「じゃあさ、僕とつきあわない?」
…………やっと言えた。このたった一言を、自然な会話の流れに織り込むのに何日もかかった。
この後、『なに言うてんの?』と言われて『冗談だよー』の一言ですませる。それが僕の予定だった。
友情を壊さないように細心の注意を払った、とても卑怯な愛の告白。
でも、僕は誠くんが好きだった。どうしても、どんなにくだらない方法でも、その想いを伝えたかった。
誠くんが返した答えは、あまりにも意外だった。
「ん? ウチ超M奴隷なんやけど、それでもええのん?」
「大阪でなぁ、飼われてたんよ」
放課後、僕たちはファミレスに寄った。誠くんはホットミルクに砂糖をドバドバ入れながら話し始めた。発言も行動もエキセントリックだった。
「初めの男が悪い奴でなぁ、さらわれたんよ、ウチ。そこで徹底的に仕込まれてなぁ……。ペニバンつけられたままアナルにバイブ入れられて、三日間放置。思い出しただけでも泣けてくるわ」
誠くんの声は高くてよく通る。周りの客、ドン引き……。
「まぁ、クスリを使われんかったのはラッキーやったわ。で、どうにかそこから逃げたんやけど、対抗組織に捕まってな」
「組織って……」
「そこでもまぁ、よう犯られたわぁ……。でも若頭がいい人でな、よーくかわいがってくれたんよ、ウチのこと。あぁ、あれはよかったわぁ……」
頭がクラクラしてきた。誠くん……、顔赤らめてなに言ってるの?
「でも、初めの男がやっぱちょっかい出してきてな、なんか抗争が始まってん。若頭も死んじゃって、ウチは厄ネタってことでこっちによこされた。それが二ヶ月前」
「はぁ……」
僕のクラスに転校してきた時だ。学ランを着たポニーテールの美少女、それが僕の誠くんに対する第一印象だった。
誠くんはそこまで話すと、ホットミルクに口をつけた。……あれ、本当に飲むんだ。
「ふぅ、これがウチの正体や。どう、まだウチとつきあう気ある……?」
「いや……、ちょっと待って……」
「そんな気は無い、って薫が言ってくれれば、この話は全部『冗談やー』の一言でオチがつく」
「…………それは、僕が言うセリフだったのにぃ」
「は?」
「ううん、なんでもない……」
頭が混乱していた。こんな話になるなんて思わなかった。
僕はただ、後悔のない青春の一ページを作りたいだけだった。報われない初恋で全然よかった。
……会話が途切れた。僕は投げられたボールを返さなければならない。
「……僕はさぁ、……誠くんが好きなんだ」
ついに言ってしまった。もう何度も何度も頭の中で繰り返してきた言葉だった。
「誠くんが好き……。かっこいいんだ、誠くんは」
「ウチ……、かっこいい?」
「うん。なんでもポンポン言える所とか、かっこいい。なんでも一生懸命な所とか、かっこいい」
「学校久しぶりやからな、はしゃいでるだけや」
「よく授業中、先生に質問するよね? 苦笑いでさぁ。僕、あぁいうのできないんだ。恥ずかしくて」
「まぁ、恥ずかしいわな。……ウチ阿呆やから」
「ほら、そういう風に自分を言えちゃうところとかさ……、凄くかっこいいと思うんだ、僕は……」
「なんや、よぉ分からんのぉ」
本当によく分からなかった。僕は脳が熱くなって、もういっぱいいっぱいだった。
いつの間にか僕は半泣きで、誠くんは半笑いになっていた。
「……それにしても、『かっこいい』は初めて言われたなぁ。『かわいい』は何万回も言われたけど」
誠くんは涙ににじんだ僕の瞳をのぞき込んだ。僕の心まで見通すように、じっと見つめた。
そして本当に、何かを見抜いたようだ。
「よっしゃ、じゃあ一回やってみよ。そうすればなにか分かるやろ」
「やるって、何を……?」
「エロいこと」
誠くんはホットミルクを一気に飲み込んだ。
シャワーの先端からは、すぐに熱いお湯が出てきた。
高級マンションの最上階、そこが誠くんの家だった。部屋数は少ないみたいだけど、広い。湯船の大きさも我が家の倍ありそうだ。
「やっぱりさっきの話、本当なんだ……」
この家は、誠くんの言う『組織』の持ち物らしい。誠くんはこんなところで、ほとぼりが冷めるまで一人で暮らし続けるという……。
僕はこの家についていきなり、お風呂に通された。
「シャワー浴びてからの方がええやろ。それとも初めから、汗汁まみれのアブノーマルな方、いっとくか?」
「ノーマルでお願いします……」
誠くんは、僕とセックスしてみようと言う。……とんでもない。
この状況が嬉しいのかどうなのかも、今の僕には分からない。
誠くんとのセックスを今まで想像しなかったと言えば、嘘になる。むしろ毎晩していた。でもこれは、いくらなんでもいきなりすぎた。
そのくせ、僕は誠くんの家で裸になっているというだけで、もう勃起していた。……恥ずかしい。恥ずかしすぎるよ、これは。
「はいるでー」
「え……? え、えぇ!?」
いきなりドアが開いた。誠くんも裸になってお風呂場に入ってきた。僕は慌てて、手で前を隠す。
「なんや、恥ずかしがることないやん。友達やろ、ウチら」
「いや、だって……、でも……、でもさぁ!」
「それとも、もしかして、……恥ずかしいことになっちゃってるんかぁ?」
僕は思わず下を向いてしまう。……駄目だ。こいつ、全部お見通しだ。
「薫、こっち向きぃ」
「え?」
顔を上げた瞬間、キスされた。
僕はたっぷり三秒間混乱した。そして、自分に起こった現実を認識した瞬間、後ろに飛び退いた。床にたまった水がはねる。
「な……、な……、なにぃ!?」
「奪っちゃったぁ」
誠くんは小悪魔チックに微笑み、自分の唇を舌で舐めた。
「ファーストキスは普通にしとこうと思ってな。ウチ、そういうことできへんかったから」
「…………あ」
さらわれた、って言ってたっけ……。
「……ありゃ、そんな顔を見たくて、したわけやないんやけどなぁ」
「…………ごめん」
「だからぁ……!」
今度は頭を掴まれて、キスされた。柔らかい唇が押しつけられ、舌が僕の中に割って入ってきた。
歯を舐められると、口が勝手に開いてしまうことを初めて知った。そして、強引に舌を吸われた。引きずり出された舌を、今度はなぶられた。唾液が流れ込んできて、それは自然にのどの奥に滑っていった。
「ふっ……、んうっ……」
気持ちよかった。僕の舌も誠くんに合わせて動いていた。もっと気持ちよくなるように、必死に暴れていた。
ようやく長いキスが終わった。僕は膝が笑っていて、慌てて誠くんの肩にしがみついた。
「うん、そう言う顔を見たかったんや」
僕は今、どんな顔をしてるんだろう。たぶん、すごくエロい顔だ。涙目で、口半開きなユルユルの顔……。
「じゃあ、一緒にお風呂入ろ、な」
湯船には二人で入れた。お湯が縁から溢れ、排水溝に渦を巻いて流れていった。僕たちはお湯の中で向かい合った。
「薫、ずっとチンポ勃ちっぱなしやん。エロいなぁ」
「……それ以上虐めたら、僕泣くよ」
「それ、虐めてくれって言ってるのと一緒やでぇ」
なんか誠くんはエロ親父モードだ。ニヤニヤ笑いながら値踏みでもするように僕を見る。
「なぁ、薫。ウチのこと考えてオナニーとかしたん?」
「…………したよ」
しょうがない。僕は誠くんに全部合わせることにした。もうどうにでもしてくれ。
「犯したん? 犯されたん?」
「両方考えた。全部考えたんじゃないかな、誠くんとできそうなことは。とにかくいっぱい考えたよ……」
「へぇ、じゃあどんな風にやるのん? オナニー」
「……うぅ、……お風呂でさ、この縁のところに座るんだ。お尻の間で縁を挟んで、腰振りながらチンチンしごいたんだ……」
「効率的やん。やるなぁ♪」
「もう…… 、何とでも言って…………」
僕はブクブクとお湯の中に頭を沈めた。もう恥ずかしすぎて、逃げ左巻きだ。
「でも大事なことやで! 自分、今日はどうされたいん?!」
誠くんのよく通る声はお風呂場で反響し、水の中の僕にも確かに聞こえた。
「犯されたい、……だと思う」
家は暖房で暖まっていた。僕たちは裸のままリビングで話し合った。まだ僕は勃起し続けていたけど、落ち着かせるのは諦めた。誠くんの裸なんて見てたら、そんなこと無理だ。
「まぁ、裏筋こすりながらシコってたくらいやしな。そうやろ」
「うあぁ……」
もうこれは羞恥プレイってやつではないのだろうか。僕は恥ずかしくって死にそうだ。
「そうへこむなや。昔はウチもそうしてたんや。チンポ擦りながら股の下グリグリ押したりな。そのうち尻の穴に指入れたりとか」
……実は僕もやっていた。どうしても気持ちよくなりたいときは、指にシャンプーを塗ってお尻に入れていた。
「ファミレスで、『かっこいい』って薫が言ったとき、思ったんや。ウチらは似たものどうしかもしれんってな」
「似てる……?」
意外な言葉だった。抗争の原因をつくる程の美少年である誠くんと、ただのチビ助の僕が、似てる?
「ああ、たぶんジグソーパズルのおんなじピースや。同じ性癖の変態さん。そっくりやで」
「そうなのかな……」
「そうや」
そう言うと誠くんは僕の前に身を乗り出してきた。顔がゼロ距離まで近づく。
しかし、衝撃は僕の胸に走った。誠くんはいきなり僕の左乳首をひねり上げた。
「ぎっ……!!」
ギチギチと肉がちぎれるような音が聞こえる。誠くんは本気で僕のおっぱいをひねっている。そして、少しずつひねる角度が深くなっていく。
「いっ……、いだぁ……、あっ、いた……いよぉ……」
誠くんは限界までひねると、今度はそれを引っぱった。力を精一杯入れている誠くんの指はプルプルと震えている。
「か……、かはぁ……」
僕は顔を歪ませ、激痛に耐える。とっくに潤んでいた目からは涙がこぼれ落ちる。
誠くんはその腕を真後ろに振った。ピシンッ、と指から離れた僕の乳首が、弾力で跳ね上がる。
「あがぁっ!!」
僕は背中が反り返り、ソファーに寄りかかった。脱力した体が、柔らかいスプリングに吸い込まれる。
誠くんは何も言わずに、今度はさっきまでひねっていた乳首を唇で吸い始めた。
「あはぁ……、ふわあぁ…………」
僕の口からはおかしな声が出始めていた。とてもやらしい、女の子みたいな喘ぎ声だった。
乳首が口に含まれながら、優しく舌でころがされる。ジンジンとした痛みが、全部快楽に変換されていく。
「まぁ……、まことぉ……くんっ……、あぁ……、はあぁ……」
「ええやろ」
誠くんが、乳首から口を離した。
「こんなんがええねん。痛くされたあと、ちょっと優しくされただけでチンチンプルプルや」
僕が下を見ると、そこには先汁がでている自分のチンポがあった。たしかに、それはもう激しい心臓の鼓動に合わせてビクビクと震えていた。
「変態やなぁ、自分……」
パンッ!!
誠くんが僕の右頬を叩き、乾いた音がリビングに鳴り響いた。
往復で左の頬も叩かれた。顔がまんべんなく熱を持ち、痛み出した。
「いたぁ……、いたいよぉ……」
「でもなぁ……、こうすると気持ちええやろ」
今度は、頬を撫でられた。ゆっくりと両手で、陶器を磨くような、柔らかい手つきで……。
「はぁ……、はあぁ……、あぁ……、ああぁ……」
僕の息は荒くなっていた。……興奮してる。飴と鞭の連続した波に、どうしようもなく反応してしまう。
「じゃあ、もっと痛いのいってみよか」
ドスゥッ!!
「ぐがあぁっ?!」
誠くんは僕のみぞおちを殴った。僕は息が詰まる。目の前が一瞬で暗くなる。体から重力が無くなる。
僕はソファーから落ち、フローリングの床に突っ伏した。
僕を砂にした誠くんは、お尻を踏み始めた。グリグリとひねりながら、かける体重を増やしていく。
「ぎぃ……、いがあぁ……、あぁ……、あはあぁ……」
僕の硬くなっていた陰茎が、木の板とお腹の間でなぶられる。そして、これはとても痛くて、とても気持ちがいい。いまにも射精してしまいそうだ。
「踏まれてよがってるなんて、ほんま自分最低や。動物以下やん……」
誠くんは冷静な声で、僕を耳からもなぶる。僕の声は引きつった嗚咽に変わっていく。
「うあぁ、うわあぁ……、ああぁ……、ひいっ! ひやああぁっ……!」
「泣いてるん? そこまでして男を誘いたいん!?」
誠くんは僕の尻を思いっきり踏みつけた。海綿体がつぶれ、どうしようもない痛みが全身を駆けめぐる。
「があぁっ!!」
僕の上げた悲鳴は確かに動物のようだった。床に爪を立てたが、それは空しくフローリングの上を滑った。
「うあぁ……、あぁ……、ああぁ……」
誠くんの足は離れたが、僕はもう立つこともできなかった。変な呻き声をだして、床でガタガタ震えていた。
「準備はいいようやね。じゃあ、そろそろ本番いこか」
「…………うあぁ?」
異物が、僕の肛門に滑り込んできた。
「なぁ……、なにぃっ?!」
「怖がんなや。ただの指やん。まぁ、ローションは最低限の量しか使わんけどな。ギチギチいわしたるよ」
僕は腰をむりやり持ち上げられた。そして、お尻の中心にとても熱いモノが押し当てられる。
ギリッ! ズグウウゥッ! ズギュウッ! グウッ! グジュウゥッ!
「んぐうぅっ! うあぁっ! ああぁっ! ……うあああぁぁっ!!」
熱かった。誠くんモノはとても熱かった。灼熱の肉茎が僕の中をギリギリとこすった。
根本までペニスが入れられると、誠くんはゆっくりと動き始めた。摩擦が強すぎて大きなピストンにはならなかったが、誠くんの全体重はお尻のただ一点にかけられた。
「くうっ、あっ……はあっ! やあぁっ! ひっ! ……だ、だめえぇっ!!」
「ははっ、ええのん? なぁ、ここがええのん?」
「いっ! いいよぉ! そこぉ……。おしりぃ……、おしりがぁ……、いぃっ! いいのおぉっ!!」
いやらしい言葉が自然に口に出た。声のオクターブが一個上がっていた。
本当に気持ちよかった。自分ではいじることのできない奥のスイッチをガンガン押された。
「薫の中、キュウキュウいってるで……、はやいなぁ……、もうイくん?」
「ああぁ! わかんないっ! ぼくぅ……、もう……わかんないよおぉっ!!」
「ええよ……、とどめさしたる……」
ズパアァンッ!
お尻を横から平手で、力任せに叩かれた。その瞬間、まるでスタンガンを押しつけられたような衝撃が前立腺を駆け抜けた。
「いぎぃっ! ひっ、ひあぁ……、あああぁぁっ!」
ドビュウゥッ! ビュキュウゥッ! ビュクンッ! ビュウゥッ! ビュン! ビュウウゥッ!
僕は射精した。床に大量の白い樹液が叩きつけられ、跳ねた。震える僕のチンポはさらに周りに精液をまき散らし、あたりを汚した。
誠くんは力無く崩れる僕から、自分のモノを抜いた。
僕は一人で果てていた。ケツ穴を犯されて、誠くんをおいて射精した。
……最低だ。僕は最低のマゾ奴隷だ。
「ははっ、かおるぅ……。かおるさぁ…………」
「うあぁ……、あぁ……」
ごめん、誠くん。僕はもうまともに喋ることもできない。
「ごめんなぁ、ウチ……、ウチもぉ…………、せつなくぅ……、せつなくなっちゃってん………」
「ふぁ……?」
……誠くんは泣き声だった。
僕は上手く力の入らない体をむりやりひねり、誠くんの方に首を向けた。
そこには、いままで見たことのない顔をした誠くんがいた。
目も口もだらしなくとろけていた。涙が一筋、赤く染まった頬を伝っていた。どんな男も女も、絶対に逆らうことのできない、妖しい表情だった。
「掘ってえぇ……」
ろれつも上手く回っていない。でも、とてもいやらしい声……。
「もうケツ穴せつないねん……、ウチのケツ……掘ってぇ! お願い……、グジャグジャにしてぇ……!」
僕はまだ、射精の虚脱感に捕らわれていたが、どうにか膝立ちすることはできた。肩を小刻みに震わせながら泣いている誠くんと対峙する。
「虐めてぇ……」
誠くんに逆らうことはできなかった。僕は誠くんの右頬を拳骨で殴った。
「ぐうっ!!」
誠くんは床に転がった。殴った頬が赤く腫れあがる。僕の手も痛い。
「はは、ええのぉ……。痛いのええのぉ……。もっと、もっとしてぇ……!!」
僕は誠くんのそばにより、自分がやられた要領で乳首をひねった。誠くんは喘ぎながら、体をのたうたせる。
僕は続けて頬を叩き、腹を殴りった。そし徹底的に陰茎をなぶった。
そのたびに、誠くんは泣きながら笑い、転がりながら震えた。猫がじゃれているようにも見えるが、内容は凄惨だった。
そして、痣だらけになった誠くんは、自分から股を開き、お尻の穴を両手で広げた。
「ええよぉ……。熱いの、ぶちこんでぇ……!」
僕は狙いを定めて、慎重に自分のモノを押し込んでいった。それは吸い込まれるように入っていった。
「あはあぁ……、ちんぽぉ……、ちんぽぉ……、あぁ、あついぃ……」
僕も熱かった。まるで溶岩の中に突っ込んでいるみたいだった。そして、それはとても柔らかく、グニャグニャに動いていた。
勝手に腰がカクカクと動いた。気持ちいい。なにか吸い付いてくるみたいだ。誠くんの中が気持ちいい。
その時、誠くんが僕の太ももに爪を立て、思いっきり引っ掻いた。
「うああぁっ!」
みみず腫れになった傷は、また快感になった。そうか、痛いのが気持ちいいんだ……。
僕は誠くんを犯しながら、その胸に爪を立てた。誠くんが苦悶の表情でうめく。
誠くんが僕を叩いた。僕は誠くんを殴った。そして、お互いに爪で肌を掻いた。つねった。チンポをひねった。
僕たちの声はどんどん大きく、甲高いものになってきた。その内容も意味をなさなくなっていた。
「かおるぅ……! ひぎいぃっ! いじめてぇっ! いじめるからぁっ! いたいぃっ! いあぁっ!!」
「ひいぃっ! まことぉっ! あぐっ! いだいよぉ! いいよぉ! いいっ! いぎいいぃっ!!」
狂った譫言をわめきながら、僕たちはお互いを傷つけあった。
醜く、無様なセックスだった。でもこれが、お互いに愛し合おうとした結果だった。
ジグソーパズルの同じピース。まったく同じ形でも、ハマることのない二つの欠片。
……でも、愛してる。僕はこの少年を愛している。誠くんはデタラメに汚く、かわいい、最悪の男の子だった
「うあぁ、でるうぅ! イく! イくよぉ! まこと……くんっ……! あああぁぁっ!!」
「ええよぉ! チンポ……、チンポつぶしてぇ! ウチもぉ! うちもイくうぅっ!」
誠くんは僕の肩を掴み、爪を立てて握りしめた。皮膚が破れ、血が吹き出る。
「ぎいっ! あぁ……、あっ、うああぁぁっ!!」
ドビュウウゥッ! ビュリュウウゥッ! ビュクンッ! ビュン! ブビュウウゥッ!
僕は射精と同時に、誠くんの海綿体を握りつぶした。
「あがあぁっ! かっ、かはぁ……、あああぁぁっ!!」
誠くんも痙攣しながら絶頂を迎えた。
僕は力を失い、誠くんの隣に崩れた。誠くんのチンポは壊れた水道のようにダクダクと精液を吐き出していた。
もうピクリとも動くことはできなかった。僕たち二人は、そのまま床の上で眠った。
朝。マンション最上階から眺める景色は綺麗だった。こんな風景が毎日見られるなら、ここの生活も捨てたもんじゃなのかもしれない。
もっとも、僕たちはの体調は最悪だった。体中が傷だらけの痣だらけだし、硬い床で寝たから関節がガクガクしていた。鏡を見たら、頬が大きく腫れあがっていた。
「飯できたでー」
「はーい」
ダイニングキッチンには二人分のトーストとサラダ、それにミルクが並んでいた。誠くんはやっぱり砂糖をミルクの中にダバダバ入れている。
僕たちは席に着き、食事を始めた。
「……まぁ、やっぱ無茶苦茶やったな。Mが攻めに回ると際限が無くなるって言うけど、ほんまやったんやなぁ」
なんか他人事っぽい言い方だ。当事者のくせに。
「勝手に暴走した、誠くんが悪いんじゃん……」
「薫だって、ひどいもんやったでぇ」
確かに、昨日の僕たちはデタラメもいいとこだった。僕は初体験だったけど、あれがとてもまともなセックスとは思えない。あんなので処女も童貞も捨てちゃったんだなぁ、僕は。
「……でも、後悔はないよ」
「ほうかぁ」
そう、それは本心だった。
「誠くんはジグソーパズルの同じピースって言ったよね。……その意味は痛いほど理解したよ」
「文字通りってやつやね」
誠くんは微笑む。意地悪く、そして、とてもかわいらしく。
「でもさ、ジグソーパズルやってると、まったく関係ないピースでも合っちゃうことってあるじゃん。それが同じピースでも、凸凹は合っちゃうかもしれないよ」
「ポジティブやねぇ」
「そうさ」
僕はミルクに口をつけた。
……!?
甘い! 死ぬほど甘い! もちろん僕はミルクに砂糖なんて入れない。こっそり入れたのは誠くんだ。
でも、僕は口を離さなかった。我慢してそれを一気に飲み干した。
「ぷはぁ!」
「うわぁ、がんばるなぁ……」
「ふん、なんてことないね。このくらい……」
もちろん強がりだった。もう涙目。飽和ギリギリまで砂糖入れたんじゃないのか、このミルク……。
誠くんは、なんかとても嬉しそうだった。ケタケタと笑いながら僕に近づいてくる。
そして、頬を撫でられた。優しい目で僕を見つめている。
「……じゃあ、ご褒美なぁ」
キスされた。それは、今飲んだミルクよりまだ甘かった。
(了)
|