『佐奈たん ステップアップ』

「これを着るのか……」
「これを着るのです」
「鰤だな……」
「鰤たんです」
「いや、しかし佐奈……」
 そう言うと悠紀は体中の力が抜けたのか、ガックリとひざを落としました。どうやら、目の前の光景がよっぽどショックだったようです。
 一方、佐奈は誇らしげ。腕組みをしながら、そんな悠紀を見下ろします。
「……本当に、二つも用意したのかぁ……」
 そうです。ここは僕、日ノ内佐奈の部屋。壁には二着のコスプレ衣装が掛けられています。某格闘ゲームの少年キャラ、シスターのような頭巾に薄手のワンピースというかわいらしいコスチュームです。色は青とピンクにしてみました。
「型紙は出回っているからね。自分で作る分にはそんなに高くはつかないんだ。まあ、靴とか手錠とかはちょっと無理だったけど、気にする人はいないでしょ」
「額の面当ては……?」
「厚紙を加工しました」
 それもデータは出回っています。やってみればコスプレの衣装作りは意外と簡単です。佐奈はこういう作業ってすごい好き。将来は服飾系の専門学校に行きたいなぁ、なんて考えています。まぁ、夢ですけど。
 いや、今は喜ばしい現実に目を向けましょう。悠紀は体勢こそ持ち直しましたが、まだ呆然と佐奈の作った衣装を見ています。
「……これを、俺も着るんだ」
「約束だからね。佐奈のロストバージンは女装同士で撮影するんだって」
「でも、俺は女装なんて……」
「でもじゃないもん!」
 佐奈はちょっとだけ語気を荒げました。この期に及んで悠紀は男らしくありません。
「これだって譲歩だもん! 男の子キャラのコスプレなんだから、これ、本当は男装だもん!」
「そ、それは、詭弁だろぉ……」
 まあ、極めて詭弁的ではありましょう。どう見たって女の子の格好ですから。
 それでも、悠紀は往生際が悪いです。なんでそんなに女装を嫌がるのか、佐奈には理解できません。
 悠紀も佐奈とセックスしたいはずなんです。そういう気持ちって、すごく伝わってきます。性の対象になるプレッシャーはこんなに強いのかと、佐奈の方が驚いたくらいです。
 それなのに、一緒に女装するとなると、悠紀はなぜか拒み続けます。似合わないから、恥ずかしいからと逃げ回ります。
 まったく、なんだっていうんでしょうか……。
「……悠紀はさ、佐奈のこと嫌いなの?」
「嫌いなわけないだろ?!」
「じゃあ、なんで佐奈の言うこと聞いてくれないの?」
「いや、でもなぁ? こんな格好、俺……」
 佐奈はぐずります。悠紀を思わず藪睨んでしまいます。
「なににこだわっているかは分からないけどさぁ、それって佐奈の『初めて』より大切なものなの!?」
「あ、佐奈……、あのなぁ……」
 佐奈の言葉に悠紀はうろたえます。
「夢だったんだもん……。好きな人と可愛い服を着て、Hするのがぁ……。佐奈は変態だから、そんなことあり得ないって思ってたけれど、でも、悠紀なら……、悠紀ならさぁ……」
 佐奈はちょっと泣きかけで、悠紀の顔を見上げました。涙が一滴ポロリとこぼれます。顔が熱いです。
「佐奈……、その表情は反則だろ……」
 悠紀は佐奈から目を反らします。いや、その態度だって佐奈にとっては反則です。誤魔化されるわけにはいきません。
「悠紀、佐奈を見て!」
 悠紀は反射的にこちらに振り返りました。視線が重なります。
 悠紀の胸に腕を回して、ゆっくりと抱きつきます。体が密着していきます。それでも視線は外しません。上目遣いで悠紀を見つめます。
「一回だけ、一回だけでいいのぉ……。悠紀とぉ、かわいい格好でいやらしいことがしたいの……。お願い……、してよぉ……」
 悠紀はそれでも数秒逡巡しましたが、ついに耐えきれなくなったのか、佐奈の頭を抱きしめました。
「佐奈……、佐奈ぁ……」
 悠紀の暖かい手が、佐奈の髪を撫で上げます。とっても、とっても気持ちいいです。
 ――佐奈の勝ちぃ♪



「……佐奈」
「なーにー?」
「これ、サイズ小さい……」
「あ、佐奈のサイズで作っちゃったからか……。でも、破けたりとかはしないでしょ?」
「う、うん……」
 佐奈たちはドア越しに会話しています。佐奈が部屋側、悠紀が廊下側です。
 お互いの着替えるところは見ないということにしました。その方が楽しそうだと思ったからです。
 佐奈は、ドアの向こうの悠紀がどんな姿になるのか、今から楽しみでしかたありません。
 本人はあまり自覚がないようですが、悠紀は、はっきりいってかっこいいです。目鼻立ちとかスッと整ってるし、ちょっとラフな髪型も素敵です。
 そんな悠紀が、女の子の格好をする……。あはっ、もとから女顔の佐奈なんかより、よっぽど仕上がりが楽しみです。
 佐奈はコスチュームの裾を整え、鏡の前に立ちます。ちょちょっと髪を直せば、どこから見ても鰤たんです。
 クルッと一回転。青いワンピースがフワッと広がり、黒いスパッツがあらわれます。うん、けっこういい感じ。お姉ちゃんの部屋からテディベアも借りちゃおっかな。
「悠紀ーっ、佐奈はオッケーだよー。そっちはどーおーっ?」
「も、もうちょっと待って……」
 悠紀はピンクの鰤たんコスです。オフィシャルカラーは佐奈が強引にもらっちゃいました。ピンク色の悠紀が見たかったからというのが、正直な理由です。
 女装した悠紀は、絶対にかわいいと思います。もしかしたら、佐奈よりも……。
「いいよ、着替え終わった……。ドア開けてくれ」
「うん、じゃあいくよ」
 バッと、佐奈は部屋のドアを手前に引きました。
 佐奈の目の前には、顔を真っ赤にした悠紀が、桃鰤たんの格好で立っていました。
 悠紀はやっぱり恥ずかしいのか、足がちょっと内股気味です。いまいちサイズの合わないワンピースの裾を、両手で掴んで必死に引き下ろしています。
「う、うぅ……、やっぱダメだよ、俺……」
「……悠紀、すごい」
「え?」
 佐奈は悠紀の肘を掴んで、強引に部屋へ引きずり込みました。そして背中を押して鏡の前に立たせます。
「悠紀、やっぱ似合うよ! すっごくかわいい! ダイジョブ、全然いけてる!」
 佐奈はすっごく嬉しいです。悠紀は、かわいい。こんなにかわいい。思わず顔がにやけてしまいます。
 悠紀はなぜか薄目で鏡を見ています。まだ恥ずかしすぎて、まともに自分の姿を見れないようです。目尻にはうっすらと涙までにじんでいます。
「……ダメだっ、やっぱ俺ダメだよ!」
 悠紀は悲鳴のような声を上げて、せっかくつけたフードを外そうとしました。佐奈は慌ててそれを制します。
「なんで? かわいいよ、悠紀。ホントにかわいい。佐奈、本気でそう思うよ?」
 しかし、佐奈の心からの言葉は、なぜか悠紀を怒らせたようです。悠紀は声を荒げて、佐奈にくってかかります。
「……なんだよそれ! 佐奈の方が……、佐奈の方が百倍かわいいじゃんかよ! なんで、……なんでそんな事が言えるんだよっ!」
「なんでって、……かわいいから」
「お前は俺が困っているところを見るのが楽しいだけだろっ!」
「ち、違うもんっ!」
 佐奈と悠紀は睨み合います。なぜ喧嘩なんかになってしまうのか、佐奈にはわけが分かりません。
 しかし、この張りつめた緊張の糸は、悠紀がプツンと切りました。悠紀は突然しゃくり声を上げると、鼻をすすって、泣き出してしまいました。
「うぅ……う……、ううぅ……」
 悠紀は涙をこぼしながら、崩れるようにうなだれました。フードがスルリと肩から滑り、濡れた頬にかかります。
「ゆう……き……?」
「佐奈……、俺、悔しい……」
「え?」
「佐奈はさ……、なんで、そんなにかわいいんだよぉ……」
 佐奈には悠紀が何を言いたいのか理解できず、声をかけることができません。悠紀はついに、トスンと床にへたりこみます。
「……悠紀、どうしたの? ……どうしちゃったの?」
「かわいくなりたかったんだよ、俺だって……」
 悠紀は涙も拭かず、ただトクトクと話始めました。声は引きつり、肩も一段落ちたまま、小刻みに震えています。
「ネットとか見てると、女装のサイトって結構あるよな……。俺、あれダメなんだよ……。なんか、生々しくってさぁ」
「……無理があるって人も、ときどきいるけど」
 どう見ても、ただのおじさんって画像も確かにあります。
「でも、やっている人達はとても楽しそうだろ。いや、佐奈も楽しかったんだよな。……だから、やっぱり憧れてたんだ」
「憧れ……?」
「女の子の格好にさ……」
 悠紀は手足を広げて、床に転がりました。濡れた瞳がとても綺麗です。涙の筋がいくつも、赤く染まった頬をつたっています。
「でも、勇気がなかったんだ。自分でやれば、やっぱりあの人達みたいな、自己満足な写真になっちまうと思ってた。……そして、現にそうなった」
「そ、そんなこと……」
 佐奈は悠紀の言葉全部を否定したいと思いました。しかし、悠紀の声は、泣きながらも途切れることがありませんでした。
「佐奈、……お前はすごいよ。たぶん、世界で一番かわいい。……でも、俺はそれがすごく悔しいんだ。やっぱり、どうしても、こんな自分は……許せないけど、それでも、すごく悔しいんだっ!」
 悠紀の声は、もう嗚咽でグダグダになってました。涙のたまった瞳は、吸い込まれそうなくらい深い色になっていました。
「かわいい佐奈を見てれば、幸せだったんだぁ……。もう、こんなのやだぁ……、こんな俺ぇ……、なんで、なんでこんなこと……、俺……、俺さぁ……」
「悠紀っ!」
 佐奈は転がる悠紀に覆い被さりました。四つん這いになって、悠紀と向き合います。青鰤たんと桃鰤たんが、50センチで顔をつきあわせます。
「『ウチ』って、言ってみて」
「なんだよ、それ……。俺、そんな……」
「言うのっ!」
 佐奈は悠紀を怒鳴りつけました。佐奈は、悠紀にそんな矮小な劣等感なんて持ってもらいたくありませんでした。
 だって、悠紀はかわいいから。本当に、死ぬほどかわいいから。
 だから、佐奈は悠紀に、もっと自覚を持ってもらうことにしました。その為には、今よりもっとかわいくさせてあげればいいと思いました。
「言ってみて……、本当の鰤たんみたいに『ウチ』って……。佐奈に、それで話しかけてみて?」
「さなぁ……お、……う、ウチぃ」
 悠紀は羞恥心に震えながら、蚊の鳴くような声で呟きました。次の瞬間、悠紀は肩をすぼませながら、歯を食いしばって顎を反らしました。
「うぐうぅ……、や……いやあ……、佐奈ぁ、う、ウチぃ……、いやあぁ……」
 悠紀は、本当にゲームのキャラが抜け出てきたようなかわいらしさでした。小さく開かれた唇から吐き出される熱い息が、悠紀の興奮を佐奈に伝えます。
「かわいい……、悠紀、すっごくかわいい……。目なんかエロエロにとろけちゃって、すっごくだらしなくなっちゃってる……」
「うああぁ……、み、見ないで……、佐奈、そんなに……顔……見ないでぇ……」
 悠紀は両手で自分の顔を隠し始めました。佐奈はその手を慌てて掴んで、ダンッと床に押さえつけました。
「やだあぁっ……、見ないでっ! お願い、見ないでぇっ! やだ、佐奈ぁ……あ、ああぁっ!」
 悠紀は硬く目を閉じて、顔を背けてます。もう、耳の先まで真っ赤です。佐奈は、そんな悠紀の耳の穴に口をつけて、そっと囁きました。
「ダメ、目をつぶっても、佐奈は見てるよ」
「ひぐううぅっ!」
 悠紀の体が、反射的に丸まりました。もう、羞恥心が限界まで来ているようです。
 佐奈はそのまま、悠紀の耳の穴に下を入れました。柔らかい肉の突起を押し分けて、尖らした舌先を奥まで突っ込みました。
「う、うああぁっ! や、やだっ! やだあぁっ!」
 悠紀は佐奈の下で暴れました。身をよじって、強引に佐奈から逃れようとします。
 手の戒めが外れ、耳の中の舌も抜けてしまいました。しかたなく、佐奈は強引に悠紀の上に全体重をのせました。
 そのまま、悠紀を抱きしめました。そして佐奈の下であがき続ける悠紀の唇を、強引に奪いました。
 重なった唇はとても柔らかく、まだブルブルと震えていました。それでも、そのまま押し当てていると、重ねる角度が少しずつずれていきました。
 交差した唇はどちらともなく開いていきました。濡れた舌がはい出て、お互いの口内を舐め合いました。
 舌が絡み合います。グチュグチュと音を立てて唾液が行き交い、歯列がなぞられます。
「ふうぅ……う……うぅ…………、さ、佐奈ぁ……、うぅっ……」
 佐奈はキスしながらうっすらと目を開けました。見ると、悠紀の目も半開きになっていて、綺麗な瞳が佐奈を見ています。
 もう、視線が外されることはありませんでした。佐奈はゆっくりと、悠紀の瞳を堪能しながら、口の粘膜を舌先で撫でていきました。
 佐奈を抱く悠紀の腕にも、きつく力が入っていきます。服の上からも勃起したことが分かる乳首が、プルプルとこすれ合います。
 佐奈は思わず腰を振ります。硬くなったペニスが悠紀のスカートを押し上げ、膨らんだスパッツに重なります。
「んんっ……ゆ、悠紀ぃ……、ああぁ……んっ! ふううぅっ!」
 佐奈たちは、お互いの体を、抱き合いながらグシャグシャにこすり合います。悠紀の暖かさ、柔らかさを全身で感じながら、佐奈はどんどん高まっていきます。
 せっかく作ったコスチュームが、どんどんほつれてダメになっていくのが分かります。でも、もうそんなこと構っていられません。脳がシチューのようにグツグツと煮立っていきます。
 ダメです。悠紀の全部が気持ちいいです。かわいくって、恥ずかしがり屋で、この期に及んでまだぐずってるピンク色の少年が、もう本当に愛おしくてたまりません。
 そして、先に限界が来たのは悠紀でした。悠紀はいよいよその腕に力が入り、体を硬直させ始めました。
「ひぐうぅっ! ううぅ……ふっ……ふああぁっ! い、イくうぅっ! さ、佐奈ぁっ……、ウチぃ……、ウチぃっ……ひ、ひぐううぅぅっ!!」
 ドビュルウゥゥッ! ビュルルウゥッ! ビュクン! ビュクン! ドビュウウゥッ! ドビュルウゥッ! ビュウゥッ!
 悠紀は絶叫と同時に足を限界まで引きつらせて、大量の精液をスパッツの中にぶちまけました。
 上につき上がったかわいいアゴが、ビクビクと痙攣しています。全身を佐奈の中で硬直させたまま、小刻みに震えています。
 もう、気が狂いそうなほどのかわいらしさです。悠紀は、放心しながら少しずつ脱力していき、やがて床の上にだらしなく肢体を放り出しました。
 ピンク色の衣装はシワだらけです。頭のフードも大きくずれ、せっかくつけた胸のリボンもほどけてしまいました。スパッツには大きな染みが広がっています。
 頬は涙や汗、口元はお互いの唾液でコテコテです。半開きの惚けた目が、天井をみつめています。
「あ……、ゆ、悠紀ぃ……、ゆうきぃ…………」
 佐奈も、もう限界です。こんなかわいい悠紀を見せられて、理性を保てるわけがありません。
 佐奈は引きちぎりそうな勢いで、スパッツを脱ぎ捨てました。透明な液を流しながらカチカチに勃起しているペニスが、プルンとあらわれます。
 佐奈は悠紀の顔にまたがります。そして、強引にペニスの先を悠紀の口先に持っていきます。
「悠紀……、ダメだよ。エロすぎるよぉ……。もう、本当に、ダメぇ…………」
「さ、佐奈……?」
 佐奈は悠紀の薄く開いた唇に、強引にペニスを突き立てました。そのまま悠紀の頭を掴んで、喉奥まで肉棒を押し込みます。
「ふぐううぅっ! うっ、ううぅっ! ……むうぅっ! ふぶううぅっ!」
「ああぁっ! 悠紀ぃ……、ご、ゴメンっ! あぁ……でもぉ……悠紀ぃ、すごいよおぉっ!」
 悠紀のお口はとても熱くって、柔らかくって、トロトロでした。あまりの快感に、佐奈の体がビクンと跳ねます。
 ガクガクと勝手に腰が揺れます。性衝動に流されるままに流されて、もう強姦のような勢いです。
 もちろん、これが同意に基づかない、最悪の行動だとは分かっています。でも、佐奈には止めることができません。気持ちよすぎて、何も考えられません。
 悠紀の口は、犯されながらも必死に動いています。舌がペニスに絡み、カリが口の上を掻くと、合わせてジュルジュルと先っぽが吸われます。その複雑な動きは、まるで佐奈の全てを吸い取ろうとしているかのようです。
 圧倒的な快感に、佐奈はあっけなく果てようとしています。ラストスパートする競走馬ように、腰が暴れます。
「ご、ゴメンなさいぃっ! 悠紀、ゴメン、ゴメンっ! い、イくうっ! イくイくイくうぅっ! うぅっ、うあああぁぁっ!!」
 ドビュウウウゥゥッ! ドブンッ! ビュッ! ドビュルウウゥッ! ビュルウゥッ! ビュクン! ビュルウウゥゥッ!
 最後、強烈な一突きを悠紀の喉に押し込んで、佐奈は射精しました。
 大量の白濁液が、悠紀の口に注がれます。佐奈は悠紀の頭を掴みながら腰を震わせ、全部を出し尽くすように射精します。
 悠紀は泣きながら佐奈の熱い樹液を飲みこみます。ゴクゴクと喉を鳴らし、最後の残滓まで残さぬよう、ストローでジュースを飲むように、佐奈のペニスに吸いついてきます。
「ううぅ……、ゆ、悠紀ぃ……、ひ、ひいぃっ!」
 絶頂直後の粘膜に対する強烈な刺激に悲鳴を上げ、佐奈は悠紀の顔を股間から剥がしました。
 ドプンと唾液と精液の混合物が悠紀の口から溢れ、雫が宙を舞います。
「こふっ、こふうぅっ……、ごほっ……」
 悠紀は咳き込みながら、佐奈の精液を吐き出します。白い液体が口の端から垂れ落ち、床に小さな水たまりを作ります。
 佐奈は後ろによろめきながら、床に手をつきます。体にはもう力が入りません。ゼイゼイと息が荒く、視界も定まりません。
 射精の余韻に浸りながらも、佐奈は罪悪感に捕らわれます。まるで獣のように悠紀の口を犯した自分がいまだに信じられません。
 悠紀は体を起こしながら、汚れた口に手をかけました。そして垂れた精液を指ですくい、また口に含ませました。
「んうぅ……、さ、佐奈ぁ……」
「悠紀……?」
「ウチ……佐奈に、愛してもらえたんだよね……」
 悠紀はそういうと、胸に手をあてて肩を震わせ始めました。
 悠紀は、喜びながら泣いていました。こんなに非道いことをされて、それでも感動しているようでした。
 
 心臓が鷲掴みにされました。

 佐奈は、この瞬間、本当に自分は悠紀が好きなんだと思い知らされました。こんなかわいい人、他にいません。絶対、誰もかないません。
 ああ……、佐奈はこの人に、何がしてあげられるの?
「ゆ、悠紀ぃ……、ゆうきいぃっ!」
 佐奈もむせび泣いていました。息には嗚咽が混じり、目には涙が溢れました。
 佐奈は机の上のローションに手を伸ばして、蓋を回しました。
「あのね、悠紀……、佐奈はねぇ、悠紀のモノなのぉ……。佐奈はねぇ、悠紀がぁ……死ぬほど好きなのぉ……」
 佐奈は悠紀のスカートをたくし上げ、中のスパッツを脱がせました。精液にまみれた悠紀のペニスが糸を引いてあらわれます。
「さ、佐奈……、なに……、なにぃ?」
 悠紀のペニスはまだ萎えていませんでした。そんな肉塊に佐奈はローションの容器を下に向け、一気に垂れ流しました。
 張力を保ったローションは長く伸びましたが、やがて一個の大きな雫になって、悠紀の股間に落下しました。
「うぐうぅっ! ふ……ふああぁ……」
 悠紀は冷たいローションの感触に喘ぎました。粘度の高い液体が、竿を伝い、下までゆっくりと流れていきます。
 佐奈は悠紀の濡れたペニスを優しく手で包みました。悠紀のモノはもう、灼けてしましそうな程熱くなっていました。
「さ、佐奈ぁ……、うわあぁ、あぁ、ヌルヌルするぅ……、それ……、き、気持ちよすぎるうぅ……」
 悠紀は衣装の胸の部分を掴んで、握りしめました。ワンピースには放射線状にシワが走ります。佐奈が手を上下に動かすたびに、その筋はさらに大きく広がります。
 悠紀の目がトロンと溶け、口からはだらしなく精子混じりのヨダレが垂れ始めます。全身がプルプルと快感にうちふるえています。
「悠紀、手を出してぇ」
「手……」
 悠紀はかわいく両手を佐奈の前に差し出します。佐奈はその上にさっきのローションを絞り出します。
 大きな雫が悠紀の手にたまります。
「悠紀はそれで、佐奈のお尻をグチュグチュにして……」
「佐奈ぁ……、そ、それって……」
 佐奈はコクリとうなずきます。
「うん、佐奈のお尻にぃ、悠紀のおちんちんを入れて欲しいのぉ。悠紀にぃ、グチュグチュにして欲しいのぉ」
 佐奈はそう言うと、悠紀のペニスを握る手に、もっと力を入れました。グンと悠紀の体が伸び、佐奈の方に傾きます。佐奈は悠紀の体をどうにか支えます。
 悠紀の頬が、佐奈の頬に当たります。佐奈は悠紀の耳に、そっと語りかけます。
「お願い……、佐奈の初めて、もらってください……」
「う、ううぅぅっ!!」
 悠紀は佐奈のお尻に手を伸ばしました。指が割れ目をかき分けて、すぼまりを探します。
 ヌルヌルの手が、佐奈のお尻を這います。ついに目的の穴を指先が探り当て、佐奈の中に進入します。
「うぐううぅっ! うあっ……、悠紀の指ぃっ……!」
 悠紀の濡れた指先が佐奈の中をまさぐります。2本、3本と数が増え、括約筋を広げていきます。
 佐奈も息を荒げながら、悠紀のペニスにローションを塗り込みます。悠紀の体が硬直して、お尻の指が乱暴に動きます。
 佐奈の奥まで、ローションが入ってくるのが分かります。もう佐奈のお尻は全部ドロドロです。お尻の回りも、穴も、その中もです。ああ……、意識まで溶けそうてしまいそうです。
「やあぁっ……、お、お尻ぃ……、すごいよぉ……、悠紀ぃ……き、気持ちいいよぉ……」
「うぅ……、ウチもぉ、おちんちん限界ぃ……。佐奈の指が……ヌルヌルがぁ……、い、いいよぉ……」
 佐奈たちはいつのまにかお互いの動きを合わせて、ローションを塗り合っていました。体をこすり合わせて、バターのように溶け合っていました。
 ああ……も、もうダメです! 佐奈は悠紀のモノから手を離します。そして悠紀の肩を掴みます。
「もういいよおぉっ! いいのっ! もういいからっ……」
「……え? あ、ああ」
 悠紀の手も止まりました。そうです、ここでイっちゃうワケにはいきません。……入れなくっちゃ。悠紀に、ちゃんと犯してもらわなくっちゃ!
 佐奈はコロンと後ろに倒れます。そして、自分の膝の裏を手で持って、左右に広げます。
 M字型に広がった足の真ん中に、痛いほど勃起したペニスが見えます。その下には、悠紀の指でドロドロになったアヌスがあります。
 息をするたびに穴が収縮するのが自分でも分かります。恥ずかしいけど、悠紀にはもっと見て欲しいです。悠紀に見られている、そう思うだけで、頭が壊れてしまいそうです。
「いいよぉ、悠紀……。入れてぇ……。佐奈の中でぇ、……おもいっきり、射精してぇ……」
 甘えん坊なおねだり声が、自然と出てしまいます。ああ、もう本当に死んじゃいそうです。
「さ、……佐奈ぁ、……さなあぁっ!!」
 悠紀は叫びながら佐奈の足をさらに両手で広げ、お尻に自分のペニスを押し当てました。
「あぁ……、や、ヌルヌルする……、入らない……、入らないよぉ……!」
 悠紀は腰を振りながら、懸命に佐奈のお尻にペニスを突き入れようとします。しかし、熱い亀頭は佐奈の双丘を滑り、思ったところにいかないようです。
「悠紀……、慌てないで……、ほら、ここだよぉ。ここに、入れてぇ……」
 佐奈はお尻を両手で掴んで、さらに割ります。広がったお尻の穴がヒクヒクいっちゃってます。
「あぁ、い……、入れるよぉ……今、入れよぉっ!」
 悠紀は自分のペニスを掴み、狙いを定めます、ついに入り口に先端があてがわれ、そのままグイと体重がかけられます。
 ググウゥッ……、ズッ! ズヌウゥッ! ズウゥッ……グプンッ!!
「あああぁぁっん! ふあぁっ……、あ、熱い……、熱いの、入ったぁ……、入っちゃったあぁっ……」
 ついに佐奈の中に悠紀のおちんちんが挿入されました。溶けきったアヌスはカリ首の進入を許すと、後は一気に肉茎を飲み込んでしまいました。
「ふうぅ……、う、うあっ……佐奈の中、トロトロだよぉ……。でも、なに……? なんだかキュウキュウと絡みついて……、や、やだぁ……、気持ちいいよぉ……」
 悠紀が熱に浮かされたような声で、佐奈の感触を教えてくれます。そして悠紀はそのままおずおずと腰を振り始めます。
 グジュウゥッ……ブジュッ……グウゥッ、ブジュッ、ブジュッ、ブジュウウゥゥッ!
 イヤらしい粘着音を立てて、ペニスが出し入れされます。
「あんっ! ふうぅっ……ふあっ! あっ! あぁっ! ひっ……ひやあぁっ! あっ、あああぁぁっ!」
 佐奈はとても初めてとは思えない声を上げて、よがり狂います。恥ずかしいけど止められません。もうまるっきり女の子です。
 悠紀の腰が佐奈のお尻にパチパチと当たります。佐奈はお尻のお肉を揺らしながら、悠紀の体重をかけたピストンを受け止めます。ペニスの出し入れがさらに激しくなり、お尻の穴はどんどん熱くなります。
 抜かれると、ブジュッと音がして、直腸が灼けてしまいそうです。挿れられると、前立腺がガツンと押されて、そのたびにのけぞります。
 もうたまりません。佐奈はスカートの裾をたくし上げ、胸までまくります。そして、露出したおっぱいを両手で揉みしだきます。
 右手で左の乳首、左手で右の乳首をひねります。手を交差させて、体をくねらせながら悶えます。もう佐奈はエロすぎます。気持ちよすぎて気が狂いそうです。
「佐奈ぁ……、気持ちいいのぉ? ウチぃ……、ウチのおちんちん、気持ちいいのぉ……?」
「うああぁ……、うぅ……、うぐうぅっ! うっ、うああぁっ! ああぁっ!」
 佐奈はもう言葉を喋ることができません。ただ、悠紀の問いに首をカクカクと縦に振ります。
「あぁ……でも、佐奈のおちんちん……何もしてないよぉ。何もしてないのに……、 お尻だけで……そんなにいいのぉ……?」
「ああぁ……、うっ! うぅっ! うふうぅぅっ! あはあぁっ……、あっ、あううぅっ!」
 ダメです、間抜けなよがり声ばかりで返事ができません。
 でも、気持ちいいのです。とっても恥ずかしいけど、佐奈はエロいから、お尻とおっぱいだけでこんなに感じてしまうんです。
 そして、悠紀は佐奈の空いているペニスに狙いを定めてきました。悠紀は佐奈の開いた太ももを強引に閉じさせて、両手で抱え込みました。
「あぐうぅっ! ぐっ……うぅっ!」
 佐奈は両足を天井に突き立てるような形になります。快感に引きつった指先はピンとのびきり、プルプルと震えます。
 悠紀は二の腕で佐奈の足を挟みながら、両手で佐奈の包茎ペニスを握り始めました。悠紀の掌はまだローショに濡れたままで、佐奈のペニスは粘着質の液体でゴシゴシとしごかれました。
「…………っ! かっ……うああぁっ! ひぃっ! ひっ! いぎいぃっ!」
 佐奈の快感は極限まで突き上げられました。全身に高圧電流が流されたようなショックです。体が勝手に反り返り、右や左にねじられます。
 体の芯を悠紀のペニスがガンガンと突きまくります。おっぱいとお尻とおちんちん、全部の快感がもっと大きな一つの快感になって、佐奈の脳を揺らします。
「佐奈ぁっ! 佐奈あぁっ! いいよぉっ! ウチぃ……もう、ダメだよぉっ! 佐奈が気持ちいいのぉ……、あったかいお尻も、柔らかい足も、震えるおちんちんも、全部気持ちいいのおぉっ!」
「ああぁっ! あっ! あぁっ! いやあぁぁっ! いっ、いひいぃっ!」
 せっぱ詰まった告白で、悠紀の限界も近いことが伝わります。もう、佐奈も耐えられません。全身がビクビクと引きつって、背筋が震えます。
 イきます。もう佐奈は射精します。イく……、イくっ、イくうぅっ!!
「うぐうぅっ! うっ、うあああぁっ!!」
 ドビュウウゥッ! ビュルルゥッ! ビュルウゥッ! ビュルッ! ビュウゥッ! ビュク! ビュウゥゥッ!
 一際、甲高い叫び声を上げて、佐奈は絶頂「に達しました。熱い精液が精輸管を駆け抜け、バシャバシャと佐奈のお腹や胸、そして青いコスプレ衣装に降りかかりました。
「ああぁっ! 佐奈ぁっ! 佐奈あぁっ!!」
 ドビュルルウゥッ! ドビュウゥッ! ドブンッ! ブリュウウゥッ! ビュクンッ! ビュルッ! ビュルルウゥッ!
 悠紀も佐奈のお尻の奥に、煮えたぎった精液を穿ちました。熱い衝撃が佐奈の体に染み渡り、お腹が煮溶けてしまいそうでした。
 佐奈たちは同時に達しました。佐奈は、自分と悠紀の射精二人分の快感を一気に叩きつけられたように感じました。
 そして、悠紀もそんな風に感じているのだろうと、なぜか確信していました。
 素直に……、セックスってすごいなって思いました。
 佐奈と悠紀はしばらく間抜けな体位のまま硬直していましたが、やがて力も抜け、ズルリと悠紀のおちんちんがお尻から抜けました。それはまた気持ちよくって、佐奈は小さくうめきました。
 悠紀はよろよろと這いながら、佐奈の横までやってきました。そして、そこで力尽きて床に崩れ落ちました。
 非道い格好です。ピンク色のかわいい衣装は精液やローションにまみれ、激しい体位の結果、もうグチャグチャです。
 顔は涙と精液にまみれています。フードは頭からずりおちて、髪も乱れきっています。
 なんて、かわいいんだろう。悠紀、かわいい……。
「佐奈……、かわいいなぁ」
 先に言われちゃいました。そっか、たぶん佐奈も同じような格好になっちゃってます。ちょっと、恥ずかしいです。
 じゃあ、今、佐奈がして欲しいことも、悠紀は分かってくれるのでしょうか。
 分かってくれたみたいです。悠紀の顔が近づいてきます。
 ……キス、されてしまいました。



「あー……、バカだなぁ……」
「ああ馬鹿だ。佐奈、お前は馬鹿だ」
「……いや……そうかなぁ、悪いのは暴走した悠紀って可能性もあるよ?」
「暴走したのは佐奈の方だろおぉっ!!」
 そうでしょうか? まあそんな気もしますけど。でも悠紀だってのりのりでしたし、ねぇ。
 いやしかし、佐奈はすっかり忘れていました。
 ……録画。
 そもそも今日は初体験を撮影しようってイベントだったのに、なんかいきおいで始めてしまったため、いつのまにかビデオカメラのことなんてすっかり頭から抜け落ちていました。
「はあぁ……」
 佐奈の溜め息は結構重いです。貴重なロストバージン、まあ処女膜があるわけじゃないけど、それだって一回きりの体験です。もう取り戻すことはできません。
 なんで、忘れちゃうかなぁ、こんな大切なこと……。バカ、佐奈のバカぁ。
 よっぽど非道い顔になっていたのか、肩を落とした佐奈を見て、悠紀は優しく頭を撫で始めました。
「まあ、いいじゃん、これからいくらだってできるよ。俺もさ、佐奈が望むならどんな格好でもしてあげる。だから、そんな顔するなよ」
「……ほ、ホントに?」
「ああ、俺も腹くくった」
 悠紀も軽い溜め息を吐くと、天井を見上げて言いました。
「まだ、自分がかわいいなんて思えないけどさ。でも、佐奈がかわいいっていってくれるなら、それ以上望むものなんてないよ。世界一かわいい佐奈が認めてくれるなら、もう、それでいいんだ」
「そっかぁ」
 悠紀がちょっとだけこちら側に踏み込んでくれました。まだ自分のかわいらしさに気づかないのもどうかと思うけど、まぁ、いいです。これからもっとかわいくなっちゃいましょう、お互いに。
 あ、そうだ。そこまで言ってくれるなら、まだ夢がかなうチャンスがあります。
「そうだね、じゃあ今度こそちゃんと録画しよう」
「え?」
「悠紀の、ロストバージン♪」
 悠紀の顔が引きつり、足が少しずつあとざすります。
「あ……? いや、ちょっと待てください、佐奈さん。言っている意味がよく理解できないのですが……」
「えっと、分かりやすく言えば、……攻守交代?」
 悠紀の顔から真っ青になります。血の気の引く音がここまで聞こえるようです。
 でも、もう逃がしません。佐奈は一歩前に出て、悠紀の肩に手をかけます。
「どーんな格好でもしてくれるって言ったもんね。佐奈、なんでも用意しちゃう。制服だって、ネコ耳だって、ベルトだらけのボンデージだって。そして、悠紀のよがり顔を、かぶりつきで撮ってあげちゃう」
 悠紀の顔が泣きそうです。あー、もう、かわいいなぁ!
 だから、少し背伸びして、キスしちゃいました。……ほら、もう逃げられません。

 お互い様です。佐奈だって悠紀からは、とっくに逃げられないんですから。

(了)

[投下 : 2chエロパロ板『女装空想小説』 2004年02月06日(635〜651)]

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