BELOVED

 

 

 

 

何か欲しい物があるかと聞かれたら、

僕は躊躇わずに即答するに違いない。

それは決して手に入らないと知っているから。

望む事だけでもわがままな事だと知っているから。

 

 

 

 

深い森の中。

モンスターに襲われて足を怪我したらしい彼を見つけた。

人の気配に小さな身体を震わせて驚いている彼に、

それ以上怯えさせないようにしゃがみこんで目線を合わせた。

「名前は?」

「………葛葉…です」

「一緒に誰かついてこなかったのか?」

「一人で、来たから……」

「家は?」

「………何処にもない、から、今探してるの……」

「……じゃあ俺の家に来るか?旅しながら一人で探すよりずっと早いだろうからさ」

「え?でも……」

「俺は大丈夫だぜ?それにほら、怪我してんじゃねえか。歩けねえだろ?」

「………うん……」

抱き上げた身体は酷く軽かった。

 

 

 

 

「右手、どうしたんだ?」

「………前に、火傷、したから……」

「そっちも包帯巻き直すか?」

「……ううん……大丈夫……」

まるで右手に触れられるのを拒絶しているかのような。

 

 

 

腰まで届く栗色の髪。

光の加減で黒く見える、濃い目の琥珀色の瞳。

そしてそれだけではぴんと来ないが軍関係者なら必ず知っている『葛葉』という名前。

 

 

 

本当は知ってた。

だけど言わなかっただけ。

俺は葛葉を敬愛の対象で見ているわけではないのだから。

もういい加減解放してやれと望む人間の一人だから。

いつからか自分は葛葉を『葛葉』としてすきだから。

 

 

 

すぐに出て行かなくちゃいけないのは知ってた。

自分の立場がどういうものかわからないほどばかじゃなくて。

きっと自分がここにいれば右手の厄介者はこの辺り一体に住む人間に襲い掛かるだろうから。

だから僕は出て行こうと思った。

彼を巻き込みたくなかったから。

いつのまにか自分はシードの事がすきになっちゃったから。

 

 

 

 

 

 

大怪我をした葛葉を森で見つけてから三ヶ月ほど経って。

僅かにびっこを引いているもののかなり回復した。

 

 

「くーちゃん?」

玄関で靴を履いていた葛葉が、驚いたように振り返った。

「え?」

「こんな時間に何処行くんだ?散歩なら付き合うぜ?」

こんな真夜中に?

「……すぐ、戻ってくるから……」

揺れてる、瞳。

僅かに震えた声。

「俺も行く」

葛葉は僅かに困った顔をしたものの頷いた。

 

 

 

本当は見つからずに出て行こうと思ったのに。

彼に話してから出て行くのでは、

きっと自分は切り出す勇気が持てないままずるずるとこのままでいてしまうから。

 

 

 

「僕ね、そろそろ行かなくちゃ、行けないの」

「何処に?」

「………おうちを探しに」

「………くーちゃん」

「なあに?」

「くーちゃんがそこにいたいと思わない限り、くーちゃんの家は何処にもないよ?」

 

 

そう。

その場に留まっていたいと願わない限り永遠にさすらわなくてはならない。

 

 

「………どうして、そう思うの?」

「くーちゃんが怖がってるから」

「………そんな事、ないよ?」

「じゃあどうして、何処からもいなくなろうとするんだ?」

「それは……」

「ごめん」

 

いきなり謝られたかと思うと腕の中に閉じ込められた。

 

「本とは俺、知ってた。知ってたけど言いたくなかった。触れられたくなかったみたいだから。

でも、卑怯だと思うけど言うな?俺はくーちゃんがすきだよ。おまけがついてようがなんだろうが関係ない」

 

 

彼は酷く驚いて。

「でも」

「英雄だろうが、紋章ついてようが、くーちゃんはくーちゃんだろ?どうしてくーちゃんは家がないと思うんだ?くーちゃんが望むなら幾らでもあるのに」

「でも、ソウルイーターが……」

「確かにそいつの威力は凄いと思う。見た事ないからわかんねえけどな。でもな、くーちゃん。俺はそれでもくーちゃんと一緒にいたいんだよ」

「でも……」

「くーちゃんはどうしたい?」

「え?」

「くーちゃんは何処にいたい?」

 

 

本当はここにいたい。

彼がすきだから一緒にいたい。

でもソウルイーターが発動してしまったら?

そしたら今度こそ自分はどうしたらいい?

でもやっぱりここにいたい。

居場所をくれる彼の所にいたい。

暖かいから、優しいから、甘えてしまっているのかもしれないけれど。

 

 

「………ここにいても、いい…?」

 

 

「………ここにいてくれよ」

 

 

 

さらに抱きこまれた腕の中はやっぱり暖かくて。

 

「おかえり」

 

「…………ただいま……」

 

 

不安なら側にいるから。

居場所ならここにあるから。

望む限りずっと一緒にいるから。

だからどこかに消えるような事しないで。

俺は『くーちゃん』がすきだから。

 

 

透明で綺麗な雫が、零れ落ちた。

 

 

 

 

何か願い事があるかと聞かれたら、

僕は躊躇わずに即答するに違いない。

望んだら、

自分で認めて手を伸ばしたら、

それは僕にも届きますか?

わがままな事じゃないですか?

僕が望んでもそれは罪にはなりませんか?

もし仮にそうだったとしても、

 

 

彼が僕を嫌わずにいてくれる限りここにいさせて下さい。

 

 

 

 

 

○あとがき

意味不明MAXです。ごめんなさい(沈没)くーちゃんに感情移入しすぎて実話になりかけてしまいました……

 

 

 

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