『ファ○コン探偵○楽部 エッチな番外編』

 張り込みは探偵の基本。熱かろうが寒かろうが、深夜だろうが早朝だろうが、目標が出てくるまではじっと我慢の子だ。
 すでに日付も変わる時刻、冷房なんてもちろん無いこのボロアパートで、僕はじっと向かいのマンションを覗いている。
(でも、今日はもうダメかな……?)
 たとえそうでも、それなら目標はマンションからでてこなかったというコトを報告しなければいけない。結局、今夜はここから動くことはできそうもない。
 額に滲む汗が玉になって肌を滑る。それを僕は手の甲で拭うけど、それは汗で汗をふく行為に似て意味がない。
「うぅ……、蒸すなぁ」
 そういえば、ニュースで熱帯夜が連続何日記録だかどうだかなんて言ってたっけ。
 まったく張り込む方の身になってみろってんだと思うけど、それは誰に言えばいいんだろうか……。
 その時、トントントンとスチール製の階段を駆け上る音が外から聞こえてきた。僕は反射的にその場で屈み込み、おっかなびっくり様子をうかがう。
 ドアが開く……。
「ちゃんとやってるかい」
「空木先生……ッ」
 涼しげなその笑顔に、僕の張りつめた神経は一気に弛緩する。手にはコンビニの袋が握られ、差し入れのジュースや缶ジュースがガラゴロと鳴っている。
 まったく、素直に嬉しいです。

「じゃあ、今日はもうダメかな……?」
 空木さんが缶コーヒーをすすりながら尋ねてくる。
 僕は外のマンションに目を配らせながら、さっき考えたことを答える。
「それならダメだったということを報告するだけですから」
 すると空木さんは感心したように、
「……はは、分かってきたじゃないか」
 笑う。
 僕は空木さんの買ってきたラクトアイスを口に入れる。冷た甘い感覚が口の中にフワリと広がり、全身の汗が少し引く。ふに、幸せ。
「まったく。やっぱ女の方が浮気を隠すの上手いな……。手間が男の倍かかるよ」
「そんなもんなんですか?」
「ああ……」
 空木さんも袋の中のアイスに手を伸ばす。冷蔵庫もないこの部屋じゃ早く食べないと溶けちゃうし。
「まあそれでも、女の方が回数は少ないけどな。一回バレたら反省して、それ以降はやらないってパターンがほとんどだ。男は逆で、味を占めて何回も同じコトを繰り返す」
「……ダメですねぇ、男って」
「まったくだ」
 本当に空木さんはこういうことをよく知っている。

 空木俊介。空木探偵事務所の所長で、警察からも一目置かれている名探偵だ。
 僕との出会いは三ヶ月前。僕が孤児院を家出して警察に追われているところを偶然助けてもらったコトがきっかけだった。
 その後、僕は彼の元で探偵助手として働かせてもらっている。
 空木さんは本当に頼りになる人で、その知力と行動力から警察からも捜査要請が来るほどだ。
 で、なんで僕がこんな人に雇って貰えているのかと言えば……
 チョン。
「ひゃッ?!」
 何が起こったのかも分からず、僕は奇妙な叫びをあげて飛び跳ねていた。
 慌てて後ろを振り返れば、そこには棒アイスを持った空木さんの姿がある。
 首筋に残るヒンヤリとした感覚。どうやら空木さんは僕を後ろからアイスで突っついたらしい。
「な、なにするんですかぁッ!?」
「しッ……」
 先生は口の前に人差し指を一本立てる。僕も慌てて口を閉じる。
 ここは張り込みのために借りたアパートなんだ。住人も周りの部屋に居るし、大声を出すわけにはいかない。
 だから僕はヒソヒソ声で
「……なにするんですかぁ!」
 と怒鳴る。いや、こんな小声じゃ怒鳴ったうちにも入らないけど。
「ん、いや……。キミが可愛かったから、つい、ね」
「ついって……」
 僕はほとほと呆れ果ててしまう。しかし、空木さんのイタズラは止まらない。僕の背後から首や頬をツンツンとアイスで突っついてくる。
「や、やだ……、やめて……」
「ダメだね♪」
 もう、なんだってこの人はいつもこうなんだろう。初めてあった日から毎日こんな感じだ。
 まったく……。全てを許し合った恋人同士だからってTPOってモノを考えて欲しい。張り込み中にこんなことをしだすなんて、お仕事なめすぎだ。
 ……そう、僕と先生はつき合っている。初めてあった日、喫茶店で「君は昔の僕に似ている」なんてお定まり通りに口説かれて、僕はこの人を素直に受け入れてしまった。
 なにしろ、その時はお金もなかったし、両親を捜す手がかりもなかった。僕の目的を果たすのに、探偵という職業ほど向いているものもないと考えた。
 ……いや、それよりも僕はこの人の優しい笑顔にやられてしまったのだ。どんな凶悪犯さえ恐れるこの人の、邪心ゼロの微笑みに。
 ……でも、でもなぁ。
 こんな変態さんだったなんて思わなかったもんなぁ!
「なんだい、アイスなんかでそんなにピクピクしちゃって……」
 なんだかとっても楽しそうな空木さんの声。でも、僕はそろそろ我慢の限界だ。
「ん……、もうやだってばッ。ベトベトになっちゃうよぉッ!」
「……そっか、それなら」
 そう言うと空木さんは僕に背中から抱きついて、舌をアイスで濡れた首筋に伸ばした。
「え……ッ? ひゃ……、ひゃうッ!」
 ピチュ、クチュ……、ペチョ……。
 背後からの優しい愛撫が僕を包む。長い舌先は丁寧に僕の首についた糖分を舐め上げ、さらにキスの雨を降らせる。
 さらに先生の口は上に上がり、耳たぶやら頬へ。甘い蜜を求める蝶のように、彼の舌が僕の顔を跳ねる。
「や……、やぁ……」
 もう僕の抗議の声には説得力がない。体は徐々に脱力していき、先生に体重を預ける形になっていく。先生は僕の肢体をしっかりかかえ、Tシャツの上から乳首やらヘソやらを撫で回す。
 さらにキスは続いていく。ついに熱い唇が僕の半開きの口を捉え、ゆっくりと近づいてくる。
 僕も覚悟を決め、目を閉じる。
「ん……」
 フワッと触れるだけのソフトなキス。これがいつもの始まりの合図だ。僕は少し体をひねり、先生の肩に腕を回す。
 すると、先生の舌が僕の口に入ってくる。
(あ、甘い……)
 さっきまで舐めとられていたアイスの甘味が口内に広がっていく。そして、それを撹拌するように先生の舌が掻き回す。
 グチュ、グジュ……、ブジュウゥ……。
 大量の唾液を送り込まれながら、僕は口を犯される。先生の長い舌は、口内の天井から舌の裏まで全てをなぶり尽くす。
「は、はふ……」
 僕は息苦しくなり、少しだけ口を外す。しかし先生はすぐに追いつき、再び僕の口にフタをする。
 大きい舌が徹底的に僕の口内を蹂躙していく。脳の中まで犯されているような危険な錯覚までしてくる。先生のキスは、はっきり言って上手すぎる。
 長い口づけをかわしながら、先生は僕のズボンに手を伸ばす。器用に片手でベルトの金具を外し、チャックを開ける。その動きは淀みなく、とても滑らかだ。
 ズボンの端に手をかけられ、引き下ろされると、中からは勃起した僕のペニスが顔を出す。
 中学も卒業したっていうのに、今だ半分皮をかぶった仮性包茎……。僕はこの性器を見られることが一番恥ずかしい。
 でも、これは先生が大変気に入っていて、
「はは……、やっぱり可愛いなぁ……」
 茎に指をかけたまま、ゆっくりと下へ引っぱっていく。
「あ……、あ……」
(剥かれちゃう……ッ!)
 そう思う間もほとんど無く、僕の包皮は先生の指で手繰られてしまう。プルンと波打ち出てきたのは、薄桃色の小さな亀頭だ。
 粘膜が外気に触れるピリピリとした感覚に、僕は思わず肩をすくませる。しかし、先生はそんなことお構いなく余り気味の皮をもてあそぶ。
 シュッ、シュッ、シュッ、シュッ……。
 リズムに乗って先生の手が上下する。僕の快感曲線も急上昇し、強烈な悦楽が脳を揺さぶる。
「あ……、あは……、ああぁ……」
 僕はもう抵抗する意志すら無くし、先生の手コキに身を任す。
 気持ちいい……。同性の心得た手つきに、どんどん僕は登り詰めていく。
「なんだい……、なんだかんだ言って、ずいぶんよさそうじゃないか」
 意地悪な先生のセリフに、何故か背筋がゾクゾクと逆立つ。なんでこんな言葉でこんなに気持ち良くなってしまうんだろう。僕って、やっぱエロいのかな……。
「だめぇ……。し、仕事ちゅうなのにぃ……。はぁ、はあぁ……」
「もう今日は出てこないよ」
「でもぉ……、そんなこと……、分からない……ッ」
「うるさいなぁ……」
 先生の指が亀頭の最先端に触れ、鈴口が押し広げられる。タダでさえ小さい穴を強引に掻き回され、電極が当てられたかのような痺れがペニスから背筋を駆け上がる。
「ひ……ッ、ぐぅ……!」
 反射的に出てしまった絶叫を、僕は慌てて両手で堰き止める。ここは空いていたアパートの一室とはいえ、周りの部屋には人がいるのだ。ましてや張り込み中、こんな声出せるわけがない。
 しかし、空木さんはそんなお構いなしだ。僕の小さなおちんちんに両手の指を絡め、ゴシゴシと丁寧に擦りあげていく。
「……そう、張り込みの途中で声なんか出しちゃだめ。……やっぱ君は優秀だね」
「せ、せんせ……」
 もう僕は限界間近で、先生の膝の上に乗っかりながらも足はピンと伸びきり、背筋はプルプルと痙攣している。視界は涙で歪み、口からは涎が止まらない。
 空木さんはリズミカルに僕のモノを上下に弄りながら、自分の腰も揺らしている。ズボンの下、幾重もの布越しに感じる勃起がものすごく熱い。
「あ……、すご……ぃ」
 僕も自分からすり寄るように腰を揺らす。自分だけ気持ちいいのはなんだか申し訳ない。せめて先生にも気持ち良くなってもらおうと、お尻で先生の勃起肉をゴシゴシと擦る。
「……うぅ」
 先生の漏らした小さな呻きは、快感の証左だ。
「あぁ、空木せんせぇ……」
 僕は再び先生の肩に腕を回す。
 目を閉じ、キスをせがむ。
 熱い呼吸と共に近づく柔らかい唇が、僕の下唇を挟む。そのまま舌が上唇の裏を舐め、さらに奥へと進入してくる。
 僕も舌を伸ばし、先生の舌の裏を舐める。そのまま二本の舌は軟体生物のようにグチュグチュと絡み合い、唾液が行き交う。
 僕は先生から送られた唾を口で転がし、音を立てて嚥下する。ジーンと頭の中が痺れて、意識が定まらなくなってくる。
 おちんちんを擦る手の動きもいよいよ速度を増し、カウパーが押し出されて床に垂れていく。僕はせわしなく内股をこすり合わせながら、腰をカクカクと跳ね上げる。
 そしてお尻の下、先生のモノが灼けるように熱い……。
「あぁ……、あたる……。せんせぇの……、あたってるよぉ……ッ」
 僕は腕に力を入れる。先生をこのまま締め上げる勢いで、強く抱きつく。
 密着する体に広がる、甘い波紋。体重が無くなるような心地よさだ。体温の暖かさだけで、なんだこんな泣きそうになるくらい気持ちいいんだろう……。
「ほら、もうイくんだろ? ちゃんとイく時はイくっていうんだよ……」
「は、はい……ッ。い、イく……ッ!」
 先生はいつもそういうイヤらしい要求をする。男同士なんだから、イった時はすぐに分かるのに……。
 でも、もう我慢出来ない。僕は先生に言われた通りに自分の絶頂を申告してしまう。
「や、あぁ……ッ! イくッ……、うぅ……、うぐッ!」
 あまりの快感に体がギュッとねじれていく。背中が反り返り、足にはつりそうなほどの力が入る。僕は顔をしかませながら、顎を天井へと突き上げる。
 そして、熱いたぎりが下腹部から上昇してくる。その速度は凄まじく、僕の精輸管を一気に駆け上がってくる。
 合わせて、先生の手が下におもいっきり下げられる。剥き出しになったペニスが大きくしゃくり上げ、先走りが跳ぶ。
 瞬間、頭の中が真っ白になる。僕は条件反射的にイヤらしいセリフを吐きながら、虚空へ腰を突き上げる。
「ひッ、いッ、いッ、イくッ! い、イくうッ! イくううぅッ!!」
 ドビュルウウゥッ! ビュゥウウゥッ! ビュルウウゥッ! ビュッ! ビュルウウゥッ! ビュクウゥッ!
 全身を引きつらせながら射精した。
 ガクンガクンと、階段を踏み外すような衝撃を感じながら、何回も白濁液を遠くへと噴き出した。
「ひぃ……、い……」
 僕は涙目を先生のシャツに押しつけながら、小刻みに肩を震わせた。もう、死にそうなくらい気持ち良かった。
 もちろん、僕だってそれなりにオナニーの経験くらいあった。でも、先生にされると、同じ行為のハズなのにその快感の深度は何倍も違っていた。
 先生が上手いのもあるだろうし、僕の体も開発されてしまったというのもあるだろう。……でも、
 僕はやっぱり、愛のせいだと推理する。
 この人が好きだ。いくら変態さんでも、空木さんが大好きだ。僕はもう、この人無しではダメになっちゃったんだ。
 まだ先生は僕の脱力した体を抱いている。手ではまだネチネチと僕の射精直後のおちんちんをもてあそびながら、静かに笑いかけている。
(もう……。やっぱりバカだ、この人は)
 僕は改めて、先生のシャツを掴む手に力を入れる。

 その時、ガオンと車のエンジンが鳴る音が外から聞こえた。
「えッ?」
「って、おい!」
 僕たちは慌てて窓から身を乗り出した。そこには、車庫から出て行った赤いフェラーリのテールランプが光っていた。
 いつの間にか、調査対象の女性は車に乗り、どこかに移動し始めていたのだ。
「やばいッ!」
 空木先生は反射的に立ち上がり、慌てて部屋を飛び出した。僕は半裸の体を放り投げられ、床の上で放心していた。
 事態の重大性に頭が回ったのはしばらく経ってから。えっと、これはつまり……。
「僕は……、悪くないよね……?」

 結局、その後先生は失尾(尾行失敗)してしまい、調査はさらに一週間かかってしまった。
 報告書も今回ばかりは責任をとって先生が書くことになった。
「でもさぁ、半分くらいはキミにも責任あるよね……?」
「ないです!」
 空木探偵事務所オフィス。先生は苦手なデスクワークに苦しんでいる。行動派のこの人には、あまりチマチマした作業は向いてない。僕が来てから、その手の作業は僕が引き受けていたのだ。
 でも、このくらいは言い罰だと思う。だいたい、この人は仕事をなめすぎだ。
 まあ、せめてコーヒーくらいは煎れてあげたり……。
「ほら、あと少しですから頑張ってくださいね」
 僕は机の上に湯気の立ったカップを置く。
「うぅ……」
 一方、この人は半泣きで、必死になって報告書を清書している。
「ねえ、キミ……」
「なんですか?」
「これが終わったら、あの日の続きをしてもいいよね」
 あの日、つまり失尾した日のことだろうか。
「なんですか、続きって。もう、さんざんされましたよ」
「僕がされてないんだよ。……まだしたりないし」
「まったく……」
 僕は思う。つくづくバカだよなぁ、この人は……。
 それでも、真剣に書類に向かう横顔を、僕はついお盆を抱えたまま見てしまうのだ。
 細められた目が、細かい字を藪睨んでいる。高い鼻に、引き締まった頬。
 黙ってこうしてれば、カッコイイのに、ねぇ。

 こんな風に、僕たちの生活は慌ただしくも平和に過ぎていく。
 探偵なんて仕事をしてれば、人間の嫌なところはたくさん見えてしまう。人間不信になってやめてしまう人も多い。憧れだけではとても続かないハードワークだ。
 それでも。
 空木さんが側にいれば、僕はなんだって出来ると思う。
 この人が今までどんなものを見てきたのか、幼い僕には想像もつかない。でも、そんな困難を、この人は全てしなやかな心一つで乗り越えてきた。
 だから、僕はこの人の笑顔が好きなんだ。
 そうだ。もし、僕の両親が見つかったら、まず先生を紹介しよう。一番大切な人だって、しっかり言ってしまおう。
 顔も知らない父や母だけど、きっと喜んでくれると思う。
「先生」
「ん……?」
「好きですよ♪」
 思わず言ってしまった。でも、滅多に言わない言葉だし、たまにはいいでしょ。
 そして、先生は立ち上がり、僕の首筋にキスしてきた。

 ――だから、報告書が終わってからだってばッ!!

(了)

[未投下]

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