Shooting star

 

 

 

 

流れ星に向かって3回お願い事を唱えたら、

それが本当になるって話聞いた事ある?

でも物理的にはちょっと難しいんだよね。

どうしても叶えて欲しいものに限って言い切れないんだ。

 

 

 

 

「ルカ、早くってば」

「何をそんなに急ぐ必要がある。星など窓からでも見れるだろうに」

「いいから」

 

今日は年に一度の流星群が見られる日。

 

前にジョウイに聞いた話を不意に思い出して、

いても立ってもいられなくなってルルノイエにテレポートした。

自分の愛剣を磨いていたルカの手を引いて、

真っ暗な空の下を一生懸命走って。

 

 

「何処まで行くつもりだ」

「もうちょっと。あ、ついた」

 

城からちょっと離れた森の奥にある小高い丘の上。

邪魔になる障害物など何もなくて、

本当に地平線の方まで夜空が堪能できる場所。

 

「ここ座って?」

言われるままに腰を下ろすと、

自分を引っ張ってきた少年は嬉しそうに彼の膝の上に座った。

「ごめんね、無理に引っ張ってきたりして」

「ああ」

「でもね、どうしてもルカと見たかったの」

 

普段は数個しか見られない流れ星を待つより、

流星群に向かって願うようなどこか卑怯な手であってもどうしても叶えたい願い事だから。

 

 

 

どうしてなのか聞こうとしたところで、

彼は不意に黙って空を見上げた。

宝石をちりばめたかのような無数の星の中で、

その隙間を掠めていくかのように流れていく星。

 

「知ってる?流れ星にお願い事3回唱えると叶うんだよ」

「ああ。聞いた事はあるがやった事はない」

「そうなの?でも叶うんだよ、きっと」

 

それだけ言ってまた彼は空を見上げて。

大きく明るい星が流れた途端に小声の早口で何かを言った。

 

「何か言ったか?」

 

聞いてみたけれどエンジュは返事をしないままで。

ずっと空を見上げたまま何かを唱えているから、

エンジュの肩の辺りに頭を近づけた。

 

「ルカとずうっと一緒にいられますように。ルカとずうっと一緒にいられますように……」

 

早口言葉が苦手な彼が、

一度も下を噛む事なく言っているのを聞いて、

その願い事の大きさと存在が嬉しくて。

彼の腰を引き寄せて、

そのまま腕の中に抱き込んだ。

 

「………ルカ?」

恐らく聞かれている事に気づいていないであろうエンジュが、

どうかしたのだろうかと不思議そうに振り返ったけれど。

「今夜だけなのだろう?続けないのか?」

そう彼がからかうように言うのでもう一度夜空へと目を向けた。

 

 

 

 

どうか君には聞こえませんように。

そんなの迷信だってわかってるけど、

どこかでばかばかしいとわかってるけど、

それでも願いが叶うのなら縋ってもいいかもしれない。

 

「エンジュが俺の事だけを見てるようにしろよ」

 

 

どこか命令口調の小さなその呟きは、

流れ星に乗って消えていった。

 

 

 

 

 

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