『ラブ・ラブ・モード : インサマー』

「まだかな、まだかな〜♪ 優くんの〜、お着替えまだかな〜♪(学研のおばさんの節で)」
 シャワー室の前で楽しそうに歌う高梨さん。もう恐ろしいまでのテンションの高さだ。
 一方、シャワー室の中の僕はといえば、これが最悪の気分だったりする。まったく、変態さんの考えることは底が見えない。
(なんで……、なんでこんな人を好きになってしまったんだろう……ッ!)
 いや、いくら後悔しても、もうどうしようもない。僕は意を決して扉を開ける。
 瞳の中に、眩むような太陽が飛び込んでくる。
 深すぎるくらいの青い空に、そびえ立つ入道雲。あっという間に汗ばむ肌はまさに夏の空気だ。
 そして、チーズの様にとろける高梨さんの笑顔……。
「は……ははッ、ははははははッ! 優くん、すごい、最高ッ! あーッもう、なんでこんなに可愛いんだろうッ! もう犯罪だよ、性犯罪ッ! うあああぁぁ……、なんかこのまま優くんの可愛さを大声で叫びながら街に飛び出したい気分だッ!」
「やめてえぇッ!!」
 僕の絶叫は、はたして高梨さんに聞こえたのだろうか。彼はいきなり庭へと駆け出した。
「あ……ッ」
 そして走り幅跳びの要領で大ジャンプ、プールに飛び込む。
 ドボオオオオォォォン!!
 もの凄い高さの水柱が豪邸の庭にそびえ立つ。遅れて飛沫が落下し、まるでスコールでも来たかのようにプールサイドが濡れる。
「高梨さぁん……」
 僕は呆れてモノも言えない。もう、なんなんだろう、この人は……。
「ぶはあぁッ! ほらー、はやく優くんも来なよー。気持ちいいよー」
「いや、でもさー……」
 さすがの僕でも、この状況では足がすくむ。いくらここが僕たち以外に誰もいない空間だからって、スグに動き出すコトなんて出来やしない。
 ――だって、僕が今着ているのは『ピンクのビキニ』なんだからッ!
「もー、優くんノリ悪いぞー。ここまで来ておいて楽しまないなんて損! 早くおいでー」
「……もう」
 僕は仕方なく足をプールに向ける。
 灼けたプールサイドが足の裏に熱い。そして、目の前に広がるのは絵の具のパレットみたいな形(クニャッと丸いやつ)をしたプールの水面だ。
「はぁ……」
 思わずため息が出る。……これが、個人の所有物かぁ。

 実はココ、高梨さんのお客様のご自宅だ。どこかの社長さんの家だとか、なんとか。
 その敷地は僕の住んでる団地一棟ならまるまる入ってしまうんじゃないかというくらい広い。こんな家が都内にあるということだけでも世間知らずの僕には驚きだ。本宅やら離れやらガレージやら、そして中庭にはプールやらまでがドーンと設置されている。
 で、夏の間だけこの家の人は海外に旅行するということになり、懇意にしていた高梨さんが留守中に借りることができたというワケだ。
 夏休みの直前、僕は高梨さんにその話を振られた。
「ふーん、広い家だとやっぱお仕事ってはかどるんだ」
「いや、別に仕事のために借りたんじゃ無いよ。目的は……」
 高梨さんはクローゼットの中を漁り、目的のブツを取り出した。
「これを是非、優くんに着てもらおうと思ってさ♪」
 それは、ピンク色をしたビキニの上だった。ほとんどカップのついていないところをみると、低年齢用。いや、この人の場合、まさか男子用……。
「失礼します」
 僕はいそいで荷物をまとめた。
「いやーッ! これ優くんの為に作ったのーッ! 着てーッ! これ着てーッ! 着てくれなくっちゃ死んじゃうってばーッ!」
「死んじゃえッ!」

 しかし今、僕はその強引な態度に押し切られて女性モノのビキニの水着を着込んでいる。
「まったくもう……。なんでこんなこと……」
 この水着……、いや僕に言わせればこんなの水着じゃない。『紐』だ。
 まず上。もちろん僕にはオッパイなんて無いから三角形の布がただ胸に張り付いているだけだ。しかもその面積は異様に小さく、ちょうど乳輪が隠れる程度くらいしかない。もうこの時点でエロ目的以外の利用方法はないだろう。
 さらに最悪なのが下。こちらはいわゆるTバックになっている。
 オチンチンを隠す布が僅かにあるが、それ以外は全部ただの細い紐だ。はいたところでどこかを隠すという目的は果たしていない。お尻はまるまる見えてしまい、食い込みが痛いくらいだ。
 前なんかも本当にギリギリで、僕の小さなペニスさえ容量ギリギリだった。ピンクの布地はもっこりふくらみ、中の形が分かってしまうくらい張り付いている。
 ――はっきり言う。裸の方がまだマシだ。
「ふわぁ……女神光臨……」
 高梨さんが水の中から熱っぽい視線で僕を見つめる。……バカだ。この人、真性のバカだ。
「あのさ、高梨さん。いくら高い壁があるからってさ、ここ仮にも住宅地なんだよ? 誰かに見られることだって……」
「遠目でしょ?」
「そりゃ……そうだけど」
「今の優くん見て、男だなんて思う人がいたらそいつの方が変態だね。大丈夫、すんごく似合ってるから」
 ……そんな問題じゃない気もする。でも、確かにココまで来てからグダグダ言ってもしょうがない。
 よし。
「じゃあ高梨さん、そこ動かないでね」
「はにゃ?」
 僕は数歩下がり、助走をとる。そして、
「ええぇーいッ!」
 僕は勢いをつけてプールに飛び込み、高梨さんへブランチャーをぶちかます。
 ドバアアァァーンッ。
 僕たちはもつれあいながら水の中へ。目の前はあぶくで真っ白になり、その向こうに悶絶する高梨さんの顔が見えた。



「水の中で優くんといろいろやってみようのコーナーッ! いえーい、ドンドンドン、ぱふぱふー♪」
「わーい……」
 恋人をここまで辱めておいて、この人はまだ何かやりたいことがあるらしい。背泳ぎでのんびりプールを泳いでいた僕を呼び止めて、高梨さんは何かを高らかと宣言し始めた。まったくもう……。
「まずやりたいのは、ダラララララララ……」
 それはドラムロールのつもりでしょうか?
「ダンッ! 水中でキスーッ!」
 僕はこんなバカな人なんて放っておいて水泳再開……、しかし高梨さんは後ろから肩を掴み、僕を強引に引き留める。
「いやあぁッ! お願いです、どうかつき合ってくださいッ! これだけはどうしてもやっておきたかったのーッ!」
「やだよ、そんな変なことッ!」
「変なことって、ほぼ毎日やってるじゃん」
「まあ、キスはね……」
「それを水中でするだけッ! ねえ、お願い……。これ、昔からやってみたかったんだよぉ……」
 どうやらこの変なシチュエーションに、高梨さんはそれなりのあこがれがあるらしい。しょうがない、僕は高梨さんと向かい合う。
「それで……、どうするの?」
 高梨さんは僕の両肩を掴む。
「それじゃ、いっせーのせで潜るよ。そうしたら、僕がキスするから……」
「はい……」
「じゃ。いっせーの……せッ!」
 ドプンッ! 僕たちは一緒に水の中へ潜った。
 音もしない水の中、軽くなる体をかがませながら僕は高梨さんを見つめる。高梨さんも僕の肩を掴みながらゆっくりと顔を近づけてくる。
 あ、触れるなって思った瞬間、
「ご、ごぼッ! ごぼッ!」
 高梨さんはいきなりむせ始め、急浮上した。何が起こったのか分からない僕も慌てて顔を上げる。
「な、何ッ?! どうしたのッ?!」
「ごぶ……ッ! ごほッ、ごほッ!」
 高梨さんは延々と咳き込んでいる。そして、
「舌を入れようと思ったら……、喉の奥まで水が来たぁ……」
「……バカでしょ? 高梨さん」

 いや、それにしても。
 まだゲフゲフとえづいている高梨さんを見るにつけ、僕は思ってしまったのだけど、……あの人、あんまり泳ぎが得意じゃないのじゃないだろうか?
 僕は水泳って得意で、水の中ならスイスイいけちゃう。今日だって高梨さんに構わず泳ぎっぱなしだ。
 それに比べてあの人、一応水に入ってはいるが、さっきからパシャパシャやっているだけで一向に泳ごうとしない。ちょっと口に水が入ったくらいでパニックになってたし。
「ふーん……」
 僕の中のイタズラ心がムクムクとふくれあがる。なんか今日はやられっぱなしだし、少しお返ししたい気分だ。
 それじゃ。
「えいッ」
 チャプン。と、僕は静かに水の中へ身を沈める。潜水進行、プールの底にお腹をこするくらい深く潜りながら、高梨さんへと近づいていく。
 高梨さんはまだ口を押さえて、水を吐き出している。よし。
 僕はそっと海パンに手をかける。そして、一気に下へ……ッ!
「うわッ?!」
 高梨さんの驚きの声は水の中まで響く。それでも僕はパンツを下ろして……、
 あれ?
 ……妙な引っかかり。お尻は確かにめくれているのだが、前の方ではゴムが何かに引っかかっている。まさか……ッ?!
「高梨さんッ! なんで勃っちゃってるのおぉっ?!」
 僕は水から上がって、声を張り上げる。
「あ……、ばれちゃった」
 一方の高梨さんはすまし顔。
「……もーッ! なんでこんな所で発情しちゃってんだよぉ」
「しょうがないじゃん。さっきからずっとだもん……」
 高梨さんはそう言うと、水をかき分けて僕に近づく。おそらく、海パンの中のオチンチンを、勃起させたまま……。
「シャワー室から優くんが出てきて、ずっと勃っちゃってる……。優くんが、可愛すぎるから……」
「高梨さん……」
 手がうなじに伸ばされ、指でそっと濡れた髪を撫でられる。僕はそんな高梨さんを拒めない。
 ちょっと、突然すぎるよぉ……ッ!
「あのさ……、ここプールなんだよ?」
「水の中でしてみたかったんだよ」
「……さっきので、懲りてないの?」
「懲りてるよ。さすがにココじゃ出来ないみたいだ……。溺れちゃう」
 そりゃそうだ。だいたい僕と高梨さんじゃ身長差がありすぎる。プールの中じゃどんな体位も無理だろう……って、何を心配してるんだ僕は。
「だからさ……、今はココまでで我慢する」
 そう言うと、高梨さんは空いていたもう一方の手を僕の股間へと近づける。
「あ……ッ!」
 僕の驚きの声なんてお構いなし。高梨さんはそっと薄い水着の上から僕のオチンチンを撫で始める。ゆっくり、ゆっくり……。
「ちょ……ちょっとぉ……ッ。や、やだよぉ……」
 僕は口では嫌がりながらも、熱い視線で見つめてくる高梨さんから目を反らせない。ちょっと切なげに細められた目は、確かに僕の瞳を見ていて……、なんだか僕もドキドキしてきちゃう……。
「優くん……ほら、冷たい水の中でも……ちょっと熱くなってきたよ」
「や、やだ……ッ、やらしいこと……言わないで」
 確かに僕の陰茎にはトクトクと血液が集まりだし、その容積も大きくなりつつある。包むような優しい愛撫に、僕は確かに興奮している。
「はぁ……、はぁ……」
 呼吸が少しずつ、熱く深いものになってくる。頭がポーッとして、理性が少しずつ無くなっていく。
 やだなぁ……。僕、この人を好きになってから、どんどんエロくなってきてる。
「優くん……」
「……え?」
「お願い……、俺のも……」
 そう言うと高梨さんは下を見る。その視線の先は水の中、おそらくは自身の股間だ。
 僕は黙ってうなずき、海パンの中の張りつめたペニスに手を伸ばす。
 少し触っただけで、それがカチカチに勃起しているのが分かってしまう。僕は指を広げ、掌で裏筋の所をこすっていく。
「あぁ……いいよ。優くんの手、柔らかくって気持ちいい……」
「うん、高梨さんのも……すごい」
 水の中でのこすりっこ。それはとても気持ち良くって、少しだけもどかしい。水の抵抗で腕の動きは押さえられ、強い快感は生まれない。その代わり、少しずつ風船が膨らんでいくような深い快感が下腹部に生じている。
 水着とお腹でこすられる勃起肉がヒクヒクと動く。僕はたまらずにお尻を振り、高梨さんの手との密着を強めていく。
 同時に、手の動きも気の入ったものになっていく。根本付近をを回すように手で刺激しながら、親指の先でカリ部を掻く。
「はぁ……、優くん……上手くなったね……」
「そうなの……? よく分からないよ……」
「そうだよ。だって、俺……すごく感じちゃってる」
 高梨さんの熱い息……。胸が大きく動き、顔が赤らんでいる。高梨さんが、僕の手で感じている。
「それは、高梨さんだから……」
「え?」
「僕、自分が上手くなってるかどうかなんて分からないよ。……でも、高梨さんの気持ちいいところは全部知ってる。……高梨さんが好きだから、全部体で覚えちゃってるッ」
 ああ……、僕は快感に浮かされて、なんだか変なことを口走ってる。そして、自分の言った「好き」という言葉で、心が勝手に弾んでしまう。
 そう、なんだかんだ言って、僕はこの人のことが好きなんだ……。
「優……くん……」
 高梨さんは僕の肩に手を回して、体を引き寄せる。
「あ……」
 僕たちの体がさらに密着する。僕の顔は高梨さんの胸元にはりつき、耳にはトクトクと鼓動まで聞こえてくる。
「ありがとう……、こんな俺を好きになってくれて。俺も……優くんが世界で一番好きだよ」
「た、たかなしさん……」
 もう何回も聞いたセリフ。それでも、僕は高梨さんに好きと言われるだけで、体の奥から何かがブワッときてしまう。
 心臓がキュンキュンして、呼吸が乱れて、そして、目頭が熱くなっちゃってしまう。
 僕は高梨さんの大きな胸に頬をすり寄せる。
「好きです……。僕も、世界一好きです……。どんなにヤラしいことされても好きです……。笑ってくれるだけでいいんです……。キスされるだけで、いつも死んじゃいそうなんです!」
「優くん……ッ!」
 僕の頭がグッと抱かれる。
 僕たちは水に浸りながら体を重ねる。灼熱の太陽が降り注ぐ庭、キラキラと水面が輝く中央で、愛を確かめ合っている。
 水の上では硬く抱き合う恋人として、水の中では互いの性器をなぶり合う獣として……。
 ペニスを撫で回し合いながら、お互いの足を股間に入れる。お腹をすりあわせて、腕を腰に絡ませる。
「はッ……はッ……はッ……」
 どんどん呼吸が乱れていく。頭の中は愛しい人への想いでいっぱいだ。
(好き……。あなたが、あなたが好き……ッ!)
「愛してるよ……」
 優しい言葉が、僕の頭の上で囁かれる。言霊が媚薬のように全身へ広がり、快感が倍加する。
「僕も……、愛……して……ます……」
 切れ切れの声を発すれば、やはりそこに快感が生まれる。ゾクゾクと背筋が波立ち、後れ毛が逆立つような錯覚までする。
 ゆっくりと動いていた手も、どんどんその速度を速めていく。水着の上からだけど、強引にゴシゴシこすられれば、それは気を失いそうなほど気持ちいい。
「あッ……ああッ……」
 僕はウットリと脱力し、体重を高梨さんに預けていく。水の中でも触れれば暖かい体温に、心が安らいでいく。
 その時、気づいてしまった。……僕の目の前には、高梨さんのオッパイがある。
 条件反射的に、僕は舌を伸ばしていた。そして、高梨さんの薄く色素の沈着した突起をペロリと舐めた。
「あッ……、優くん……ッ」
 高梨さんが小さく呻く。その反応が嬉しくて、僕はさらに舌でおっぱいをもてあそぶ。
 先っぽでクルリと円を描くように回し、乳首の勃起を誘っていく。しばらく乳輪の周囲を舐めていると、少しずつ中央部が盛り上がってくる。
 その先端を、こんどはチロチロと舌を上下に動かして愛撫する。米粒大の乳頭が可愛らしく揺れる。
「ゆ……優くん……ッ、そこ……」
「ふふ……。いつも高梨さんがしてくれるから……覚えちゃった♪」
 僕はちょっとイタズラチックに微笑む。
「やっぱ、高梨さんも……ココ……気持ちいいんだね。……もっと、もっと、してあげる」
 僕は大きく口を開け、高梨さんのオッパイを含む。そのまま唇をすぼませていき、歯では勃った先端を甘噛みする。
 そして、何かを絞り出すようにしごいていく。柔らかい舌は乳首にあてがうように配置し、唾液でオッパイを濡らしていく。
「あぁ……、優くんったら……赤ちゃんみたいだよ……」
 もう、それを言ったら高梨さんだっていつも赤ちゃんみたいじゃないか! 僕は口内に溢れた唾液と一緒に乳頭をズズッとすすりあげる。
「くッ!」
 高梨さんの背筋がビクッと跳ねる。もうこの人も充分すぎるくらい感じているみたいだ。
 クチュ……ピチュ……。 プチュウ……ッ。
 高梨さんのおっぱいを丹念にしゃぶる。もう赤ちゃんでもいい。僕は愛しい人の胸を一生懸命吸い上げる。
 そうすると、口の中にも不思議と甘くなってくるような気がして……。ああ、僕もう本当におかしい……ッ! この人のことが好きすぎて、気が狂いそうッ!
「優くん……ッ、優くん……ッ!」
 高梨さんはうなじを撫でまくっていた指先を、少しずつ下へと滑らしていく。背骨の上を直線に引かれる感触に、僕の体は固まっていく。
「ふう……ッ! ふッ! うぅ……ッ!」
 僕は必死におしゃぶりしながら、快感に耐える。
 水の中ではお互いの手がせわしなく動く。もう、そのスピードはクライマックスを導くのに充分なモノになっている。
 ビクビクと体が震えてくる。……限界が近い。
「た、高梨さん……ッ! 僕……もう……」
 僕は少し顔を上げ、上目で高梨さんを見る。
「ああ……、俺も……イくよ……。一緒に……イこう……」
「は、はい……ッ!」
 僕たちは互いの呼吸や鼓動のリズムに意識を集中させる。手の動きも自然と重なり、同じ快感を共有しているようにさえ感じ始める。
(あ……不思議……。なんか、高梨さんとつながってるみたい……)
 全身で触れ合っているからか、高梨さんの気持ちよさが自分の物のように伝わってくる。僕たちは心を重ね、一つになっていく。
 さもしく性器をこすり合いながら、光の中に溶けていく……。
「あ……ッ! あ、あ、あッ! 僕……もう……ッ!」
「ああ……、分かってるよ。俺も……イくよ……」
「い、一緒……ッ! いっしょ……にぃ……ッ!」
「うん、……一緒にだよ」
「あ……ッ、ああッ! ああああぁッ!」
 そして、限界まで膨らんだ悦楽が弾ける。熱い液体が一気にペニスを駆け上がり、噴き上がる。
「た、たかな……し……さ……、あッ、ああああああぁッ!」
「ゆ……、優ぅッ!!」
 ドビュルウゥッ! ビュルウウゥッ! ビュルッ! ビュッ! ビュルウウウゥッ!
 ビュクンッ! ビュウウゥッ! ビュッ! ビュルウウゥッ! ビュクンッ! ビュウウッ!
 僕たちは本当に同時に達した。大量の静止を水着の中に噴き出しながら、お互いを抱き合い、硬直した。
 その瞬間、真に心が通じ合っていた。僕は確かに、高梨さんの中にある僕への愛を、感じてしまった。
 それは、とっても熱くって、トクトクいってて……、なんていうか幸せそのもので……。
「たか……なし……さぁん……」
 僕はポロポロと涙をこぼしながら彼のお腹に強く抱きついていた。
 高梨さんも、ギュッと僕の頭を抱きしめてくれた。
 その時、
「……あッ!」
 ガクンと僕の膝が折れた。絶頂の余韻に耐えきれなかった筋肉から、全ての緊張が抜けていた。
 そして、僕に引っぱられるように、高梨さんも一緒になってバランスを崩した。
 ドボオオォォン!
 僕たちは水の中に沈んでいく。
(うわぁ……)
 巻き上がる大量の細かい泡。そんな透明な水の向こうに、最愛の人がいる。
 その人は、水の中はやっぱり苦手みたいで、手足をジタバタさせながら水面を目指している。
 僕は彼の元へ泳いでいく。……それがさも自然のように、故郷の川へ帰る魚のように。
 彼の肩に手をかける。細められた目が僕を見つめる。だから……。
 僕は水の中で、彼にキスをする。



 その後、僕たちは一緒にシャワーを浴び、お互いのオチンチンを洗ったり、クタクタになるまでキスしたりした。
 気がついたらもう夕方で、世界は綺麗なオレンジ色に染まったいた。
 僕は肩からタオルを掛けて、そんな空を見上げている。地平近くの太陽が、雲の縁を綺麗な光の線に変えていて、とても美しい。
「どーしたの、ボーッとしちゃって。ほら、飲み物作ったよー」
 キン、キン、とグラス同士をぶつける音が後ろから響いてくる。僕は高梨さんの方を向き、目を細める。
「あは……」
 なんとなく、笑ってみたりして。
 高梨さんが僕に歩み寄って、そっとグラスを手渡す。中身はイチゴ牛乳、僕の大好物だ。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
 そして、僕たちは二人でコンクリートのプールサイドに腰を下ろす。一緒に、綺麗な空を見上げる。
 なんか夢みたいだ、なんて思いながら、この人と一緒にいればいつだって夢みたいじゃないかなんて思い直す。
「高梨さん……」
「なあに?」
「今日はとっても楽しかったよ。……こんな水着着させられても、やっぱり楽しかった。……二人で一緒にいられて、本当に楽しかった!」
「そりゃどうも♪」
 高梨さんはにっこりと微笑む。それは、僕を幸せにする笑顔だ。
「ココの社長さんが帰ってくるのはまだ先だしね。しばらくはこのプールで遊べるよ。水着だってたくさん作ったしさ。俺は優くんに全部着て欲しいんだけど」
「うーん、どうしようかなぁ……」
 僕はさすがに逡巡する。
 今日ずっと着ていてなんだけど、これってやっぱり恥ずかしい。高梨さん以外の人に見られたら自殺モンだろう。
 それでも、それが最愛の人の望みなら、僕に拒否することはできない。まったく僕ってこの人にメロメロなんだ。
「いいよ、高梨さん。まあ夏はまだこれからだもんね。機会があれば……あと一回くらいは着てあげる」
「意地悪だなぁ……」
「なーんとでも」
 なんてね。……大丈夫、頼まれたらいつだって着てあげるから。

 そう、夏休みは始まったばかり。これから僕たちは毎日泳いで、キスするんだ。
 そうしたら、高梨さんの泳ぎだって上手くなるかもしれないし、一緒に手を取りながら水の中で愛し合えるかもしれない。
 ビキニを着た僕は、まるで人魚姫みたいで……、かっこいい王子様にそっと抱かれて……。
「へへ〜」
 僕は脱力して高梨さんの肩によりかかる。
「あれ、なんだよ優くん。 変な顔しちゃってさー?」
 言えないよ、こんな恥ずかしい妄想。……それでも、目を閉じれば。

 マリンブルーの美しい海で、永遠に愛し合う二人の姿が見えるんだ。

(了)

[投下 : 2chエロパロ板『女装空想小説 2』 2004年07月09日(236〜250)]

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