夢と悪戯
お泊りは、二週に一回。
肌を重ねるのは、週に一回。
こっそりデートは、週に三回。
僕たちの生活リズムと逢瀬の数は、何時の間にかこんな法則で縛られていた。
特別決めたわけではないけれど、いつも僕らはこんな感じ。
そして今夜は、待ちに待ったお泊りの日。
「・・・ドラコ?・・・・・・・・・・あれぇ?寝てるの?・・・・ドラコ・・」
理解があって、優しい協力者二名にこっそり寮を抜け出させてもらったネビルは、機嫌良くドラコの部屋にやって来た・・・・・のだが。
当のドラコは待ち疲れたのか、ソファーの上でうたた寝をしていた。
「・・・・・・・・・・・・・ドラコ〜起きてよぅ・・・」
ドラコが寝ているソファーの傍に近寄って、ネビルは床に座り込んでドラコの寝顔を至近で覗いた。
「・・・・・・・マルフォイ君?ロングボトムさんがお出ましですよ〜・・・って、・・・・・・・馬鹿みたい・・・」
何度呼びかけても、ドラコは起きてくれなかった。
仕方の無い事かもしれない。
何しろ、今日はスリザリンのクィディッチ練習日。・・・疲れていても当然と言えば当然だ。
毎回週末に泊まるのは、ネビルの同室者たちにバレてしまう危険性が高いので、ネビルがドラコの部屋に泊まる日は不定期に決めている。
つまり、今日みたいに平日で、タイミングが悪ければ、ドラコやネビルが疲れていて、折角のお泊りもただ一緒に眠るだけ・・・会話すらまともに出来ない事もしばしばある。
ネビルは片手に持っていたお泊り道具(着替えのみ・・・歯ブラシやその他の洗面用具はドラコの部屋に在中/笑)を床に置き、ドラコに自分のローブをかけてあげた。そして、そのままドラコの寝顔を、至近でずっと見つめる。
あまり良くない血色と、悲壮感が漂うくらい綺麗な顔立ち。
・・・・・・・ネビルの大好きな、ドラコの顔。
数十分後、目を覚ましたドラコ。
間近に迫っていたネビルの顔に、夢の続きを見ているのかと思った。
「・・・・・・ネビル・・?」
寝起きで掠れた声で名前を呼んでみる。
ネビルは嬉しそうににっこりと笑った。
「・・・・・・・・・・・起きた?」
にこにことそう聞いてくるネビルに、気付いたら口付けていた。
唇に触れた感触は・・・・・・・夢じゃなかった。
「・・・・・・・・・・・・悪い、起きて待っているつもりだったんだが・・・」
寝ぼけていた事の照れ隠しにか、ドラコはそんな事を言って苦笑する。
「良いよ、ドラコ疲れてるんだもんね」
そう言って、ネビルはまたにっこりと笑う。
そしてお互いに引き寄せられる様に、自然と二度目のキスをする。
ドラコと一緒に居られるという事だけで、ネビルの顔は笑顔に変わる。
つられて、ドラコも自然に笑顔になった。
今夜は2人で居られる。たったそれだけの事なのに、無性に嬉しくて、安心する。
それから、2人は一緒に入浴をした。
ドラコが疲れていて、不埒な真似が出来ないと知っているネビルは、こんな時は拒まずに一緒に入ってくれるのだ。
はしゃいで背中の流し合い。・・・・馬鹿みたいに2人は楽しかった。
お風呂から上がったら、歯を磨いて。
髪の毛を乾かして。
それから仲良く布団に入る。
たくさんのキスをして。
どちらかが寝付くまで、他愛無い話をしながら過ごして、何時の間にか2人とも眠った。
短い逢瀬は、事実上ここで終わる。朝は何かと慌ただしくて、ゆっくり話している暇が無いから。
・・・・・・・・・・今までは。
真夜中過ぎに、ドラコは不意に目を覚ました。
ネビルが来る前に少し眠っていたので、中途半端に目が冴えた。・・・・早すぎる起床だった。
暗闇の中でも、ドラコは傍らに眠るネビルの姿を確認できた。
小さな寝息と、耳慣れた可愛らしいいびき。身体に感じる温かさ。
一人寝の時には感じない温かさと、愛しさがドラコの胸に込み上げてきた。
眠っている身体を抱き寄せて、胸いっぱいにネビルの甘い香りを堪能する。
幸せだった。・・・・・・・・・けれど、弊害も起こった。
ドラコはネビルを抱き締めていて、いろんな意味で元気になってしまっていたのだ。
(寝込みを襲うなんて、下劣な男のする事だ)
何度か自分にそう言い聞かせて、事態の収拾を図ってみたが、あまり効果はなかった。・・・・・・・・・むしろ、悪化した。
一度火の点いた衝動は、そうやすやすとは抑えられない。ましてや、夜中に恋人と同じベッドの上に居るのだから、理性なんて意味を成さない。
ドラコは苦笑交じりに溜息を吐き、眠っているネビルに最初に謝った。
「・・・・・・・悪い、限界なんだ・・・」
小さな囁きでそんな事を言ってはみたが、当然ネビルは聞いていない。
「・・・僕はちゃんと謝ったからな?・・・・・・怒る時は、手加減してくれよ?」
眠っているネビルの頬に口付けながら、そう言ってドラコは抑えの利かない衝動に身を委ね、思考を闇に堕としていった。
幾つもキスの雨をネビルの顔に送りながら、ドラコの手は夜着の上からネビルの胸に触れた。
最初は撫でるように・・・小さな突起が自己主張をしだしたら、掠めるように優しく摘んで愛撫する。
ネビルはくすぐったそうに眉を寄せた。
「・・・・・・・ん・・・・・・・・やぁっ・・・・・・・・・・・・ドラコ・・・・」
そして寝言で、ドラコの名前を呼んだ。
ドラコは楽しそうにくすくす笑って、ネビルの胸の突起をくすぐるようにしつこく指で弄る。
ネビルは身を捩りながら、寝息の合間に甘い吐息を吐いていた。
「・・・・・・起きないんだな・・・僕はもう我慢できない・・・・直接触るぞ?」
ネビルの耳元に、確認するように囁いて、ドラコはネビルの夜着の裾をたくし上げて、素肌に直接触れた。
途端、ネビルの身体は大きく跳ねた。ドラコの指先のひやりとした感触に驚いたらしい。
反対に、ドラコの手にネビルの温かい身体の感触は心地良かった。
触り慣れた愛しい身体に、確かめるように指を這わしていく。ドラコの指先が、手の平が、爪の先が、肌に触れる度に、眠っている筈のネビルからは寝息と共に甘い声が上がる。そして時折、ドラコの名前を甘えた声で呼ぶ。
それが嬉しいドラコの愛撫は、だんだんと激しくなった。
手で触るだけでは飽き足らず、唇と舌、歯まで総動員して、ネビルの肌の上を侵食していく、ドラコの欲情。
ネビルの白い肌は、あっと言う間に赤い花で鮮やかに染まった。
「ぁっ・・・・・はぁん・・・・やっ・・・・・・・・・んんっ・・・・・」
ネビルの口から漏れる喘ぎ声は、ドラコが聞き慣れているものとは少し違った。
意識の無いネビルの声帯は緩慢な音しか紡がず、かと言って全く反応していない訳でもない。
ドラコの手が胸から腹、更にその下へと下降をするにつれて、ネビルの息が荒くなった。
肝心な場所に布の上からドラコが触れると、ネビルは一際大きく身体を震わせ背を反らす。
「・・・・あぁ・・苦しそうだな・・・・・・・焦らしたりして、辛かったな?」
ドラコは微笑んでそう言うと、一度ネビルの唇に舌を這わすような仕草で口付けてから、その顔はネビルの下半身へと降りていった・・・・。
翌朝、ネビルは勢い良く目を開けた。
早鐘の様に鳴る自分の心音が、耳につくくらいドキドキしている。
・・・・・・・・・・・・とんでもない夢を見た。
ネビルは隣で寝ているドラコを起こさない様に、飛び起きたい衝動を堪えて、ゆっくりと起き上がった。
何度深呼吸をしても、心臓のドキドキは収まらない。
(いくらドラコと一緒に眠っていたからって、・・・・・・・・あんな夢を見るなんて)
眠っている自分に、ドラコが優しく襲い掛かってくる夢。
・・・・・夢精なんて、とんでもない痕跡が残らなかった事が、唯一の救いだ。
「・・・・・・・・・・僕って、そんなに欲求不満だった・・・・・かなぁ」
情けない声でそう呟いて、ネビルはドラコを起こさないように細心の注意を払って、ベッドから抜け出した。
(きっと、昨日眠っていたドラコに、あんな事をしたから罰があたったんだ・・・・)
洗面所へと歩きながら、ネビルは心の中で溜息を吐いた。
昨日、眠っているドラコを見ていて、思わず湧き起こった衝動に逆らえなかったネビルは、眠っているドラコにキスをして、・・・・・首筋に1つだけ赤い彩を添えてしまった。
(・・・・寝こみを襲うなんて、しなきゃ良かった・・・・・・・どんな顔してドラコに会ったら良いのかわかんないよぅ・・・・僕の馬鹿・・・)
心の中で自分に悪態を吐きながら、ネビルは洗面所に辿り着き、鏡の中の自分を見た。
「・・・・・・・・・!?」
折角気を使って起こさずに居たドラコを、けたたましい悲鳴でネビルが叩き起こしてしまうのは、それから5秒後の事だった。
おわり
「蜜月逃避行」のしおんうしゃぎ様に、相互リンク記念として送らせていただいた駄文です。
・・・・・・・・・文才無くて申し訳ないです(激しく反省)
2004・10・09 みづきちよ