。

ドラコはにやりと笑いながら頷いて、ネビルの身体に容赦無く圧し掛かっていった。

 

 

 

翌朝、日が完全に昇ってしまう前に、ネビルは目を覚ました。

昨夜の甘い余韻が、未だ部屋の中を支配している。

朝日に照らされたドラコの顔は、幸せそうだった。

自然とネビルの顔も笑顔になった。けれどそれは、悲しみを滲ませた儚い笑みだった。

ドラコの裸の胸に頭を寄せて、ネビルは小さな声で謝罪を唱える。

「・・・・・・・ドラコ、ごめんね・・・」

目尻から零れ、頬からシーツへと伝う透明な雫は、中々止まらなかった。

震える肩を抱き寄せてくれるドラコは、未だ夢の中。

それを知っていたネビルは、誰に憚る事無く思い切り泣いた。

互いの親に結婚を許してもらった者にしては、場違いな涙だった。

ドラコを起さない様にと、声を殺す事に神経を尖らせていたネビルは、頭上でドラコの瞳が朝日に輝いている事に気付かなかった。

泣いているネビルに悟られぬ様、瞼を開けたまま眠ったフリをして、ドラコは眉根を寄せていた。

ネビルがどうして泣いているのか、わからない・・・・いや、知っている様な気がする。でも、・・・・やっぱり何故だかわからない。

泣いている伴侶を前にして、ドラコは何もしてあげられなかった。

ただ、自分が眠っていると信じ込んで涙を流しているネビルを、静かに傍観する事しか出来ないで居た。

 

随分前からお互いに起きていたにも拘らず、2人は6時半になるまでお互いに眠ったフリをして過ごした。

とても奇妙な時間だった。

「・・・・・おはよ、よく眠れた?」

明らかに泣きはらして赤くなった目で、起きだしたネビルはドラコにそう言った。

「・・・あぁ・・・・ネビルは?身体・・・辛くないか?」

にっこりと笑い、ネビルの裸の身体を抱き寄せて、ドラコは耳元へと甘く囁く。

「・・・・・・・・ん・・・・平気」

ネビルは少し赤い顔でそう答え、恥ずかしそうにドラコの胸に顔を埋めてしまった。

1時間程前も、同じ体勢で居た2人。思う所は同じだったと思う。

ドラコはその時に出来なかった事・・・ネビルを力いっぱい抱き締めた。

「・・・・・・苦しいよ・・」

身を捩り、肩を竦めて、ネビルはドラコにそう言った。

儚いくらい笑顔だ。

「・・・愛しているよ・・・」

ドラコは、伝えきれない切なさも、愛しさも、全てを込めてそう囁いた。

 

それからシャワーを浴び、制服に着替えて、居間へと出て行った2人を、マルフォイ夫妻が笑顔で出迎えた。

そして、昨夜と同じ様に皆で食卓を囲んで朝食を食べた。(ネビルの祖母は、昨夜の内に帰っていたので不在だったが・・。)

「夏休みになったら、出産の準備をしましょうね」

別れ際、ナルシッサは笑顔でそう言って、2人を見送った。

「「・・・・・はい・・・」」

少し赤面しながらも、ネビルとドラコはその言葉に頷いた。

「・・・・くれぐれも、身体に気を付けるんだぞ」

次いで言われたルシウスの言葉に、ドラコは言いようの無い気色悪さを感じてしまった。

今更ながらに、自分がマルフォイ家の跡継ぎを身篭ったのだと実感せざるを得ない。

「それでは、いってまいります。お義母様、お義父様、夏休みまで、お元気で」

ネビルは行儀良く夫妻に挨拶をした。

ドラコは、先刻のショックから未だに立ち直れず、眉を顰めていたが、ネビルにならって一言、「いってきます」とだけ言った。

そして2人は、ホグワーツへと帰ってきた。

 

「え〜と、・・・まずは、どこへ報告したら良いのかな?」

ドラコの部屋に戻ったネビルは小首を傾げて、ドラコに問いを投げかけた。

・・・・・この場合、校長先生か、スネイプ教授か・・・・・はたまた、マダムポンフリーか・・・・確かに迷ってしまう所だ。

「・・・・・取り合えず・・スネイプ先生の所・・・か?」

両親へと挨拶して来いと言ったのも、昨日ルシウスからの手紙を受け取ったのもスネイプなので、この選択は妥当だと言える。

ドラコの言葉に、ネビルも頷いて、2人は部屋を出た。

午前の授業が始まっている時間なので、城の中は閑散としていた。

なので2人は、誰に憚ることも無く並んで歩いた。

スリザリン寮から、スネイプの研究室はさして離れていなかったので、直ぐに2人は目的地へと辿り着く。

ドラコがドアを3回ノックすると、直ぐに部屋の扉が開いた。

「・・・・・遅かったな」

中に居たスネイプは、扉の外に2人の姿を確認し、睨みつめるような視線を投げて、そう言った。

「・・すみません」

反射的にドラコは謝っていた。

「・・・ごめんなさい」

次いで、ネビルも謝った。

「・・・・・・・・・まぁ良い・・・・ついてきたまえ」

そんな2人を一瞥し、スネイプは2人の横をすり抜けて廊下に躍り出て歩き出した。

言われた通り、2人はその後をついていく。

そして辿り着いたのは、校長室の前。

スネイプの背中で、ドラコとネビルは視線を交わし、無意識に身体を寄せ合った。

2人とも、校長室に入るのは、これが初めてだった。

 

扉が開いて、スネイプが中に入って行く。2人は緊張しながら、その後に続いた。

「父上!?」

「お義父様!?」

そして、2人同時に声をあげた。

校長室の中には、ついさっき別れたばかりのルシウスが居たのだ。

「ほっほ・・・・ルシウス、教育が良いの・・・もうネビルに「父」と呼ばせているのか?」

にこにこと無邪気な老人の声が聞こえて、2人は同時に声のした方に視線を向ける。丁度、奥へと続く部屋の階段からダンブルドアが降りてきている最中だった。

何でもお見通しの賢者様は、既に2人の身に起きた事を知っているようだ。

「えぇ、ドラコには勿体無いくらいの可愛らしい息子です」

ルシウスは何気にドラコに対して酷い台詞を吐きながら、陽気にダンブルドアへと言葉を返した。

「あら、校長先生・・・・ドラコ君も私の事を「祖母」と呼んでくださいますわよ?」

今度は背後から、聞き慣れた声が聞こえてきて、ドラコとネビルは入ってきたばかりの扉を振り返る。

そこには、祖母とマダムポンフリー、そしてマクゴナガルが連れ立って立って居た。

「「お祖母様・・・」」

2人は同時に呟いていた。

「・・・・・・役者が揃ったの・・・では、始めるとしよう・・」

階段を降りきったダンブルドアがそう言って、ドラコとネビルが予期していなかった話し合いが始まった。

・・・・・と言っても、結果だけ言うと、2人の関係や出産の事を他言しない事、と言う事と、来学期から週末の育児帰省は許されるが、授業は休まない様に、という感じの内容だった。

 

夏休みに入ったら、子供を生む。

 

数日前からわかっていた事実が、ようやくリアリティーを伴って二人の中で実感できる様になってきた。

夏休みまであと半月。

実質、2人に残された恋人時間。

その時間を「謳歌しなさい」とダンブルドアは2人に言った。

けれど、その日を境に一週間、ドラコはネビルに会えなくなった・・・・。

 

To be continued‥‥。

 

恒例のチヨリンさん会話。

千夜「・・・・・・・・パラレルってこういう事だったんすか?」

凛「・・・・だったんすよ?」

千夜「・・○―リング女史に殺されたりしないすかね?」

凛「読んでないでしょう?」

千夜「いや、そうだとは思うけどね・・・・・エライ書かれ様ですよ、ヴォルディ・・・」

凛「・・・・ヴォルディ!!(爆笑)」

2004・10・12 蒼向上委員会

 

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