Existence reason
「ねえ、どうして人間は生きてるんだろうね?」
哲学に酷く興味を持つ彼がこの質問をするのは何度目か。
「さあ……何、本に載ってる答えでも言って欲しいの?」
誰かに出会うため?
神が作り出したため?
生きる目的を探すため?
「でも、人間って言うのはいつかは死んじゃうでしょ。だったらどうして生まれてくるの?」
「………原因がなければ結果はないよ」
人間のエゴだよ。
自分と同じ物を作り出す事によって、
人間は自分の存在を肯定する。
それが例え生まれてくる人間自身の希望でないとしても。
「だったら最初から生まれてこなければよかったのに」
そうしたらこんな思いをしなくてすんだのに。
こんな風にはならなかったのに。
「…………自殺願望?」
「僕にそれだけの勇気はないよ」
「だったら………」
「ただ僕は、僕がここにいるちゃんとした理由が欲しいだけ」
受け入れたいわけじゃない。
大事な人を失いたいわけじゃない。
それでも後戻りできないから。
だからここにいるだけ。
僕の意思なんか全く無関係に世界は進んでいるから。
「だったら教えてあげようか」
そんなに明確な答えが欲しいなら教えてあげるよ。
「うん」
「君は一つのパーツだよ。取替え可能な、リーダーという、ね………」
だったら僕である必要はやっぱりないんじゃない。
だったら僕がここにいる必要は全くないじゃない。
だったら僕は………
「…………存在したい気持ちとその価値は必ずしも一致しないんだよ……」
自嘲気味に微笑んだ彼。
「ねえ・………だとしたらルックはどうして僕と一緒にいてくれるの?」
「………………さあね」
僕も君と同じだよ。
僕だって代替可能な一つのパーツに過ぎない。
だとしたらどうしてここに居るのかといえば、
どうして君の側にいるのかといえば、
「きっと僕達の存在理由が曖昧だからだろうね」
その言葉が、酷く胸を突き刺して、痛かった。
○あとがき
自分が存在しなくても代わりはいくらでもいる、それは人間共通のもの。気が狂うのが先か、はたまた自分を受け入れる事が先か。
人間は他者を受け入れる事で自分の存在を認めるもの。だとしたら一緒に居たら自分の存在理由がわかる?
何が言いたいんだ、自分。
深読みした向こうに、二人の気持ちがあるんだろうな。だから、二人の気持ちで何を書きたかったのかは、読んでくださったあなた様の御判断によります。