真夜中の訪問者
息苦しさを感じて、ネビルは目を覚ました。
苦しさの中に、甘さを感じる、おかしな感覚だった。
ネビルは、けだるい身体を起こして、辺りを見回す。
別段、普段と変わった様子は無い。自分のベッドの四方には、きちんとカーテンが閉まっていて、深夜特有の耳鳴りがしそうな静寂だけがある。
しかし、ネビルの胸は、理由のわからない違和感を感じていた。
(何だろう?‥何がって訳じゃないんだけど、いつもと違うような‥??)
多少、寝ぼけが混じっている頭で、ぼんやりとそんな事を考えてみたが、当然思考がまとまらない。
‥‥寝てしまおう。
ネビルは、小さな欠伸をしてから、再びベッドに横になる。
その直後、ネビルは違和感の正体に気が付いた。
ネビルが横たわったすぐ傍に、ネビルのものとは違う息遣いが聞こえた。暗闇の中、その息遣いの主と、目が合った。
「うわあああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ネビルの闇を切り裂くような悲鳴が、狭い空間で反響した。
再び起き上がり、布団ごと向こうへ押しやりながら、ネビルはベッドから逃げようともがく。
暗闇の中から伸びてきた腕が、ネビルの腕を掴んで引き寄せたが、ネビルはそれを力の限り振り払った。
「馬鹿!!馬鹿!!‥どうしてこんな所に居るのさ!!」
手近にあったクッションを掴み、ネビルは暗闇に居る訪問者へと何度も打ちつけた。
「コラ、ネビル‥痛いだろう?」
そう言って、振り下ろされてくるネビルの腕とクッションを難なく阻止し、ネビルの身体を抱き寄せたのは、この場所に居てはいけない人物。ドラコ・マルフォイだった。
「やだっ!離してっ!!悪趣味!!変態!!」
尚も、腕の中でもがき、拒絶の言葉を紡ぐ恋人の額に、ドラコは唇を寄せた。そして、そのままベッドの上へと押し倒す。
「離してっ!帰ってよ!!‥‥ひぁっ!何すんの!?‥‥もう!馬鹿!!」
夜中に、ベッドの上で、恋人と二人きり。
その状況を、ネビルは認めたくは無かった。流されてしまいそうな自分を、一生懸命に押し止める。
「‥‥ネビル‥」
至近で悩ましげに見詰め、ドラコがたった一言名前を呼ぶと、ネビルの抵抗は止んだ。
「そんなに騒ぐと、ポッターたちが起きるぞ?」
そう言って微笑むドラコを、ネビルは涙の滲んだ真っ赤な顔で睨んだ。
こんな時間に、こんな場所で、恋人と見詰め合っているなんて、不謹慎だ。しかもドラコは不法侵入で、本来ならば追い出さなければいけないのに‥。頭ではわかっていても、抗えない自分が悔しかった。
「‥‥防音の呪文、かけているくせに‥」
消化しきれない悔しさが滲む声で、ネビルは小さく悪態を吐いた。
「‥‥知っていたのか?」
意外そうなドラコの声に、ネビルは怒った様に眉を寄せた。
「‥‥君にぬかりがあるとは思えないし、もし何もしていなかったのなら、悲鳴を上げる前に僕の口を塞いだでしょう?」
馬鹿にしないでよ!と、頬をふくらますネビルに、ドラコは笑顔を向けた。ネビルが、自分の事を把握してくれている事が、嬉しいらしい。
「‥‥嬉しいよ‥」
機嫌良く、ネビルの耳元に、そんな囁きを吹き込む。
「‥‥何しに来たの?」
そんなドラコを極力無視しながら、ネビルは勤めて不機嫌にそう聞いた。
「‥‥‥知っているだろう?‥」
ネビルの頬に手を添えて、優しく覗き込みながら、ドラコの口の端がいやらしく捲れ上がった。
「‥‥っ!!‥し‥知らない‥‥用が無いなら、帰ってよ‥」
一瞬、ドラコの瞳に魅了されそうになりながらも、ネビルは頑なに精一杯の拒絶を込めて、自分に圧し掛かるドラコの身体を突っぱねた。
早くここからドラコを追い出さなければ‥。今ここで、流されてしまう訳にはいかない。
この場所は、‥このベッドの上には、彼に知られてはいけない秘密があった。
「つれないな‥‥‥折角、逢いに来たのに、ネビルは嬉しくないのか?」
溜息交じりのドラコの声が、少し寂しそうにネビルの鼓膜を振るわせる。
「‥そ‥‥んな事、無いけど‥‥でも、やっぱり‥まずいよ、ドラコがここに居ちゃいけないでしょう?」
確かに、折角危険を承知で忍んで来てくれた恋人に対して、いささか態度が冷たすぎたかもしれない。少し罪悪感を感じてしまって、ネビルの語気が弱くなる。
「‥‥まぁな、‥でも、逢いたかったんだよ‥ネビル、君に‥‥‥嫌か?」
真っ直ぐな目で見詰められて、ネビルは口をぱくぱくさせて、視線を泳がせる。それから、観念した様に小さく息を吐き出した。
「‥‥‥ドラコ‥」
体温の低いドラコの頬にそっと指を添えて、ネビルはドラコを見詰めた。ネビルの大好きなアイスブルーの一双の瞳が、嬉しそうに細められる。
そのまま、口付けをしてこようとしたドラコの唇を、ネビルの掌が阻んだ。
「駄ぁ〜目!」
少しだけ、良い雰囲気になりかけていた所に、ネビルが水を差した。どうあっても、ドラコの目的を邪魔するつもりらしい。
口を塞がれているので、声には出せずに、ドラコの瞳が「何故?」とネビルに問いかける。
ネビルはその視線に、静かに首を横に振った。本気でドラコを拒絶するつもりなのか、ネビルの視線は数秒前と打って変わって険しい。
ドラコの瞳からも、笑みが消えた。怒った様な、悲しんでいる様な、そんな顔でネビルを見詰める。
「帰って‥‥こんなの、駄目だよ‥今、何個規則を破っているのか、わかってる?‥‥」
優しく、諭すようなネビルの声に答えたのは、冷たく、怒りを宿したドラコの声だった。
「それがどうした?‥僕はネビルを抱きに来たんだ、‥嫌だなんて言わせない‥」
自分の口を塞いでいた、ネビルの白くて細い指。その掌の手首を掴んで、ドラコはネビルの指に歯を立てた。ビクリと、ネビルの身体が強張るのを見て、淫猥に笑い、ネビルの目の前で、ワザといやらしい仕草で、丹念に指を舐め上げていく。
「‥‥ドラコっ!やめてっ!!」
その、あまりに卑猥な光景と感触に、ネビルの瞳が見開かれて、頬に朱がさす。
一生懸命に、ドラコの手を引き離そうとするネビルだったが、力の差は歴然で、ドラコの手はビクともしない。
「ヤらせろよ、ネビル‥‥僕に恥をかかせる気か?」
ドラコは、普段とは打って変わった荒い口調で、優しさの欠片も無い冷たい目で、ネビルを見据える。強引にネビルの両腕を、頭上で拘束し、手近にあった紐で括った。
「やっ‥嫌だ‥止めてよ!!ドラコっ!‥嫌っ!!」
「僕を拒むな‥」
本気で拒絶するネビルに、余裕の無い表情でそう言ったドラコは、ネビルの顎を捕まえて噛み付くようにキスをした。強引に舌を進入させて、ネビルの口内を犯す。
ネビルは苦しげに眉を寄せて、お世辞にも楽しんでいるとは言い難い。その表情が、ドラコの嗜虐心を煽った。
どんなに口内を弄っても、反応を返さないネビルに焦れて、ドラコは乱暴にネビルの夜着をたくし上げた。頭上まで、無理やりに引き上げられた布は、縛られているネビルの腕を更に拘束し、身動きを封じる。
露わになったネビルの白い肌に、ドラコは顔を寄せていく。歯形が残るほどに強く噛み、吸い上げ、ネビルの肌はあっと言う間にドラコの所有印で赤く染まる。
「くっ‥うあっ‥‥痛っ‥んんっ‥あっぅ‥」
ネビルの口から漏れるのは、快楽に彩られた喘ぎではなく、苦痛に満ちた呻き声。必死で押し殺そうと、唇を噛んだのか、何時の間にかネビルの唇が血で染まっていた。気丈にも、涙は流していない。瞳に、溢れんばかりの雫を湛えて、必死で耐えている。その事が、更に深くドラコの思考を堕としていった。
「やぁっ‥ひぃっ‥‥嫌っ‥止めてっ‥‥ドラコっ‥も‥いやあぁぁっ‥」
乱暴な愛撫は更に激しさを増し、ネビルの口から堪えきれない悲鳴が零れ出す。
「‥嫌だという割には、君の身体は満更でもない様だが?」
ワザと意地悪く言うドラコに、ネビルは涙目で睨み返した。ドラコの胸に、小さな棘が刺さる。乱暴な愛撫に流されない、ネビルの本気の拒絶。
このまま行為を続けたら、ネビルに嫌われてしまうだろうか?そんな不安を振り払うように、ドラコは乱暴な行為を続けた。
「ひっ‥!!‥‥ドラ‥コっ!駄目っ!!!だめぇぇぇっ!!」
慣らしもせずに、ネビルの中に強引に押し入る。ネビルの痛々しい悲鳴が、カーテンで仕切られた狭い空間に響き渡った。
狭く熱いネビルの内壁が、ドラコを容赦なく締め付ける。快感とは程遠い痛み。ネビルが感じているのは、ドラコの倍以上の痛みと負担。
ネビルの苦痛に彩られた顔を見ていられなくて、ドラコは視線を泳がせた。その視線が、ある一点で止まる。
ドラコは、ネビルの際奥へ自身を埋め込んだまま、それまでの乱暴な行為を一切止めて、動きを止めた。
「‥‥‥‥ドラコ‥?」
中途半端に行為を中断したドラコを、ネビルが怪訝そうに見詰めた。
普段のドラコは、ここまでしておいて止めるような男ではない。無理やり自分で始めた行為を、一方的に止めるような、破天荒な性格はしていない。一度決めたら、犯罪まがいの事をしたってやり通す。スリザリンの申し子とでも言うべき狡猾さを持っていた。本気で怒ったドラコは、例えネビルの拒絶だったとしても、受け入れたりはしない。
ネビルの声に、ドラコは反応を返さなかった。
ドラコの視線は、暗闇の一点を見詰めて固まっている。
(あっ!もしかして‥‥‥‥いや、‥間違いなく、‥バレちゃった!!)
ドラコの視線を辿って行ったネビルの顔に、困惑と羞恥が入り混じった、複雑な表情が浮かんだ。
ドラコの視線の先、そこにあるのは紐と布で拘束された、ネビルの腕。
「‥‥‥ネビル‥コレ‥」
「ごめんなさいっ!!」
ドラコが言葉の続きを発する前に、ネビルの大きな声が響いた。
その言葉で全てを理解したドラコの顔に、先刻とは打って変わった余裕の表情が浮かぶ。
「意外と積極的なんだな?流石はグリフィンドール‥」
そう言って、ドラコが笑う。
ネビルは涙目で顔を逸らし、そんなドラコを直視出来ないで居た。
「僕は、随分と君に愛されているみたいだな?‥‥嬉しいよ、ネビル‥」
ネビルの耳元でそう囁いて、ドラコはネビルの白いうなじにキスをする。
「んあっ‥あっ‥‥ドラコ‥謝るから‥‥言わないで‥」
真っ赤な顔をしたネビルは、涙目でドラコに哀願した。誘う様に艶かしいネビルの表情に、ドラコは喉の奥で低く笑う。
「‥そうだな‥‥ネビル、おしおきだ‥」
ネビルの薄い耳たぶに舌を這わせて、ドラコは淫猥に囁いた。
「んっあぁ‥ああっ‥はっん‥あんっあっあ‥ぅあああぁ‥」
ドラコの律動に合わせて、ネビルの惜しみない嬌声が響く。
両腕は未だ拘束されたままで、抱え上げられた足は限界まで開かされて、身体の中心深くまでドラコを受け入れている。
「どんな感じだ?」
意地悪に問う、ドラコの声。ネビルに、返答の拒否権は無い。
「んっ‥気持ち‥良ぃ‥‥ドラコの‥あっ‥熱くて‥奥まで‥‥来てる‥」
羞恥に眉を寄せ、ネビルが切れ切れの言葉を紡ぐのを、ドラコは嬉しそうに見下ろしている。
「ココが‥良いのか?」
「ああっん‥そ‥そう‥‥ソコ‥あっああぁ‥‥良い‥よぉ‥」
更に意地悪いドラコの問いにも、ネビルは従順に答える。
「ココをどうして欲しいんだ?」
「つ‥‥突いてっ‥‥あぅっ‥いっぱい‥‥ドラコのっで、‥‥してっ‥んっ‥‥早く‥う‥」
「いつもコレくらい素直だと、僕も君を傷付けずに済むんだけどな?‥そうは思わないか?‥‥ネビル?」
「あぁんっ‥もぅ‥‥知らなっ‥‥‥はっ‥早くっ‥ドラコっ‥もっ僕‥‥イきそっ‥」
「駄目だ、ネビル‥言ったろ?おしおきなんだから、僕と一緒にイくんだよ‥」
ドラコはそこで一旦会話を切って、ネビルの最奥を思い切り突き上げた。
「ひゃああぁぁぁっ‥ああっ‥ぅあんっ‥もぅ‥駄目っ‥イかせてぇっっ!!」
切ない声を上げて、ネビルは勢い良く白濁の精を放った。溢れ出た飛沫は、ネビルの顔まで飛び、ドラコの顔まで汚した。
「‥‥駄目じゃないか‥僕より先に気持ち良くなるなんて‥おしおきにならないだろう?」
「はぁ‥はぁ‥‥ごめんなさ‥‥」
肩で大きく息をしながら、ネビルはドラコを見据えて謝った。それから、すぐ傍にあるドラコの頬に自分から舌を伸ばして、汚してしまった所を清めていく。両手が使えないため、酷くぎこちない仕草ではあったが、一生懸命に自分の精液を舐め取る。ドラコはそんなネビルを、嬉しそうな表情で見下ろしていた。
「ここもだ、ネビル‥‥」
そう言って、口元に差し出されたドラコの指を、ネビルは躊躇いも無く口に含んだ。ゆっくりと舌を這わせ、口内で味わうように舐め上げていく。
くちゅくちゅと、いやらしい音がすぐ傍で聞こえる。そんな自分の淫猥さに、ネビルの興奮が一気に高まる。頭の芯が蕩けてしまいそうな、高揚感。
「いやらしいな、君の口は‥上も下も、物欲しそうによだれをたらしてるぞ?」
ネビルの耳元に、熱い吐息を吹き込みながら、ドラコが笑う。ネビルは、その言葉を聞いているのかいないのか、一心にドラコの指をしゃぶり続けた。ドラコを咥えたままの蕾が、小刻みにヒクヒクと蠢いて、ドラコの言った言葉が、あながち間違ってはいない事を証明していた。
「‥あっ‥‥はぁ‥」
夢中で咥えていたドラコの指が、何の前触れも無く一方的に口の中から引き抜かれて、ネビルの残念そうな声があがった。
ドラコは喉の奥で、クツクツと笑う。
「‥‥そんなに残念そうな顔をするな‥もっと良い物をあげるから‥」
そう言って、ドラコはネビルに一度口付けてから、ネビルの中から腰を引き抜いた。
「んんっあっ‥何でっ‥‥ヤダっ‥」
縋り付く腕がないネビルは、一生懸命に腰を揺らしてドラコへと、不満の声を投げかける。
そんなネビルの目の前で、ドラコはネビルの体液と、自分の先走りの液体で濡れた自身を掌で扱いた。限界近くまで張り詰めていたソレは、直ぐに白濁の液を吐き出す。
ネビルの顔に、たっぷりとかかった、ドラコの精液。ネビルは、突然の事に目を丸くして、それからうっとりと瞳を閉じた。
「もっと‥欲しいのか?」
ネビルの顔にかかった液を指ですくって、ネビルに舐めさせていたドラコが、楽しそうに聞いた。
「‥‥‥ん、‥欲しい‥ドラコ‥‥」
ネビルは潤んだ瞳で、ドラコに強請った。普段よりも、相当素直でいやらしいネビルの反応。
原因は、ドラコが危険を冒してまで夜這いに来るほど、SEXをしていなかった事と、もう1つの羞恥。
ドラコは素早くネビルの身体を反転させると、腰を高く上げさせる。
入り口に自身をあてがい、ネビルに覆い被さる様にして、後ろから抱き締めた。
「どうして欲しい?」
「‥‥え?」
この体勢で、この状況で、他に何をするんだろう?熱で浮かされたネビルの頭に、はてなマークが浮かんだ。
「ほら‥‥何が欲しい?指か?‥‥それとも‥‥‥?」
「‥‥‥やっ‥言えない‥‥恥ずかしいよ、‥‥‥意地悪しないで‥」
ネビルの瞳から、羞恥の涙がぽろぽろと零れ落ちた。
「意地悪じゃないだろう?おしおきだ‥‥ちゃんと言えないなら、僕はこのまま帰っても良いんだぞ‥」
「やっ駄目ぇ‥‥お願い、そんな‥‥事、言っちゃ‥嫌ぁ‥‥」
ネビルが、一生懸命にドラコを振り返って、頬を摺り寄せる。ドラコは、嬉しそうにその頬に何度もキスをした。
「じゃぁ‥‥言えるよな?‥ホラ、ネビル‥‥君は、良い子だろう?」
言葉と共に、ネビルの耳の中に舌を差し込んで、ドラコが囁く。その、ぞくぞくした刺激と言葉に、ネビルは負けて首を縦に動かした。
「‥‥僕の‥‥中に‥‥‥ドラコの‥‥‥‥‥‥」
「僕の、何だ?」
「ド‥‥ドラコの‥熱くて、‥‥‥おぉきいの、‥‥入れてっ‥」
「熱くて大きい、何だ?指か?」
「違‥‥う、ドラコの‥‥‥‥‥‥‥入れてぇっ!!」
ネビルは、焦れったくなって腰を蠢かせて、泣き喚いた。
「駄目だネビル、ちゃんと言わないと‥‥わからないだろう?」
「んっもっ‥‥駄目っ!!僕、おかしくなちゃうっ‥入れて!ドラコぉ‥‥お願い、もっ‥‥僕、待てない‥‥」
「仕方ないな、‥今度はちゃんと言えよ?」
そう言うや否や、ドラコはネビルの際奥まで刺し貫いた。ネビルの身体が、大きく反り返る。
「あああああぁぁぁぁっ‥あっ‥ドラコっ‥‥ドラコっ‥」
何度もドラコの名を呼び、快感に身悶えるネビルに微笑んで、ドラコは腰を勢い良く抜き差しした。
「あんあっああぁっはぁ‥んっ‥あっあっ‥」
ネビルの口から、引っ切り無しに嬌声が上がって、身体の中のドラコを締め付ける。
「淫乱だな?‥‥僕以外に抱かれても、こんなはしたない声を上げるのか?」
意地悪く問うドラコの声に、ネビルは泣きながら首を何度も首を横に振った。
「ち‥がぅ‥‥ドラコだからっ‥‥‥気持ち‥良いのぉっ‥」
ネビルは泣きながら言葉を紡いだ。その素直な反応に、ドラコは喜んだ。そして、エスカレートしていくドラコの愛情表現。それに、ネビルは必死で応えていく。
「こんな顔を晒すのは、僕の前だけにしろよ?浮気は許さない」
ネビルの耳元で、甘く囁くドラコの声。
「んっああっ‥やっやめっ‥‥あっ‥」
ネビルが何かを言う前に、ドラコがネビルの身体を更に大きく穿つ。
「あああんっ‥あぅっはぁん‥‥ドラコ‥こそっ‥浮気しちゃっ‥あっ‥‥嫌だから‥ね‥」
喘ぎ声に乗せて、ネビルが紡いだ言葉に、ドラコは喉の奥で笑った。
「するわけないだろう‥そんな事‥‥僕はこんなに‥ネビルが好きなんだ‥‥」
そう言って、ドラコの腰が深くネビルに埋め込まれた。その強烈な快感に、ネビルは大きく鳴いて背を反らせる。熱いドラコの欲望が、ネビルの身体を支配していく。
「僕だっ‥‥て、‥‥‥ドラコの事‥んんっああぁっ‥すっ‥‥やぁぁっ‥好きっ‥あんっ‥‥愛してるっ‥」
「良い子だ‥ネビル‥こういう時だけじゃなくて、普段からそう言って欲しいよ‥」
深く、深く、ネビルを犯し、ドラコがうっとりと囁いた。
激しすぎる二人の狂宴は、逢えなかった時間を埋めるように、明け方まで続いた。
「‥‥‥僕、絶倫の意味をようやく理解した気がする‥‥」
ドラコの腕の中で、ぐったりとしたネビルがぼそりと呟いた。その言葉には、少し棘が生えていて、ドラコに向けられた視線は、恨むような色を称えていた。
「知らなかったのか?さてはネビル‥僕の愛をちゃんと受け止めていないな?」
当然だろう?とでも言いたげな視線で、ドラコは飄々と笑う。
「‥‥‥違うよ‥褒めてない‥‥めちゃくちゃ欲望にまみれてるって言ってるの!君、性欲の塊!!」
ネビルは恨めしそうにドラコを睨み、けれどドラコの腕の中から抜け出そうとはしない。
「仕方ないだろう?自慰行為だけで、我慢できないくらい僕はネビルが好きなんだ‥」
悪びれずにそう言って、ドラコの唇がネビルの額に降ってくる。
「‥‥‥馬鹿‥」
真っ赤な顔でそう言って、ネビルはドラコの裸の胸に顔を埋めてしまう。
そんなネビルを、ドラコは愛しげに抱き寄せた。そして、意地悪な言葉を耳元で囁く。
「僕の服で、ネビルは何をしたんだ?」
ドラコがこのベッドに忍んで来た時、ネビルが着ていた夜着はシャツ一枚。ズボンははいていなかった。ネビルには少し大きめのその服は、上質な布で出来ていてドラコのイニシャルが刺繍してあった。そして、ドラコがネビルの手首を縛り上げた紐‥それは、蛇の紋章の入ったドラコのネクタイだった。
その事実に気付いた時、ドラコはようやくネビルが自分を拒んだ理由を知った。
「なっ‥‥何も‥‥何もしてなぃ‥」
ドラコの胸に更に深く顔を埋めて、ネビルは小さな声で囁くように否定した。
「ふぅ〜ん‥‥‥枕元に、もっとあったりしないのか?」
意味深に相槌を打ちながら、ドラコが腕を伸ばして暗闇の中ネビルのベッドを探る。
「あっ駄目ぇ!‥探さないでっ!!」
それまで真っ赤になって顔を伏せていたネビルが、突然声を張り上げてドラコの腕にしがみつく。
「‥あるんだな?」
にやりと笑って、ドラコが言った言葉に、ネビルは慌てて自分の口を塞いだが、時既に遅し。
「駄目っ!ちゃんと返すからっ!!今、ここで探さないで!!‥‥‥‥‥‥ねっ?お願い‥」
必死でドラコの腕にしがみ付いて、ドラコの掌に自分の指を絡めて拘束したネビルは、自分からドラコに圧し掛かり、ドラコの唇を塞いで誤魔化した。
可愛らしいネビルに、ドラコはにっこり笑って、一言。
「嫌だ」
不敵な笑顔を覗かせて、片腕でネビルの細い身体を抱き寄せると、もう片方の腕で器用に枕元を探った。
「やっ‥駄目駄目っ!!ドラコ絶対怒るからっ!!」
「怒らないって、大丈夫だから‥」
腕の中でじたじたと暴れるネビルに苦戦しながらも、ドラコの指先が何かを捉えた。
「いやぁ〜っ!!ホントに、駄目だってばぁ!!」
ネビルの絶叫が、さっきまで喘ぎ声に満たされていた空間に響いた。
「‥‥‥‥ネビル‥」
「‥‥‥‥‥はい」
半裸で座るドラコの正面に、ネビルはドラコのシャツを羽織りボタンを留めていない、ほぼ全裸の格好で正座していた。
二人の間には、ネビルの枕元に隠してあった戦利品の数々。
「君は、リスか何かの小動物か?」
「‥ち‥がいます‥」
真っ赤になって俯いているネビルに、呆れた様にドラコが言った
シャツとネクタイ以外に、ネビルが所有していたドラコの私物‥靴下、ハンカチ、写真、マフラー、タオル、書き損じて捨てた羊皮紙、壊れて捨てた羽ペン、失くしたと思っていた手帳‥などなど。
「‥下着は?」
無表情にそう言って、ドラコがネビルを見据える。
「‥‥無いっ!!そこまで持ってきてない!!!」
思わぬドラコの言葉に、ネビルは慌てて顔をあげて否定した。
「持ってくるつもりだったのか?」
にやりと笑い、無表情から一転したドラコに、ネビルは真っ赤になって再び俯く。
「‥‥‥いいえ‥」
ネビルは恥ずかしさと居心地の悪さから、震えた声で返事を返した。
「‥‥で?君はコレを使って、このベッドの上で、毎晩何をしていたんだ?」
「そんなっ‥‥いやらしい言い方しないでよ‥」
顔を上げずに、ネビルが抗議したが状況的に不利なので、かなり迫力に欠けていた。
「いいから、答えろよ‥ネビル?」
そんなネビルの視界に映らないドラコの顔は、明らかににやけていた。しかし、声だけは怒りを滲ませた演技をしていた。俯いたネビルには、ドラコが怒っているように聞こえるだろう。それが、ドラコの狙いだった。
「‥‥‥‥あの‥その、僕‥‥ドラコの思っているような、変な事は‥‥してないよ?‥‥ただ‥」
恐る恐ると言った動作で、ゆっくりと顔を上げたネビルは、声同様怒っている様に見せたドラコの表情にあっさりと騙された。怒鳴られている子供みたいに肩を竦めて、次いで目まで閉じてしまった。
「ただ‥‥何だ?」
込み上げる笑いを必死で堪えて、ドラコが言う。
「ただ‥‥‥1人で寝るのが、寂しくて‥‥ドラコの匂いがすると、安心するんだ‥」
すっかり落ち込んだ様子のネビルが、観念したように白状した。今言った言葉だけでは、手帳や壊れた羽ペンまで持ち出してきた理由にいささか疑問が残る。
けれども、必死な様子のネビルに、ドラコはあえてその疑問を問いただそうとはしなかった。最初から、ネビルを叱る為に始めた話ではなかったし、正直な所嬉しくて仕方が無かった。
「‥‥‥だったら、僕の所へ夜這いにでも来れば良いだろう?いつだって僕の匂いの中で眠れるぞ?」
ドラコは、半分冗談でそんな事を言ってみた。
少しネビルの行動を咎めた後に、こう言えばこれからネビルを寝室に連れ込む口実が増えるかもしれない‥‥と言う、軽率な打算が含まれた言葉だった。
「良いの?」
それまでしょんぼりと俯いていたネビルが、突然顔を上げて、きらきらした視線でドラコを見上げた。
「‥‥本当に‥行っても良い?迷惑じゃない??」
縋るような勢いで、ドラコに念を押すネビル。
「あ‥‥あぁ‥当然だろう?」
そのネビルの勢いに、多少押され気味になりながらも、ドラコはそう答えた。
そんなドラコの困惑をよそに、明るい表情のネビルは嬉しそうに胸の前で合掌し、微笑んだ。
「良かった‥‥ドラコ、僕と寝るの嫌なんだと思ってた‥‥」
ネビルを凝視していたドラコの耳に、聞き捨てならないネビルの呟きが聞こえた。
「‥どうして?そう思うんだ?」
ドラコの問いに、ネビルは少し言いに難そうにしながらも、口を開く。ドラコの言葉がよほど嬉しかったのか、口元の笑みが消えていない。
「だって‥僕、いびきかくでしょう?‥それに‥‥、ドラコいつも僕より先に起きてるし‥もしかして、僕のせいかな?‥‥‥って」
上目遣いにドラコを見て、可愛らしくそう言うネビル。その表情のせいで、ドラコが眠れなくなるなんて、ネビルは露ほども思っていないだろう。
ドラコは一つ大きな溜息を吐いてから、唐突にネビルを後ろに押し倒した。
「わっ‥‥ちょっ‥‥‥‥ドラコ?」
突然の出来事に、目を白黒させながらネビルは自分に覆いかぶさるドラコを見上げた。
ドラコの顔は、真剣で怒っているような表情に見える。
(‥僕、何かドラコを怒らせるような事言っちゃったかなぁ?)
内心そんな事を考えて、ネビルは不安そうにドラコを見詰め続けた。
「君が‥」
「‥‥僕が、何?‥」
絞り出し様な声で話し出したドラコに、縋る様な視線を向けて、ネビルが言葉の続きを促す。
「僕を煽るからだ‥‥そうやっていつも無邪気に僕を見て、僕がいつもどれだけ必死で理性を保っているのか、君は知らないんだろう?」
「‥‥煽る?何を?」
目を瞬かせて首を傾げるネビルに、ドラコは二度目の溜息を吐く。
そして、にやりと笑った。
「‥‥教えてやる‥‥‥身体にな‥」
そう言って、ネビルの鎖骨に顔を埋めた。
「えぇっ?やっだ‥もっ‥ドラコっ!!あんっ‥‥さっき‥た‥くさん‥‥シたでしょっ‥!?」
必死でドラコを押し返そうとするネビルに構わず、ドラコはネビルを愛撫する。
「僕にはまだまだネビルが足らないんだ‥君も、抵抗なんてしないで正直になったらどうだ?」
そう言って、ネビルの敏感な胸の突起を摘み、ドラコが笑う。
「やっ‥もぅ‥ああぁっ‥無理ぃっ‥‥そんなっ‥」
背を仰け反らせ、腰をくねられるネビルの身体は、明らかに嫌がっては居ない。
「こっちの口は、嫌だとは言ってないぞ?」
意地悪く言って、ドラコがネビルの蕾に指を這わす。先程の行為の余韻で濡れている其処は、ドラコの指を取り込もうと、いやらしくヒクヒクと動いていた。
「ひゃっあ、‥あぁぁっ‥‥だぁめぇぇっ‥ドラコっ‥やぁん‥」
一度は途切れた嬌声が、再びネビルのベッドの上に響きだす。
「今度からは‥僕の物となんて寝るなよ?」
結局なだれ込んでしまった情事の最中に、ドラコが言った。
「あっ‥あぁっん‥‥わかった‥‥からぁっ‥そこばっかりっ‥弄らないでっ‥」
快楽の涙を流して、ドラコの背中に縋り付いたネビルは何度も首を縦に振る。
「ネビル‥‥君が愛しているのは?」
「んっあっ‥‥ドラコだ‥けだよっ‥はぁんっ‥‥」
涙で濡れたネビルの瞳に見据えられ、望んだ言葉を聞けたドラコはようやく満足気に微笑んで、掌で戒め指先で嬲り続けていたネビルの欲望を開放した。
「ネビル‥愛している」
ネビルの耳元に囁きながら、ネビルの射精に合わせてドラコもネビルの中に吐精した。
腰の中心が繋がったままで抱き合って、二人は荒い息の中お互いの熱い体温だけを感じる。
「‥‥‥鬼畜‥」
呼吸が整ってから、恨めしそうにネビルが呟く。
「僕を2週間以上も禁欲させたネビルが悪い」
自分の行為を悪びれずに、ドラコが言い返した。
「‥‥‥‥してない」
「しただろう?僕の部屋に泊まらなくなった」
「それはっ‥その、‥‥ドラコが‥」
「僕が何だ?」
「‥‥‥‥襲ってくれなかった‥から‥‥」
ネビルの小さな囁きに、ドラコは目を丸くして、それからにやりと笑った。
「やっぱりネビル、僕のシャツとネクタイで、イケナイ遊びをしただろう?」
その台詞に、ネビルは顔を真っ赤にさせてぶんぶんと音がしそうなほどに、首を振る。
「そんなに否定すると、返って肯定しているように見えるんだけどな?」
更に意地悪なドラコの台詞に、ネビルは一層強く首を振る。
そんなネビルの様子に、ドラコはくすくすと笑った。
うっかりしていたら、更新期限がぎりぎりでした‥。セドハリと同時UPの予定だったのに。
相変わらず、やってるだけの無意味なバカップルでごめんなさい。
ネビルも、ドラコが好きなんだよ。って所を書きたかったんです。全然ですね‥すみません。
2004・07・15 ミヅキチヨ