「なんだよ、コイツまだ吐かないのか?」
「ああ、ずいぶん薬も使ったんだがな……。さすが士官様、こういう訓練もバッチシってワケだ」
勝手な言葉が頭の上で行き交っている。しかし、今の私にはそれに抗弁する気力もない。
意識は混濁し、筋繊維が弛緩する。そして、体の芯が燃えるように熱い。荒れる呼吸に合わせて痙攣する生殖器からは、勝手に先走りが蕩々と溢れだしている。
(喋らない……。救援が来るまであと一時間……。それまで、耐えなければ……)
私は顔をしかめながら歯を食いしばる。しかしもはや歯の根は噛み合わず、カチカチと奥歯が虚しく鳴り響く。
「それにしても、ひでぇ格好だなコリャ。体中にぶっかけられちまってよぉ」
「はは、ほとんどコイツが自分で出したやつだぜ。……なぁ、淫乱士官様ぁ?」
私は近づけられる醜悪なツラに顔を背ける。……悔しい。私はこんな卑怯な連中に拳の一つも振るえない。
それでも、私は頭の中にある機密を絶対に自軍へと伝えなければならない。だから、今はただひたすらに堪えるしかない。
「……なんだよテメェ。なぁ、なんか言ったらどうだよッ!」
私の態度にいらついたのか、敵兵士が硬質のブーツで私の逸物を踏みつける。瞬間、私の腰は飛び上がり、半ば反射的に射精が起こる。
「ひ……ッ! ひぎッ!」
ドビュルウウゥッ! ビュッ! ビュルウゥッ! ビュッ! ブビュウウゥッ!
もう何回目かも分からない腰気の噴出。それでも量は衰えず、大量の白濁が私の士官服を染めていく。
そして、脳に焼きごてでも押されたかのような苦痛が私を襲う。何度も重ねられたエクスタシーには、もはや快感はない。強制的な絶頂は、息のつまりそうな肺の引きつりと、熱病にかかったような発汗だけをこの身に与え続けた。
私は窒息寸前の魚のみたいに足先を引きつらせる。男達のあざけるような視線が、真上から突き刺さる。
「ほら、もう言っちまった方がいいぜ? ……そろそろ一番大きな波がくるころだからな」
「そうなっちまえば、もう終わりだ。ほら、喋っちまいなよ?」
頭上で囁かれる不穏なセリフ。しかし、私にはその意味が分からない。ただ、何か決定的な終わりが来る、そんな予感だけがしてしまう。
それでも、私は機密を漏らすワケにはいかない。耐える、耐える、耐える! 頭の中にあるのはそれだけだ。
「ふん、かわいげのねぇガキだぜッ」
タバコの火を揉み消すように、兵士の足首が回される。その下にあるのは私のペニスだ。肉芽を引きちぎられそうな程の激痛に全身を貫かれ、私は思わずアゴを反らす。。
その時、ガクンと腰が下がったような錯覚がした。まるで、階段を一段踏み外したような悪寒だった。
(な、……何ッ?! なんなの?)
しかし、そんな疑問もすぐに脳裏から消え失せた。突然、私の体は火の鞭で打たれたかのようなガクガクとと痙攣し始めたのだ。
「な……ッ? は……はぎッ! ひッ……ひいぃッ!」
私は頭でブリッジするように体を反らせ、腰を浮かす。同時に床へと指を立て、爪が剥がれんばかりにアスファルトを掻きむしる。
「始まったな……。ほら、どうした士官様?」
なにか声がかけられたようだが、私の脳には意味のある音として届かなかった。今は、ただ全身が熱い。まるで皮膚の全てを剥かれて、そのまま熱湯をかけられたかのようだ。
(おかしいッ! こんなのおかしいッ! でも……。あぁ、……射精、射精したいッ!)
すでに苦しみを覚えるほどの絶頂を経験した私だが、狂った体はさらにその先を求めだしていた。まさに、凶悪な程の性衝動だった。
私が望むのは、強烈な一撃だ。……ああ、あの足。あの振り上げられた足を、この股間に落とされたいッ!
「あ……あう……ッ、お、おね……、あぐうぅッ!」
私は浅ましく踏みつけにされることを要望した。しかし、もう言葉が言葉にならない。私は敵である頭上の兵士に向かって魚のように口をパクパクさせるばかりだ。
「……ああ、分かってるよ。こいつが、欲しいんだろ」
足首が宙でゆっくり回される。そう、それが欲しいッ! お願い、踏んでえぇッ!
「ああ、それじゃあいくぜ……。オラアァッ!」
ドボゴオオオォッ!
それは、体を縦に貫かれたような超痛撃だった。同時に私の肉茎も爆ぜ、全身の液体が全て噴出するような射精が起こった。
「ひぎゃあああぁッ!!」
ドビュルウウゥッ! ビュルルルウウゥッ! ビュルッ! ビュッ! ビュッ! ビュウウゥッ!
そして、私の意識も霧散した。彼岸まで一足飛びで行き着くような圧倒的法悦に、私は虚しくこの身を震わすことしかできなかった。
そして、拷問の方法は変わった。彼らは以降、私に指一本触れなくなってしまったのだ。
「あ……あぁ」
股間が疼いた……。体の芯でくすぶるのは、とても強烈な被愛欲求だった。
「どうしたんだい、士官様……。そんな赤い顔しちゃってさぁ」
「そんな風に腰を振られたってねぇ……。ホラ、どうすればいいかは、わかってるんじゃねーの?」
私は身もだえながら、落涙する。踏まれたい……。もっと、踏まれたいのにいぃッ!
救援が来るまであと何分? ……しかし、私の理性はあと一分、いや一秒さえ保てそうにはなかった。
(了)
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