True whereabouts

 

 

 

 

 

「いつか本当の俺を知っても出来たら嫌わずにいてくれるか?」

もちろん。

「多分想像してるような生易しいもんじゃないけど」

うん。

「それでも?」

もちろん。だってテッドは僕の大事な……

 

 

 

 

 

 

「行くの?」

休息日だからと彼の家に訪ねてきた魔法使いは、

彼が入れてくれたダージリンの葉が蒸されていくのを見ながら尋ねた。

「どうして?」

「あれはあいつがすきだった花だから」

玄関の花瓶にいけてある花を指差して。

「あれ、知ってたの?」

「さあね」

砂時計の砂が全部零れ落ちる。

ティーカップに紅茶を注ぐと彼はそれをルックの前へ置いた。

「………まだ、行ってなかったから」

「そう」

 

 

解放戦争の終幕を迎える直前に喪った親友。

すぐに彼に会いに行くにはまだ自分は弱くて。

そのまま旅立ってしまい新たな戦争に荷担していたら、

彼を亡くしてから4年もの歳月が流れてしまった。

 

 

「会いに行こうとは、思ってたんだけどね」

「知ってる」

「今日のルックは物知りだね」

「限定されても困るけど」

溜息を1つついて。

カップの中のそれをすっかり飲んでしまうとルックは立ち上がって。

「どうかした?」

「………行くんだろ」

「………うん」

彼は慌てて立ち上がると玄関の花瓶に活けてある大きな花束を腕に抱えた。

 

 

 

 

 

 

 

転移魔法の名残りの光が薄らぐのを待って目を開ける。

彼を喪ったあの日から足を踏み入れる事のなかった、

彼が完全にこの世界から跡形も残さずにいなくなってしまった場所。

 

そこには今、花束が1つ。

 

 

「先客?」

「多分、クレオだね……」

同じように彼を家族同然として過ごしてきた人。

「ごめんね。なかなか、会いに来なくて」

 

 

彼の身体さえもこの世界にはないとわかっているけれど。

それでもこの場所から彼に言葉をかけたら、

彼に届くような気がするのは気のせいですか?

 

 

「ねえ」

「何?」

「僕、最後までテッドに言ってあげられなかった」

「何を?」

「テッドは僕の親友だ、って」

 

 

彼は自分の事を親友だと言って憚らなかった。

自分はそれを聞いて嬉しかったけれど、

友達と親友の違いがいまいちわからなかった。

将軍を親に持つ自分と仲良くなってくれる子はなかなかいなくて、

その2つの単語を比較できるような状況でもなかったし、

自分にとっていつも一緒にいてくれる大事な人だったから、

友達というよりも家族と言ってもいいくらいで。

 

 

「仲良くなかったら友達とさえ、呼べないから」

「………確かにね」

「その言葉の意味を理解した時には、遅かったんだよね。僕は解放軍にいたし、テッドは皇后様に捕まってた」

「そういえば」

途中から彼の称号が友達ではなくなったのは。

「……それに気付いてから、だね。でも、僕は結局、テッドにそう言ってあげられなかった」

「それは……」

「テッドが消えちゃうのが悲しくて、テッドの言葉を聞くのに必死で、大事な言葉なのに、言う暇さえ、なかった」

 

 

 

『ごめんな、でも、俺が決めた事だから……』

『ごめんな、そんな厄介なもの、預けて……』

『ごめんな、ほんとに、ごめんな』

『お前と友達になれて…嬉しかった』

『お前に会えてよかったよ、ユギ』

『……んとに、だいすきだよ……』

 

 

 

「今気付いても、遅いのにね……」

 

 

背を向けてしゃがみこんでいる小柄な彼は、

自分が置いた花束をじっと見つめながらそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

『ユギを頼むよ。俺が言うのもおこがましいけどさ』

 

 

あの時彼が自分に向けて飛ばしてきた言葉。

口に出さずに、

自分が管理していた紋章に頼って風の紋章に呼応でもさせたようで。

 

 

『言われなくてもね。それより、言わなくていいわけ?』

『俺が言ったらこれから先のお前からユギを取っちまうだろ』

『……僕が淋しがり屋だとでも?』

『違ったか?少なくとも10年前に会ったお前はそうだったよ』

『嫌味』

『………お前ともまた会えてよかったよ』

『僕は会えても嬉しくないけどね』

『そう言うなよ。少なくともお前も、俺にとっては親友だったんだから』

『それはどうも』

『じゃあな』

 

 

 

ああ自分も、彼の言葉を聞くので精一杯だった。

聞かされたのが最後の最後とは言え、

その単語を彼に返してあげる事が出来なかった。

その言葉の意味を理解した時には彼はもうこの世界から消えてしまっていた。

 

 

 

「本当に、遅いね……」

 

後ろに立っている魔法使いの彼も小さく呟いて。

 

 

何を言ったのか聞き取れはしなかったけれど、

彼の声が聞こえたらしく緑のバンダナの少年は振り返った。

 

 

「どうして……ルックも、泣いてるの…?」

 

「………君が泣いてるから、痛みが呼応するんだよ」

 

 

右手をひらひらと振って見せて、

嘘にもならない嘘をついて。

 

 

「あんたの大事な親友は元気らしいよ」

 

 

小さなその言葉に答えるように、

若草色のローブの裾が優しく風邪に吹かれて揺れた。

 

 

 

 

 

○あとがき

ゆさぎひゆ様へ開設お祝いに捧げます。

何と言うか伏線張りすぎてわけのわからない話で本当に申し訳ないです……

しかもどの辺りがテッド坊なんでしょう。テドルク+テド→坊+ルク坊の気もします(大汗)

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